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さらなるマイナス改定は地域医療の崩壊もたらす

  「地方創生」「高齢者の地方移住」など・・・ 言うこととやることが真逆なのが安倍政権の特徴。
医療・福祉分野は、地方の最大の雇用の場あり、住み続けられる地域のための不可欠のインフラである。
あいつぐ診療報酬で、地方の生活の基盤がくずされようとしている。 
 そもそも日本の医療は、低い費用で高いパフォーマンスをもたらしている。それを支えている勤務医、看護師の過酷な労働条件の解消こそ、求められている。
 この医療制度を崩し、利益拡大を狙う米日の製薬・保険業界の援護射撃としての公的医療切捨てである。

【経営は悪化の傾向―診療報酬はプラスが必要  保団連11/15】
【医療における適切な財源確保について  医師会11/18】
【第20回中医協医療経済実態調査(医療機関等調査)結果報告に対する見解  11/20】

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 〔国民の所得の伸びず、経済成長の止まっている日本。それでも低いGDP比である〕


【経営は悪化の傾向―診療報酬はプラスが必要  保団連11/15】
(全国保険医新聞2015年11月15日号より)

 2016年度診療報酬改定は、社会保障費の伸びを抑えるためとしてマイナス改定の動きが強まっている。しかし11月4日に公表された「第20回医療経済実態調査」からは、診療所の経営状況の悪化がうかがえる。医療機関の経営の安定のみならず、患者に提供する医療の質と量を決める診療報酬のプラス改定が必要だ。

 財務省は10月30日の財政制度等審議会で、次期改定について、「診療報酬本体のマイナス改定」を提案した。
 16年度予算編成では、概算要求の段階で社会保障費自然増分を15年度比で1600億円削減した。ここからさらに1700億円程度を削減する方針だ。
 診療報酬改定だけでこれを実現しようとすれば、約1.5%のマイナスとなる。

◆「利益安定」とはいえない

 厚労省は11月4日の中医協総会で「第20回医療経済実態調査」を報告した。保団連が求めていた最頻値も公表された。一部マスコミでは、「診療所利益安定」とも報じられている。

 しかし無床の一般診療所(個人立・医療法人立)では損益差額の最頻値が減少。特に医療法人立は14年度が225万4,000円で、13年度の307万7,000円からマイナス26.7%の大幅な減少だ。医療経済実態調査は無作為抽出による調査で、回答施設数が少ない。経営の厳しい医療機関は、調査に協力しにくい傾向にある。にもかかわらず、このような結果が出たことは、多くの診療所の経営状況の悪化を反映していると考えられる。一方、損益差額の最頻値は若干増加している歯科診療所(個人立)については、回答施設数が年々減少しており、医科と比較しても非常に少ない。診療所全体の実態を反映しているとはいえない。病院は赤字傾向が拡大しており、一般病院全体の損益差額率は13年度のマイナス1.7%から14年度はマイナス3.1%となり、赤字幅が1.4ポイント拡大した。

 日本医師会も医療経済実態調査について、診療所の損益差額は減少し、院長給与は下がっていることを指摘している。5日の定例記者会見で横倉義武会長は、さらなるマイナス改定は地域医療の崩壊をもたらすとの危機感を示した。

◆患者の命・健康にも関わる

 診療報酬は医療機関の経営を支えるとともに、保険診療の量と質を規定する。「財源不足」を理由とする安易な引き下げは、患者の命や健康にも関わる。
 全国保険医団体連合会は社会保障の財源として、正規雇用の労働者を増やし、被用者保険の事業者負担割合を引き上げて保険料収入を増加させることなどを提案(右表)。この提案への理解を広げながら、診療報酬の大幅引き上げと窓口負担の軽減を求める会員署名や、関係省庁や国会議員への要請など、プラス改定を求める取り組みを強めることとしている。


【医療における適切な財源確保について  医師会11/18】

横倉義武会長

 横倉義武会長は11月18日、記者会見を行い、財政制度等審議会財政制度分科会が16日に開催され、来年度の予算編成において、厚生労働省が概算要求で見込んでいる高齢 化等に伴う増加額の6,700億円を5,000億円弱にまで削るように提言すると一部で報じられたことを受けて日医の見解を説明した。

 冒頭、同会長は、高齢化等に伴う増加額のうち、医療以外の介護、年金、その他の約3,800億円は改定や制度改正がなく支出額が削減できないことから、財政審の主張する5,000億円にすると、平成28年度に診療報酬改定がある医療のみが大きく削減されることとなり、地域医療の崩壊を招きかねないとの危惧を示した。

 次に、過去3年間の社会保障関係費の伸びを示しつつ、2014年度には診療報酬改定で1,700億円、2015年度には介護報酬改定等で1,700億円を抑制するなど、診療報酬・介 護報酬で厳しい抑制が行われてきたと指摘。こうした過去の経緯を踏まえて閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2015(骨太の方針2015)」におけるこれまで3年間の社会保障関係費の伸び(1.5兆円程度)の基調を継続していくことは、決定過程の議論を重視し、あくまでも「目安」であるとした。

 その上で、医療は技術革新により高度化しており、高齢化以外にも、「医療用消耗品」「医療機器」「電子カルテの保守料」などが増加要因となっているとして、それぞ れの増加要因について、「手術用特殊縫合糸等手術材料費の高騰」「CT等放射線診断機器の保守管理費用増大やMRIで使用するヘリウムの価格高騰」「電子カルテ導入への支援と既に導入済みの医療機関に対するセキュリティの強固化や地域連携を進めるための保守管理費用等」を挙げて説明した。

 また、中医協の診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会(10月30日開催)において、学会等から提出された提案(現在737件)について、新規医療技術の評価及び既 存技術の再評価が検討されていることにも触れ、患者さんに医療の高度化による新しい技術を早く届けるためにも、安全性と有効性が確認されることを前提に、より多くの技 術が保険収載されなくてはならないとした。

 更に、これら高齢化以外の要因は、いずれも技術料から包括して償還されているため、その上昇が医療従事者の人件費を圧迫した結果、医療機関の費用に占める人件費の 割合は、2000年度に50.2%だったものが、2012年度には46.4%にまで低下し、約1割減少していること、また、医療機関には約300万人が従事しており、医療の雇用誘発効果は 他の産業よりも高くなっていることを示し、医療に財源を投入すれば、特に医療従事者の比率が高い地方では経済の活性化により経済成長を促し、地方創生への多大な貢献に つながると説明した。

 最後に横倉会長は、「医療、介護等を中心に今後も増加が見込まれる社会保障費については、財政を緊縮しようとする立場から、成長戦略や規制緩和の名の下に、保険給 付範囲を狭める圧力が続くことが予想されるが、未曾有(みぞう)の少子高齢社会の進展と人口減少の中で国民皆保険を堅持していくためには、我々医療側から、過不足ない医 療提供ができる適切な医療、例えばロコモティブシンドローム対策や糖尿病、COPD等の生活習慣病対策などを提言していく必要がある」と述べる一方、医療経済実態調査 の結果でも明らかなように、病院・診療所は厳しい経営状況に置かれており、厚労省が概算要求で見込んだ高齢化等に伴う増加額の6,700億円は過不足のない医療提供に必要な 財源であると強調。

「"財源ありき"ということでの無理な削減で、医療現場の混乱のみならず、地域での医療機関の経営破綻が現実化する等医療崩壊の再来を招き、国民が 必要とする医療が過不足なく提供できなくなるような事態を招くことのないよう、政府に対しては必要な財源の確保を引き続き強く求めていく」と主張した。

【第20回中医協医療経済実態調査(医療機関等調査)結果報告に対する見解  11/20】

中央社会保険医療協議会

平成27 年11 月4 日に報告された第20回医療経済実態調査の結果から医療機関の経営状態を見ると、一般病院の損益率が▲1.7%から▲3.1%に低下し、一般診療所の損益率も16.1%から15.5%に低下し、精神科病院の損益率は0.4%から0.7%とほとんど改善しなかった。

民間の一般病院では、医師給与が▲2.1%と低下するなど、給与水準は抑制されているが、給与費率が54.5%から54.9%に上昇している。コ・メディカル等の医療関係職種の増員に見合う収入が手当てされていないのではないかと推察される。医療従事者の確保、処遇改善は経済成長にも資するものであり、十分な手当てが必要である。一般病院では、流動比率(215.8%から198.3%)、自己資本比率(55.9%から46.5%)などの安全性指標も低下している。
民間病院では一般病棟入院基本料7 対1 の赤字が▲1.3%(前々期▲0.4%)と最も大きくなるという事態になった。必要な人材を確保し、設備投資を行って医療提供体制を維持できる状態にない。

一般病院の病床規模別では、すべての規模で連続赤字となった。特に、大病院で赤字が拡大(300~499 床▲2.0%から▲4.2%、500 床以上▲1.7%から▲3.3%)しており、前回診療報酬改定で行われた消費税率引き上げに伴う補填が不十分であった医療機関が存在するものと考えられる。小規模な病院も損益率が連続して低い。

精神科病院や療養病床を保有する病院では、医薬品等の外部支出を抑制して利益を捻出しているが、職員の処遇改善の余裕はない。
療養病床に関しては、診療報酬と100 床当たり入院収益の関係が逆転している(100 床当たり入院診療収益は療養病棟入院基本料1 で782 百万円、入院基本料2 で824 百万円)。これは他の病床の収益もあるほか、病床稼働率の違いなどが影響しているものと見られる。診療報酬は個別の点数だけでなく、算定要件や地域性なども広く考慮する必要がある。

一般診療所は全体で減収減益(医業収益▲0.2%、介護収益▲0.3%、差額率▲0.6%)である。医療法人では院長給与を▲0.5%引き下げたが、医師(勤務医)給与の上昇(+2.6%)もあり、給与費率が47.9%から48.2%に上昇した。給与費単価だけの問題ではなく、一般診療所でも事務職員等が増加している中、従事者の増員分を賄える収益がないものと推察される。
また、一般診療所では、在宅療養支援診療所の損益率が低く(医療法人・入院診療収益なしで一般診療所8.8%に対し在支診7.4%)、また内科診療所で損益率が低下(入院診療収益なし(個人▲0.7%、医療法人▲0.6%))している。前回改定で在宅医療の適正化を行ったことが、現場で真面目に在宅医療に取り組んでいる診療所にも影響を与えたと言える。

歯科の医療機関の大部分を占める個人歯科診療所における直近2事業年結果については、医業収入の伸びは0.3%で、損益差額はほぼ横ばいに留まっている。医業・介護費用について、内容を見てみると「医薬品費」、「歯科材料費」が増加する一方で、「減価償却費」の減少が見られる。消費税増税と金属代等の価格上昇を設備投資の抑制で補っている状況である。また「給与費」の下げ止まりは人件費の削減が限界に達しているものと思われ、経営状況はこれまで同様、非常に厳しい状況であることが窺える。
そして、従来から言われている経営の落ち込みについて、全く回復されていないことが分かる。個人歯科診療所における経営状況については、既に経営努力や経費削減努力が明らかに限界に達しており、このことは設備投資面での資金にも影響を与えることが懸念され、安全・安心を前提とした歯科医療提供体制の根幹に関わる喫緊の課題として速やかな対応が求められる。

保険薬局の収支状況については、収益が横ばい(個人立)もしくは低下(法人立)であるのに対し、投与日数の長期化傾向等の影響により、費用の9 割を占める医薬品費とその管理に関する給与費が上昇した結果、開設主体の違いにかかわらず損益率は低下した(個人立▲0.4%、法人立▲2.1%)。
また、保険薬局の開設主体の9 割以上を占める法人薬局のうち、同一法人の店舗数が「6〜19 店舗」の施設を除き、いずれの区分においても損益率は低下しており、特に保険薬局のうち、地域密着型の代表とも言える「1店舗」および「2〜5店舗」の施設の損益は、「2〜 5店舗」で半減、「1店舗」では赤字となり、前回改定において消費税率の引き上げに伴う補填が行われたにもかかわらず、調査結果の数値以上に厳しい状況であることがうかがえる。

以上見てきたように、今回の医療経済実態調査結果からは、平成26 年度診療報酬改定が実質▲1.26%のマイナス改定であったことや、消費税率引き上げに伴う補填は行われたが、医療機関等は総じて経営悪化となったことが示された。_


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