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浦戸「道の駅」~ 目的不明、破たん明白な計画に31億円

 31億円をかけて、桂浜公園のすぐそばに、アクセス道路(1.4㌔)をつくり、桂浜整備計画で示された「ここでしかない食、物産」を提供するという「道の駅」をつくる、という構想が示され、このたび、分厚い報告書が出ている(情報公開で入手。一般に公開はされていない)。 党市議団と共同作業で、私なりにチェックしてみた。

 こんなに、ひどい計画には、なかなか出会うこともない程のひどい計画。コンサルに委託した「調査報告書」にもとづき、そのデタラメぶりに触れたい。

 その前に、これだけのひどい計画なのに、新図書館西敷地の問題も含めてダンマリ。戦争法、原発、辺野古基地問題で、しっかり発言しているのに、地元の問題では・・・ ダブルスタンダード、がっかりしている。

 なお、その他の財政運営の特徴のメモ
【高知市  2016年3月議会の特徴~市民不在の大型事業優先と対決 2016/3】

■問題1 桂浜整備構想とコンセプトが丸かぶり
道の駅」構想では、休息、情報発信、地域連携〔多目的広場、直販所、飲食、物産、加工施設、体験とかかげるが・・・、
「桂浜公園整備計画」のコンセプトは・・
・ここに行きたいと思わせる食や土産物、特産品を楽しめる
・海浜景観を眺め、くつろげる 
(ちなみに、「道の駅」構想では、南は防風林、北は保安林があり、海を見渡せる場所は、1箇所しかなく、同様な押し出しをしているが誇大宣伝)
・歴史資源を生かし、学び、くつろげる
・誘客促進を持続的にとりくみ、継続性をもった販売促進などソフト施策にとりくむ
・・ユニバーサルデザイン、防災機能の向上
と、まったくと言って一緒。

道の駅は「家族づれで楽しめる」というが、肝心の「子どもの森」は、構想の中には入っているが、当面の事業化の範囲に入っておらず、「目くらまし」の類。

■問題2 積み上げられた産業振興計画を無視 
「道の駅」構造のおかげで、公園整備の方がストップしている。

 「もう少し、詳しく見ると、道の駅」構想の「効果と今後の課題」では“桂浜公園のにぎわい施設と「道の駅」の飲食店、物産店等の商業施設の分担・連携」となっており、公園整備計画のコンセプトを否定している。

ことしで8年目となる県が市町村などともタイアップしてすすめている「産振計画」、そして7つの地域に対応した地域アクションプランの高知市版にも「道の駅」は皆無。

たとえば「幡多地域アクションプラン」では、それぞれ位置づけられている
・大月町まるごと販売事業 道の駅「ふれあいパーク大月」を拠点とした取り組み
・売り出せ西土佐プロジェクト  道の駅オープン  総合発信拠点づくり、
・カツオ文化のまちづくり事業、佐賀の拠点ビジネス 黒潮 「ならぶ土佐佐賀」の充実

「産振計画・第二期Ver4」 観光分野・県中部地域では「桂浜公園再整備にむけた新たな振興計画の検討」とうり、桂浜公園の再整備計画が急がれる、というのが協議の到達点。

誰かからの「圧力」だろうか、まったく道理のない計画。

■問題3 採算の見込みはまったくなし

 実際のニーズからではなく、県内外のいくつかの「道の駅」をピックアップして平均値で粉飾。

①交通量と立ち寄り率 4.3% 
最高は、アグリ窪川10.4%、土佐さめうら〔土佐町〕0.7%であるがその平均で取って、利用者を72万強と推定。桂浜公園駐車場 年間の用20万台。龍馬記念館17万人。正確な統計はないが、桂浜公園の訪問者が70万~80万人(行政関係者)であり、そのほとんどが、奥まった「道の駅」に寄るという推計になっている。

 そもそも、この地域の交通量の多さは、通勤が多数をしめている。休息所としての「アグリ」の数字で盛っているのは明らか。

②施設利用率を、直販30.1%、飲食18.7%、物産18.0 体験3.0としているが、これも「粉飾」
 資料に載っている他のケースでは・・
  土佐さめうら 直販31.1、飲食45.0、物産18.9 ~ 地元の店としての活用では
  ビオスおおがた直販52.0、飲食17.1、物産31.7 ~ 地元の店、黒糖などの物産
  あぐり窪川  直販4.5、飲食20.3、物産13.5 ~ 休憩所として活用か〔コンビニで代替できる〕
  やす     直販17.3、飲食2.7、物産5.0 ~  休憩所として活用か 〔〃〕

 立ち寄り率が高いのは、休息所。直販の売り上げの高いのは地元の店としての活用と思われる。
 しかも、「もてぎ」〔栃木〕という、洋菓子、バウム工房、SL公園など「ファミリーで1日楽しめる」をコンセプトに、野菜直販も「有機堆肥」を売りにしている。直販43.8、飲食27.5 物産25.0 という、こんな特別な施設をいれ、数字を盛っている。

体験は3つの例だけで、和紙工芸館の7.5%が引き上げている。

・ 平均を取る意味が見えない。むしろ高い数字のケースをいれることで、「粉飾」しているのは明らか。

③事業収支~ 最高の場合でも「建物」の更新費も賄いない。

 どの場所に、「道の駅」を設置するか、4つの案が示されてる。

 もっとも経済効果のある「ゾーニング1案」では、単年度収支は7千万円の利益だが、減価償却を考慮した場合  建物だけで7千万円強で、49万円の赤字。「道の駅」全体や「アクセス道路」を含めると減価償却は1億5千万円弱で、8千万円の大赤字になる。

(ゾーン2 単年度3838万円の赤字。ゾーン3 2838万円の赤字、ゾーン4 4633万円赤字)

④運営方式も、矛盾だらけ
・報告書は、DBO方式という建設、管理、運営を一体で民間が行う方式を推奨している〔起債で対応する以外は、PFiとほぼ同様の仕組み〕
その「利点」として「サービス向上」「民間のノウハウ活用」「安定した事業」などをあげているが、医療センターのPFIが失敗したことへの反省がない。
 しかも、この方式、民間は、もうからなかったら撤退ずればよく、なんの責任もない。PFIなどの手法の真の目的はリスク分担にある、と指摘されている。
たとえば、長期契約の条件に、30年間で「減価償却費」を回収する。達成できない場合は、その不足額を負担するなど明確にすべき。そうしたら、手をあげる民間はないだろう

・事業形態も不透明
最も有望とされる敷地A〔ゾーニング1〕は、市街地調整区域であるため、指定管理者が施設をテナントに賃貸することが不可。指定管理者が直営するか、テナントに入る事業者を連名させる方法しかない、と報告書にあり、「調整を要する」みたいなあいまいな記述になっている。
 それは、詳細な報告書には載っているが、概要版では隠されている。

⑤その他の疑義
★駐車場の広さ
 その面積を算出するに、全国的な指標である「キロ当たりの立ち寄率」を採用している。
が、その母数として「カワウソの里~浦戸~やす」を設定し、25キロとしているが、土佐市・新居のJA直販店「浜辺の駅 南風の郷」、旧吉川・天然色市場があり、それ無視しなければ10キロほどとなり、必要数は4割に低下する。

★道路幅
・桂浜公園の駐車場の利用台数1700台/日をもとに「8~9割が「道の駅」に来るとの想定」し、ピーク時など考慮し2000/日としている。
・そこから「2車線」としている。第三種第4級“山地部”6千台/日未満の規定。が、その1/3の台数。
・それなのに、路肩は0.75mの標準を採用し、0.5mにできる特例を採用せず。
・歩道は、標準値2mなのに0.5加えている。1キロ以上の坂道を、歩く人など皆無である。
・報告書では、それで計9.5mとしているが、8.5mや、景観・環境に配慮すれば、一方通行で、1車線も可能ではないか。
・結局、工事を盛ることと、市街地調整区域の開発に必要な「9m道路」を確保するためではないか、疑義がある。

■問題4 必要性の「ごまかし」

①みませ、浦戸地域の人口減少対応
 資料では、2060/2010比で
みませ-81.45%   浦戸-61.74% と高い。
現在407、1064人の地区で、実数では331人、657人の減。

が、みませ地域は、川の北側であり、「道の駅」との関連はほとんどない(直販所、防災など)
その「みませ」を入れることでの「印象操作」
 市内全体で大きく減るが、5割以上の地域では・・
五台山-53.19 1480人減  布師田-52.15 1172人減
 があり、「この地域」を特別視する意味は見えない。

★同時に、長期的なまちづくりのあり方として、津波襲来地域、長期浸水地域の人口集積をめざすのか?、そこを避けるまちづくりをするのか、という根本問題をスルーしている。
 また、日常的な買い物の場としては高台にあり、車をもたない高齢者は利用できない
 そうした問題には、県下的には、生活や経済活動の場として、集落活動センターの実践がある。
 なぜ、地に足のついた検討ができないのか。

②地元の経済活動の振興
 まず、報告書の内容を確認したい。
・事業所で、みませ、浦戸には、一次産業の事業所 0%となっている。
・農業は、高知市全体の資料しかない。
→ 出荷額、農家数の増加は合併によるもので、地域の分析なし
・漁業 3つの漁協がある。
漁獲高は、浦戸277トン、みませ281トン、春野64トン 
 金額では、ドロメ60%台〔1億23百万〕、2位の沖ウルメは4%〔765万〕、3位のメヒカリ2%強〔456万〕。

・県内外で、成功している「道の駅」の調査報告では・・
「鮮魚は取り扱いが難しく直売は少ない」「出店者は100、飲食50-100」「特産品、その場ですぐ食べられるもの」
~→高知市で提供できる魚は種類、量ともに少なく、ドロメは冬が旬。観光シーズンとずれる、いうもと、つまり、結局、県下全体から出店をつのらないと、店舗数を確保できない。地元振興とは関係なくなっている

③他の観光地との連携
「道の駅」の効果を謳うために、報告書では「対象地域周辺の観光施設」の項目がある。
「利用者の上位5施設〔高知城、美術館、坂本竜馬記念館、牧野植物園、アンパンマンミュージアム〕が30km圏内にある」となっているが、旧高知市内ならほとんどの地域が対象になっており、とってつけたような説明。

■問題5 「官民連携事業」だか「相手なし」

 この事業は、国の「官民連携事業」を採用をめざしているが、民からの積極的な動きはない。そこが、そもそもおかしい。報告書の調査結果も厳しい。

①事業者調査 出店に「関心あり」は15%
ひろめ市場の店舗で他にも店舗を出しているところ、観光協会・商工会議所登録の事業者など、選りすぐりの50社に対してアンケートを実施している。
・「とても魅力的」20.0%、「少しは」15.0%、「どちらとも」40㌫「あまり魅力ない」5%、「全然ない」15%
・出店について 「とても関心がある」15%、「少し」0、「どちらとも」35%、「あまり」10%、「全然」25%
と、報告書でも「出店意向は極めて低い」と指摘。〕
→ その改善のために、アクセス道の整備とか、31億円以外の予算措置を求めている。

②ヒアリング調査も厳しい声
 2つの農協と3つの漁協に聞いているが、主体者として積極的に関与する発言はない。それどころか・・
・農業団体B「高知IC周辺での道の駅、花海道沿いなら成立つかもしれないが、幹線道路沿いでないので、人がこないのではないか」
・漁業関係C 「鮮魚を売るのは非常に難しい」「立地が悪く集客に波がある」「品ぞろいと量が確保できるか。質の良い魚が先にスーパーに出て行く」
と、真剣に商売を考える人なら発するまっとうな意見。

 今、あれだけ多くの観光客のくる「日曜市」の出店者確保にも苦労している状況を無視している。
ちなみに、日曜市の活性化でいえば、〔すぐに食事できる〕などいこいの場として「西敷地」は、市が考えてるビル建設でなく広場で残すことの意義を「報告書」は示していると言える。

■問題6 防災も口実

①市は当初「防災道路」と説明してきたが、3月議会で、商業施設のアクセス道路と認めた。
急輸送道路は、県と市町村が連携し、1次から3次まで優先順位を明確にして計画的整備をすすめている最中。その途上に、突如「防災道路」・・・ 防災需要は数多ある。必要と言えばどこも必要だが、だからこそ限られた予算の中で「優先順位」を明確にして進めている。そのことを、前の議会で追及した結果が、今回の答弁。
 市民に対する誠実さ、説明責任を果たそうとする姿勢を、まったく感じられない。

②防災でもっとも重要なのは住宅の耐震化。これがないと逃げることもできない。が、県制度の導入に消極的で、今も県が進めている「代理受領制度」「段階的改修」にも冷たい。
・むしろ、地域からは、防風林としての役割を果たしている保安林の伐採など、急傾斜の多いところに、9.5メートルもの道路を通すことで「増災道路」との批判があがっている。

■問題7 住民への説明なし
・この構想は、策定委員会を経て、パブコメにかけたマスタープラン案を、策定委員会のメンバーにもはからず、内部で勝手に「高台利用」「防災道路」を書き加えたことが「根拠」となっている。
・さらに、与党会派が同趣旨の質問をし、その後、地域の町内会長名で出された要望(調査中であるが、町内会で議論された事実は確認できていない)
~ この2つが「根拠」になっているが、が、肝心の地元は、説明もないし、状況をしらいない、地域全体として要望が上がっているわけでもない。今、ようやく「地元説明」が持たれようとしている段階。

☆政治的立場は違っても「県民に説明できないことはしない」という、県政とは、雲泥の差がある

■問題7 観光行政の戦略性不明

国内は人口減であり、インバウンドが重視されている。
国内旅行者が多数くる桂浜公園の整備は重要(だから整備計画をストップさせるべきではない)だが、インバウンドには「龍馬」は切り札ならない事実を直視すべきである

「龍馬」から「よさこい」へ外国人への訴求ポイントを変えた高知県の決断 / 莫 邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト] 2012年6月28日 ダイヤモンドオンライン


*「VISIT KOCHI JAPAN  県の外国人向けサイト
強調されているのは、食、自然・体験、ヨサコイ・ひろめ、高知城など。
「高知市1日コース」の案内では、桂浜滞在1時間となっている。今後、高知城歴史資料館ができれば、もっと短縮されるかもしれない。

 2.3日滞在するなら、1日は高知市かもしれないが、他は、四万十川、仁淀ブルー、天狗高原、室戸ジオパークなど、郡部に行くだろう。

~ 高知市は、高知県観光の入り口として重要であるが、他の地域との連携により、県全体の誘客にどうリンクするか、という発想が不可欠。「道の駅」は、まったく大局観のないとりくみ、と思う。

 これに31億円もかける。2000台/日という計画なら、アクセス道路の出入口周辺の整備ももとめられるだろう。急傾斜地が多くその対策ももとめられるだろう。大きく費用が膨らむことは、目に見えている。
 
 そのツケは、現市長が払うわけではない。市民が負担することになる。

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