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軍では効かない中東の紛争解決 ~ 問われる日本のあり方

  酒井啓子・千葉大学法政経学部教授(イラク政治史、現代中東政治)のレポートと、ニューズウイークの記事。
  テロ勢力・・・叩けば叩くほど、住民の犠牲への怒り、他国・地宗派の侵略的行為への怒りを「養分」に、分裂・増殖する、武力では殲滅できない、ということ、「対テロ戦争」=アフガン・イラク戦争が明らかにした。
  ではどうすることが必要か。対テロ戦争を支持・支援した日本は、今日の事態を検証し、あり方を根本から問う必要がある。他の欧米諸国ではできない「平和ブランド」を発揮することが国際的にも求められている。
 アメリカに付き従うだけの戦争法案は、その観点がすっぽり欠落している。日本にも世界にも不幸をもたらすだけ。
 
【軍では効かない中東の紛争解決   中東徒然日記  酒井啓子】
【2万人殺しても2万人増えるISISに米軍は打つ手なし 10/14 NEWSWEEKJAPAN 10/14】
【米軍事戦略、迷走続く=「二つの戦争」終結できず 時事10/17】


《簡単なスケッチ  「新・自衛隊論」の関連部分から、メモ者が理解するための整理》

■イラク・・・・ウソではじめた侵略戦争 → 戦後の統治の失敗(サダム・フセインはスンナ派だったので、政権崩壊後に紛争の拠点はスンナ派地域にありとしてファルージャなど徹底した総統作戦/同時に、国軍とバース党の解体・・・武器の拡散と「力の空白」の出現、治安悪化の土壌をつくる )
・ スンナ派をふくめた統一政府・マリキ政府による「つかのまの安定」→ 米軍撤退(力の空白の発生)→マリキ政権のスンナ派排除、スンナ派民兵組織の軍への昇格約束の反故、世界第二の汚職度のもと国民生活向上せず →国民の不満の増大と爆発 → シリアに逃れていた過激組織の回帰に旧フセイン政権勢力が合流し「IS」として台頭 
・イラク国軍の逃走。シーア派指導者の呼びかけた義勇兵で、ISと対抗 → ここに「宗派戦争」が決定的に
→ ISの周辺国への拡大 → 各国にとってテロ組織、反政府組織としていたものが「敵の敵は味方」として国際的支援の対象になる、という複雑な関係に。またイラン〔シーア派〕の影響力拡大へのサウジ、イスラエルの警戒感

■アフガン・・・ 旧ソ連軍撤退→ 9つの軍閥の衝突・混乱 → 神学生(タリバン)が生活支援、治安回復で活躍 → タリバン政府誕生、原理主義の推進〔女性の人権などが国際問題に〕 
・9.11テロ犯を匿ったとして「対テロ戦争」、タリバン政府崩壊 →他国・地宗派からの侵略民間犠牲など反米感情の高まり、タリバンを支援していたパキスタンの国境付近を拠点にタリバン・アルカイダが存続。一方、軍閥の覇権争い〔そもそも統一した国という文化・価値観がない。地域・部族主義。真の国軍育成の困難さ〕 → 国軍創設のため軍閥の武装解除へ→「民主選挙」実施の成果を急ぎ、「力の空白」が出現 → タリバンの盛り返し → 米軍 軍事的勝利もなく、国づくりに失敗し、撤退表明 → アフガン全体のタリバン化の危険。 さらに国境問題・・・アフガン軍〔タリバンとたたかった北部同盟の影響力大〕、パキスタン軍〔同国は、タリバンを支援〕 → NATOが撤退すると武力衝突の危険。テロの温床に
→ その防止として、タリバンと和平模索。ISの影響が強いパキスタン・タリバンとの切離し模索。が、簡単ではない

【軍では効かない中東の紛争解決   中東徒然日記  酒井啓子】

 この週末、筆者が勤務する千葉大学で、日本政治学会の年次大会が開催された。会員ではないのだが、開催校としてホスト側の立場を利用して、いくつかのセッションを楽しんだ。

 さすがに、「政治」関係の学会の最老舗である。安保法制を巡って揺れた今年の政治状況を反映して、関連のパネルが二つ組まれていた。ひとつは「憲法と政治」、もうひとつは「安倍政権の対外政策の検証」である。(プログラムは公開されている。登壇者がどういう顔ぶれだったかは、同学会のホームページをご覧いただきたい。)

 いずれの議論も、終了時間になっても尽きない、盛り上がったものだった。学会でいい議論とは、参加した者が個々に「私も言いたかった、私の意見はこうだ」と考えて、フラストレーションを溜めるようなセッションだと、私は思っている。

特に後者のセッションはそういう類のものだった。なぜなら、議論の最後に「中東」が登場したからだ。
 安保法制の是非が議論される際に、いつも争点になる話題が、ここでも登場した。「平和主義じゃやっていけない現実が、中東や北アフリカに蔓延しているのを、どうすればいいんだ?」。この問は、下手をすると、日本も軍備を考えなきゃと考える人たちにいい口実にされることになる。安保法制の議論で、安倍首相が最後まで「ペルシア湾の機雷掃海」を強調していたのは、その例だ。

 実際、今のシリアで武装勢力と丸腰で対峙できるとは誰も思わない。中東政治をやっていると、武力に依存せざるを得ない状況がたくさんあることは、十分すぎるほどわかっている。

「だったら自衛隊の出番でしょ」というのが、安保法制推進の方々の発想なのだろうが、そこにはもう少し複雑な事情がある。むき出しの暴力が蔓延する世界だから軍の出番だ、というわけにはいかないのには、二つの理由がある。それは、今の現実の暴力の応酬が軍事をもってしても止められていない、ということであり、もうひとつはその暴力の応酬の根底にある外交の不在が改善されないことには、事態は全くよくならないということだ。

今の中東の危機を理解するには、この二つの側面を分けて考えなければならない。前者は、シリアやイラクの一部で展開されている際限のない武力衝突にどう対峙するかの問題である。日々数千、数万の人々が家を追われ死に瀕し、難民化する途中で人道的とは程遠い扱いを受ける。身を守るのに武器がなければどうしようもない環境に置かれた人々にとっては、どんな攻撃でもかわせる盾と、どんな敵でもやっつける矛をもった助っ人なら、誰でも大歓迎だ。イラク戦争まではアメリカはいい用心棒だったが、今や期待しても動いてくれない以上、イランだろうがクルドだろうが、「イスラーム国」(IS)をやっつけてくれるなら頼るしかない、と考える。

 あるいはアサド政権こそが自分たちの命を脅かしていると考える人々(実際難民化したシリア人に対して行われたアンケートでは、ISが怖くて逃げたというよりアサド政権の攻撃を逃れて、という回答のほうが多かった)のなかには、援助を得るにはサウディなどの湾岸諸国に依存するしかないので彼らが支援する反政府側に身を投じるしかない、と考える。

アサド支援側にはロシアによる空爆まで加わったが、これは誰でもいい、決着をつけてくれる軍ならだれでも歓迎する、というムードが呼び寄せたものだ。シリアだけではない、イラクやエジプトもまた、ロシアの登場を歓迎している。

 だが、次々に軍事力を投入して、事態はマシになったのか。ロシアの空爆開始から一週間強経って、ISはシリア第二の都市、アレッポに迫る勢いを見せた。同じころ、イランから派遣されていた革命防衛隊のトップクラスの司令官がシリア国内で死亡して、イランに衝撃が走った。11日にはヒズブッラーの幹部クラス司令官もまた、シリア国内で死んでいる。ロシアの参戦で雌雄に決着がつくどころか、関係国の被害はエスカレートするばかりだ。
 つまり、百戦錬磨の軍事組織が総出で介入してもなお、むしろ事態は悪化している。軍が出ていけばどうにかなる、という状況ではないのだ。

 もうひとつの側面は、このむき出しの暴力の衝突をエスカレートさせている原因に、中東地域の二極化、「新しい冷戦」状態がある、ということである。サウディアラビアやトルコといった反アサド派と、イラン、イラクのアサド支持派だ。この対立に宗派の違いが重なって、中東ではいま両者間の代理戦争が各地で勃発していることになる。シリアでの戦いの現状に決着がついたとしても、その背景にある「新しい冷戦」を処理しないことには、いつでも「冷戦」が「熱戦」になる。となると、こちらは軍の出番ではなく、域内関係をどう安定させるかという、外交の出番なのだ。

 軍をいくらつぎ込んでも埒が明かない状況と、外交が不在で根本的解決ができない状況が併存している。今の中東の危機は、軍をつぎ込みやすくすればなんとかなる、ということでは決してない。

 だが、「じゃあ何もできないままでいいのか」という反論が当然ある。無論、何かしなければならない。だが、「何かやったふり」のアリバイ作りのためだけに既存の方策にしがみつく(とりあえず空爆してみるとか、とりあえず軍を派兵してみるとか)ことは、事態をますます複雑にするばかりだ。ではどういう解決方法を国際社会はとれるのか。

 ISにせよシリア難民の問題にせよ、いまの事態は過去の例のない、未曾有の「新しい危機」である。だったら解決策も、まったく新しく考えていく必要があるのではないか。


【2万人殺しても2万人増えるISISに米軍は打つ手なし 10/14 NEWSWEEKJAPAN 10/14】

○空爆が効果を上げなかっただけでなくシリア反体制派に対する軍事訓練にも失敗
米軍主導のISIS(自称イスラム国、別名ISIL)を標的にした空爆は、これまでに約2万人の戦闘員を殺害している――USAトゥデーが13日、匿名の米国防総省当局者2人の証言をもとにそう報じた。
 問題は、2万人殺しても、2014年8月の空爆開始以来ISIS戦闘員の数が減っていないこと。同紙によれば、イラクとシリアには絶えず新兵が流入しており、ISISは2万~3万人の規模を保っているという。
 オバマ政権はこれまで40億ドルの費用を投じて7300回近い空爆を続けてきた。シリアでは、アサド独裁政権やISISと戦う穏健な反体制派の軍事支援も行ってきた。それでも戦況は変わらず、ISISの支配地域も一向に狭まっていないようだ。

○反体制派で訓練できたのは80人足らず
 失敗だったのは空爆だけでなく、反体制派への軍事支援も同様だ。穏健派のシリア反体制派を訓練し、武器を提供するという5億ドルをかけた計画だったが、1年で5400人、向こう3年で1万5000人を訓練するという目標とは程遠く、今では数人の兵士しか残っていない。AP通信によれば、訓練を受けた80人足らずの反体制派兵士の多くは、戦場で逃亡するか、捕まるか、殺されたという。アシュトン・カーター米国防長官も先月、「計画を全面的に見直す」必要に迫られたことを認めた。
一方で空爆の犠牲になった民間人の数は着実に増加している。米政府は民間人死者を2人しか認めていないが、英ガーディアン紙は、独立したジャーナリストらが結成した「エアウォーズ」の8月の報告書を引用し、米軍主導の空爆による死者は少なく見積もっても450人に上るとしている。
 まったく効果がないというわけでもない。USAトゥデーの記事に登場する米国防総省当局者の1人は、傍受したISISの通信によると、彼らが空爆を恐れ、戦略の変更を余儀なくされていることは明らかだという。そうだとしても、アメリカのISIS掃討作戦が功を奏していないことは明らかだろう。
 ブルッキングズ研究所の軍事アナリスト、マイケル・オハンロンはUSAトゥデーにこう語った。「この戦争は完全に手詰まり状態だ」

【米軍事戦略、迷走続く=「二つの戦争」終結できず 時事10/17】

 【ワシントン時事】オバマ米大統領がアフガニスタン駐留軍の撤収を断念したことで、米同時テロ後にイラクとアフガンで続いた「二つの戦争」を終結させるという大統領の公約は、ほぼ実現不可能になった。イラン核合意や環太平洋連携協定(TPP)締結交渉の大筋合意など、外交で「レガシー(遺産)」づくりを進める大統領だが、軍事戦略では迷走を続けている。
 オバマ政権は先週、過激派組織「イスラム国」掃討の柱に据えていたシリア反体制派戦闘員の訓練を事実上取りやめ、直接武器支援を始めると発表。ロシアの軍事介入で混迷を深めるシリア内戦や「イスラム国」の勢力拡大に、米国がうまく対応できていないことが浮き彫りになった。
 アフガン撤収断念の背景にも、堅固な地盤を持つ反政府勢力タリバンに加え、「イスラム国」がアフガンに浸透し始めたという事情がある。2011年の米軍のイラク撤退後に治安情勢が悪化し、同組織の台頭を許した教訓を踏まえた決定だ。
 大統領は記者会見で、米軍将兵に「あなた方を軽々しく危地に送ることはない」と呼び掛けるとともに、アフガンには対米協調路線の政府も、駐留の根拠となる法的枠組みも存在すると指摘し、いずれも欠いていたイラクとの違いを強調した。だが、アフガン治安部隊がイラク政府軍と同様に十分な実力を備えていないことは認めざるを得なかった。
 オバマ政権は昨年8月、イラクで「イスラム国」を狙った空爆に着手し、同国への軍事的関与を再開した。イラクには現在、政府軍の訓練などに当たる米兵約3000人が駐留する。アフガンにも来年は9800人、17年も5500人の米兵が残留する。


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