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川内・伊方原発での避難は、福島よりも過酷だ 交通政策専門家

 『原発避難計画の検証』の著者で、交通政策の専門家である上岡直見・環境経済研究所代表のインタビュー記事。地面が割れ、橋が落ち、山崩れが起き、交通があちこちで寸断された場合、逃げられない住民が続出するのではないか、と誰も抱く常識的な懸念。
 だから「立地審査指針」を廃止し、周辺に住民が多数いる現実を認め、「避難計画」を規制基準の範囲にいれなかった。
人命軽視はとどまることを知らない。「免震重要棟」の未設置を容認したことで、計画返上の電力会社が続出。
中越地震の経験から、泉田・新潟県知事が強く設置をもとめた対策拠点が「免震重要棟」。福島原発に設置が完了したのは「3.11」の8ヶ月前。もしなかったら「東日本壊滅」が現実になっていた。

【川内・伊方原発での避難は、福島よりも過酷だ 「原発避難計画の検証」の上岡直見氏が警告 東洋経済4/24】

 下段に「注目の人直撃インタビュー 泉田裕彦氏(新潟県知事) (日刊ゲンダイ2013/10/24)」より抜粋

【川内・伊方原発での避難は、福島よりも過酷だ 「原発避難計画の検証」の上岡直見氏が警告 東洋経済4/24】

熊本県内で起きた震度7の大地震で、原子力発電所の安全問題が改めて注目されている。原発敷地内で観測された地震動が原子炉自動停止の基準を下回っていることを理由に、「稼働停止を求める理由はない」と田中俊一・原子力規制委員長は述べているが、このままで大丈夫か。原発に万一が起きた時、避難計画は機能するのか。交通政策の専門家である上岡直見・環境経済研究所代表に聞いた。

――熊本県内を震源とした大地震により、九州電力・川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)を初めとする九州・中国・四国地方の原発の安全性が懸念されています。住民避難の視点から『原発避難計画の検証』(合同出版刊、2014年1月)を上梓した交通政策の専門家の視点からどのようにご覧になっていますか。

○東京電力・福島第一原子力発電所の事故では津波被害が大きかったこともあり、これまでは津波被害に関心が偏っていた。しかし今回の熊本地震では地震による被害がきわめて大きかった。地面が割れ、橋が落ち、山崩れが起き、交通があちこちで寸断された事態を目の当たりにして、万が一原発事故を伴う複合災害に発展した場合、逃げられない住民が続出するのではないかとの懸念を強く抱いた。

■川内原発、現実味のない鹿児島県の避難計画

――鹿児島県が作成した「避難時間シミュレーション結果」によれば、川内原発で大事故が起きた場合に、半径30キロメートル圏内に住む約21万人が30キロ圏外に避難するまでの所要時間(注:正確には、半径5キロ圏内への避難指示があった時から、30キロ圏内の住民の90%が30キロ圏外に到達するまでの所要時間)は、「1台のクルマに4人が乗り合わせた場合」(交通誘導なし)で「11時間45分」、「国道270号が通行できない場合」で「22時間30分」などとなっています。

○この推計はまったく現実味がない。川内原発周辺から30キロ圏外に脱出するためには、薩摩半島の山間部を通らざるをえないが、土砂災害危険箇所や土砂災害警戒区域が至るところにある。これらはもともと水害を念頭に置いたものだが、強い地震でも同じような被害が出るだろう。避難経路上には多くの川があり、1カ所でも橋が落ちればまったく通れなくなる。いったん不通になると2~3日で復旧できるものでもない。
私の試算によれば、道路ネットワークが完全ならば16時間前後で30キロ圏外に避難できるケースでも、5%が損傷した場合は約32時間、同10%で約98時間となった。これ以上の損傷があると極端な詰まりが発生して、計算は事実上、不能になる。

――四国電力・伊方原子力発電所(愛媛県伊方町)の場合はどうでしょうか。

○伊方原発の事故の際の避難はさらに困難をきわめるだろう。佐多岬半島の幅は極端に狭く、土砂災害危険箇所が主たる避難経路である国道197号線に全面的にかかっている。半島の付け根に所在する原発よりも西側のエリアで暮らす住民はどこにも逃げ場がない。半島の西側部分は「予防避難エリア」として船で大分県に逃げる方法も検討されているが、船は津波警報が出れば出航できない。気象状況によっても運行できない。つまり、原発事故を伴う複合災害では、避難計画は機能しない。

■鉄道、道路とも不通で福島上回る惨状に

――川内原発や伊方原発の事故時の避難計画では、PAZ(予防的防護措置を準備する区域、おおむね5キロ圏内)に何人が暮らしていて、そのうち高齢者や障害者、子どもなど避難の際に支援を必要とする者が何人いるか、そして各集落から区域外のどの避難所に避難させるかなどが細かく記載されています。また、要支援者の避難のために何台のバスや福祉車両が必要であり、あらかじめ何台が確保されているかも記載されています。以前と比べるとかなり具体的になった印象もあります。

○それでも実効性があるとは思えない。強い地震が起き、道路が一部でも寸断された時に、バスなどを呼び寄せることができるのか。また、放射線量が上昇しているさなかに、被ばく覚悟で迎えに来てくれる保証もない。大地震では受け入れ先の自治体も被災している可能性が高く、30キロ圏外に逃れたとしても、想定していた避難施設で受け入れてもらえるかは、保証の限りではない。単に移動するだけでなく、人工呼吸器使用者など設備のマッチングもしなければ動けない。

――薩摩川内市は2014年度に鹿児島県に対して、避難に際して新幹線や在来線の活用ができるように要望しています。

○今回、新幹線は脱線したし、在来線も不通になった。強い地震の際に鉄道が正常に運行されているとは思われない。おのずから避難は自家用車中心になるが、電柱一本倒れただけでも動けなくなる。福島事故の際にも幹線道路で自動車が数珠つなぎになったが、それでも道路が健在で通行ができただけよかった。その点でも、福島での避難を上回る惨状が起きる可能性が高い。


■聞き手 東洋経済 記者 岡田 広行Hiroyuki Okada東洋経済 記者1966年10月生まれ。早稲田大学卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などを経て、現在、企業情報部記者として電力・ガス業界を担当。2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている


【[注目の人直撃インタビュー] 泉田裕彦氏(新潟県知事) (日刊ゲンダイ2013/10/24)】

■「東京電力はお金と安全とどちらを優先する会社なのか」――。

  (略)

――いま原子力規制委員会がやっている安全審査以前の問題ですね。

「そもそもあれは安全審査じゃない。規制基準適合審査なんです。そしてその規制基準は、一定の確率で事故が起きるという基準です。事故が起きても『我々は起きる前提でご説明していましたから、基準には合ってたんです。責任はありません』と言うために審査をやっているとしか言いようがありません。規制委員会には設備班と断層班しかないんです。世界の標準は『住民の命と健康をどう守るか』なのに、田中委員長は『そこは私たちの仕事ではない』と言う。無責任以外の何ものでもありません」

――それでも、泉田知事が審査を認めてしまったので、このままベルトコンベヤーのように、適合OKになって、再稼働へ流れていく懸念があります。

「そこは一番重要なところなんで、正確に伝えていただきたいんですが、フィルターベントは放射能を放出する装置ですから、健康に影響ある被曝をするような装置はOKできません。したがって、これから避難計画との整合性や機器の性能もチェックする。つまり住民の健康が守れないということが明らかになれば、今回の申請の承認は無効です。県の了解を取れない限り、ベントの運用ができないということは、稼働できないということなんです。ご懸念のようなことはないと思っています」

――東電はそういう状況にもかかわらず、14年4月の再稼働を前提に収支計画を出し、銀行に伝えると一部で報道されました。県との信頼関係を裏切ることになりませんか。

「仮にそういうことなら、やっぱり東電は住民の安全より、お金のことばかり考えているということでしょう。福島の廃炉や汚染水、賠償問題を抱えて、原発の安全な運用なんてできるんでしょうか。社長の頭の中が『どうやってお金を借りようか』で一生懸命だったら、安全に意識が行かないじゃないですか。原子力発電所に責任を持つ体系をどうつくっていくのか。その過程で東電には問題があるのならば、当然、破綻処理も含めて体制を整備することが先じゃないかと思います」

――原子力規制委員会の田中委員長が「個性的な人ですね」と言ったり、知事を変人扱いする空気もあります。圧力を感じることは?
「感じますよ。車でつけられたことがあります。プロの運転手さんはわかるんですよね。『あれ、つけられている』と。高速でね、パーキングエリアに入ってすぐ出るんですよ。普通、パーキングエリアに入ったら、(降りて建物の)中に入っていくじゃないですか。こっちがパーキングエリアを出ると、一緒に付いて出てくる。どこまで行っても、小道に入っても付いてくる。薄気味悪かったですね」

――そういうことがあると、圧力にひるみませんか。

「知事としてやらないといけないことは、住民のみなさんの安全と生命と財産を守ること。07年の中越沖地震の時、柏崎刈羽原発の東電のサイトと連絡が取れなくなりました。ホットラインのある建物が地震で歪んでドアが開かず、入れなかったというのですが、地震の際、事故は複合で起きるわけだから、ホットラインが使えないと困ると、かなり言ったんです。もう知事、そろそろいいんじゃないかという話も多々ありましたけど、断固としてやってくれと言った。そうしたら造ってくれたのが免震重要棟なんです。あわせて、福島にも免震重要棟を造った。完成したのが、東日本大震災の8カ月前でした。だからあの時、私がひよって、言うべきことを言わなかったら、あの福島に免震重要棟はなかったんですよ。免震重要棟がなかったら、いま東京に住めないんじゃないですか。口をつぐんでしまえば、同じ事故が起きたときに不作為の責務を負ってしまう。『変人』と言われようと、言うべきことは言っていきます」

――知事には住民の安全と生命と財産を守る責務があると何度もおっしゃいますが、総理大臣にも国民の安全と生命と財産を守る責務がありますよね。

「例えば、2時間くらい時間をもらって、じっくり『こういうことです』とレクさせてもらえば、伝わると思うんですよ。でも組織って、都合の悪い情報を上げているのかというと、そこはわからないんですよね。いろんな人から直接話を聞いて判断しないと、正しいと思って結果として間違った判断をする可能性は、否定できません。それから、(国が仕切る)原子力災害特別措置法と(自治体が自然災害に対応する)災害対策基本法、これが別体系になっているんです。法律を一本化してくれ、という話を前の平野防災大臣にしました。民主党政権は『見直します』とずっと言ってくれてたんです。ところが政権交代したら、古屋大臣は、YESと明示的に言ってくれないんですよ」

――もう一度原発事故が起きれば、法律的に見ても再び混乱することになるのですね。

■いずみだ・ひろひこ 1962年新潟県加茂市生まれ。京大法卒、87年通産省。資源エネルギー庁、産業基盤整備基金総務課長、岐阜県新産業労働局長などを経て、04年10月新潟県知事。現在3期目。

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