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改定派遣法 「社会停滞」「経済成長放棄」の愚

 派遣は「一時的・臨時的」という原則を担保するのが「同一業務で3年」という制限だった。それを無くした。
 新聞の社説の中で「社会停滞の愚作」「経済成長を放棄する愚」と、その社会的意味をタイトルに掲げた社説。
  少子化と人口減を推進、格差と貧困を拡大し、平和の基盤を壊す〔「永続する平和は、社会正義を基礎としてのみ確立できる」 IⅬO憲章〕悪法。

【労働者派遣法改正案 社会停滞への愚策踏みとどまれ 愛媛新聞・社説 9/11】
【改正派遣法成立 経済成長を放棄する愚  琉球新報・社説9/12】

【労働者派遣法改正案 社会停滞への愚策踏みとどまれ 愛媛新聞・社説 9/11】

 誰もが安心して働ける環境があって初めて、個々の暮らしも社会も安定する。労働者を使い捨てにすれば格差が拡大し、成長はおろか幸せな未来もあるはずがない。そんな当然のことを忘れて効率優先に走ればこの国はどうなるか、踏みとどまって冷静に考え直さねばならない。
 労働者派遣法改正案が参院本会議で可決された。施行日などが修正されたため衆院に回付、与党はきょう可決し、成立させる方針だ。
 企業が派遣労働者を事実上、無期限に使い続けられるようにする法案は、断じて容認できない。現在、派遣労働者の受け入れ可能期間は、一部専門業務を除き最長3年。それが、どの職場でも、3年ごとに人を入れ替えればいつまでも派遣労働者を配置し続けられるようになる。
 派遣など非正規労働者の賃金水準は正社員の6割。コスト削減のため、正社員から派遣への置き換えが進むのは目に見えており、看過できない。
 労働者保護の仕組みはうわべだけで実効性はないに等しい。企業がまず労働組合から意見を聞くのが条件だが、反対されても応じる義務はない。派遣会社には、同じ職場での勤務が3年に達した人を派遣先企業に社員として雇用依頼する義務を課したが、結果は問われない。
 派遣労働者と派遣先の正社員の賃金格差是正に向け、民主、維新、生活の野党3党が共同提出した同一労働同一賃金推進法は成立した。しかし、中身は自民、公明と維新の3党の修正によりすっかり骨抜きされた。同じ仕事なら賃金も同水準にする均等待遇の規定は、同じ仕事であっても責任などに応じたバランスが取れていれば良いと、意味のないものに後退。これでは何の担保にもならない。
 企業を利するため、成立を強引に進める政府・与党のやり方も異常だと言わざるを得ず、異議を唱えたい。
 10月1日から、3年を超える違法派遣があった場合に企業が労働者を正社員などで雇い入れなければならない新制度がスタートするため、9月末までの法案成立に固執した。安全保障関連法案などで国会審議が進まなくなると、当初、9月1日としていた施行日を30日に修正して参院を押し通した。
 人件費のかさむ直接雇用を嫌う企業の思惑に沿って、労働者切り捨てを後押しする国に憤りを禁じ得ない。違法状態にある派遣労働者にとって正規雇用は念願だった。直前に権利をつぶされる心痛はいかばかりか。
 政府は少子化対策や労働力確保をうたう。だが、3年先の身分保障すらなければ将来設計は立てられず、結婚や出産に踏み切りづらい。頑張って働いても次々職場を追われ一からのスタートとなり、賃金は低水準のまま。経験が生かされることがなければ、働きがいも持てない。政府自らが社会の停滞を招こうとしている愚に、一刻も早く気付かなければならない。


【改正派遣法成立 経済成長を放棄する愚  琉球新報・社説9/12】

 労働者の使い捨てを招き、格差を拡大させて何が「成長戦略」か。経済成長どころか人口減を進ませる愚策と言うほかない。
 人を入れ替えさえすれば派遣労働者の受け入れが無期限にできる改正労働者派遣法が成立した。労働者保護の仕組みを一変させる大転換が、国民的議論もなくなされたのは容認できない。改正の結末を厳しく検証し、あるべき状態に戻すべきだ。
 政府与党が強引に成立させたのは、派遣労働者を保護する新たな制度を骨抜きにするためである。「労働契約申し込みみなし制度」だ。違法派遣があった場合、派遣先企業はその労働者を直接雇用せねばならないとする制度である。
 従来の派遣法では専門業務は無期限派遣が可能だが、一般業務は最長3年で、超えると違反だ。両方の業務が混在する場合、一般業務なのに専門業務に偽装したと判断され、厚労省から是正指導される例も少なくない。例えば「OA機器操作」名目の派遣だが、実際にはお茶出しや電話対応が多いといった例だ。新制度になれば、こうした労働者は直接雇用に切り替えられるはずだった。
 だが今回の派遣法改正で期間制限はなくなるのだから、こうした例も違法でなくなる。新制度は10月1日施行だが、改正派遣法の施行は今月30日。つまり新制度を無効にするための法改正なのである。
 「正社員を望む人にはその道を開き、派遣を選ぶ人は待遇を改善する」。安倍晋三首相らはそう繰り返してきた。改正で、3年を超えて派遣する場合は派遣会社が受け入れ先企業に直接雇用を要請するとしたのがその根拠だ。
 だが企業には要請に応じる義務はない。厚労省の2012年版「労働経済の分析」によると、企業が非正規を活用する理由で最も多いのは「賃金節約」だ。派遣社員の賃金水準は正社員の6~7割である。応じる義務がなければ、要請に応じて賃金節約を放棄するなど、まずあり得ない。首相らが「虚偽答弁」と非難されたのもうなずける。賃金が節約でき、人員整理もしやすい派遣が無期限にできるのだから、今後正社員から派遣への置き換えが進むのは火を見るより明らかだ。
 前述の厚労省資料によると、結婚した割合は非正規で正規より男性で30ポイント、女性で10ポイントも低い。労働条件改悪は格差社会拡大を招き、人口も減少させるのである。

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Comments

いちいちうなずいて拝見いたしました。派遣法の改正で格差や貧困はますます拡大するでしょうね。多様な働き方と言う言葉は「使い捨ても含めた都合のよい働かせ方」ということです。この派遣法がとおった日、民主党の支持母体でもあるさる労組が批判演説をしていました。こちらはアリバイづくりだと思うのですけど、雨の中、足をとめておおぜいの人が聞いていたのが印象的です。「憲法9条を守り抜きます」もよいのですけど、こうした目前の生活に関連する雇用法制の改悪、残業代タダ法案や首切り自由化法案もそうなのですが、こうしたものの反対をもっと声をあげてするべきではないのでしょうか。安保法制に反対する熱心さで派遣法の改悪に反対していたら…結果は違ったのかもしれませんね。

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