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メガソーラー開発トラブルへの対応策について ISEP

 住民無視のメガソーラー建設をどう抑制するか。4つの制度的対応策を示すともに、基礎自治体で議論をすすめることは、地域主導型や地域協働型の望ましい自然エネルギー事業の促進とっても重要としている。
 自然エネルギーは地域分散型、住民参加型のエネルギーとして、欧州ではエネルギー・デモクラシーとして位置づけられている。
ISEPは地域の取り組みを支援するとともに、自然環境保護団体などとも意見交換しながら、あるべき方向の合意づくりをすすめていると、先日、来高した際にも語っていた。
【メガソーラー開発に伴うトラブル事例と制度的対応策について 研究報告  ISEP 3/1】

【メガソーラー開発に伴うトラブル事例と制度的対応策について 研究報告  ISEP 3/1】

4. トラブル事例への政策的対応

■具体的な対応事例

 こうした課題への政策的対応策を具体的な事例で見ると、景観保護について宮崎県では「景観形成に係る太陽光発電設備の取扱いについて」を策定し、県内の各市町村は景観計画や景観条例、立地規制による対応を選択するよう役割分担を行っている。静岡県富士宮市も世界文化遺産である富士山の景観と再生可能エネルギーの導入の調和を図るための条例を設け、事業の届出や抑制区域の指定などを定め、周辺自治体と連携して保全を進めている。自然環境保護について大分県由布市や高知県土佐清水市で大規模なメガソーラー計画に対し、条例や指導要領において対応を行っている。茨城県坂東市では、自然環境保護条例において、自然環境保護区域を設定することでメガソーラーを含む工作物の設置を規制している。ただし、こうした対応はトラブルが発生してからの対処が多く、該当する案件自体の開発を止めることは難しい。

■4つの制度的対応策

 これらを含め無秩序なメガソーラー開発への制度的対応策は主に4 つに分類できる。

 第一に今後の開発計画に対し、既存の景観条例や自然保護条例を改定または新設し、メガソーラーの開発を直接的に抑制する規制的手法である。これはゾーニングの一形態であるが、より整備されたゾーニングでは抑制地域を定めるとともに促進地域や開発可能区域を定めることが多い。

 第二に、環境アセスメント条例の改定を通して、一定規模以上のメガソーラーの建設に対する調査や住民説明会の開催を義務付ける手続的義務による手法である。国の環境影響評価法では太陽光発電が対象に含まれていないことから、都道府県や政令指定都市での条例により、大規模な開発については一定の基準を設けている。

 第三に、条例の制定やガイドラインの設置などにより数MW 以下のメガソーラーの建設予定を事前に届出を義務付ける手続的義務による手法である。この規定により、トラブルにつながりそうな開発計画を早期に把握できれば、次の自主的手法などと組み合わせて対応を検討する時間が確保される。資源エネルギー庁から自治体単位での認定件数は公表されるようになったが、個別の事業案件については把握できず、対応が後手に回る状況は改善されていない。今後自治体に情報が開示される方向で議論が進められているが、住民への開示はできず、地元との話し合いを設けるためには条例での対応が必要となると考えられる。

 第四に、事業者との協定や交渉を通じて開発の影響を軽減する、代替措置を講ずる、住民との丁寧な合意形成を促すなど、行政指導を通じた自主的手法である。すでにトラブルが顕在化している地域では1 と4 を組み合わせつつ、今後の発生を防ぐために2 や3 を検討している事例がある。本来は国・都道府県・基礎自治体・関連団体が連携してゾーニングマップを作成し、合意形成の基礎とするような予防的措置が必要である。
 国、地域の双方からの予防的アプローチの必要性現在のメガソーラーの認定件数を考慮すると、トラブルが顕在化する前に無秩序な開発を予防する制度が必要である。上述のように自然エネルギーの立地問題についてはゾーニングの必要性が指摘されており、その重要性は高い。しかしながら、現状の日本における都市計画や農地利用などにおいても多くの矛盾が存在する中で、自然エネルギーのゾーニングのみにおいて実効性が高い制度が実現するかは疑問の余地が残る。

 同時に重要なのは地域の持続可能性や経済効果、気候変動対策を念頭に置いた自然エネルギーの適切な推進である。つまりは、地域にとってどのような再生可能エネルギー事業が望ましいものであり、それが地域の持続可能性にどのように役立つのか、地域の未来像においてどのような役割を担うのか、を様々なステークホルダーも交えて議論し、描くことである。その未来像を地域の総合計画、環境基本計画、エネルギービジョンに落とし込み、各種条例や施策に反映させ、地域の役に立つ自然エネルギー事業を増やすことで実現に近づく。

 また、トラブル件数が多い景観問題についても、自然エネルギーという新しい社会インフラの側からの問題提起のみならず、社会全体でどのような景観を目指していくのか、という問いと合わせて検討を進めていく必要がある。

■ トラブル対策だけでなく、望ましいあり方への議論を

 基礎自治体での自然エネルギーに関する基本条例やそれに類する条例の策定は増加している(別表2)。湖南市や宝塚市のようにコミュニティパワーの三原則の考え方を取り入れた条例が増えており、地域の主体による自然エネルギー事業を進め、地域の持続可能性を高めるための「飯田市再生可能エネルギー導入による持続的な地域づくりに関する条例」は最も先進的なものである。また長野県では環境エネルギー戦略の策定や事業者とのネットワーク構築を含めてすでに望ましい自然エネルギーの進め方が提示されてきた。それに加えて大規模開発による景観への影響が懸念されることから、長野県では、県と市町村の連絡会議を開催し、大規模なメガソーラー開発には県の環境アセスメント条例を適用し、数MW 規模のメガソーラー開発には事前の届出や住民との合意形成、地域協働型事業への誘導を促す条例により市町村で対応すべくモデル案を提示し議論を行っている。 

 こうした政策の組み合わせにより、トラブルへの対応だけではなく、地域主導型や地域協働型の望ましい自然エネルギー事業の促進も同時に進めている。

5. まとめ

 メガソーラー市場が全国的に拡大するなか、住民の反対や行政の指導、訴訟などに発展するトラブル事例が多く顕在化していることが新聞データベースの整理やヒアリングから明らかになった。その要因として、景観、防災、生活環境、自然保護、行政の手続の不備、住民との合意形成プロセスの不足に加え、国の制度の整備不足などがあげられる。こうしたトラブルに対し、メガソーラーの抑制地域を設定する、環境アセスメントの対象とする、開発の事前届出や住民への説明を義務付けるなどの制度的対応が取られている。一方で、トラブルの対応や予防だけでなく、望ましい自然エネルギー事業の在り方を議論し、その促進を制度化することも必要である。今回の調査はマスメディアに取り上げられたものを中心としており、個別の事例についての詳細調査も求められる。


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