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もんじゅ失格~原発政策 総崩れの発端

  核兵器製造の副産物としてはじまった原発(プルトニウムを取り出す作業で出る高熱を利用)。
それゆえ、原発を動かしたさいにできるプルトニウムの処理はね国際的な監視下におかれる。
日本は、大量のプルトニウムをもつが、核燃サイクルで燃料として活用するとの言い訳をしてきた。しかも、使用済み核燃料の最終処分場がなく、六ヶ所村に「資源」として中間貯蔵している。
もんじゅ失格は、原発政策総崩れの発端と言える。
・核燃サイクルが破綻①→ 使用済み燃料は「資源」から「ごみ」に → 最終処分場にしないという約束により、六ヶ所村から、ゴミが各原発にもどってくる。 → すでに各原発の貯蔵プールが余裕がなくなっている → あらたなゴミは出さなくなる。
・核燃サイクルが破綻②→ プルトニウム保有の「説明」がつかない → MOX燃料で使用 → 割高、危険性大、しかも使用済み燃料の発熱量が拡大に大きく、処理により困難がともなう。そもそも貯蔵プールが足りない
 いつくかの記事から・・・
【「もんじゅ」失格で原子力政策の総崩れが始まった 山田厚史・ダイヤモンド11/26】
【特集ワイド:「忘災」の原発列島 組織いじりでまた延命? 国はなぜ「もんじゅ」にこだわるのか 毎日12/4】
【“夢の原子炉”はどこへ ~もんじゅ“失格”勧告の波紋~  クローズアップ現代 12/8】

【「もんじゅ」失格で原子力政策の総崩れが始まった ダイヤモンド11/26】

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

原子力の平和利用が輝いて見えた20世紀後半、高速増殖原型炉「もんじゅ」はナイーブな原子物理学徒の夢を形にした、未来そのものだった。それが今や「あだ花」に終わろうとしている。 

原子力規制委員会は、もんじゅの事業主体である日本原子力開発研究機構を失格と判定し、運営主体を替えるよう文科大臣に勧告した。だが新たな引き受け手があるはずはない。20年間ほぼ止まったまま、という現実に「開発に見切りをつけろ」と言ったに等しい。 

誰かが言わなければならないことを規制委が言ったに過ぎないが、ことは「もんじゅ」だけの問題にとどまらない。青森県六ケ所村の核燃料サイクルも事業化のめどが立たず、22回目の計画延期となった。核燃料廃棄物の中間処理場の目途も立っていない。最終処分場など夢のまた夢。原発の再稼働だけは進めるらしい。 

■ 20年もの足踏みを経て 今や人材と技術の墓場

トイレのないマンションと揶揄された原発の弱点を、克服する切り札が高速増殖炉だった。原発で燃え残ったウランやプルトニウムを燃料に炉を炊き、消費した以上のプルトニウムを生み出す高速増殖炉。魔法のような技術が実用化されれば「核のゴミ問題」は乗り越えられる、とされてきた。 

兆円単位の税金を惜しみなく投じて完成したものの、試運転中にナトリウム漏れの事故が起きた。それが1995年、以来20年間ほぼ止まったまま。2006年に運転再開したものの炉の重要部にクレーンが落ち、取り出すこともままならない醜態を演じた。 

日本原研が信用を失ったのはナトリウム漏れの火災を起こした時、事実を隠し、嘘の報告をしたためことだった。クレーンの落下事故のあとも、検査・補修体制の不備がたびたび指摘された。それでも改まらない運営体制に規制委員会もさじを投げた。 

今や「もんじゅ」は人材と技術の墓場になっている。計画に着手したころ「もんじゅ」は最新技術だったに違いない。しかし20年も足踏みしていたら技術は陳腐化する。そこにあるのはすでに出来上がった装置だ。いまさら最新の技術を投入する余地はほとんどない。時代遅れのシステムをひたすらお守りすることに、研究者はときめくだろうか。 
装置も劣化する。原子炉は配管のお化けのようにうねうねとパイプが走っている。高温の金属ナトリウムが流れる配管は劣化する。継ぎ目にちょっとした不具合が起これば大事故につながりかねない。20年止まったままの機械や組織がどんなものか。リスクは日々増大し、人材が集まるはずもない。蘇ることはまずないだろう。 

「もんじゅはすでに終わっていた。だが、止められなかった」。事情を知る人はそう指摘する。抱える研究者をどうするか、という原子力ムラの都合もさることながら、「もんじゅ」を諦めると、原子力政策のつじつまが合わなくなる。最大の問題は「プルトニウム」の処理だ。

■ アメリカの庇護下での「潜在的核保有国」の幻想

地獄の神であるプルートーの名を冠したこの元素は、核兵器に欠かせない原料だ。原子炉でウランを燃やすことでできる。すでに日本には45トンのプルトニウムがある。これは核兵器5000発分の原料に相当するといわれる。 
核兵器不拡散を原則とする世界で、核兵器を持たない国がプルトニウムを保有することは制限され、国際原子力機関(IAEA)の厳しい査察を受ける。日本は非保有国の中で最大のプルトニウム保有国だ。本来なら持ってはいけないプルトニウムを大量に抱えることが許されているのは、アメリカの庇護があるからだ。 

日本の原子力開発は冷戦を背景にアメリカの許諾のもとに始まった。湯川秀樹、朝長振一郎などノーベル賞学者を輩出した理論物理学の実績の上で、「アメリカの子分」として研究開発が許された。それが日米原子力協定である。手の内はすべて米国に晒す、核保有国にはならない、という大原則に基づき日米協力が謳われた。 

平たく言えば、日本の原子力開発は「アメリカの下請け」である。その一方で、隷属的な関係に面従腹背しながら「潜在的核保有国」として国際社会でしかるべき地位得たいと考える人たちがいる。 
外務省や経産省の高級官僚にその傾向がある。この手の人たちは「国際社会は核保有国が優越的地位に立っている」と考える。IAEAはアメリカを筆頭とする核保有国の権益を守る機関で、「世界平和のため核不拡散を」というお題目も裏を返せば、核保有国の既得権を守る参入障壁なのだ。 
日本は戦争に負け、核の保有は許されない。しかし高い技術力と十分なプルトニウムを持つことで、その気になったらいつでも核保有国になれる、という地位を築くことが日本の国益だ、という論理である。 
イスラエルは核を持っているらしいが、国際的な非難を受けない。核不拡散条約に加盟していないからIAEAの査察は受けない。アメリカといい関係だから特権的地位を与えられている。日本も同じだ。非核保有国でありながら大量のプルトニウムの保有が許されている。アメリカのお許しがあるからだが、その根拠になっているのが「もんじゅ」の存在だ。プルトニウムは高速増殖炉に使います。核兵器の原料ではありません、という理屈だ。 

高速増殖炉は20世紀後半、先進各国が競い合って開発した。ウランを輸入に頼る日本はエネルギー安全保障の観点からも、使用済み燃料からプルトニウムを取り出し、繰り返し使える高速増殖炉に取り組んだ。科学者の胸を揺さぶる「夢の技術」への挑戦でもあった。米・英・仏・露などが挑戦したが、空気に触れただけで発火する高温の金属ナトリウムを配管の中で循環させるなどの製造技術と、高いコストが壁になって、ほとんどの国が成果を出せず開発に見切りをつけた。 

■ 止められなかったプルトニウム保有の「言い訳」

日本でも「もんじゅ」は金喰い虫になっていたが、止められなかっただけだ。 

「プルトニウムをどうするか」が原子力行政の課題になった。ウランと混ぜ「MOX燃料」として原発で炊く、という方法もある。だが日本はMOXの製造をフランスに頼んでいる。輸送態勢も特別でコストが高い。割高な原発電気のコストを跳ね上げる。日本でMOXを製造する工場を六ケ所村に建設中だが、うまくいかず操業の延長が続いている。

一方で原発を再稼働させたい。いつまでも止めておくともんじゅ同様、組織の陳腐化が始まる。機器の劣化を防ぐためには停止中の原発でも稼働中と同様のケアが必要だ。 

電力業界の立場に立つ経産省は何としても再稼働を進めたいが、動き出すとプルトニウムが溜まる。 

「もんじゅ」は原子力行政を回すのに必要な“部品”だった。とっくの昔に無用の長物になっていたのに放置されたのは、行政につじつま合わせが必要だったから。行政の不在に国民はウン兆円を遣わせられたのである。

早い話、原発をやめればいいのだ。そうすればプルトニウムは出ない。そんなものをため込んで「潜在的核保有国」になどならなくていい。なまじプルトニウムなど持っていると「核の自主開発」などと言う勢力が出てくる。 

アメリカもそれを警戒する。日本がおとなしく子分でいるなら特権を与えるが、戦後レジームからの脱却などと言って、対米独立=自主防衛=核保有、ということを考えるなら、日本に特権は与えられない。そんな風に考えているようだ。 
戦後の世界秩序はアメリカ主導だった。核を握ったことでその力は一段と増した。二つの核大国、米ソのにらみ合いが冷戦時代の秩序だったが、ソ連が自滅しアメリカ一極支配となった。20世紀末からの十数年間は、市場経済が世界を席巻し、米国の繁栄は永遠に続くかに見えたが、それもつかの間かもしれない。 

核技術も特別なハイテクではなくなり、途上国でもこなせるようになった。特権を維持したい保有国の秩序に逆らい、新規参入が後を絶たない。平和利用と言いながらも、原発はプルトニウムを通じて兵器と連動する。 
原子力発電といっても、基本原理は産業革命でスチーブンソンが発明した蒸気機関が原型である。お湯を沸かしてタービンを回す。そのお湯をわかすために兵器として開発された原子力を使う。しかも発電に使われるのはその3割で、その他のエネルギーは海や空中に吐き出される。 

福島の事故から何を学んだのか。引導を渡された「もんじゅ」は、日本の原子力行政の総崩れの発端になるかもしれない。折しも日米原子力協定が2018年に30年間の有効期限を終える。延長するか、新たな協定を結ぶか、ナシにするか。そろそろ考える時期が来た。 
戦後の日米関係を考え直すきっかけでもある。核と原子力は戦後の日本を考えるキーワードだ。「もんじゅ」をどうするか。原子力と私たちの付き合い方を考える糸口はここにもある。 


【特集ワイド:「忘災」の原発列島 組織いじりでまた延命? 国はなぜ「もんじゅ」にこだわるのか 毎日12/4】

原子力規制委員会が、高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)を運営する日本原子力研究開発機構に「レッドカード」を突き付けている。半年後をめどに代わる運営主体を見つけるよう、機構を所管する文部科学省に迫っているのだ。打開策はなさそうに見えるのだが、国はなぜ「夢の原子炉」にこだわるのか。【葛西大博】

■「電力会社が(運営を)引き受けるのは大変難しい」

 電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)は11月20日の記者会見で、もんじゅの引き取りを拒む意向を示した。もんじゅが研究開発段階であることや、電力会社は通常の原発とは違う高速増殖炉の技術的知見を持っていないことが主な理由。会長の発言はいわば大手電力会社の「総意」なので、原発を持つ9電力がもんじゅの担い手になる可能性はほぼ消えたといえる。では、八木氏は誰が運営を担うべきだと考えているのか。答えは「国の領域」だった。

 もんじゅを中核施設とする核燃料サイクルを推進してきた政府にとって厳しい勧告になったのは間違いない。それでも、菅義偉官房長官は勧告が出された11月13日の記者会見で核燃料サイクル政策を推進する方針を強調した。「国民の信頼を得る最後の機会と思うので、勧告を重く受け止めて文科省をはじめとして関係機関で真摯(しんし)に対応を検討する」

 当事者の文科省は、有識者会合を今月中旬にも設置し、新しい運営主体を検討する。今月2日には、馳浩文科相がもんじゅを視察、福井県の西川一誠知事らと面会した。馳文科相は「専門家の意見や立地自治体の率直な声も聞きながら、検討を進めていく」などと述べた。政府は精力的に動いているようだが、新しい運営主体を示す期限は来年夏ごろで、あまり時間はない。示せない場合は廃炉を含めた抜本的見直しが迫られ、核燃料サイクル政策が頓挫することになりかねない。

 ここで核燃料サイクルの図を見てほしい。再処理工場で原発の使用済み核燃料からウランやプルトニウムを取り出し、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料に加工して、高速増殖炉で使う。そうすれば、消費した以上の核燃料を生み出せる−−。もんじゅは「夢の原子炉」との期待を背負い1994年に運転を始めたが、95年12月に冷却材の液体ナトリウム漏れによる火災事故を起こした。2010年に運転を再開するも、3カ月後に燃料を交換する機器が炉内に落下する事故を起こし、再び運転を停止。稼働したのはわずか250日間なのに、これまでの事業費は約1兆円に膨らんだ。それでも政府は延命を諦めない。

 そうであれば、政府は新たな運営主体をどのように設立しようと考えているのか。

 民主党の平野博文衆院議員は、民主党政権時代に文科相を務めた経験を踏まえてこう語る。「もんじゅの運営を海外に売り飛ばすわけにはいかない。原子力機構は20年近くもんじゅを扱ってきて成果を上げられなかったが、スペシャリストで構成された組織でなければ運営できない以上、機構からもんじゅに特化させた組織を分離させ、受け皿を作るしかないでしょう」

 この見方に「ちょっと待ってほしい。組織の分離は、動燃に逆戻りするのと同じ」と批判するのが、脱原発を訴えているNPO法人原子力資料情報室の伴英幸共同代表だ。

 動燃とは「動力炉・核燃料開発事業団」の略称で、原子力機構の前身になる。事故の隠蔽(いんぺい)工作や虚偽報告が発覚し、批判を浴びたのだが、名称変更や他の組織との統合を経て事実上、旧動燃の組織は生き残った。それが再び、今回の勧告を契機に動燃復活につながる見方が出ているのだ。

 原発の維持を目的に電力会社や中央官庁などが築いた「原子力ムラ」のやり方を熟知する伴さんは、もんじゅ存続策をこう推測する。「原子力機構の上に別法人を作り、その法人がもんじゅの運営を担うことにすれば勧告はクリアする可能性はあります。ただ、実態は機構の人間に任せるはず」

 この別法人化案とも呼べる案は、青森県六ケ所村に建設されている使用済み核燃料の再処理工場の運営見直し案として議論されている。この工場も核燃料サイクルの中核だが、もんじゅ同様に「劣等生」。トラブル続きで完成時期は23回も延期され、18年度上期の稼働を目指す。建設費は既に当初の3倍の2・2兆円までに拡大している。
 これでは当然、この工場の事業主体となる、電力会社が共同出資した日本原燃の負担は重くなる。そこで、日本原燃を所管する経済産業省は、国が監督する認可法人を新たに設立し、新法人が日本原燃に再処理事業を委託する−−という案を検討している。国が関与を強めれば、電力会社の撤退を防ぎ、核燃料サイクル政策を継続させることができると考えているのだ。

 同様の枠組みをもんじゅに当てはめれば、もんじゅ存続は可能と政府は考えているというのが、伴さんの見立てだ。その上で「機構の上にもんじゅを運営する組織を作っても、結局は屋上屋を架すようなことでうまくいくとは思えない」と批判する。

 ◇核燃料サイクルという「錦の御旗」

 もんじゅを廃炉にする−−という思い切った決断はあり得ないのだろうか。

 平野氏は「六ケ所村の再処理工場をどうするかをはじめ、核燃料サイクルを含めた日本の原子力政策全体を見直さない限り、もんじゅだけの廃炉という選択肢はあり得ないだろう。ただ、日本のエネルギー政策は今、大きな岐路に立っていることは間違いない」と見ている。

 そもそも民主党政権では、12年9月にエネルギー政策のかじを切り、「30年代の原発稼働ゼロ」を打ち出した。その一方で「核燃サイクル政策の維持」という政策は続けた。この狙いについて平野氏は「もんじゅは増殖炉という概念を捨て、原発から出るプルトニウムを燃やして廃棄物処理を加速させる研究機関に切り替えようとした」と打ち明ける。

 もんじゅに新たな道を歩ませようと模索したのだが、民主党政権は崩壊。再び政権を奪った自民党の安倍晋三政権は「原発ゼロ」を撤回し、核燃料サイクル政策を手放そうとはしない。

 核燃料サイクル政策を検証していくと既に破綻しているように思えるのだが、それでも政府が維持したいと考える動機を知りたくなった。

 米原発会社「ゼネラル・エレクトリック」で18年間、原発技術者として働いていた原子力コンサルタントの佐藤暁さんが解説する。
 「原発の運転が可能なのは、将来、使用済み核燃料を再処理して高速増殖炉で使い、核燃料サイクルを回していくという前提があるからです。核のゴミの最終処分場のめどが立たない中、もんじゅが駄目になってサイクルが破綻すると、原発の稼働も危ぶまれる。だから政府は何とかして、もんじゅが続いている状態にすることが必要なのです」

 佐藤さんは「当事者は、事故が相次いだもんじゅを動かしたくないのが本音でしょうね」とも口にした。それなのに20年の年月を重ねてもストップできないのはなぜか。

 その要因については、師弟制度や先輩、後輩の関係があると語る。「日本では企業や学問の分野でも、先輩の言うことはつべこべ言わずに従えという雰囲気があり、議論することさえ嫌がる風潮がある。それが結局、安全文化の未熟さにつながってしまうわけです」。日本人の気質が、核燃料サイクル政策の推進に「ノー」と言えない土壌を作っているというのだ。

 伴さんは日本の官僚機構に焦点を当てる。「一度方向が決まると、止めるという判断を下すことが難しくなる政策構造です。もんじゅ担当の役人はせいぜい2、3年で交代するので、自分の担当時に『見直す』という逆向きの政策判断はしたくない。それがズルズルと続けてきた原因なのです」

 原発のコスト計算を専門とする立命館大教授の大島堅一さん(環境経済学)は「もんじゅは運転停止しているのに維持費だけで年間200億円かかっています。またもんじゅを動かせば何らかの事故は起きると予想されるので、誰も動かしたくないはず。でも『核燃料サイクル』という錦の御旗(みはた)は下ろせないのです」と語る。

 核燃料サイクル政策は成功しないと分かっていても、この国は巨額を投じて、破れた夢を追い続けている。

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 ◇核燃料サイクル政策をめぐる主な動き
1955年 原子力基本法が成立
  56年 原子力委員会が発足。原子力開発利用長期計画に核燃料サイクル確立を明記
  67年 動力炉・核燃料開発事業団(動燃)が発足
  85年 高速増殖原型炉「もんじゅ」の本体工事着手
  94年 もんじゅの運転開始
  95年 もんじゅナトリウム漏れ火災事故
  98年 動燃が核燃料サイクル開発機構へ改組
2005年 核燃料サイクル開発機構と日本原子力研究所が統合し、日本原子力研究開発機構誕生
  10年 もんじゅ運転再開、核燃料交換装置が炉内に落下する事故
  11年 東京電力福島第1原発事故
  12年 民主党政権が「30年代原発ゼロ」と「核燃料サイクル推進」を打ち出す
  14年 安倍政権が原発再稼働と核燃料サイクル推進のエネルギー基本計画決定
  15年 原子力規制委員会が文部科学相に原子力機構の変更を勧告


【“夢の原子炉”はどこへ ~もんじゅ“失格”勧告の波紋~  クローズアップ現代 12/8】

「“忘れまい、この反省と再起の決意。『もんじゅ』の改善、我らの誓い”。よし!」

1兆円以上が投じられた巨大国家プロジェクトが、大きな岐路に立たされています。

「臨界を達成いたしました。」

エネルギー資源の少ない日本で、“夢の原子炉”とされてきた高速増殖炉・もんじゅ。
先月(11月)、原子力規制委員会は、「今の組織は、もんじゅを安全に運転する資質を有していない」として、運営主体を変えるよう勧告に踏み切りました。

★原子力規制委員会 委員長 「具体的な問題が起きてきている。もんじゅを安心してまかせることはできない。」

ちょうど20年前、ナトリウム漏れ事故を起こしたもんじゅ。
その後もトラブルや保安規定違反などを繰り返し、ほとんど運転できていません。
なぜ、重大な違反が相次いだのか。
取材から見えてきたのは、運転再開を急ぐあまり安全を最優先にできなかった組織の体質でした。

★もんじゅ所長 「(自分たちは)甘いんです。問題の掘り下げ方が届かない。」
もんじゅへの異例の勧告は、日本の原子力政策に何を突きつけているのか考えます。

■もんじゅ“失格”勧告 何が問われたのか

現在、もんじゅは運転を停止していますが、原子炉を冷却するためのナトリウムが配管に流れています。
ナトリウムは水や空気に触れると激しく燃えるため、取り扱いの難しい物質です。

そのため、もんじゅには、より厳格な安全管理が必要とされています。
もんじゅで、なぜ重大な違反が繰り返されてきたのか。

背景には、新たに作った点検計画の不備がありました。
平成21年、もんじゅではおよそ5万件の機器の点検方法や頻度を定めました。
しかし3年後、1万件近くの機器で点検漏れが発覚します。

原因は、トラブルが起きたときの対処法を決めていなかったことでした。

非常用発電機は3つあり、16か月に1度点検しなくてはなりません。
その1つの発電機でトラブルが発生。
計画どおり点検ができなくなる事態が起きました。
そのとき現場は、安全性の根拠がないまま「後で点検すればよい」と自分たちで判断。
重要な機器の点検が8か月も先送りされたのです。

さらにそれをチェックするはずの部署も機能不全。
点検漏れの検証を行った担当者は、長期の運転停止で知識も経験も不足していたことが原因だったとしています。

★もんじゅ運営計画・研究開発センター 荒井眞伸部長 「保全プログラム(計画)を実施していくとはどういうことか。保全部の人間にチェックというところが十分にできない、そういうところが不足していた。」

大量の点検漏れの解消に追われていた機構。

専門のチームを作って点検計画の抜本的な改善に乗り出したのは、去年(2014年)6月。
問題発覚からおよそ1年半がたっていました。

「いま実際、点検しようとしているのは腐食を対象としたものばっかり。」

しかしその後も、「点検方法の不備」「点検記録の紛失」「設備の重要度分類の大量の誤り」など、安全に関わる新たな問題が相次ぎました。

先月、機構は自分たちで改善策を進めたいと説明しました。

しかし、規制委員会は…。「要するに『手詰まりです』としか聞こえない。」

★原子力規制委員会 田中俊一委員長 「本当に我々は、安全を確認できるかという点で非常に不安をもっている。」

結局、規制委員会はこれ以上、機構にもんじゅの運転を任せられないとして、“退場”ともいえる勧告を突きつけたのです。

もんじゅのトップ、青砥紀身所長です。
なぜ組織の体質を変えることができなかったのか、問いました。

★もんじゅ 青砥紀身所長 「国家プロジェクトをやっていて、こんなに長い間、ひとつの問題で拘泥していていいのか。さっさと解決して、次のステップを踏まないといけない。強迫観念、切迫感というのはどうしてもある。表面的にとらえて、そこを直せば何とかなるだろうと思ったのが問題。」

■もんじゅ“失格”勧告 形骸化した“国策”

関係者への取材を進めていくと、国家プロジェクトとして始まったもんじゅを支える体制のほころびも見えてきました。

5年前まで所長を務めていた向和夫さんです。
もんじゅの管理をするうえで欠かせない、電力会社からの協力が得られにくくなっているといいます。

★もんじゅ 元所長 向和夫さん 「電力会社が軽水炉(原発)で培ってきた技術、経験、知見というのも十分いかせる。『出来るだけ(人を)出してください』という交渉は、我々も電力会社とずっとやってきた。」

さらに、ほかの機構関係者への取材からも、人材を巡る問題が浮き彫りになりました。

“新人が送り込まれてきた。数合わせだ。”
“出向者の間で引継ぎが徹底されず、技術が継承されない。”

背景には高速増殖炉の計画の実用化が見通せなくなったことがあると、向さんは言います。

当初の実用化の目標は1980年代。その後2050年代にまで延期。今では、その時期すら示されなくなりました。

規制委員会の勧告にも、外部支援を受けるなどの対策も功を奏していないと、官民一体のほころびが指摘されています。

★もんじゅ 元所長 向和夫さん 「“オールジャパン体制”というのは実質的に崩れていった。『新たなステージに入るから電力・メーカーも全力でサポートしてください』と。いま電力・メーカーも自分のところがそういう状態になれない。厳しい状況だ。」

■ “夢の原子炉”はどこへ もんじゅ“失格”勧告の波紋

ゲスト田坂広志さん(多摩大学大学院教授)
ゲスト内山太介(福井局デスク)

---原子力規制委員会が機構に事実上の退場勧告 この意味をどう受け止める?

田坂さん: そうですね、これは事業者としては非常に厳しい勧告を受けた形になってますね。
それはまあ、本当に大変な機構は立場に立たれているわけですけれども、ただ、原子力規制委員会のやっていることというのは、世界の原子力規制の、ある意味では原則にのっとっているわけですね。
つまりどういうことかというと、原子力規制委員会は「国民の命」と「安全」、「健康」の観点からのみ判断をする、事業者の都合とか事情を考えることはない、経済性についても考えることはない。
この厳しい立場を貫くのが規制委員会なんですね。
その意味では、この規制委員会、今回、筋を通されたと思うんです。
また、あえて申し上げれば、福島原発事故から5年近くなりますけれども、原発事故で失われた国民からの信頼、原子力行政と原子力規制に対する信頼を回復する、それが今の規制委員会の1つの重要なミッションですので、その意味では、ここは筋を通された判断かなと思いますが。

---安心して運営を任されないと“失格”のらく印が押されたが、原子力工学の専門家として、何が一番問題だったと見ている?

田坂さん: そうですね、例えば1万点の点検漏れというのがよく言われます。
ある意味では現場の感覚としては、その点検するべき対象もそれほど重要な機器だけではないわけですから、これぐらいはまあいいだろうと思われた部分はあったと思うんです。
ただですね、高速増殖炉というのはナトリウムを使ってますから、ある意味では非常に危険度の高い施設ですね。
こういう現場で、これぐらいは大丈夫だろうという文化があると、必ず重要な機器についても見落としをやってしまうんですね。
これは工場に勤めてらっしゃるような方から見れば常識なんですけども、そのあたりは、やっぱり1万件という数字の問題よりも、見落としがあるという体制が、規制委員会から見れば、安全管理の文化、体制ができていないという判断になったんだろうと思うんですね。

---- 機構は自分自身で、何が一番問題だったと見ている?

内山デスク: もんじゅの青砥所長が甘かったと述べましたけれども、取材をしてみて、もんじゅは研究用の原子炉なのだから、手続きのミスなど少々のことはしかたがないじゃないかと、そういう空気があったのは事実です。
点検漏れの発端となりました点検計画を、実際に運転して実績を積み重ねながら作っていけばいいと考えていましたが、規制委員会はそれを許しませんでした。福島第一原発の事故のあと、原発の安全への考え方は大きく変わりました。うした安全規制の変化に、組織がついていけなかったということだと思います。

--- オールジャパンで挑んでいたはずが、いつのまにか人材面がぜい弱になっていた 話が違うという思いは機構にある?

内山デスク: 機構側は、できれば組織をマネジメントできるような優秀な人材がほしいと電力会社に求めていました。
しかし電力会社は、足元の再稼働に向けた安全対策で精いっぱいです。先行きの見えないもんじゅに人材を出す余裕がないのは事実だと思います。
今回の勧告は、もんじゅの現場だけでなく、もんじゅをオールジャパンで支えるという体制がないのに、このまま続けてよいのかということを問うたのだと思います。

田坂さん: 今ね、「オールジャパン」ということばが出たので、あえて申し上げますが、このことばの危うさもあるんですね。
つまり「みんなの責任」だという組織でよく起こるのが、「みんなの無責任」ですね。
つまり誰かがやってくれるだろう、誰に最後の責任があるのかは分からない。

■もんじゅ“失格”勧告 核燃料サイクルの行方

法政大学客員教授の宮野廣さん。文部科学省の委員としてもんじゅの内部改革にも助言を行ってきました。
宮野さんは、高速増殖炉による核燃料サイクルは今後も追求していくべきだと考えています。
資源の少ない日本にとって核燃料となるプルトニウムを消費した以上に生み出すことができ、重要だと考えているからです。

★法政大学 宮野廣客員教授 「核燃料サイクルは、ある意味ではエネルギーを半永久的に持つという意味では重大な役割を持ってきた。蓄積された技術、考え方というものを今後も生かしていく必要があります。」

一方で宮野さんが懸念するのは、今のまま研究を続けた場合に新たにかかるコストです。原発の規制基準は、福島の原発事故後、地震や津波への対策などをより厳しく定めています。もんじゅも、対策にはばく大なコストとさらなる年月がかかることが予想されています。宮野さんは、巨額の費用を必要とする核燃料サイクルを継続するためには国民の理解が不可欠だと考えています。

★法政大学 宮野廣客員教授 「人もお金も必要なわけで、それをどこが担うかを含めて考えないと、難しい問題が出てくるのではないか。将来のエネルギー問題をどういうふうに解決していくのか、どういうふうに日本がポジションをとっていくのか、政府が政治的に判断をして国民の理解を得ることが必要。」

今回の勧告をきっかけに、核燃料サイクルそのものを見直す必要があると指摘する専門家もいます。

長崎大学教授の鈴木達治郎さんです。かつて、国の原子力委員会の委員を務めていました。

★長崎大学 鈴木達治郎教授 「ここから高速増殖炉と核燃料サイクルの事業化が加速される。」

昭和42年の国の計画では高速増殖炉が実現されることが核燃料サイクルの前提となっていました。
まだ研究途上にもかかわらず、計画の初期から実用化ありきとしてきたことに問題があったと鈴木さんは指摘します。

★長崎大学 鈴木達治郎教授 「必ず成功させるということが研究開発目標になっている。うまくいかなくてもがんばって必ず動かしますというふうな、本来の研究開発のあり方からずれてしまったということが一番の問題ではないか。」

しかし、仮に核燃料サイクルをやめる場合、使用済み核燃料の行き先をどうするのかという課題を克服しなければなりません。現在、全国の原発などに貯蔵されている使用済み核燃料は1万7,000トン余りに上ります。

先週開かれた、もんじゅの廃炉を求める市民団体の集会。
鈴木さんは、核燃料サイクルそのものの在り方を国民の間で議論すべきと訴えました。

★長崎大学 鈴木達治郎教授 「ただ単に『もんじゅ』をどうするかという議論ではなくて、高速炉というのが一体どういう位置づけになるのか、あるいは核燃料サイクルは福島(第一原発)事故以降、原子力の現状を考えたときに核燃料サイクルをどうしたらいいのかと。そういう議論をもう一度するチャンスだと。」

■もんじゅ“失格”勧告 核燃料サイクルの行方

--― 勧告を受け、文部科学省は半年をメドに新たに運営主体を見つけなければならない 見つかると思う?

田坂さん: これはね、なかなか厳しい宿題を頂いたと思うんですね。やはり機構としても、それほどいいかげんにやってきたわけではない。文科省もそうですね。それなりにベストを尽くしてきて、この勧告ですから。機構に代わる技術力、そして人員、これを持っている組織がこの日本という国にあるのかと聞かれれば、これを見つけだすのはなかなか難しい。半年で作るということも、もうほとんど不可能ですね。これはかなり厳しい宿題を与えられたなという印象ですが。

――-“夢の原子炉”は昭和30年代から検討が始まり、事業費は1兆円注ぎ込まれてきた なかなか進展がないのに続いてきたのはなぜ?

田坂さん:1つは大義名分のように語られる、資源小国の日本において核燃料サイクルは核エネルギーの資源を有効活用できる。もちろんこれはそのとおりなんですけども、むしろ現実には、この政策、変えようと思ってなかなか変えられない、がんじがらめの構造が生まれてしまっているんですね。
1つはですね、いわゆる余剰プルトニウムといわれるもので、再処理をやるとプルトニウムがたくさん生まれるわけですね。
これは実は核兵器の原料にもなる。これは日本では47トン、もう保有してしまっている。核兵器に換算すると数千発。
これは海外から見れば、“日本は間違ってもこれを核兵器に転用することはないですね”と聞かれている。
でもこれに対する答えは、“いや決してそれはありません、高速増殖炉で燃やしていきますので大丈夫です”と言い続けてきているわけですね。その意味で、この核燃料サイクル政策が壁に突き当たると、この問題が一挙に浮上してくる。

もう1つが、先ほどビデオにもあった使用済み燃料ですね。これ、今は再処理をやるという前提で青森県に貯蔵していただいているわけですけれども、この核燃料サイクル全体がおかしくなると、再処理もじゃあ、やる必要がないんじゃないか。
だとしたら、青森がなぜこの使用済み燃料を受け入れるんだという議論が出てきてしまう。原発サイドの貯蔵容量は満杯に達しつつありますから、この問題が大問題になる。

3番目の問題があるとすれば、もう事業費1兆円、再処理だけでも2兆2,000億使ってきたこの核燃料サイクル、引くに引けないという段階に入っていますね。

―――仮に新たな運営主体を見つけることができなければ、この核燃料サイクルは壁に突き当たる 高速増殖炉のプランが動かなくなると今後、原子力発電所というのは動かせる?

田坂さん:これは厳密に申し上げると、核燃料サイクル政策が壁に突き当たることが、そのまま原子力政策が壁に突き当たるわけではないんですね。というのは、世界全体を見渡せば、核燃料サイクルを採用していなくとも原子力を利用している国はたくさんあるわけですね。
いわゆる使用済み燃料をそのまま直接処分するという、ワンス・スルーという方式を取ってる国はたくさんあるわけです。
再処理せずにそのまま捨ててしまう、この方式というものも選択肢に入れたときに、日本ではこれから原子力を仮に利用するにしてもやめていくにしても、むしろいろんな選択肢が広がるんですね。
  したがって現時点で考えるべきことは、核燃料サイクルだけが唯一の政策的な選択肢ではない、むしろワンス・スルーも含めた、そして使用済み燃料の長期貯蔵も含めた政策というものを視野に入れるならば、まだこれから先のいろんな政策が柔軟に組んでいけるんですね。

 これは原発を維持していくにしても、やめていくにしても、どちらにしても大切なことだと思いますね。
(プルトニウムの問題が残らないか?)プルトニウムの問題は、これはプルサーマルと呼ばれる軽水炉でゆっくり燃やしていく。もしくは国際的な核査察のもとにしっかり置いて、“わが国は核兵器に使うことはありません”という政策転換がありだと思います。

その上であえて申し上げれば、この政策転換は、やはり行政機構ではできない。これはむしろ政治主導で、やはり1つの政権が大胆な判断をもって考えてみるべき場面になっているんだろうと思うんですね。
政治の判断になってくるだろうと思います。

--――これから半年間、事業主体を模索しつつ、今後の日本の原子力政策の根幹の部分をこれからどうしていくかということも問われてくる?

田坂さん:そうですね。まさにその判断が、恐らく半年ぐらいたった段階で問われるようになる。恐らく、今、強力な政権の中でしかできない政策判断、この判断が求められる時期が、恐らく半年ぐらいの間にやって来るだろうと思いますね。

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