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定着した原発ゼロの電力需給・四国編~冬季電力需給分析~ ISEP

  伊方原発の再稼働の「理由」として、14年12月17日に記録した最大電力とその3日後の老朽火力の故障を例に、「四国館内で供給に責任をもつ必要がある」との主張がなされている。
  この間、夏場の最大電力は大幅に削減され、ピーク時には太陽光発電が威力を発揮され大きく改善しているが、冬場の最大電力はそれほど削減されず、またピーク時には太陽光は使えない。
が、それでも揚水発電、地域間連携などで対応できる、という感触はあったのだが、電力供給の仕組みは複雑なので確証がほしいと思い、ISEP〔飯田氏は、以前、高知県の自然エネルギー推進のアドバイザーをつとめていた〕に、昨年11月に、直接メールを入れて相談した。その回答が、今回のレポートである。
さすが、専門的な分析であり、総合的で、対策の内容も明快。心から感謝。
【定着した原発ゼロの電力需給・四国編 ~四国電力の冬季電力需給分析~  ISEP12/28】

メモ者・・・ 供給予備力は、多くの電力会社では8-10%で設定している(中部電力の場合、100万kwの火力の停止で4%、あとは気温、日照の関係となっている)。よって分母が小さいと、予備力の絶対値は小さくなり、仮に四電で100万kwの火力が停止すると影響は中部電力の約4倍となる。それを四電だけで対応するのは合理的でない。地域間連係、他者受電などのネットワークで、スケールメリットを生かした対応が不可欠になる。「四国管内で・・・供給力確保」という土俵づくりの主張に、ごまかしがあると、感じていた。レポートはすっきりと解明している。 

【定着した原発ゼロの電力需給・四国編 ~四国電力の冬季電力需給分析~】

認定NPO 法人 環境エネルギー政策研究所(ISEP) 2015 年12 月28 日

〔全体は15ページに及ぶので「要旨と提言」、「火力停止の場合の対策」について紹介します〕

【要旨と提言】 ・ 福島第一原発事故後、5 年目の夏を迎えたが、原発ゼロを前提とする電力需給が定着しており、原発ゼロでも、関西・九州を含む全ての電力会社で2015 年夏のピーク需要時の電気は十分に足りた。その結果、政府による2015 年夏の電力需給検証でも、一基の原発も再稼動することなく、ピーク需要時の供給予備力は確保されることが示されていたが、現実的な対策を行うことにより余裕をもった電力需給を確保することができた。 ・ 四国電力の2015 年冬季の電力需給には最低確保すべきとされる予備率3%を超える余裕があり、需要削減、供給力拡大(強力な連系線による融通を含む)の双方に大きな可能性があるため、需給安定に原発は不要である。 ・ 原発に依存する電力会社の経営問題、行き場のない使用済み核燃料、現実的な廃炉プログラムを踏まえた上で、省エネルギーや自然エネルギーを中心とした中長期的なエネルギーミックスの見直し、COP21 での「パリ協定」の採択を踏まえて国際的な責務を果たし得る地球温暖化対策、待ったなしの根本的な電力システム改革を一体的に実現してゆく「統合エネルギー政策」が不可欠である。
2.3.2 四国電力の火力発電停止の場合

図8 のように、四国電力では古い火力発電が多い。このトラブル・停止による電力需給逼迫を心配する意見がある。そこで、原発が動かない前提で、火力停止に対応する方法を検討する。

(1) はじめに
まず、本検討に際し、以下のことを確認したい。

・2011 年冬季以降、四国電力は原発停止で予備率3%以上を確保してきた。これに随時調整契約や揚水利用率向上を追加、予備率は10%を超えていたと見られる。
・2015 年度冬季需給予測の政府審議会報告でも、原発再稼働なしに、予備力38 万kW、予備率7.5%を確保と想定した(2 月は予備率6.2%。火発停止を想定したため)。
・需要は制御不能ではなく、需給調整契約、デマンドレスポンスなどで一定程度抑えられる。
・供給増・融通増には他の多様な手段がある。

(2) 四国電力や他社の古い石炭火力に相当する15 万kW のトラブル発生時の対策手段
まず、四国電力や他社の古い石炭火力に相当する15 万kW が停止した場合を考える。
この場合は、停止があっても、最低限必要な予備率3%以上を確保できる。またさらに需給が逼迫するようなケースが生じれば随時調整契約15 万kW などの利用で回避できる。

(3) 四国電力の石油火力45 万kW などのトラブル発生時の対策手段
次に、四国電力の石油火力45 万kW などのトラブルを考える。この場合も、多様な選択肢がある。
まず、主要な要素を列記する。

(a)随時調整契約使用(15 万kW)
(b)デマンドレスポンス(例えば45 万kW)
(c)融通、中国電力から(最大120 万kW)
(d)融通、関西電力から(最大140 万kW)
(e)融通、四国電力管内立地火発から関電中電送電分の利用(最大180 万kW)
(f)自家発電の利用
(g)揚水発電の利用率向上(約30 万kW)
(h)自然エネルギー拡大

これらを図にまとめると以下のようになる(図10)。

(a)随時調整契約使用(15 万kW)
四国電力が、緊急時の対応を条件に安い電力価格で契約している分が冬季に15 万kW 分ある。トラブルがあり需給が逼迫した場合には利用できる。

(b)デマンドレスポンス(例えば45 万kW)
地域の会社などと協力し、需給逼迫が予想される場合に需要削減やシフトを契約し、ピーク需要を低下させることができる。図3 に示すように、2014 年度冬季のピーク需要は503 万kW であった。一方、これに近い需要を記録した時間数は12〜3月の4 ヶ月間約3000 時間を通じてそう多くなく、上位30 万kW つまり473 万kW 以上を記録したのは11 時間、上位45 万kW以上を記録したのは29 時間だった。この程度の時間、余裕をみてこの2〜3 倍程度の時間を念頭にデマンドレスポンスを実施して需要を下げれば、高いピーク需要に備えて過剰な供給力を確保せずにすむ。この様子を模式的に図11 に示す。

(c)融通、中国電力から(最大120 万kW)
電力システム改革により、送電網の広域運用を拡大することになっている。
西日本は図5 のように最大需要に比較して強力な地域間連系線に恵まれ、広域運用・融通をやりやすいインフラがある。
  中国電力と四国電力の間には運用容量で120 万kW の地域間連系線があり、利用率も低い。四国電力で需給が逼迫した場合の対策手段のひとつとして、中国電力からの融通を得ることもできる(図12)。中国電力は審議会報告でも今冬1 月に4.8%、2月に6.6%の供給予備率があり、これに揚水追加などの手段もあり、さらに中国電力は関西電力、九州電力と、最大需要の半分に匹敵する強力な地域間連系線で結ばれており、需給に比較的余裕がある。

(d)融通、関西電力から(最大140 万kW)
四国電力で需給が逼迫した場合の対策手段のひとつとして、中国電力からだけでなく、関西電力からも融通を受けることができる(図12)。関西電力と四国電力の間には運用容量で140 万kW の地域間連系線がある。関西電力は審議会報告でも今冬に3.3〜4.3%の供給予備率があり、これに揚水追加などの手段もあり、さらに関西電力は中部電力、北陸電力、中国電力と、最大需要の約3分の1に匹敵する強力な地域間連系線で結ばれている。
なお、この区間は四国→関西の方向で一定の利用率があり、これも融通に使える可能性があるのでこの事情を次で説明する。

(e)融通、四国電力管内立地火発から関電中電送電分の利用(最大180 万kW)
徳島県には四国電力の橘湾石炭火力発電所(70 万kW)の他、電源開発橘湾石炭火力発電所210 万kW がある。電源開発の石炭火力は、210 万kW のうち、四国電力の受電は30 万kW で、関西電力に140 万kW、中国電力に40 万kW 送られることになっている。
四国電力で需給が逼迫した場合の対策のひとつとして、この関西電力および中国電力への送電を一時的に四国電力に回すことも考えられる(図12)。

(f)自家発電の利用
四国電力管内の自家発電の利用も考えられる。
四国電力管内には約230 万kW の自家発電があり、火力だけでも約175kW の設備がある。このうち四国電力は2015 年度冬季に15 万kW を受電予定である。2014 年度冬季の2015 年1 月の自家発電設備利用率は汽力が75%だが、ガスタービンは62%、内燃力は4%で余裕のある電源もあることが予想される。また、隣接する関西電力、中国電力管内の自家発も利用できる。関西電力管内には657 万kW、中国電力管内には679 万kW の自家発火力がある。汽力発電は2014 年度冬季の2015 年1 月の設備利用率が60-70%だが、ガスタービンは57-59%とやや余裕、内燃力は17〜23%と稼働増の余地があることが予想される(図13)。

(g)揚水発電の利用率向上(約30 万kW)
四国電力には69 万kW の揚水発電がある。このうち四国電力が冬季ピーク時に見込んでいるのは38 万kW である。このため、利用率向上で最大需要時の供給力追加を見込むことができる。
揚水発電のもとの電源として火力を使う場合はコストがかかる。一方、太陽光発電や風力発電の出力調整兼ピーク対応として揚水を活用し、安定供給とコスト減の両立を図ることが期待される。これには、太陽光・風力の出力抑制を前提にした今の運用を変えることが望ましい。これについては次項で説明する。

(h)自然エネルギー拡大
2015 年6 月末までに太陽光発電で約130 万kW、風力発電で約14 万kW の設備が四国4県で設置され(FIT 制度への移行分を含む)、設備認定分が全て設置されると太陽光は数年のうちに最大170 万kW、風力は建設に少し時間がかかるが9 万kW、それぞれさらに増加する。
2012〜14 年度の冬季最大需要時に四国電力では風力発電により4〜5.8kW の供給実績があり、2014 年度には14.5 万kW の設備に対し4.6 万kW の供給実績があった。太陽光発電は2014 年度冬季最大需要時刻が17〜18 時で当該時刻には供給実績がなかったが(2012 年度は最大需要時刻の関係で3.9kW の供給があった)。
太陽光発電で昼間に得られた電力は、通常は石油火力(および可能なら石炭火力)の発電量削減に使うのがよいが、夕刻の需給逼迫が見込まれる日には、昼間の太陽光を揚水発電に送り、夕刻の最大需要時に揚水で供給を増加させることが考えられる。太陽光発電の設備容量は2015 年夏で約130 万kW あるので、冬季の昼間に3割程度の出力を見込むと40 万kW×数時間の揚水用電源を見込むことができる。
再生可能電力活用には、今後の拡大をスムーズに行うため、優先接続と優先給電を行う必要がある。優先給電では自然エネルギー電源を優先するメリットオーダーを採用し、原発の「枠」でその制限をすることがないよう運用ルールを変える必要がある。

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