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TPP 「農業過保護」論、「輸出産業」論の虚構(メモ)

・事実を無視した「過保護論」~ 「過保護だから、自給率が下がり、耕作放棄地が増え、高齢化が進んだ。だからTPPなどショック療法で競争にさらせば強くなって輸出産業になる」。真の国益、国際貢献とは何か、を軸に、鈴木宣弘・東京大教授の論考を中心に作成したメモ。

①日本農業は世界で最も保護されていない。
②目先のコストの安さに目をうばわれてよいか。
③生産者の取り分は「不当に」低い
④「攻めの農業」というウソ
⑤持続可能な農業が、世界的課題に   FAOの警鐘

〔1〕 日本農業は世界で最も保護されていない。
●アメリカ  競争力があるから輸出大国になっているのではない。
→ コストが高くても、自給は当たり前、いかに増産して世界をコントロールするか、という食料戦略による。
→輸出補助金  アメリカ 1兆円  日本 ゼロ円

*ほとんどの年度、作物で、販売額を、生産コストが上回っている。
1

●日本の関税  高い関税のものが1割ほどあるが、他の9割は非常に低い関税。
    平均関税率11.7%。EU19.5%の半分程度
078

・「農業鎖国は許されない」はウソ /自給率〔カロリーベース〕 39%    こんな先進国はない
→ TPPの「原産地規則」で言うと、日本人の体は、もはや「国産」ではない。

●農業所得に占める補助金の割合
    日本15.6%、EU95%前後  
    アメリカ 1兆円    年度、作物によるが、

・農業所得に占める直接支払いの割合
      日本 アメリカ フランス イギリス
 06年 15.6% 26.4% 90.2% 95.2%
〔所得補償制度 - ファーマータナカのデイリーリポート / 農水省調べ「エコノミスト2008年7月22日号」)

*アメリカの農家所得に占める政府補助金の割合 ~  米、綿花は4-5割の年も
Tpp2

★  国民の命、環境、国境を守る産業を国として支えることは、欧米では当然の考え

~ アメリカ、カナダ、EU   穀物・乳製品の生産が増え、支持価格を下回ると、支持価格で無制限に買い上げて、国内外の援助物資や補助金をつけて輸出するなど政府が最終的に価格を確保し、価格を支える仕組みがある
 
〔2〕目先のコストの安さに目をうばわれてよいか。
①アメリカ  食料は武器であり、軍事、エネルギーと並ぶ国家存立の3本柱

*2001年7月、ワシントンDCにおけるブッシュ大統領の農業関係者を前にした演説
「食料はナショナル・セキュリティの問題だ。皆さんのおかげでそれが常に保たれているアメリカはなんとありがたいことか。」「それにひきかえ食料自給できない国を想像できるか。それは国際的圧力と危険にさらされている国だ」

≪アメリカの輸出補助金の仕組み≫

1.農家が満足に暮らし営農を再生産するために必要な目標価格(=A)と、国際市場で競争力を持つための市場価格(=B)の差額(A-B)を、全額政府が所得補填。

2.しかも、WTO上は、このシステムは、輸出補助金としての削減対象に認定されていない。国内支持として分類されたため、緩い削減ですまされてきた。(鈴木宣弘「WTOの枠組み合意とその意義」より)

3.輸出補助金付き穀物で攻撃されたら途上国の穀物生産は破滅
メキシコ、エルサルバドル、ハイチ・・・・などが、自給的穀物生産を衰退させた挙句、国際価格の高騰によって2008年には深刻な飢餓に直面した。

→ 食料の量的確保の安全保障が崩れれば、安全性に不安があっても輸入せざるを得ない。質の安全保障も崩れる

→ 日本が関税を維持しても飢餓リスクを抱える途上国には悪影響は及ぼさない。/日本が自給率を高めることは自国を守る正当防衛のみならず、途上国の飢餓リスクの減少につながる国際貢献。

〔3〕生産者の取り分は「不当に」低い

①現状は・・・
・食料関連産業の生産額規模      80年48兆円  → 05年74兆円
            農民段階の取り分 12兆円→9兆円に低下/ シェア26%→13%
→ 量販店による取引交渉力の強まり  「買い叩き」現象
→ コンビニおにぎり 105円のうち、精米の生産者売り上げ分16円

②量販店の支配力強化に政府介入する欧米
・アメリカ  ミルク・マーケッティング・オーダー(FMMO)
  1  乳製品市況から逆算した加工原料乳価 を メーカーの最低支払い義務乳価として設定
     それに、全米200の郡別の「飲用プレミアム」を加算し、地域別の最低価格を、毎月決定
 プラスして
2 飼料高騰等で取引乳価がコストをカバーできない場合は、政府が補填するシステム
  3  余剰乳製品を政府が買い上げ、国内外の援助物資などによる最終的販路を確保

〔4〕「攻めの農業」というウソ

 安倍首相「国益にかなう最善の結果」「ピンチでなくチャンスだ」
~ 広大な面積で生産するアメリカ農家でも赤字なんですが?!

●すぐばれるウソと大風呂敷

①「なかなか難しいと言われた中国へのコメ輸出を初めて行い、あっという間に全量売り切れになった」
  → その輸出量  2トン、33俵

②「アメリカで最近、和牛が人気を集めている。TPPで輸出実績の40倍まで関税ゼロ、将来は全て制限が取り払われる」
  国内生産(13年)       現在37.1万トン 
  アメリカより輸入(13年)  現在18万6千トン
  アメリカへの輸出 現在    200トン(国内生産の0.05%)
→15年後 6250トン(国内生産の1.7%)

  ~ 肉食用牛農家 5万4000戸のうち900戸が残るだけ

③「日本茶の関税20%がゼロになる。静岡や鹿児島が世界有数の茶所とよばれる日も近い」 
  輸出先 1位アメリカ、3位シンガポール、5位カナダ すでにゼロ
        20%なのはメキシコ  輸出額197万円(財務省「貿易統計」2014年度)
       、お茶の輸出総額78億円の0.03%

 ~逆に輸入増の危険 / オーストラリア、ベトナムで日本の大手メーカーが現地法人を立ちあげて緑茶生産

●わずか1%の輸出が「日本農業の活路」というお粗末

・「農林水産物輸出戦略」 2020年 輸出額 1兆円( 2014年6,100億円 )
農業の直接生産物では1,110億円しか増えず、2012年の農業総産出額8兆5,250億円の1.3% (北林)

~ 1兆円のうちわけ
・50%強   ほとんど国内農産物を使わない「清涼飲料水」「インスタントラーメン」「みそ・醤油などの加工品」
  ・38%  水産物、林産物
  ・純然たる農産物(コメ、牛肉、野菜、果物、花、茶) 835億円 0.99%

〔5〕持続可能な農業が、世界的課題に   FAOの警鐘

 国連食糧農業機関・調査報告書 2011年11月28日

①土壌の4分の1が著しく劣化
・劣化の程度が大きかった土壌 25%
・劣化の程度が中程度      44%
・「改善されている」土壌     10%
~ ディウフ事務局長 「人類はもうこれ以上、必要不可欠な資源をあたかも無尽蔵であるかのように扱うことはできない」と警告

・劣化が最も激しかった地域
南北米大陸の西岸地域、欧州、北アフリカの地中海沿岸部、サハラ砂漠南縁に位置する西アフリカのサヘル地帯、アフリカ北東部の「アフリカの角」地域、アジア全域

・劣化している土壌の約40%  ~ 最貧地域

②土地生産性が低下
・浸食、砂漠化、気候変動の3要素 ~ 地中海沿岸からアフリカ南部、東南アジアにかけての広い地域で主要な農業生産システムを危機にさらしている

・多くの農業地帯が、過度な人口圧力と持続不可能な農業慣習で、生産能力低下に歯止めがかからないリスクに直面

・1961年~2009年  世界の農地面積 12%増、品種改良などで農作物生産高は1.5倍
→ 今後は、土地の生産性低下の傾向 ~ 土地の状態は「危険なレベル」

・生産性低下が最も著しい地域  東アジア
東アジアの穀物生産高の増加率
1961~2006年 年2.5%
2006~2050年 年0.3%程度にまで圧縮

★メモ者  米国の農業を支えるオガララ帯水層の枯渇問題など・・・農業の持続可能性が深刻な問題である
【「農業の持続可能性」  キャノングローバル戦略研究所 2010/4】


③土地と水をめぐる紛争の増加
・農作物生産高は人口増加率を上回って増える/ 所得の増加とともに、開発途上国で乳製品や食肉の消費増
・天然資源への圧力が高まる中、土地と水をめぐる紛争が都市部と農村部の住民の間などで頻発する、と危惧

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