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 マイナンバー(共通番号)制度の仕組みとその危険性

  法学館憲法研究所「今週の一言」より、白石 孝さん(プライバシーアクション代表/共通番号いらないネット代表世話人)のテキスト。 現状、課題などの整理されている。
秘密保護法、盗聴法の改悪とともに管理国家化の道を進めるもの。
【マイナンバー(共通番号)制度の仕組みとその危険性  白石 孝 8/17】

【マイナンバー(共通番号)制度の仕組みとその危険性  白石 孝 8/17】

1 マイナンバー(社会保障・税番号)制度のしくみ
 
(1) 個人番号の付番と通知
 計画通りなら10月5日に、住民登録されて(住民票コードが付いて)いるすべての人に、新たな12桁の個人番号(マイナンバー)が付番され、その番号が「通知カード」により「登録世帯」単位に「簡易書留」で通知される。その際、個人番号カードの申請書も同封される。5,200万通の簡易書留は、果たして全部配達されるのか。そして、この時点で多くの問題や混乱が発生するだろう。

(2) 通知カードと個人番号カード 
 政府は個人番号カード取得を強く促進、初年度に1千万枚、16年度に500万枚の無料化予算を盛っており、03年以降の住基カード発行総数約800万枚を一気に追い抜こうとしている。自民党案では2019年3月までの3年3か月で8,700万枚発行となっている。さらに5月には「マイナンバー制度利活用推進ロードマップ」が公表され、2020年を「ターゲットイヤー」とし、「ワンカード」化、生体認証(指紋、虹彩など)の登録までが俎上にあがった。番号カードを大半の人に所持させ、国家身分証としての性格にしていく意図がみられる。

(3) 法人番号 
 初めて法人にも13桁の番号が付けられる。強制付番と任意付番とがあり、当面は登記法人に付番される。しかし、所得の捕捉と情報連携が目的なので、個人事業主や人格なき社団も視野に入っているとみるのが妥当だろう。国税当局が今後どの程度対象を拡大させるのか、予断を許さない。なお、法人番号は変更不可で、公開される。

(4) 膨大な経費  
 導入当初2~4千億円、以降の運営経費数百億円と言われてきたが、2014年度、15年度予算から徐々に具体的な数字が見えてきた。今のところ2か年度で2,200億円が計上済み。しかし、これは政府予算であり、地方自治体の持ち出しは約3千億円とされ、なおかつ民間の経費(社会的インフラコスト)は想定すらされていない。すべての法人や事業者が何らかの対応をしなければならないので、社会全体では1兆円を超える相当な額になるだろう。(浦野広明立正大客員教授は、ICT業界の売上げは3兆円と述べている)

(5) 法定受託事務  
 住基ネットは「自治事務」だった。その結果、東京都国立市や福島県矢祭町のような住基ネットからの離脱が現実化した。(当初は横浜市や杉並区など多くの自治体も不参加を決断)しかし、今回は「法定受託事務」と法定化されている。まさに、今回の番号制度は国策そのものだ。

(6) 官に限定で利用も例外規定が曲者 
  「官の分野に利用を限定」と言われていたが、当初から例外規定を盛り込み、政令公布により26項目が明記された。捜査関係での利用には歯止めがなく、特定個人情報保護委員会のチェックすら効かない。

(7) 付番から漏れる少数者  
 番号制度の付番の原則は、住民票コードから12桁の個人番号を組成するとなっているので、住民票コードを持っていない人は、番号制度から「漏れる」ことになる。これが、公的サービスからも排除されることに繋がるかどうかが懸念される。
 また、番号通知の通知カードは世帯単位で送付するとされており、DV被害者でトラブルが発生しないか、登録地と異なる場所に暮らしている場合はどうなるかなど、今年10月に少なからずトラブルが発生するだろう。ようやく8月に入って、それらの対応策を公表した。

(8) 中間サーバーの危うさ、遅れる準備 
 情報連携ネットワークの核となる「中間サーバー」、民間事業者でのトラブルなど、多くの課題があり、自治体や民間事業者の準備も遅れ、本当にスケジュール通り実施可能か疑問視されている。

2 日本年金機構における年金データ流出事件

 私たちは6月8日に緊急記者会見を行い、声明を発表、政府に送付した。また、7月6日には自治体議員104名が連名で同趣旨の下記共同アピールを発した。

■私たちは、番号利用拡大法案の廃案及び番号法10月施行の延期を求めます

<趣旨>私たちは6月1日に明らかになった日本年金機構からの大量の年金データの流出事件は、年金機構だけが特別に問題を抱えていたと見ていません。現代社会では、ITに関わる事件や事故はシステムでも人的にも起こることを前提とすべきです。そして、安倍政権が今後進めようとしている「マイナンバー 」(共通番号)制度は、年金機構以上に個人情報流出の可能性がある危険な制度と言わざるをえません。
 しかし、政府も全国市長会も年金問題とマイナンバー問題とを別のものとして扱い、全国市長会にあっては、6月10日に緊急決議をあげ、マイナンバー制度の計画通りの実施を求めています。
 私たち自治体議員は、この間議会において多くの議員が質問をしてきましたが、そこからは制度の安全性や利便性、また自治体としての強い責任感を確信できる答弁は得られませんでした。そこで、自治体議員連名(これまで取り組んできた経過から前・元職を含む)により、下記の点を全国知事会、市長会、町村長会そして政府に対して求めます。

<要請事項>
1.年金情報流出事件徹底解明、番号利用拡大法案を廃案に
2.番号の通知を延期、導入スケジュールを全面的に見直すこと
3.年金システムの開発を停止し、共通番号制度そのものを撤廃

3 管理国家化への道が見えてきたこと

 秘密法(特定秘密保護法)、「盗聴法」対象分野の拡大、共謀罪が再度浮上  安倍政権は、2014年12月に「特定秘密保護法」を施行、さらには大幅な会期延長を強行した本通常国会に「司法制度改革」という名目で、「盗聴法(通信傍受法)」の対象刑罰の大幅拡大などの大改悪案を上程した。1999年に成立した盗聴法は、強い反対もあり、対象を薬物、銃器、組織的殺人、集団密航に限定していたが、窃盗、詐欺、傷害、児童ポルノなどへと拡大するとともに、NTTドコモなどの通信事業者の立会いを不要とし、捜査機関内で行えるようにするという内容だ。

 秘密保護法や盗聴法の対象が「一部の凶悪な犯罪」だけでなく、一般市民が場合によっては関連するものになるということは、捜査や監視の対象が一般市民に向くことを意味する。

4 共通番号制ではなく、分野別番号制度の整備を検討すべき

(1)利便性と有効な投資効果 
 ①利便性を求めるとしたら、官民広範囲での利用に行き着く。1で前記したように、自民党と政府IT総合戦略本部(安倍首相が本部長)が「ワンカード化」方針を打ち出したことは、民主党政権時の導入目的であった「社会保障・税の一体改革」から大きく方向転換し、成長戦略と市民管理・監視の番号・カード制度に進むことを物語っている。

 ②可視化した身分証明・登録証~見える番号化、つまり①で示した通り「ワンカード化」とは、すべての人にマイナンバーカードを持たせることを意味する。国家公務員身分証は既定方針で16年1月から実施するが、地方公務員にも積極的に所持させる指示が出ている。その後は運転免許証や医療保険証をはじめ、クレジットカード、民間企業社員証、ポイントカードなど多岐にわたるカードを統合する方向だ。そのうえで生体認証、つまり指紋や虹彩も取り込むことまで触れている。2020年(東京オリンピック)を「ターゲットイヤー」にするという目標のもとで、大きな変化がわずか5年で到来することになる。当面は18年度に法改定が見込まれ、そこがポイントになる。

(2)多くの人が共通番号制と個別番号制を混同~共通番号制先進国の今
 推進派もマスコミも政治家も番号制の基本を理解していないか、混同しているか意図的に歪曲している。マイナンバー制度と同様の制度を実施しているのは、韓国やスウェーデンなどほんの一部でしかない。その韓国では広く民間分野で同じ個人番号が使用され、インターネットでも「実名制」を導入、携帯電話も番号確認で販売されたため、個人番号に紐づいた個人情報が大量に流出する事態となった。スウェーデンは、高福祉高負担を担保するため、住民登録情報ばかりか所得・資産情報も公開されており、日本がそれに倣うことは想定すら出来ない。
 日本と同じ番号制度ではないが、民間で広く個人番号(社会保障番号)が使用されたアメリカでは、7%の世帯で成りすましなどの被害に遭い、国防総省では独自番号に切り替え、高齢者医療制度でも個人番号使用を止める大議論が起こっている。
 G8(米、加、英、独、仏、伊、露、日)諸国で、「マイナンバー(官民共通番号)制度の国はなく、ドイツやイタリアは納税分野に限定した番号制度を導入していることからも明らかなように、いわゆる「先進国の番号制度」ではない選択を日本はしようとしている。

(3)社会保障・税の一体改革イコール共通番号制度ではない
 ①納税者番号制度としての強化で、「税捕捉」のいくつかの課題はクリアできる。共通番号制ではなく納税者番号制度を実施しているオーストラリアでは、納税者番号が強制ではないうえ、例えば信用度の低い取引き相手には番号を告知せず、その時は最高税率で源泉徴収しても、確定申告時に還付請求が出来る。そして「記入済み申告書」、つまり、税務当局が年間を通じて納税者の所得情報を把握し、それを記入した申告用紙が送られてくるということまで可能になっている。

 ②消費税率引き上げに関わる逆進性対策をめぐる自公民の考え方は不一致で、マイナンバー制度導入当初の理由のひとつはなくなっている。

 ③給付付税額控除はマイナンバー制度を実施していないイギリス、ドイツなどでも導入されており、マイナンバー制度は必要十分条件ではない。

5 その他自治体での課題など

 なお、紙面の都合から、自治体での課題については、項目のみ列挙しておく。
(1)特定個人情報保護評価
(2)個人情報保護条例
(3)自治体独自利用の検討
(4)財政~自治体の持ち出し
(5)通知カード未達対応、カード発行時の本人確認などの課題、人員配置はどうなる~市民課はパンクする(移動時期のカード処理) 

6 番号法改定法案を廃案に、番号制実施の延期と全面的な見直しを

(1) 年金データ流出事件の徹底解明、それまではマイナンバー実施は凍結、延期などを6月8日に記者会見、政府にも要請書を送付、国会対策を進める。7月6日には自治体議員共同アピールを公表した。
(2)「個人番号拒否」=通知カード受け取り拒否しても番号は付いてしまう。
(3)「個人番号カード」を普及させない取り組みは出来る。
(4) 利用範囲、利用分野を拡大させない~共通番号化させない取り組みは極めて重要。
(5) 自治体へは、情報公開を求める~進捗状況、コスト、保護体制など
(6) 自治体の独自利用(横出し、上乗せ)はさせない~番号分野の拡大につながる、ベンダーの儲けに直結する。自治体に業者の見積もりを精査するだけのノウハウはない   。
(7) 5年に一度実施される国勢調査も2015年10月実施~調査方法では事前にインターネット回答を選択実施するという大きな変更がある。住民のプライバシー保護の観点からの取り組みが必要だ。

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