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「経済の悪循環」 GDP年率-1.6%

14日発表の2015年度「経済財政報告」の「経済の好循環が着実に回り始めている」という主張は、はやくも崩れ去った。
・上場企業収益  前年同期比24%増(日経)
・「家計最終消費支出」前期比▲0.8%、2兆3200億円の大幅な落ち込み
・民間投資でプラスは住宅のみ。都心のマンション建設はバブルである。
・在庫の増加と輸入減がプラス効果をもたらしており、実態はさらに悪い。
・そして輸出減。中国経済の減速の影響。いかに日中が相互依存の関係であるかがわかる。

 輸出量が伸びない中での輸出大企業の収益改善の源泉は、円安・物価高で犠牲をしいられる国民・中小業者からの所得移転でしかない・・・先日の備忘録より。 
経済の6割を占める家計消費が落ち込み。大企業はもうけの多くを賃金・設備投資でなく、内部留保を他見上げ、投機マネーとして運用しているのだから「好循環」が生まれるわけがない。

【焦点:実態悪化のGDP、輸出・消費不振で政府に先行き懸念 ロイター8/17】

【踊り場経済には景気対策でなく改革を  日経8/18】
【「異次元金融緩和」 の階級性  大企業の業績回復、米国への所得移転(メモ) 2015/8】

【焦点:実態悪化のGDP、輸出・消費不振で政府に先行き懸念 ロイター8/17】 [東京 17日 ロイター] - 2015年4─6月期国内総生産(GDP)は、成長率の数字自体よりも実態が悪い事を示しているとの指摘が民間エコノミストから相次いでいる。日用品価格の上昇による消費の弱さや中国やアジア向け輸出の急速な悪化がその要因として指摘され、政府内にも落ち込みが一時的なものに留まるかどうか、先行きを懸念する声が出始めた。

<在庫増と輸入減のGDP押し上げ、喜べない内容>

「見かけの数字以上に内容が悪すぎる」──。今回のGDPを見て、民間調査機関からはこんな声が相次いでいる。年率1.6%のマイナス成長は、事前の平均的な見通しより多少良かったものの、在庫投資が予想より上振れ、輸入が思ったより減少した。
内需の低迷で在庫が溜まり、輸入量も需要減に対応して減ったとみられる。「在庫と輸入による成長率押し上げは決して喜べる話ではなく、消費の下振れも予想以上に深刻だ」(第一生命経済研究所 ・主席エコノミスト、新家義貴氏)との指摘が出ている。
多くの民間エコノミストによって注目されているのが、消費マインドの悪化だ。4─6月期の民間最終消費は、1年ぶりにマイナスとなった。政府内からも「デフレマインドが払しょくされていない」との声が上がる。
政府関係者からは、原油安や円安の恩恵を受けている企業が、賃上げや設備投資に対し、期待通り動いていないとの不満がくすぶる。

<停滞する消費性向>

今回のGDPの結果について、甘利明・経済再生相は17日の会見で「マイナス成長は、天候不順の影響など一時的な影響がかなり大きい」とコメントした。

だが、本当に7─9月期から景気が上向くのか、民間エコノミストだけでなく、政府関係者の一部からも懸念の声が漏れている。
例えば、政府が重視する個人消費。エコノミストの中には、猛暑効果や夏物セールの後ろ倒し効果、ボーナス支給といった追い風で持ち直すとのシナリオを描く声が多い。

だが、その一方で消費性向が低下しているために、回復は極めて緩慢との見方が広がっている。
安倍晋三政権発足以降、ほぼ74%以上で推移してきた消費性向は、今年4月と6月は73%台に低下。支出に慎重姿勢を強めていることがうかがえる結果となった。背景には、物価を差し引いた実質値でみた賃金の伸びが鈍い現実がありそうだ。

今年の春闘で、連合の参加労組のベアは平均0.7%、日本全体では概ね0.5%程度に過ぎず「まだまだ力不足」(内閣府幹部)という状況になっている。
政府内には今年秋からの最低賃金の引き上げ実施に伴い、その効果が勤労者全体に波及するはずとの読みもあるが、早くも「来年の春闘での賃上げにも、引き続き取り組むことになる」(政府関係者)との声が上がる。

<中国含めアジア輸出が不振>

ところが、賃金の原資となる企業収益の先行きに不透明感が出始めている。4─6月期GDPをみると、輸出の落ち込みが目立っている。前期比4.4%もの減少は東日本大震災でサプライチェーンが機能しなくなって以来の大きさだ。
中国やその他アジアの景気減速が明らかに影響しており、アジアの成長をテコに事業の拡大を図ってきた企業には痛手となった。
このため「輸出の低迷が長引く恐れがあり、在庫調整圧力の高さから生産活動の停滞が続く可能性があるなど、景気の下振れリスクは高い」(ニッセイ基礎研究所・経済調査室長・斉藤太郎氏)との見通しも出てきた。

輸出や海外生産の停滞は、国内生産や設備投資にも波及しかねない。4─6月期はマイナンバー対応のシステム投資や物流効率化、イノベーション投資など、老朽化設備の更新に加えて新たな投資の潮流が期待されていたが、ふたを開ければ3四半期ぶりのマイナスに落ち込んだ。

今回の結果は、内外需ともにしっかりと回復するというシナリオの現実味を問うものだ。本来であれば、原油価格下落に伴う海外からの所得流入が続き、企業収益から家計所得と設備投資へと好循環が働くはずだった。

ニッセイ基礎研によれば、交易利得は1─3月期の5.2兆円に続き、4─6月期も2.1兆円の改善となっている。
しかし、GDP統計から明らかになったのは、円安の副作用や企業・家計のデフレマインドにより支出に回っていない点だ。

この結果、7─9月期のGDPは回復力が弱くなると見るエコノミストが増えている。「15年度の成長率見通しはプラス1.0%を割り込む」(みずほ証券)との見通しも出てきた。
そうなれば政府、日銀のいずれの見通しも下回り、経済対策と年内の追加緩和観測が強まる、との声も市場で浮上してきた。
17日の日経平均.N225が取引進行につれて、上値を切り下げてきたのも、こうした「見かけよりも悪いGDP」の実態を織り込んできたからもしれない。
(中川泉 編集:田巻一彦)

【踊り場経済には景気対策でなく改革を  日経8/18】  4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.4%減、年率換算で1.6%減となった。  3四半期ぶりのマイナス成長は、日本経済が一時的に停滞する「踊り場」の局面に入ったことを示唆するものだ。  マイナス成長の主因は、輸出から輸入を差し引いた外需と、個人消費が落ち込んだことだ。  輸出は中国を含むアジア向け、米国向けが振るわず、品目ではスマートフォン向けを含む電子通信機器、建設機械、半導体製造装置などで減少した。  今年前半の世界貿易は、中国向けを中心に弱含んでいる。その影響が日本経済にも及んだ格好で、先行きは注視する必要がある。  内需の柱である個人消費が減ったのは、6月の長雨による天候不順といった一時的な要因が大きいと政府はみている。  企業収益は過去最高水準であるのに、GDPが落ち込んだ理由は、企業の海外部門の収益を含めるか否かの違いだ。  GDPに、海外からの利子・配当所得などを加えた国民総所得(GNI)というデータがある。実質GDPは前期比マイナスだったものの、実質GNIは前期比年率で2.0%増えた。  日本企業の海外子会社から得た所得を、いかに従業員への賃金、株主への配当、設備投資に振り向けられるか。今回のGDPは日本経済が好循環を続けていくための課題を示しているともいえる。  景気の先行きを過度に悲観視する必要はないだろう。雇用・所得環境の改善は続いている。先行指標である鉱工業生産の予測指数や景気先行指数は上向いている。設備投資もいちおう今年度は高水準の計画が予定されている。  問われるべきは、マイナス成長に陥りやすい日本経済の体質だ。今のところ4~6月期の成長率は主要先進国で最低だ。  日本経済の実力である潜在成長率は1%にも満たないとされる。成長の天井が低いため、国内外で起きた一時的なショックをうまく吸収できず、GDPが減りやすくなるというもろさを抱える。  規制改革で経済の新陳代謝を高めたり、法人実効税率を引き下げる道筋を早期に固めて日本の立地競争力を高めたりする。そんな改革を通じて潜在成長率を高めるのが王道だ。カンフル剤となる景気対策を打つことが答えではない。

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