再稼働 リアルな危機は無視する安倍首相
戦争法案では、ファンタジーな「危機」を語り、「備え」を強調するが、原発の「リアル」な危機・課題は無視。これだけでも、国民の安全など眼中にないことがわかる。
吉井議員の警告に「全電源喪失はおこらない」と答弁〔書〕したのは安倍首相であり、福島原発事故にきわめて重い責任がある。その安倍首相のもとで、課題山積みのまま再稼働が狙われている。反省する能力がない。
そして・・・ 規制委「再稼働の判断には立ち入らない」、政府「規制委で安全性が確認されれば、地元了解の上で、原発の運転を順次再開していく」、というが・・・
・規制委は「安全だということは申し上げない」 →誰が「安全性の確認」をするのか
・地元同意も電力会社の勝手なルール → 「地元」とはどこかなど法的根拠なし
事故前と無責任体勢も変わっていないということ。
【原発事故 賠償備え貧弱 川内再稼働目前「無責任」の声 東京 8/9】
【週のはじめに考える 「福島」が伝わらない 東京・社説 8/9】
【特集ワイド:「忘災」の原発列島 本当に再稼働でいいのか 毎日 8/9】
地元同意・・・今までと違い、 「安全神話」が虚構と明確になった今、同意とは「事故がおこることを受け入れます」ということ。事故の責任などとれもしないのに・・・ 堕落ですね。
【原発事故 賠償備え貧弱 川内再稼働目前「無責任」の声 東京 8/9】東京電力福島第一原発事故では、莫大(ばくだい)な賠償金が生じているが、新たな原発事故が起きた場合、資金的手当てはどうなるのか。政府は福島事故での賠償の枠組みを使う方針だが、実は十分な手当てのめどは立っていない。九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)が十一日にも再稼働する見込みだが、賠償の備えはほとんどなく、専門家から「無責任だ」との声が上がっている。 (荒井六貴)
福島の事故では、避難を強いられた住民らへの補償や除染などで少なくとも九兆円が必要とされる。これとは別に、事故収束費用は二兆五千億円が、かかるとみられる。事故発生時、東電は最大千二百億円の保険金しか備えておらず、事故と賠償への対応でたちまち資金的にも行き詰まった。
事態を打開するため、政府は二〇一一年九月、原子力損害賠償機構(現・原子力損害賠償・廃炉等支援機構)を設立。国債で調達した資金を機構を通じて東電に流し、一時的に肩代わりする形で支援してきた。
政府は、新しい規制基準による原子力規制委員会の審査が終わった原発は再稼働させる方針。新たな原発事故が起きたときの資金的な備えとしては、同機構の仕組みを使い、新たに電力各社から資金を集め、プール金とする方向で検討を進めている。ただ、問題なのは肝心の資金をどう集めるか。本来は、事故に備えるプール金のはずだが、実際は福島事故への対応で、原発を有する事業者や核燃料サイクルに関わる日本原燃の十一社は、政府が肩代わりした賠償に必要な資金の返済を共同で始めている。新たな事故への対応になっていない。
返済金額は二〇一四年度だけで二千二百三十億円。負担額は保有原発の出力などに応じて決まり、事故を起こした東電は千百六十七億円と最も高いが、関西電力は三百十五億円、中部電力は百二十四億円、北陸電力は六十億円とかなりの額を支払っている。こうした状況が二十年ほど続く。
福島事故と同等の九兆円を積み立てるとすると、各社の負担額は千六百億~三兆千三百億円に達する。米国のように一兆円規模のプール金制度を設けるとしても、二百億~三千五百億円が必要になる。
九電の担当者は「機構への負担金は、福島の賠償というより、自社の原発で事故が発生した時に国の支援を受けるための備えとして支払っている」と、新たな負担は不要との認識を示している。
経済産業省資源エネルギー庁の担当者は「最終的には、再び国債を発行してしのぐしかない。事業者が、追加の負担に耐えられるかどうか分からず、新しい枠組みは必要になるかもしれない」と、検討が進んでいないことを認めた。◆相当額の担保必要
大島堅一・立命館大教授(環境経済学)の話 原発を動かす選択をするなら、事業者は損害賠償に充てる相当額の担保が必要だ。資金的裏付けがないまま、稼働させるのは無責任。稼働で利益を得ようとしているのに、賠償のリスクは負わないというのはおかしい。福島の事故で、どれほどのお金がかかるか分かったはずで、もう言い訳はできない。「原発のコストは安い」と言うなら、リスクは事業者が負うべきだ。
【週のはじめに考える 「福島」が伝わらない 東京・社説 8/9】九州電力の川内原発が再稼働の見込みです。電力が足りている今、経済が理由のようです。「同じ思いをしないで」と福島の人は願っています。
「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟(生業訴訟)原告団のメンバーが、九日から川内原発のある鹿児島県薩摩川内市を訪れ、集会などに参加する。原発は経済的なメリットと引き換えに「ふるさと、生業」を失い、未来を描けなくなるという現実を伝えるために。◆原発さえなかったら
原発がある福島県沿岸部の浜通りでも、経済効果はありました。「県内でも貧しい地域で、出稼ぎが一般的だった。原発の建設工事が始まると、地元で仕事ができ、子どもを高校にやれるようになった」と話す人もいます。
東京電力福島第一原発事故で、放射性物質は県境を越えて東日本に広がりました。原発のある大熊町と双葉町、北隣の浪江町の広い地域は、三十年間は戻れない帰還困難区域になりました。
あれから四年五カ月。福島県内では今も新聞やテレビが大量の関連ニュースを伝えています。しかし、県外には届きません。
生業訴訟原告団は今年から原発立地自治体を訪ね、自らの経験を伝えるキャラバンを始めました。
先月、佐賀地裁で開かれている玄海原発差し止め訴訟では、福島県二本松市の農業根本敬さんが意見陳述をしました。自宅は原発から六十キロ離れていますが、「(事故直後)水田の土は一キロあたり五〇二〇ベクレルでした。風評ではありません。実害です」と広域な被害状況を説明。
「相馬市の酪農家は、フィリピンから嫁いだ妻をフィリピンに戻して、黒板に『原発さえなかったら』と書き付けて命を絶ちました」と語りました。◆記者も知らない、なぜ
酪農家の自殺は、福島県ではよく知られた悲劇です。全国ニュースにもなりました。弁護団事務局長の馬奈木厳太郎(まなぎいずたろう)弁護士は昨年秋、鹿児島県の地元紙記者から取材を受けたとき、この話を記者が知らないのに驚きました。この記者だけか、それとも…。これがキャラバンを始めるきっかけになりました。
「今まで福島以外の人に伝える努力が足りなかった。あらゆる機会をとらえて被害実態などを伝えたい」と言います。
避難計画では、原発から三十キロ圏内を避難などが迅速に行われるよう準備しておく地域「緊急時防護措置準備区域」と定めています。川内原発では、ここに多くの医療機関があります。
福島では、第一原発から二十二キロ南にある高野病院(広野町)が、高野英男院長の判断で、避難をしませんでした。停電、断水にもめげず、約百人の入院患者の命を守りました。
しかし、それは簡単なことではありませんでした。たとえば、給食や清掃は外部委託でした。派遣元の会社は原発に近いので派遣をやめました。子どもと一緒に避難しなければいけないスタッフもいました。残った看護師らスタッフと入院患者の家族までが手伝って乗り切ったのです。同病院は今、避難用のバスを所有し、緊急用の食料や水を積み込んでいます。
高野己保(みお)事務長は、その記録「高野病院奮戦記」(東京新聞出版部)を川内原発から三十キロ圏内の十八病院に送りました。一通の礼状には「うちではできません」と書かれていたそうです。
なぜ、福島の情報が県外に届かないのでしょうか。
災害ジャーナリズム論が専門の近藤誠司・関西大准教授は「原発事故に関する(全国紙の)記事は、二〇一一年に比べて二年目は半分、三年目は三分の一、四年目は四分の一に減った。これは大きな自然災害の報道に共通する傾向だ。量だけでなく、質(内容)も変わる。暮らしなどの現状をきめ細かく伝えなくなっていると思う」と話します。◆同じ思いをしないで
原発は地域を豊かにする、というのは本当でしょうか。
経済学の観点から原発を研究している清水修二・福島大特任教授は「建設から半世紀の間に福島県に来たお金は、全部ひっくるめて二千八百億円ぐらい」と見積もっています。巨額に見えますが、東電の二〇一〇年度の営業利益は単独で三千五百六十六億円。一年分のもうけよりも少ないのです。
清水さんは、よく講演を依頼されます。どこにでも行って話すことにしているそうです。
「私と同じ思いをしてほしくない、と言って経験を語る人がいるでしょ。以前はそういうのをテレビで見て、ちょっとうそっぽいなあ、と思っていたんですよ。自分が被害者になって、あれは本当の気持ちだと分かりました」
【特集ワイド:「忘災」の原発列島 本当に再稼働でいいのか 毎日 8/9】
「安全神話」は虚構だったのを忘れたのだろうか。新規制基準下では初めて、九州電力は11日にも川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)を再稼働させる。東京電力福島第1原発事故から4年5カ月の年月を重ねても、課題は山積したままだ。それでも、この国は、原子炉に再び火をともそうとしている。
◇責任所在、曖昧なまま 避難計画「自治体任せ」
「原発稼働の一義的な責任者は事業者。一方、政府は原子力規制委員会において安全性が確認された原発は再稼働を進める判断をしている」
菅義偉官房長官は4日午前の記者会見で、川内原発の再稼働を判断するのは誰かと質問されると、こう答えた。
では、規制委はどのような認識なのか。九電が策定した地震や津波対策などは、東日本大震災後の新規制基準に適合する、と発表した昨年7月の記者会見を振り返ろう。田中俊一委員長の発言だ。「基準への適合はみているが、安全とは私は言わない」
つまり、政府は規制委に安全性の担保を求めているが、その規制委は「絶対に安全」とは口にしない−−。過酷事故を経験したのに、国の責任の所在は曖昧なままなのだ。
とはいっても、政府は昨年4月に閣議決定したエネルギー基本計画で原発を「重要なベースロード電源」と位置づけた。当然、再稼働に慎重な意見も多い地元では「政府のしかるべき人が説明すべきだ」との声が根強い。でも、原発政策を所管する宮沢洋一経済産業相は7月28日の記者会見でこう言い切った。「再稼働のタイミングで鹿児島に入る予定はない」
原子力資料情報室の伴英幸共同代表はあきれ顔だ。「政府は住民の合意を得て再稼働を進めたいと説明していたはず。それなのに、基準に合格といって原発を動かすのはおかしい。それに誰が責任者なのかを曖昧にしておくのは、もし事故が起きても責任追及をかわすためではないか」
再稼働に不可欠な住民の避難計画も心もとない。
そもそも新規制基準の要件には、過酷事故が起きた際の避難計画の策定が入っていない。「所管の原子炉等規制法の対象外なので」というのが原子力規制庁の言い分だ。避難計画は、災害対策基本法に基づいて「自治体任せ」になっているのが実情だ。
海外は違う。国際原子力機関(IAEA)は原子力事故対策で「5層の防護」を定めている。その内訳は、3層目までが過酷事故の防止▽4層目が過酷事故が起きた時の対策▽5層目が放射性物質が敷地外に漏れ出た場合の防災対策−−となっている。例えば、米国では、原子力規制委員会(NRC)が防災対策について認可をしないと原発は動かせない。
原子力行政に詳しい吉岡斉・九州大教授は「米国ではNRCと、米連邦緊急事態管理局(FEMA)が住民の避難計画をダブルチェックする。それに引き換え日本は無責任です。事故が起きた時に住民の安全を確保するために一つの自治体で対応するなどあり得ない。法改正をして避難計画の妥当性を新基準で審査すべきだ。国は怠けているのです」と厳しく批判する。
では、鹿児島県が策定した川内原発の避難計画の実効性に問題はないのか。県は、福島原発事故で避難中の入院患者ら要援護者が犠牲になった事例を念頭に対応策をまとめている。原発から半径10キロ圏の施設は避難先を確保し、10〜30キロ圏の施設は事故後に調整するなどとした。
対応策は国から了承されたが、住民には不安が残る。原発から約17キロ離れた同県いちき串木野市で、高齢者デイケアサービスを運営する江藤卓朗さん(58)は「通所施設なので、1人暮らしや老老介護の利用者も多い。避難するといっても、排せつの処理など日ごろの世話を誰がするのでしょうか。現場のことを考えていない机上の空論です」。
また、県は今年6月、原発5キロ圏に暮らす住民約4900人のうち、自家用車で避難できない約3000人を避難させるため、バス事業者33社と緊急輸送協定を結んだ。運転手の被ばくは、一般人の限度(年間1ミリシーベルト)を下回るという条件を設定した。
これに対して、国際環境NGO「FoE Japan」の満田夏花理事は「風向きや事故の程度など最新の情報を、どうやって運転手に伝えるのでしょう。最新の避難計画に基づく訓練もしていないのはおかしい」と批判する。
実際、九電は7月下旬、重大事故の発生を想定した大規模な訓練を実施した。施設内の訓練で、住民の避難訓練は行われていない。望月義夫環境相は7月末の記者会見でこう述べている。「避難訓練は再稼働の条件としては考えていません」。要は、再稼働と住民の避難訓練はセットではないということなのだ。◇山ほどある未解決の課題
そもそも福島の事故が収束しないままの再稼働は許されるのか。
今も福島県民11万人が避難を続け、事故原因も不明な点が多い。「原子炉を冷やすのに必要な交流電源がなぜ喪失したのか。東電や規制委員会は電源設備が津波で被水したためとしていますが、特に1号機の場合、津波襲来前に電源喪失が起きた可能性があります」。こう語るのは、元原発技術者で国会事故調委員を務めた田中三彦さん。「私が参加する東電の柏崎刈羽原発再稼働問題を議論している新潟県の技術委員会でも、電源喪失に加え重要な配管や設備が地震の揺れで破損しなかったかなど、福島原発事故について今も東電と議論しているところです」
さらに政府や福島県は、被災者支援に区切りをつける動きを強め、「居住制限区域」と「避難指示解除準備区域」の避難指示を2017年3月までに解除する目標を閣議決定した。これに伴い、事故前は両区域で暮らしてきた住民の精神的損害賠償は18年に一律終了。また、避難指示が出ていない地域から避難した自主避難者についても、県は避難先の住宅の無償提供を17年3月で打ち切る方針だ。
住民の怒りは収まらない。被災者約4000人が国と東電を相手取り、除染による原状回復と慰謝料などを求めている「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!福島原発訴訟」の原告団長の中島孝さん(59)は憤る。「支援を打ち切れば、被災者はいなくなったように見える。原発を再稼働させていくには、俺たちの存在がきっと邪魔なんだよ」。中島さんは地元の福島県相馬市で約30年前からミニスーパーを経営している。「あらゆる人が仕事を失ったり、避難したりするなどつらい思いをしている。自分たちのような思いを二度と味わわせたくない。これだけの事故を起こしても、国や東電の誰も責任を取っていない」と怒りを爆発させるのだ。
課題はそれだけではない。前出の伴さんは「川内原発の場合、火山の巨大噴火が起きるリスクもある。テロ対策も十分とは言えません。また、除染で出た指定廃棄物の処分場や、原発運転時に発生する高レベル放射性廃棄物の最終処分場の問題なども解決していません」と指摘する。
主な課題をまとめた表を見てほしい。例えば、原子力施設で事故が起きた時の損害賠償制度の見直し。事業者に無限責任を課している現行制度を改め、国の責任を明確にするよう原子力委員会の専門部会で検討中だが、結論は出ていない。
何といっても最大の課題は国民の理解を得られていないことだ。毎日新聞が1月に実施した世論調査では、川内原発再稼働に反対が54%、賛成が36%と大きな差が付いた。報道各社の世論調査も反対が賛成を上回る。こうした状況での再稼働について、菅官房長官は4日の記者会見でこう述べた。「それについては地元の議会が判断しているのではないでしょうか」
確かに鹿児島県議会は再稼働に同意した。でも前出の田中三彦さんは危惧する。「新規制基準は重大事故の発生を防ぐためのものではなく、『重大事故は起きる』ことを前提としたもの。再稼働を地元が認めることは、重大事故が起きてもやむなしという地元の意思表明でもあるわけです」
改めて表を見てほしい。原発を動かすのなら解決すべき課題は山ほどあるのだ。それを無視して、この国は再稼働に突き進もうとしている。本当に、もう一度、立ち止まらなくてもいいのだろうか。【石塚孝志】
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