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東芝・会計不正、甘利あっせん利得~問われる検察の姿勢

 東京地検特捜部などを歴任してきた郷原信郎氏。
 東芝不正会計について、米国原発子会社の減損など原発事業をめぐる問題が核心—経営陣が監査法人の原発減損への指摘を封じ込めるために、別の監査法人に依頼し対策をとったことが強く疑われる。甘利問題では、国会の参考人として「まさに絵に描いたようなあっせん利得」「ど真ん中のストライクに近い事案」と主張。
いずれの事案も検察の動きは鈍い。
 郷原氏は、東芝問題で、「検察が、国民の期待・社会の期待に応えて、国の経済社会にとっても極めて重要な経済事犯の真相を解明する使命を果たすことができるかどうか」、甘利問題では「これほどの事件をやらないと、検察は何のためにあるのか、という話になるでしょう。国民不信は強まるばかりです」と指摘する。
どちらの関係者も安倍首相との距離感が極めて近い、という共通項がある。
【最終局面を迎えた東芝会計不祥事を巡る「崖っぷち」 郷原信郎 3/14】
【甘利問題なぜ動かず 弁護士・郷原信郎氏「検察の忖度」指摘 日刊ゲンダイ 3/14】

【最終局面を迎えた東芝会計不祥事を巡る「崖っぷち」 郷原信郎 3/14】

今月発売の文芸春秋4月号の特集「アベノミクス崖っぷち」の中の【スクープ・東芝「不正謀議メール」を公開する】と題する記事によって、東芝会計不祥事に関して注目すべき事実が明らかになった。
昨年7月の東芝第三者委員会報告書公表以降、新聞、テレビ等の多くのメディアが、「会計不正を主導した経営トップを厳しく断罪する第三者委員会報告書」によって歴代3社長が辞任に追い込まれたことを大々的に報じ、それによって、「幕引き」の雰囲気が醸成される中、誌面で東芝内部者に内部告発を呼びかけるという異例の対応まで行って、東芝会計不正の徹底追及を続けていたのが日本を代表する経済誌「日経ビジネス」であった

私は、当ブログ(【監査法人に大甘な東芝「不適切会計」第三者委員会報告書】)、日経ビジネスオンライン(NBO)(【東芝は「社長のクビ」より「監査法人」を守った】、【「東芝不適切会計」第三者委員会報告書で深まる混迷】(プレジデントオンライン)、【「問題の核心」を見事に外した第三者委員会報告書】(岩波・世界9月号)等において、報告書の内容に重大な疑問があることを指摘し、「第三者委員会を中心とする東芝の不祥事対応」を徹底的に批判してきた。

そこでは、
①会計不正の問題なのに、不正の認識の根拠となる監査法人による会計監査の問題が委嘱の対象外とされていること、
②調査の対象が、「損失先送り」という損益計算書(P/L)に関するものに限られ、原発子会社の巨額の「のれん代」の償却の要否等、会社の実質的な財務基盤に関わる貸借対照表(B/S)項目は対象から除外されていること
などからすると、第三者委員会の調査は、意図的に問題の本質から目を背けようとしているとしか思えないことを特に強調してきた。

そして昨年11月に、日経ビジネスが、本誌とNBOにおいて、内部告発によると思われる【スクープ 東芝、米原発赤字も隠蔽 内部資料で判明した米ウエスチングハウスの巨額減損】【スクープ 東芝 減損隠し 第三者委と謀議 室町社長にもメール】という二つの衝撃的なスクープを報じたことで、東芝問題をめぐる状況は激変した。

これらの記事から、第三者委員会発足前に、当時の田中久雄社長、室町正志会長(現社長)、法務部長(現執行役員)等の東芝執行部が、米国原発子会社の減損問題を委員会への調査委嘱事項から外すことを画策し、その東芝執行部の意向が、東芝の顧問法律事務所である森・濱田松本法律事務所から、第三者委員会の委員の松井秀樹弁護士に伝えられ、原発事業をめぐる問題が第三者委員会の調査対象から除外されたことが明らかになった。

その直後に出したブログ【偽りの「第三者委員会」で原発事業の問題を隠蔽した弁護士と東芝執行部】で、私は、
記事の内容が事実だとすると、東芝の会計不正への対応で中心とされてきた「第三者委員会スキーム」は、世の中を欺くための手段として使われた「壮大な茶番」だったことになる。
と述べた。

今回の文芸春秋の記事では、東芝社内でやり取りされたメールに基づき、以下のような事実を報じている。

(ア)会計監査人の新日本有限責任監査法人(以下、「新日本」)が、米国原発子会社の減損に関して、東芝に厳しい指摘をしていた。
(イ)田中社長を始めとする会社執行部は、この新日本の指摘を「受け入れがたい」として徹底して戦う姿勢であった。
(ウ)新日本の意見を封じ込めようとする東芝側の画策には、同じ大手監査法人の有限責任監査法人トーマツ(以下、「トーマツ」)の100%子会社のデロイトトーマツコンサルティング(以下、「DTC」)が深く関わっており、新日本が崩せない「工作」を東芝に授けていた。
(エ)田中社長は、厳しい指摘をしてくる新日本に対して、「翌期からの監査法人(会計監査人)の変更も辞さない姿勢」で臨むよう財務部長に指示していた。
(オ)DTCは、原発子会社の減損対策等に関する対応助言メモについて、対外的には東芝の社内メモのように装うことで、DTCの関与を隠蔽するよう東芝側に要請していた。
(カ)東芝の会計不正の第三者委員会の委員に就任した公認会計士の一人は、直前までトーマツの業務執行社員であったうえ、調査補助者には「デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社」が起用された。
(キ)東芝財務部から、監査法人のヒアリング対象になる幹部社員向けに、極秘の対策マニュアル(真実を隠蔽するための「想定問答集」)が配布されていた。

文芸春秋の記事に書かれていることが真実だとすると、東芝は、新日本に会計監査を任せる一方で、競合する大手監査法人であるトーマツの子会社から、新日本の監査意見に対抗するための「工作」の伝授を受け、会計不正が発覚するや、その不正調査に、会計監査対策に関わっていたトーマツ傘下の公認会計士を起用したことになる。

会計監査人の新日本に対して東芝側が虚偽の資料を提出したり、虚偽説明を行ったりしていた事実があることは、第三者委員会の報告書でも認めている。そのような虚偽資料・虚偽説明に、DTCがどこまで関わっていたのか、トーマツ側にどの程度の責任があるのかはわからないが、東芝の監査対応に深く関わっていたトーマツの関係者が第三者委員会の調査を主導していたことは、委員会の調査や判断の公正さについて、新たに重大な疑念を生じさせるものと言えよう。

会計不正の問題なのに、なぜ、不正の認識の根拠となる監査法人による会計監査の問題が第三者委員会の調査の対象外とされたのかという当初からの疑問(前記①)に関しても、第三者委員会の委員の一人がトーマツの公認会計士で、調査補助者もトーマツの関連会社だったことと無関係ではないように思える。監査法人に関する問題を突き詰めていくと不正が新日本に発覚しないようにするための「工作」に加担したトーマツ自身にも跳ね返って来かねないという懸念が、監査法人問題が調査対象から除外される事情の一つになった可能性もある。

文芸春秋の記事では、

不正の振り付けをした会社が不正の調査をする。おまけに、どちらの仕事も費用を払うのは「被疑者」の東芝である。茶番としか言いようがない

と述べている。そうであるとすると、東芝の「第三者委員会スキーム」は、既に私が指摘しているように、委員会を設置した東芝執行部と第三者委員会の関係という面で「茶番」であっただけでなく、調査を担当し、補助する公認会計士の立場という面でも、世の中を欺くための手段として使われた「茶番」だったことになる。

今回の記事で明らかになった東芝社内のメールのやり取りは、東芝会計不祥事の核心が原発事業をめぐる会計処理上の問題であったこと、東芝執行部が、それを隠ぺいするためにいかなる手段も辞さない姿勢であったことを窺わせるものである。

東芝の財務部門から、新日本のヒアリング対象者に配布されていた「極秘のマニュアル」にDTCがどのように関わっていたのか、DTCの東芝の財務部門に対する指導・助言が、東芝の財務部門や事業部門が行っていた監査法人への虚偽説明にどのように関係していたのかなどは、文芸春秋の記事からは不明であるが、記事に掲載された東芝社内のメールのやり取りからは、東芝の新日本への虚偽の資料提出・説明に何らかの形でDTCが関わっていたことが疑われても致し方ないと言えよう。

文芸春秋の記事で明らかになった事実は、最終局面を迎えていると思われる証券取引等監視委員会による金融商品取引法違反(有価証券報告書虚偽記載)による告発の動き、そして、検察当局による刑事事件の捜査での東芝歴代経営幹部の刑事責任追及にも相応の影響を与えるものと言えよう。

第三者委員会報告書が公表され、歴代三社長が辞任を表明した直後から、東芝経営幹部が粉飾決算で刑事責任を追及される可能性についてメディアから質問を受ける度に、「その可能性は極めて低い」と答えてきた。少なくとも、第三者委員会報告書には、経営トップ主導の不正会計を印象づけるセンセーショナルな表現は並んでいても、経営トップの「不正の認識」を具体的に裏付けるような事実はほとんど指摘されていなかったからだ。

 【NBOのインタビュー】でも述べたように、東芝経営陣が会計不正を認識していたとすれば、監査法人を「だます」か、監査法人に「見逃してもらう」かのいずれかを具体的に認識していたはずだ。監査法人との関係というポイントを見事にスルーしている第三者委員会報告書では、東芝経営陣の不正を立証することは到底できないというのが私の見方だった。しかし、文芸春秋の記事に掲載されている東芝社内のメールからも、田中社長ら東芝幹部が、DTCの指導・助言を受けながら、新日本の会計監査での指摘に対抗しようとしていたことが窺われる。会計監査人たる新日本の意見を「受け入れがたい」とし、それを抑え込もうとしていたとすれば、会計不正の認識があったことの疑いを強めるものだと言えよう。

東芝会計不正を、「粉飾決算の刑事事件」として立件する上で重要なことは、「粉飾の動機」の解明だ。東芝経営トップが不正な会計処理を行ってまで守ろうとしたのは何だったのか。その点も、調査対象を、4つの事業部門の「不適切会計」に限定した第三者委員会報告書では、全く明らかにされていなかったが、前記の日経ビジネスの一連のスクープ記事と、今回の文芸春秋の記事を総合すれば、東芝の会計不正の核心が米国原発子会社の減損など原発事業をめぐる問題であることが強く疑われる。

しかし、東芝会計不正の背景に、国策として行われてきた原発事業を守るためであれば会計不正もやむを得ないという考え方による歴代経営トップの経営倫理の弛緩があったとすれば、東芝の会計不正の核心が原発事業をめぐる問題であることが明らかになることが、逆に、刑事責任追及のハードルとなる可能性もある。

原発事業をめぐる会計不正も含め、背景・動機について徹底した捜査を行い、真相解明することは、国内の原発の再稼働や海外での原発事業を積極的に推進しようとしている安倍政権にとって、決して歓迎すべきことではないであろう。

証券取引等監視委員会が告発できるかどうかも、検察当局が告発を受け入れ積極的に捜査に乗り出す方針を固めるかどうかにかかっている。

検察に、そのような安倍政権側の意向を忖度することなく、原発事業をめぐる会計不正を含めて東芝の粉飾決算事件に積極的に斬り込んでいくこと、適正かつ厳正な捜査を行って真相を解明することが期待できるだろうか。

文芸春秋が、東芝の記事を含む特集を「アベノミクス崖っぷち」と題しているように、東芝会計不祥事は、コーポレートガバナンスの強化を柱として位置付けるアベノミクスにとっても、避けては通れない問題だといえる。
「東芝会計不祥事をめぐる闇」は余りにも深い。しかし、その闇の真相を明らかにし、責任を明確にしない限り、日本企業のコーポレートガバナンスに対する信頼の回復・確立はあり得ない。

検察が、国民の期待・社会の期待に応えて、国の経済社会にとっても極めて重要な経済事犯の真相を解明する使命を果たすことができるかどうか。最終局面を迎えつつある東芝会計不祥事から目が離せない。

【甘利問題なぜ動かず 弁護士・郷原信郎氏「検察の忖度」指摘 日刊ゲンダイ 3/14】

「まさに絵に描いたようなあっせん利得」――。甘利明・前経済再生相をめぐるUR(都市再生機構)への“口利きワイロ疑惑”で、発覚当初からこう指摘した弁護士の郷原伸郎氏(61)。先月の衆院予算委の中央公聴会に公述人として出席した際も、あらためて「(あっせん利得処罰法の適用対象になる)ど真ん中のストライクに近い事案」と断じていた。東京地検特捜部を含む23年間の検事経験を踏まえた法律家の目に、今回の甘利問題はどう映っているのかを聞いた。

■「賄賂」系は公務の廉潔性を損ない悪質

――甘利疑惑はずっと「悪質」と指摘されていますね。

 甘利前大臣は大臣室で受け取った50万円を含め合計100万円の現金受領と、秘書が500万円の受領を認めています。現金を渡した建設業の元総務担当者の録音テープでも、“口利き”の際の面談や金銭授受の場面が記録されている。大臣が特定業者から相談や依頼を受けて対応し、現金を受領したのであれば前代未聞。辞任は当然です。

――国会議員をめぐる「政治とカネ」の問題はこれまでも散々、取り上げられてきました。今回の甘利問題が、それらと異なるのはどの部分でしょうか。公聴会では「政治とカネ」問題には3分類あると説明していましたが。

「政治とカネ」の問題は「政治資金の公開」系、「寄付制限」系、「賄賂」系の3つに大別できます。政治資金は通常、寄付やその使途が政治資金収支報告書で公開されている。政治家や政党の活動が政治資金によって不当な影響を受けていないかどうかを監視するためです。そこで、収支報告書の虚偽記載などが問われる。これが「政治資金の公開」系です。また、「寄付制限」系とは、寄付について、政治資金規正法で制限されている連続赤字会社や補助金受給企業からの寄付の有無や、量的制限に違反していないか、という問題です。ところが、「賄賂」系は、公務の廉潔性を損なう「犯罪行為」で、悪質極まりないものです。政治的公務員の職務の信頼性にも関わる問題であって、真相を解明した上で厳正な処罰が行われる必要があります。

――甘利前大臣のケースは、その「賄賂」系に当たると。

 詳しく言うと、ふつう、国会議員の場合、直接の職務権限は、議会の質問・表決だから、その対価として賄賂と認められるものの範囲は限られます。そのため、国会議員に収賄罪が適用される例は極めて少ないのです。そんな中で、むしろ、職務権限を背景に行われる、行政官庁への「口利き」で対価を受け取るケースが問題になり、「あっせん利得処罰法」が制定された経緯があるのです。その一方で、国民の負託を受けた国会議員が行政庁に働きかける行為はある意味、政治活動です。そこで「あっせん利得処罰法」によって政治活動そのものを萎縮させてはならない、となり、処罰対象の要件を絞ったのです。

――具体的にはどう厳格化したのでしょうか。

 例えば、予算の「策定」段階の行政庁への働きかけは、政治活動の自由が保障される必要性が高いと判断されている。一方、予算「執行」段階の「契約」は、適正かつ公平に行われるべきもので、ここに政治家が契約の相手方や契約内容に介入することは正当な政治活動とは言い難い。そこで、契約に関する行政庁への「あっせん」によって利得を得る行為を「口利き」とし、処罰の対象としたのです。

――「権限に基づく影響力の行使」も要件とされています。

「権限に基づく影響力」の典型は、法律・予算を多数決で成立させることに関して他の議員に働きかけを行い、意思を形成することです。与党議員であることや、党内で有力議員であることは影響力の大きさの要素であると言えるでしょう。

――その厳格なハードルに甘利疑惑は触れたのですね。

 あっせん利得処罰法は対象を「行政処分」と「契約」に関するものに限定した上、「権限に基づく影響力を行使」した場合――とした。つまり、政治活動を萎縮させないように配慮しつつ、悪質な行為を処罰するために「二重の絞り」をかけたのです。この点から見ると、今回、取り沙汰されているURとの補償交渉は「契約」に対するあっせんで、甘利前大臣の秘書は、お願いというレベルをはるかに超えて補償金額にまで介入し、その報酬として金銭や接待を受けていたと報じられている。さらに甘利氏は現職閣僚で、与党内でも大きな発言力を持っていた。つまり、「権限に基づく影響力」を発揮するのが十分可能な立場だったのは間違いないでしょう。まさに「ど真ん中のストライク」に近い事案と言えます。

■動かない検察は政権の意向を忖度

――検察は早急に強制捜査して証拠を確保するべきですね。元秘書の身柄確保はもちろん、甘利前大臣の聴取も必要だと思うのですが、なぜ、動かないのでしょうか。

 おそらく検察は、政権側が「政治的影響があるから捜査してほしくない」と考えているのではないか――と忖度しているのでしょう。一極集中の政治権力の下で、官邸の意向に反することはしたくない、と考えているかもしれない。特捜部は検事個々の考えで動く組織ではありません。特捜部長、地検幹部、検察幹部がどう考えているのかということです。

――02~03年に長崎地検次席検事として自民党長崎県連の裏献金事件の捜査を指揮されました。当時は小泉政権で、やはり今と同様に「1強」でした。現場にプレッシャーはなかったのでしょうか。

 法務省や最高検などから強烈なプレッシャーがありました。容疑者の身柄を取ることに対し、なかなかゴーサインが出なかったり、些細なことに目を付けて当時の地検幹部の処分をチラつかせたり。しかし、当時の検事正が踏ん張ってくれた。先ほども言いましたが、今回の甘利問題も特捜部長、地検幹部がどこまで腹をくくれるのか、ということでしょう。

■元特捜弁護士のあり得ない調査方法

――甘利前大臣が調査を依頼した第三者委員会の「特捜部出身の弁護士」も雲隠れしたままです。

 第三者調査はふつう、依頼者本人と会って調査の趣旨や目的、範囲などを確認しながら進めるものです。しかし、甘利前大臣は弁護士と会っていないと説明している。(聞き取りしたのは)疑惑の当事者である甘利事務所の秘書のみで、これは不思議です。弁護士は一体、誰から調査を依頼され、誰と打ち合わせを行ったのでしょうか。少なくとも、特捜部でまともな仕事をした検事であれば、あり得ない調査方法です。

――自民党の山下貴司衆院議員は公聴会で、岐阜・美濃加茂市長の贈収賄事件(1審無罪、検察側控訴)で、「あっせん利得処罰法」を適用した検察と郷原さんが主任弁護士として争ったことを引き合いに出していた。

全く筋違いの話です。「あっせん利得処罰法」の「権限に基づく影響力」とは、与党内で影響力を持つ有力議員であることが大きな要素です。しかし、事件当時の美濃加茂市長は1人会派の単なる一議員です。議会で多数を占める政党に所属していたわけでもない。「権限に基づく影響力」を行使できたとは到底、考えられません。もともと、あっせん利得処罰法を適用するような案件ではない。与党の有力議員の甘利氏の問題とは全く異なるものです。

――いずれにしても、このままだと検察不信が募るばかりです。

 これほどの事件をやらないと、検察は何のためにあるのか、という話になるでしょう。国民不信は強まるばかりです。

▽ごうはら・のぶお 1955年、島根県生まれ。東大理学部卒。83年、検事任官。東京地検検事、長崎地検次席検事などを経て、桐蔭横浜大大学院特任教授を兼任。06年、検事退官。08年、郷原総合法律事務所開設。関西大客員教授。国交省・防衛省の公正入札調査会議委員などを務める。「告発の正義」(ちくま新書)、「虚構の法治国家」(講談社)など著書多数。


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