高浜原発仮処分取り消し 論理矛盾、事故容認の不当判決 弁護団声明
脱原発弁護団全国連絡会の声明。
判決は、「マグニチュード7を超えるものが起こる可能性を完全に否定することはできない」「燃料体等の損傷ないし溶融に至るような過酷事故が起こる可能性を全く否定するものではない」としながら、新基準を合理的としたことは、「原発周辺住民が事故によって被害を受けることを容認している」・・・不当判決である。
なお、規制基準の問題点について、元ゼネラル・エレクトリック社技術者の佐藤暁さんの意見書〔伊方原発訴訟〕が、アメリカ等との規制に比べて如何に貧弱か、説明している。
こうした事実にも、目を背ける司法。「基準が守られているから安全」という、福島原発事故前の論理とまったく同じ、にらも学んでいない。
【福井地裁高浜原発異議決定を受けての弁護団声明 12/24】
【意見書 佐藤暁 2014年6月20日】
【福井地裁高浜原発異議決定を受けての弁護団声明 12/24】高浜原発3・4号機については、本年4月14日、福井地方裁判所の樋口英明裁判長、原島麻由裁判官、三宅由子裁判官による運転差止仮処分命令が発令されていましたが、本日、同裁判所の林潤裁判長、山口敦士裁判官、中村修輔裁判官により仮処分命令は取り消されました。
私たちは、福島原発事故のような事故を二度と招いてはならないという観点から新規制基準の不合理性、基準地震動の策定手法の不合理性、津波の危険性、工学的安全性の欠如、シビアアクシデント対策・防災対策・テロ対策の不備といった様々な危険性を指摘しました。
これに対して、本決定は、原子力規制委員会の判断に追随するだけの形で私たちの主張立証を排斥しました。とりわけ、基準地震動に関しては、「最新の知見に従って定めてきたとされる基準地震動を超える地震動が到来しているという事実」は、「当時の基準地震動の想定が十分でなかったことを示すものである」と認めながら、「いずれも福島原発事故を踏まえて策定された新規制基準下での基準地震動を超過したものではない」とし(113頁)、新規制基準下ではこのようなことは起こらないとされています。
しかしながら、一方で、本決定は、「新規制基準の策定に関与した専門家により『基準地震動の具体的な算出ルールは時間切れで作れず,どこまで厳しく規制するかは裁量次第になった』との指摘がされていること」も認めており(105頁)、この認定からすれば、新規制基準における基準地震動の策定手法は見直されていないのですから、上記決定は、論理矛盾を来しているといわざるを得ません。
さらに、本決定は、「あらかじめ判明している活断層と関連付けることが困難な地震でマグニチュード7を超えるものが起こる可能性を完全に否定することはできない」とし(122頁)、「本件原発において燃料体等の損傷ないし溶融に至るような過酷事故が起こる可能性を全く否定するものではないのであり,万が一炉心溶融に至るような過酷事故が生じた場合に備え」なければならないとしています(223頁)。本決定は、福島原発事故の深刻な被害から何も学ぼうとしない、極めて不当な決定であり、原発周辺住民が事故によって被害を受けることを容認していると言わざるを得ません。
林潤裁判長は、11月13日の審尋期日の際に「常識的な時期」に決定を出すと発言しましたが、私たちが指摘したすべての問題点について正面から検討した上で本日12月24日に決定を出すというのは「常識的な時期」とは到底いえず、年末も押し迫った常識外れなこの時期に出した本決定は、高浜原発3・4号機の再稼働スケジュールに配慮した、結論ありきの決定であると言わざるを得ません。高浜原発3,4号機が再稼働して重大事故を起こした場合、その責任の重要部分は再稼働を許した3人の裁判官にあるということになります。
しかし、私たちは、このような不当決定に負けることはありません。なぜなら、理論的正当性も世論も私たちの側にあるからです。福島原発事故のような事故を二度と招いてはならない、豊かな国土とそこに根を下ろした生活を奪われたくない、子ども達の未来を守りたいという国民・市民の思いを遂げ、ひいては失われた司法に対する信頼を再び取り戻すため、最後まで闘い抜くことをお約束します。
2015年(平成27年)12月24日
脱原発弁護団全国連絡会、大飯・高浜原発差止仮処分弁護団
共同代表 河合弘之・海渡雄一
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