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「アベノミクス」で財政は再生できない(メモ)

 「『アベノミクス』で財政は再生できるか? 安倍政権の「経済・財政再生計画」の問題点」~ 垣内亮氏による論考(「前衛」2016.1)の備忘録。

 特に興味深いのは2012-15年度予算比で、税収が12.2兆円増えているが・・・

①消費税増税、②証券優遇税制の期限切れ、相続税の増税、石油石炭税(地球温暖化対策税)の増税を除くと、3~4兆円。
 しかも、うち「1.6兆円」は、2012年度のうちに発生した増収(決算と予算の差額)なので、実質は、2兆円程度。さらにリーマンショックの赤字の「繰越欠損金」を解消して法人税を納税する企業が増加(1ショットの効果)もある。トヨタだけでも4千億円強。

 「景気回復による自然増収」は、1兆数千億円程度か・・・

(その景気回復も・・・①巨額の財政出動の結果であり、 ②輸出大企業の高収益も、輸出数量は伸びておらず、円安による円建て利益の拡大であり、その原資は、国内の消費者、中小企業など物価高にともなう負担増以外にありえない。という、まっとうなものではない。)

【「アベノミクス」で財政は再生できるか? 安倍政権の「経済・財政再生計画」の問題点】

 垣内亮 「前衛」2016.1

■ 「経済・財政再生計画」と内閣府試算

・骨太方針2015 「経済・財政再生計画」
消費税10%の1年半先送りをうけ「2020年度の〔基礎的財政収支〕黒字化目標の達成に向けた具体的な計画を平成27年夏までに策定する」~「再生計画」では、2020年度までに黒字化を、「経済再生」と一体となった取り組みによって、達成めざす

・内閣府「中長期の経済成長に関する試算」 2015.7
 2017年4月10%増税し、「経済再生」が進んだ場合の想定でも、2020年度でPBの赤字6.2兆円

■ .「アベノミクス」では経済再生はできない~極めて甘い試算

(1)名目成長率が過大な予測

○「財政健全化に経済再生が不可欠」という認識自体は正しい

 ①税収増加をもたらす  ②生活保護、失業手当などの支出減
 ③経済規模の拡大による「政府債務残高のGDP比率」の低下、抑制

○問題は、アベノミクスでは、経済再生が不可能なこと

・「成長戦略」の中心・・・ 「世界で一番、企業が活動しやすい国」をつくり、「稼ぐ力」を高めること
 ~ 「大企業が儲かれば、それが国民全体に滴りおちる」という「トリクルダウン」の経済政策

・大企業 13.14年度連続で「史上最高益」を更新、株価上昇で大資産家(特に外国投資家)に莫大な利益
~ 多くは内部留保に。/ 一部大企業で賃上げも、消費増税・物価上昇に追いつかず
・ 実質成長率  14年度 政府見通し「1.4%」をはるかに下回る「▲0.9%」
・ 2021年 名目GDP600兆円には、2.7~3.9%の高い「名目成長率」が必要
→ 大企業の儲けが増えても、国内経済に還流されず、国民の暮らしが痛めつけていては、600兆円は不可能

■ 税収増加は実現できるか

・国・地方あわせた税収  対GDP比17.5%  / OECD平均24.7%。34カ国中、日本は32位(13年度)
~ 大企業、大富豪への減税が繰り返された結果。税収が空洞化
→ 財政健全化には、空洞化対策が必要

・安倍政権は、空洞化対策なく、「アベノミクスで景気がよくなれば税収も増える」との甘い見通し
~ 内閣府試算  2020年度までの5年間で、国の一般会計予算ベースの税収が15兆円増(うち4兆円は消費税10%)

○自然増収11兆円は可能か
・ 「骨太方針」 国の一般会計税収 12年度予算42.3兆円から15年度予算54.5兆円に増
~3年間で、12兆円増。5年間で15兆円(自然増収11兆円)は可能と言わんばかりの記述

○3年間 12.2兆円の中身
Data486

①消費税 6.7兆円  
②証券優遇税制の期限切れ(1兆6900億円)、相続税の増税(約3300億円)、石油石炭税(地球温暖化対策税)の増税(約820億円) 2兆円

③ 上記2つを除く「景気回復による自然増収」 3~4兆円
~うち「1.6兆円」は、2012年度のうちに発生した増収/予算と決算と差額
 ( 所得税5015億円、法人税9503億円 など)

→ 13-15年度の「景気改革?による自然増収」 2兆円程度

・3年間の法人税の当初予算ベース 2.2兆円増
「繰越欠損金を解消して法人税を納税する企業が増加」 も大きな要因
 例)トヨタ リーマン・ショックで赤字。その欠損金が繰越された影響で、08-12年度の5年間、法人税ゼロ
    12年度 法人住民税・事業税690億円、13年度 法人税ふくめ4921億円/1社で 4230億円増

→ 実際の「3年間の自然増収」   、1兆数千億円程度?

○安倍政権  法人税の引き下げ方針

・法人実効税率 34.62%   「骨太方針」(2014) 「数年で20%台まで引き下げ」
・2015年度「税制改正」 16年度までに、31.33%に。
→ 法人税減税の財源・・・外形標準課税の適用拡大

*外形標準課税は、赤字であっても増税。特に、人件費にかかる税であることから、人件費削減=個人消費減少を推進する税であり、景気後退をもたらすことになる。

■ 歳出の無駄をなくせるか

・政府「再生計画」 … 歳出について「聖域なき徹底した見直し」
が、実際は、社会保障分野の削減 /「再生計画」の歳出改革11ページ中、社会保障分野 5ページ
→その基本 「民間の力を最大限活用」して「社会保障関連分野の産業化に向けた取り組みを進める」
→ 公的責任の後退、社会保障の貧困化

○12年度予算と15年度予算の比較
Data485

・歳出全体6.7%増 ~ 会計処理変更などによる形式的増加分をのぞくと、2.7%程度の増
・マイナス  地方交付税交付金、文教・科学振興費
・社会保障費 実質(基礎年金財源の会計処理の変更など除く) 1.5兆円、5.4%の伸びにとどまっている。
→ 「再生計画」 3年間で1.5兆円増に抑制したことを踏まえ「その基調を2018年度まで継続」 /年間1兆円近い「自然増」を、0.5兆円まで削減
→ 小泉内閣「毎年2200億円の自然増削減」で「医療崩壊」「介護難民」など社会保障を悪化させた愚を繰り返すもの

・軍事費 5.7%  社会保障の「実質的な増加率」を上回る伸び
 「後年度負担」を含む契約ベースの物件費 2兆6690億円から3兆5541億円。33%もの増加

・公共事業  実質2.4%の増/ 国際コンテナ戦略港湾50%増

■出口なき金融緩和で財政丸抱え

・内閣府試算でも「公債費等残高」 毎年20兆円台のペースで増加
・1000兆円もの政府債務がありながら、財政破綻にならず、金利が低いままなのは、国債が国内で消費されているから(政府の借金であり、貸し手は国民。国民にとっては債権)

・日銀  長期国債 年間80兆円増加させるベースで、国債を購入
~ 政府の公債費等残高20~30兆円増。 日銀80兆円分購入 / 日銀の保有割合の増加
15年6月末 長期国債(財投債含む) 残高885兆円のうち、27.7%、245兆円/ 12年12月末 91兆円、11.6%
→ 2020年度末まで、現在のペースが続くと、約6割に達する

・日銀の国債購入  「金融政策」であり、「財政ファイナンスではない」と説明
 日銀の国債保有が急増する中で、「説明」は通用しなくなってきている。/ 「財政ファイナンス」=「日銀の国債引き受け」の認識が広がれば、国債の親友低下、国債価格下落、長期金利の上昇、となる懸念

・さらに重大な「出口政策」
 「異次元緩和策」をやめ、国債の買入れ停止、保有する国債の売却
→ 国際価格の暴落、金利の急騰 / 新規国債発行が困難になり、金利負担増で、財政がますます悪化

■さらなる消費税増税も

・「再生計画」 17年4月に消費税10%/が、経団連19%提案、財務省など10%超の主張
・要は、参院選対策 / 消費増税 1年半延期。/ それ以上の増税の意図を隠すため
~「経済成長で財政健全化をはかる」というアナウンスのために、無理な成長率目標を掲げたもの。

・行き詰まりは明らか・・・ 10%超への消費税の浮上する可能性 /同時に、「再生計画」「アベノミクス」の破綻の証明

○ 真の「経済・財政の再生」への道を
・「大企業の内部留保を、日本経済に還元し、国民の所得を増やす経済改革」、「大企業、富裕層への優遇税制をあらため、軍事費、大型開発などの歳出の浪費をやめる財政改革」を進めること。

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