原発は不良債権 ~四電財務資料から考える(メモ)
倫理面ではなく、電力料金、地域経済の視点から考えたもの。この問題で納得してもらえば、共同、運動はさらに地から強く発展すると常々思っている。
発電ゼロでも巨額の原発コスト・異次元金融緩和の影響による料金高、再生エネの普及の足かせ・・・などなど。
四電は、他地域への電気販売を事業の軸にしたため、実は地域内の消費に対する原発の影響は逆に小さいが、全国的に節電が進んだもとでは巨額のコストの矛盾が大きい。また、過去の設備利用率が平均で74㌫と高く、廃炉時の引当金の不足が比較的少ないと同時に、再生エネの「接続可能量」に伸びしろが残っていない、という点で、「不良債権」の典型といえる。
電力「自由化」が目前と迫っており、選ばれる電力会社となるためのビジネスモデルの転換を真剣に模索することが四電にとっても必要だと思う。
以下、先日の四国4県の県議で使った学習会の資料
【 原発は不良債権 ~電気料金、産業振興から考える 2015/5/22】
はじめに
・経済面、家計面から、原発の不経済性を明らかにすることは、共同の輪をひろげる力となる・・・
そのため・真のコスト論(安全対策費、バックエンド費用、原発賦課金など)ではなく、四電の財務報告書から検討
Ⅰ .2014年度の経営状況 決算資料、有価証券報告書
( 四国電力ホームページ 「IR資料室」に、財務資料が公開されている )
(1)2014年度の決算 「赤字」から「黒字」に転化
【連結】
経常利益 245.03億円 〔前年 ▲17.37億円〕
当期純利益 103.33億円 〔 ▲32.89億円〕
【単独】
経常損益 194.04億円〔 ▲81.17億円〕
当期純損益 93.40億円〔 280億円〕
→ 減っているが、前年は、特別利益〔関連会社からの配当〕342億円があり、正味は150億円の増
*四電の黒字化の説明「値上げによる収入増177億円、燃料使用量・価格低下で150億円削減」
【電力販売】 2年連続で、「量」は減少、「額」は増加 ( 前年度の決算報告 )
・販売電力量
電 灯 96.1%(99.9%)
電 力 97.5%(99.0%)
融通等 10.5%(111.9%)
計 97.1%( 99.7%)
・料金収入
電 灯 100.3%(106.9%)
電 力 104.1%(111.0%)
融通等 95.9%(146.5%)
計 102.3%(110.1%)
販売額5306.62億円 102.3%(5187.52億()
【電力供給】
火力93.3% 水力112.7% 新エネ157.2% 原発ゼロ
【電灯電力収入】
・電気料金の値上げによる増
177億円( 前年は+304億円) 2年計481億円
・ 燃調収入の増
54億円( 前年は、+118億円) 同じ 172億円
(燃料費調整制度 為替レートの変更などで、電気料金設定時の燃料価格との差を、料金に反映させるもの)
★値上げがないとすると ・・・ 14年度も 連結 ▲236億円 単独▲372億円 と「赤字」・・と見えるが
(2) 不要コスト 原発、アベノミクス
【原発コスト】 〔有価証券報告書〕
2012 574億円
2013 595億円
2014 642億円
★ 発電ゼロの原発に膨大なコスト ・・・・ 原発ゼロなら、値上げなくても、「黒字」だった。
【燃料費】 〔決算 説明資料、補足資料〕
①費 用
2014年 1415億円
2013年 1687億円
2012年 1574億円
(08年料金申請 1009億円)
原発停止で、燃料費増(輸入増)といわれたが・・・・
②燃料価格、為替レート
・燃料価格 14年 13年 12年 11年
石炭通関CIF(($/t) 93 108 127 144
原油通関CIF($/b) 90 110 114 114
LNG通関CIF ($/t) 800 836 864 825
・為替レート(円/$) 110円 100円 83円 79円
・・・ 全体として4年連続で、国際価格は低下、円安が大きく進行
★ 2014年 燃料費1415億円を・・・
13年度の為替レートなら 1286億円 ▲129億円
12年度の 〃 1068億円 ▲347億円 低くなる
・化石燃料の消費実績
14年 13年 12年 11年
石炭 t 328.8万 307.2万 285.9万 323.8万
重油 kl 73.6万 90.4万 102.3万 62.7万
原油 kl 14.1万 27.2万 27.1万 22.5万
LNG t 34.2万 37.5万 34.5万 33.5万
★不要コスト減なら、値上げなくでも、さらに500億円の黒字上積み。
→ 原発コスト642億円、アベノミクス効果347億円の計989億円。
値上げ分 481億円
Ⅱ再生可能エネルギーの普及の障害・・・「原発回帰」
(1) 接続可能量
年来、全国の電力会社による新規の自然エネルギーの売電契約の保留、停止が相次ぎ大きな問題に
《 経産省と電力会社は自然エネルギーの接続可能量の算出》
・前提 3.11以前の過去30年間の平均的な原発稼働率 ~ あまりで再生エネを購入する
四国電量 168万kW / 伊方1-3号機の発電能力 220万kワット
・太陽光発電の接続可能量 257万キロワット 設備認定281万キロワット
・風力発電 〃 60万キロワット 昨年夏時点34万キロワット、具体化している案件を含める余裕なし
★ 老朽化し、追加安全策の計画もない伊方1、2号機の再稼動を前提に、再生エネの道閉ざす。
②設備投資も、原発中心
電気事業計(連結) 原子力 原子燃料 火力 水力 送電
14年 595億円 201億円 48億円 79億円 42億円 45億円
13年 548億円 230億円 39億円 69億円 31億円 40億円
【 参 考 】
1. 2013年「四国電力 料金値上げ申請・詳細 2013年2月
今後280億円のコスト圧縮でも625億円の赤字として、値上げを申請
① 赤字の主要因 販売電力の激減が主要因 「収支の内訳」より
23年度 90億円赤字 融通収入 530億円
24年度 760億円赤字 〃 110億円
★ 赤字増670億円のうち融通収入減420億円
→ 全国的に「原発ゼロ」を乗り切る省エネが進んだ結果。 原発の膨大な固定費がネックに
②コスト増?の実態 「原価計算の概要」より
・原価増で一番大きいのは「その他」
13-15年 100億円、08年 611億円 と 489億円増
・その理由は、「その他」の主要項目「控除収益」の減
控除収益・・・融通などの売電収入 ~ 販売607億円減(109億円-715億円)
(参考 購入は、88億円減(654億円-743億円 ・・・契約内容の変更による)
★ 今後の赤字の625億円のうち、販売減の607億円がほとんど。
(① は「決算」レベル ②は「計画」レベル というだけで、 同じ内容の別の表現)
「赤字」の原因は、売電収入の大幅減 ~しかも 292億円の事業報酬はしっかり確保。
→融通電力販売が前提・・・省エネが進むと破綻するビジネス(巨額の固定費)モデル
2. 廃炉費用
(1).廃炉にかかわる費用(・原発ゼロの会に資源エネルギー庁が示した資料)
・四国電力 引当金不足411億円、原発施設の除却損911億円、核燃料の除却損569億円の計1976億円
・14年度末の純資産は3008億円。債務超過で破綻に陥ることはない。
(2)廃炉による損失も原発固定費約2年で回収できる。
A 廃炉、今後3年間の新規制基準対応など原発関連の投資・支出が不要・・ 931億円
廃炉による損失との差は、1045億円 発電しなくてもかかる原発固定費(約600億円) 2年分で回収可能
B 核燃料を他電力に同価格で引き取ってもらえば、1407億円。 原発コスト2年4カ月分で回収
・・・ただし、廃炉にともなう核廃棄物の処分場の計画はない / 当面、現地で保管か ?
雇用問題/ 廃炉作業はあるとしても、再生エネと一次産業のコラボなどであらたな対策が必要。
*参考 原発ゼロで事業報酬も減
事業報酬 = 発電用の資産(レートベース)× 事業報酬率
レートベース9734億円のうち1565億円減 8169億円(84%)となり、事業報酬も245億円と47億円減
3. 技術進歩(熱交換の効率化)で、安くなる電気料負担
① 「科学技術振興機構 「エネルギー・環境に関する選択肢」の国民生活への経済影響を解析 —家庭における省エネ対策の推進・所得階層間の格差是正がカギ—」 2012年7月25日
・消費電力が多い家電を1995製と05年製で比較すると、消費電力はエアコンで43%減、冷蔵庫は実に72%減になっている。今後、省エネ性能の向上や節電の広がり等で、年間の総電力消費量は現行1.1兆kW時から0.8兆kW時に約27%下がると予測。
原発ゼロなどで電気代の単価があがっても、家庭の電気代は今より半減も可能、としている。
②電力消費実績 電事連レポート
「2014年度の電力需要は,10社販売電力量合計で 8,230 億kWh,対前年伸び率(単位:億kWh,%) 3.0 %減と,4年連続で前年実績を下回った」
・10社 年間 電力需要
2010年 9,064 億kWh
2014年 8,230 億kWh 2010年比90.8%
・10社合成最大電力実績
(各電力会社のピーク時の計 電力会社毎に日時が違うために、実際の全国規模の最大値より高い)
【今夏(7月~8月)の電力需給について 2014/9 電事連】
2010年 17781万kW
2014年15274 万kW 2010年比85.9% 約2507万kWの削減
→ 設備容量は、年数日、うち日中の1-2時間という瞬間的に記録される最大消費電力を賄うために整備されており、このピークが小さくなることが重要 (なお、12-2月期の合成最大電力実績14795万kW)
A 原発50基 合計出力 4614.8万kW 削減分は54.3%に相当
B 実際の発電量の推計 3022.7万kW 削減分は82.9%に相当。
実際の原発の設備利用率(03~10年度の8年間平均65.5% / 定期点検や改修、事故などで止まるため、最高でも8割台)から、発電量を推計
→ この間の省エネ、ピークカットの取り組みは、原発の平均的な発電量の83%分に相当する成果。
注)原発付加金
使用済み燃料再処理等発電費、特定放射性廃棄物処分費、原子力発電施設解体費及び電源開発促進税の合計。1kw/h当たり0.80円が電気料金に隠されて請求されている( 2014年5月 塩川哲也・国会質問より)
再生エネ促進付加金 1.58円(15年5月より) この金額は、請求書に別途表記されている
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