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農地バンク低迷でアメとムチ 「予算の傾斜配分」 「耕作放棄地の課税強化」

   土地の大規模化をはかり、「競争力」をつけるという名目で導入された農地中間管理機構(農地バンク)が、目標の2割と低迷しているのは、農家が悪いと決め付け、政府は、①機構の役員を企業経営者らが過半を占める体制に見直す ②実績を挙げた県に予算配分などで優遇 ③耕作放棄地の課税強化 を目論んでいる。

 そもそも、中山間地など、耕作条件が不利地元は、担い手確保すら難しい状況になっている。課税強化は、農村の崩壊をいっそう加速するだけである。
 農業情報研究所は「耕作放棄も、転用「期待」も、そもそも農家に原因があるわけではない。農業・農民軽視の国の政策、専ら経済成長のために彼らが農民として生きていく環境を作るどころか壊してきた政策の帰結である。農地集積加速に向けての「改善」は、そうした政策の上塗りだ。ただし、これは単なる上塗りではない。民主主義への挑戦だ。「粛清」は民主主義国家においてはあるまじきものだ。他の分野と同様、ここでも「専制」がまかり通る。それを「専制」と意識することもなく、「粛々」と進めるところがなお恐ろしい。」と批判する。

【耕作放棄地の課税強化明記 農地集約へ規制改革会議 東京6/16】
【農地集積 目標の2割 農地バンク14年度実績 農水省てこ入れへ 日本農業新聞 5月20日】
【農地バンク低迷/地域の実情と声に向き合え 河北新報・社説5/20】

【農地集積が遅滞 政府は経済的強制へ ここでも進む専制国家への道   農業情報研究所 5/19】

【耕作放棄地の課税強化明記 農地集約へ規制改革会議 東京6/16】

 政府の規制改革会議が16日午後に公表する答申で、耕作放棄地への課税強化を打ち出すことが明らかになった。農地を集約するため、所有者が担い手へ積極的に貸し出すよう促す狙い。答申案で「2015年度に検討し、可能な限り早期に結論を得る」と明記した。
 耕作放棄地を集めて農家や企業に貸し出す「農地中間管理機構(農地バンク)」の活用促進策も示す。安倍政権は農業を成長戦略の柱の一つとしており、規制改革によって成長産業化を実現したい考えだ。
 規制改革会議は、解雇された労働者に支払う「解決金制度」導入検討なども答申に盛り込み、安倍晋三首相に提出する。

【農地集積 目標の2割 農地バンク14年度実績 農水省てこ入れへ 日本農業新聞 5月20日】

 農水省は19日、農地中間管理機構(農地集積バンク)について、稼働初年度となる2014年度の実績を発表した。機構が担い手に貸し出したり、売り渡したりした面積は全国で3万1000ヘクタール。政府目標(年間14万ヘクタール)の22%の水準にとどまった。貸し手から農地が集まらなかったことが低調の理由で、同省は実績に応じた予算配分などを検討し、機構の活動をてこ入れする方針だ。
 政府は今後10年で担い手の農地利用を全農地の8割に高める目標を掲げる。達成には年間14万ヘクタールを集積する必要がある。その切り札として稼働させたのが機構だ。農地を出し手の農家から一時的に借りて集約した上で、担い手に貸し付ける仕組みで、都道府県単位に設置している。
 同省が同日発表した初年度実績によると、3月末までに機構が担い手に貸し出したのは2万4000ヘクタール、売り渡したのは7000ヘクタールで、目標と大きな開きがある。
 同省は、担い手から担い手への移動では集積率の上積みにつながらないことから、高齢農家などから担い手への新規集積面積を増やすことを重視している。この面積も集計中の2県を除いて約6700ヘクタールにとどまった。
 初年度の実績が低調となった理由について、同省は「初年度で制度が浸透しきれず、出し手が集まらなかった」(農地政策課)とみる。農水省が先進事例と位置付け、出し手の不安解消へ知事自らが機構の活用を呼び掛けた熊本県でも顕著な実績は出ていない。
 一方、機構を通さない相対取引を含めると、担い手に集積された農地は227万ヘクタールと前年度より6万ヘクタール増えた。これに伴い、ここ数年40%台後半で横ばいだった担い手への農地集積率も50%に伸びた。林芳正農相は19日の閣議後会見で「当初目標に届かなかったが、一定の成績は残すことができた」と強調。機構の活動を軌道に乗せるためのてこ入れ策を検討する方針を正式に表明した。
 てこ入れ策は、与党や政府の産業競争力会議などの議論を経て来月中にもまとめ、政府の農政改革のグランドデザインとなる「農林水産業・地域の活力創造プラン」に盛る。(1)初年度実績をもとに各都道府県の機構をランク付けして公表(2)実績を挙げた県に予算配分などで優遇(3)機構の役員を企業経営者らが過半を占める体制に見直し――などを検討している。


【農地バンク低迷/地域の実情と声に向き合え 河北新報・社説5/20】

 農業の成長産業化を目指す「安倍農政」が目玉政策で初年度から大きくつまずいた。
 経営の大規模化を促す「切り札」として、各都道府県に設けた「農地中間管理機構」(農地バンク)の2014年度実績が、各都道府県が掲げた目標の合計のわずか約2割にとどまった。
 主に高齢農家などから規模の小さな農地を借り受け面的なまとまりに集約し、公募した農業者や農業生産法人、企業に貸し出す仕組みだ。
 実績が低迷したのは、借り手の需要は旺盛なのに、貸し出し農家が少なく農地の供給が増えなかったためだ。
 その原因について農林水産省は周知不足に加え、制度利用を働き掛ける意欲が機構役員らに欠けていたと指摘。農地保有者が、顔の見えない農業者らに貸し付けることに抵抗感があると分析した。
 だが、そうした懸念は機構発足前からあった。
 「長い間、耕してきた愛着ある農地を見ず知らずの他人にたやすく預けられるのかどうか、疑問だ」。広域での取り組みにするため事業主体を都道府県にしたことに対しても「農地の貸借は集落の将来とも関わる。地域の実情を知る市町村や農協の協力なしではうまく進まない」
 生産現場や地域からは、そんな声が上がっていた。
 政府が、この政策で実を挙げたいのであれば、市町村や農協などとの協力態勢をどう構築し、貸し手の「安心感」をいかに高めるか、ということに心を砕く必要がある。
 利用促進に向け、政府は都道府県の実績に応じた農業振興予算の傾斜配分を検討するという。だが、そうした「アメとムチ」に似た上からの押しつけはやめ、地域の実情と声に真剣に向き合うべきだ。
 農地バンクは、経営の大規模化だけに資する事業ではあるまい。高齢農家らの離農に伴う耕作放棄地の増大に歯止めをかける集落営農の道を模索し、若者の就農を含めて域外から担い手の参入を促す効果も期待される。
 そのことは、中山間地の将来と密接に関わる。
 東北では初年度、宮城の達成率は全国並みの2割にすぎず、秋田、岩手が目標を達成したとはいえ、各県はいずれ難問に突き当たる。
 耕作条件が不利で地元に担い手がおらず、農地を貸そうにも借り手ゼロが懸念される中山間地の農地貸借をめぐるマッチング調整である。
 機構で農地を預かりつつ、集落営農組織づくりに向け、定年帰農者を含め地域に新たな担い手を見いだすことも可能だ。隣接する地域の農業生産法人に集落農地を任せることや、就農希望の若者の参入可能性を探ることも選択肢の一つになる。
 だが、そのためには、地域の事情に通じた市町村や農協を含む関係機関が、集落の話し合いを通じて根気強く取り組むことが欠かせない。
 言うまでもなく、農業や農地の状況は地域によって異なる。特に中山間地には平地と違う取り組みが必要だ。全国一律ではなく、地域に応じたきめ細かな対応策を講じなければ、農地バンク事業を軌道に乗せることは難しい。


【農地集積が遅滞 政府は経済的強制へ ここでも進む専制国家への道   農業情報研究所 5/19】

 安倍政府の農政改革の大黒柱をなす担い手農家への農地集積が思うように進まない。
 19日の自民党農業基本政策検討プロジェクトチーム会合での農水省の報告によると、改革元年の2014年度に農地中間管理機構を通して貸し出された農地面積は目標の14万㌶の2割を僅かに上回る3万1000㌶にとどまった(農地バンク利用実績、目標の2割 14年度3万1千ヘクタール 日本経済新聞 15.5.19)。

 農水省は、これは県庁のOBやJA関係者が役員の多数を占める機構が「デベロッパー(開発者)としての意識」を欠き、「民間ノウハウも活用」していないからだとし、「抜本的な意識改革と役職員の体制整備」を柱とする改善策を講じる。「企業経営者や農業法人経営者の参画を促すため、各県の機構に対し、役員体制の再構築と役員名簿の公表を求める」。
 さらに、16年度以降は農業振興関係予算を農地集積の実績を挙げた都道府県に優先的に配分、機構による農地集積の実績に応じて補助金に差をつけることで現場にハッパをかけ、「14年度の農地集積の実績に基づいて都道府県の機構をランク付けし、公表する」ことも考えているという。

 成績の悪い機構は、まるで罪人のごとしだ。それだけではない。「農地の貸し手対策として、耕作放棄地には固定資産税などの負担を重くすることを検討中。農家が「転用を期待し農地を貸すことに消極的になっている」として、農地転用利益の地域農業への還元についても検討を進めるとしている」そうである(農業振興予算 集積実績で配分に差 農地バンク格付け 農水省方針 日本農業新聞 15.5.19)。

これも、農家を悪者に見立てた経済的強制による「土地収奪」(ランド・グラビング)の勧めだ。アフリカ諸国が外国企業に力を借りた近代的大規模農業の創出のために小農から土地を取り上げたのと変わらない。
 
だが、とりわけ中山間地では、転用どころか、「担い手」も尻込するような(効率的農業の観点からすれば)劣悪な農地(傾斜地の小区画農地)が支配的である。集積が進まないのは、機構のせいでも、農家のせいでもない。強制取り上げ、非協力農家の「粛清」は、農業の発展には決して結びつかず、農民と農村の破滅を引き起こすだけだろう。
 
 耕作放棄も、転用「期待」も、そもそも農家に原因があるわけではない。農業・農民軽視の国の政策、専ら経済成長のために彼らが農民として生きていく環境を作るどころか壊してきた政策の帰結である。農地集積加速に向けての「改善」は、そうした政策の上塗りだ。ただし、これは単なる上塗りではない。民主主義への挑戦だ。「粛清」は民主主義国家においてはあるまじきものだ。他の分野と同様、ここでも「専制」がまかり通る。それを「専制」と意識することもなく、「粛々」と進めるところがなお恐ろしい。

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