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安全保障法制改定法案に対する意見書 日弁連

全国52の弁護士会の会長を含む役員85人の全会一致の意見書。
 以下、、「第1 2 本法案の概要と主な問題点」「第2 本法案は日本国憲法に違反すること」の部分
【安全保障法制改定法案に対する意見書  日本弁護士連合会 2015.6.18】

【安全保障法制改定法案に対する意見書  日本弁護士連合会 2015.6.18】

2 本法案の概要と主な問題点
これらの法案の内容と主な問題点は,大きく次の5つに分けられる。

(1) 存立危機事態への対応法制の整備
自衛隊法,武力攻撃事態対処法その他の有事関連法制を改正し,我が国に対する武力攻撃がなくても,我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し,これによって我が国の存立が脅かされる等の事態(「存立危機事態」)に対し,防衛出動を行い,それに関連する手続や体制等を整備し,また,それらに際して米軍その他の外国軍隊の行動を支援し,強制的な船舶検査活動を行う等の有事関連法制を整備する。
これは,「自衛のための措置」とされているが,憲法第9条の下では,我が国に対する武力攻撃があった場合に,これを排除するための必要最小限度の実力の行使に限って認められるとしてきた従来の政府の憲法解釈を根底から覆
し,集団的自衛権の行使を認めようとするものである。

(2) 周辺事態法の重要影響事態法への改正
これまでの周辺事態法を改正し,従来は我が国の周辺地域での「周辺事態」に対応する米軍の後方地域支援等を行うものであったのを,地域の限定をなくし,また米軍に限らず,「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」(「重要影響事態」)に対応する外国軍隊(「合衆国軍隊等」)に対し,自衛隊が後方支援活動等を行うこととするもので,しかも弾薬の提供等まで含めて「現に戦闘行為が行われている現場」以外の場所ならばこれを可能とする。関連して,これまで我が国周辺での船舶検査活動を規定していた周辺事態船舶検査活動法を地域の限定のない船舶検査活動法へと改正する。
これは,従来の周辺事態法の性格・内容を基本的に作り変え,武力の行使等をする外国軍隊の支援のために地理的限定なく自衛隊を派遣し,戦闘行為の現場近くでも,いわゆる兵站活動を行うものであり,外国軍隊との「武力の行使の一体化」を生じ,自衛隊が相手国との交戦状態に陥って武力を行使し,又はそれに道を開く危険性が高いものである。

(3) 国際平和支援法(自衛隊海外派遣恒久法)の制定
これは,これまで,海外での武力紛争に対して自衛隊が支援活動を行おうとする場合,旧テロ特措法,旧イラク特措法等,その都度個別立法で対処してきたのを,いつでも自衛隊を派遣できるようにしようとする新規立法である。これによって,「国際社会の平和と安全を脅かす事態であって,その脅威を除去するために国際社会が国際連合憲章の目的に従い共同して対処する活動を行い,かつ,我が国が国際社会の一員としてこれに主体的かつ積極的に寄与する必要があるもの」(「国際平和共同対処事態」)について,武力の行使等を行う「諸外国の軍隊等」に対して自衛隊が協力支援活動等を行うこととする。これも地理的限定はなく,上記(2)と同じくその活動は弾薬の提供等まで含めて「現に戦闘行為が行われている現場」以外の場所なら可能とし,船舶検査活動法も適用される。
これも,重要影響事態法とは派遣の要件等に差異はあるものの,同様に,武力の行使等を行う諸外国の軍隊等と「武力の行使の一体化」を生じ,自衛隊が武力を行使し,又はそれに道を開く危険性の高いものである。

(4) 国連平和維持活動協力法の改正等
これまで基本的に国連平和維持活動(国連PKO)への協力のための法律であったのを,国連PKOとしての業務範囲を拡大すると同時に,国連が統括しない有志連合等による「国際連携平和安全活動」へと活動範囲を大きく広げ,かつ,その両方の活動において住民等の安全確保活動と「駆け付け警護」を認め,その場合にいわゆる任務遂行のための武器使用を可能とする。また,自衛隊法を改正して在外邦人の救出等の規定を設け,ここでも任務遂行のための武器使用を可能とする。
これは,従来の国連平和維持活動協力法を大きく変容させるものである。また,従来の自己保存のための武器使用の限定を外して,任務遂行のための武器使用を可能とする規定は,武装勢力等の妨害を排除する等して目的を達成しようとする強力な武器使用を伴い,自衛隊が交戦状態に陥って武力を行使し,又はそれに道を開く危険性の高いものである。

(5) 外国軍隊の武器等防護等の自衛隊法の改正
自衛隊法を改正し,いわゆるグレーゾーン事態(武力攻撃に至らない侵害)への対処として,「我が国の防衛に資する活動」を行う合衆国軍隊等の艦船・航空機その他の武器等を防護するための武器使用を可能とする規定を新設する。  これも地理的限定なく,現場の自衛官の判断により行われ,強力な武器の使用も考えられるものであり,実質的な集団的自衛権の行使と変わらない事態すら危惧される。
また,自衛隊員の服務規律違反等に対する一定の罰則について国外犯を処罰するなどの自衛隊法の改正規定も設けられている。

3 小括
以上のとおり,安保法制改定法案には憲法上重要な問題がある。
そこで,以下では,第2において,本法案が日本国憲法の立憲主義の基本理念並びに憲法第9条等の恒久平和主義と平和的生存権の保障及び国民主権の基本原理に違反して違憲であることを明らかにする。
また,第3以下において,①「存立危機事態」と集団的自衛権の行使について(第3),②他国軍隊の支援活動及び国際平和協力活動について(第4),③武器使用の拡大等の問題について(第5),④武力攻撃に至らない侵害への対処その他の法改正について(第6),⑤安保法制改定法案の国及び国民への影響について(第7)それぞれ論じる中で,上記問題点をより詳細かつ具体的に明らかにする。

第2 本法案は日本国憲法に違反すること

1 恒久平和主義に違反すること

(1) 恒久平和主義と現行法制の基本原則
日本国憲法は,全世界の国民が平和的生存権を有することを確認するとともに(前文),戦争と武力による威嚇又は武力の行使を禁止することに加え(第9条第1項),戦力の不保持,交戦権の否認を定めることで(同条第2項),徹底した恒久平和主義を基本原理とした。
その恒久平和主義の下では,自衛権に基づく武力の行使も認められないという有力な見解もある中で,政府は,憲法も国が独立国として当然に保有する自衛権を否定するものではなく,我が国に対して武力攻撃が加えられた場合にこれを排除するため,必要最小限度の実力を行使することまでは禁じられていないと解釈する一方,集団的自衛権の行使や海外での武力の行使は,その限度を超えるものとして許されないとしてきた。
現行の安全保障法制は,そのようなこれまでの政府の憲法第9条解釈を踏まえており,以下のような原則で構成されている。

①我が国に対する武力攻撃に対処するための個別的自衛権行使に限定した武力行使と,②個別的自衛権行使以外の場面での武力行使の禁止(海外での武力行使の禁止。武器使用に限定)を原則とし,その副次的原則として,③他国の武力行使との一体化の禁止,その具体化として,他国の軍隊への支援活動は非戦闘地域・後方地域に限定,支援内容も武力行使との一体化にならない範囲に限定,④海外での活動の種類・範囲も後方支援・人道復興支援等に限定し,前線での警護活動・安全確保活動等を行わない,⑤武器使用も自己保存権に基づくものに限定,すなわち任務遂行のための武器使用の禁止,相手に対する危害射撃は正当防衛及び緊急避難の場合に限定,武器使用権限は部隊にではなく個々の自衛官に付与,⑥PKO参加5原則,などである。
③以下の原則は①,②の原則を踏み外さないための枠組みである。

ところが,本法案は,前記第1の2で述べたように,集団的自衛権の行使を容認したり,自衛隊が海外において地理的限定なく,武力の行使に至る危険性の高い活動を行うなど,上記の基本原則を様々な局面で逸脱するものである。

(2) 本法案は恒久平和主義に違反すること
憲法第9条の下で,政府はこれまで,集団的自衛権の行使は許されないことを繰り返し表明してきた。すなわち,自衛権を発動するためには,①我が国に対する急迫不正の侵害があること,すなわち武力攻撃が発生したこと,②これ
を排除するために他の適当な手段がないこと,③必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと,の3要件が必要であり,集団的自衛権の行使はこれを超えるもので,特に①の要件を満たさないので許されないとしてきた。

当連合会も,集団的自衛権の行使は,基本的に,我が国が武力攻撃をされていないにもかかわらず,他国のために戦争をすることを意味し,戦争をしない平和国家としての日本の国の在り方を根本から変えてしまうものであること等を指摘し,憲法第9条に違反することを繰り返し明らかにしてきたところである(2014年9月18日付け「集団的自衛権の行使容認等に係る閣議決定に対する意見書」など)。なお,この集団的自衛権の違憲性については,後記において敷延して論ずる。

このような集団的自衛権の行使や海外での武力の行使を容認することになれば,自衛隊はもはや憲法第9条第2項が禁じている「戦力」であることを否定することはできず,その武力の行使は同項が否認している「交戦権」の行使となる。これは,戦争の違法化を推し進めて,戦争の放棄のみならず,戦力の不保持と交戦権の否認を規定した同項の意義を完全に否定するものである。そして,同時に,これら武力の行使は,自衛隊員はもとより,自国・他国の国民を殺傷する現実をもたらし,諸国民の平和的生存権を保障する憲法前文にも違反するものである。

2 立憲主義の基本理念に違反すること
立憲主義は,憲法によって個人の自由・権利を確保するために国家権力を制限することを目的とする,近代憲法の基本理念である。日本国憲法は,「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し,ここに主権が国民に存することを宣言し,この憲法を制定する。」(憲法前文)として,立憲主義に基づく平和主義を明らかにし,基本的人権の永久・不可侵性を確認するとともに(憲法第97条),国務大臣,国会議員等の公務員の憲法尊重擁護義務を規定している(憲法第99条)。
この立憲主義の内容として重要なのが,国家権力の中でも暴走して個人の自由や権利を侵害する危険性の大きい実力組織の抑制である。そこで,日本国憲法は,憲法前文及び第9条によって実力組織が暴走しないための明確な歯止めを設けたのである。政府も,集団的自衛権の行使や海外における武力の行使は許されないとの解釈を長年一貫して積み上げてきた。こうして,恒久平和主義の現実的枠組みが形成され,憲法秩序の安定性が保持されてきた。それはまた,戦後の歴史を通じて積み重ねられてきた国民的議論の結果でもある。
このような憲法規範の内容を,憲法改正の手続もとらずに,一内閣の憲法解釈の変更や法律の制定・改正によって改変し,侵害することは,憲法を遵守すべき立場にある国務大臣や国会議員によってなしうることではない。
ところが,安保法制改定法案は,本閣議決定に基づき,法律の制定・改正によって,憲法第9条等の恒久平和主義の実質的内容を根本から改変してしまうものであり,それは,国民の自由・権利そして平和を,権力に縛りをかける憲法によって守ろうとする立憲主義に,真正面から違反するものである。

3 国民主権の基本原理に違反すること

(1) 国民の憲法制定権力の侵害
日本国憲法は,国民主権の原理に立脚する(憲法前文,第1条)。そして、国民主権の原理は,国民の憲法制定権力の思想に由来し,この権力は,近代立憲主義憲法が制定されたとき,憲法改正権となる。
日本国憲法は,その憲法改正権の行使について,第96条で,各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議し,国民投票でその過半数の賛成を必要とすることを規定した。ここに,憲法制定・改正に関する国民主権の内容が定められているのである。
したがって,本来憲法の改正をしなければできないことを,閣議決定や法律の制定・改正によって行おうとすることは,憲法第96条を潜脱し,国民主権を侵害するものとしても許されない。安保法制改定法案は,法律の制定・改正によって憲法第9条と前文の実質的改変をしようとするものであり,まさに憲法第96条を潜脱し,国民主権を侵害するものである。

(2) 秘密保護法による情報の秘匿
2013年12月6日に成立した特定秘密保護法は,外交・防衛等に関する情報の漏洩や取得に関する公務員・国民等の行為を広く,かつ重く処罰し,行政機関がこれらの情報を国民等から秘匿することを可能にするものである。政府が「武力攻撃事態」「存立危機事態」等の武力行使の要件に関わる情報や,「重要影響事態」「国際平和共同対処事態」等の武力紛争に関わる情報を,特定秘密に指定して秘匿すると,国民はもとより国会議員すら客観的な判断材料を持たないことになる。特定秘密は,国会に設置された情報監視審査会にも提出されず,国会議員の国政調査権も及ばないものとなる危険性が高い。
このように,国民も国会も十分な情報を知らされないまま我が国が武力の行使等に至るならば,これは,政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないよう,主権が国民に存することとした国民主権を没却することとなる。

4 集団的自衛権行使の違憲性について

(1) 本閣議決定は,我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず,①我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し,これにより我が国の存立が脅かされ,国民の生命,自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において,②これを排除し,我が国の存立を全うし,国民を守るために他に適当な手段がないときに,③必要最小限度の実力の行使をすること,という新3要件の下での武力の行使を認めようとするものである。  
そして,これは,国際法上は集団的自衛権が根拠となる場合があるが,「従来の政府見解の基本的な論理に基づく自衛のための措置として,憲法上許容される」とする。
そして,政府は2015年6月9日「新三要件の従前の憲法解釈との論理的整合性について」との見解(以下「今次政府見解」という。)を公表し,その論理的整合性を,本閣議決定も援用する1972年10月14日参議院決算委員会政府提出資料「集団的自衛権と憲法との関係」(以下「1972年政府見解」という。)に基づいて説明しようとしている。
1972年政府見解は,①憲法第9条は自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置を禁じているとは解されない,②しかし,その措置はあくまで外国の武力攻撃によって国民の生命,自由及び幸福追求の権限が根底からくつがえされるという急迫,不正の事態に対処し,国民のこれらの権利を守るための止むを得ない措置として容認されるものであるから,右事態を排除するための必要最小限度の範囲にとどまるべきものであり,③そうだとすれば,憲法の下で許されるのは,我が国に対する急迫,不正の侵害に対処する場合に限られ,他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とする集団的自衛権の行使は憲法上許されない,としたものである。

ところが,本閣議決定及び今次政府見解は,上記の①及び②が従来からの政府の「基本的な論理」だとし,「我が国を取り巻く安全保障環境が根本的に変容し,変化している状況」を理由に「認識を改め」,③の結論を覆すのである。
しかし,1972年政府見解は,①自衛権の保有を前提とした上,②は③を導くために自衛権の発動が必要最小限度に限られることの根拠を述べたものであり,全体として,集団的自衛権の行使が憲法上許されないということを論証し,これを憲法上の規範として定立したものである。その一部分だけを抜き出し,時の政府の状況認識によって結論が左右されるべきものではない。
しかも,集団的自衛権の行使が許されないという政府見解は,上記1972年政府見解に限らず多数繰り返されてきたものであり,それが許されないのは,特に,自衛権発動の第1要件,すなわち我が国に対する武力攻撃が発生したという要件を満たしていないからであり,それを満たさない武力の行使は「必要最小限度」ではない(2004年1月26日衆議院予算委員会における内閣法制局長答弁),というのが核心部分であった。本閣議決定及び本安保法制改定法案は,その政府の論理を外れて,憲法第9条の解釈を逸脱するものである。
ちなみに,2015年6月4日の衆議院憲法審査会において,与野党の推薦に基づく参考人として出席した3名の憲法学者全てが,この安保法制改定法案における集団的自衛権の容認等が憲法第9条に違反することを明言している。

(2) なお,集団的自衛権の行使が認められる根拠として,最高裁大法廷昭和34年12月16日判決(砂川事件判決)が挙げられることがあり,今次政府見解も,1972年政府見解の①の部分の裏付けとしてこれを援用する。
しかし,この事件は,日米安保条約及びそれに基づく刑事特別法の違憲性が争点となったものであり,判決は,憲法第9条が,「我が国が主権国として持つ固有の自衛権」を否定するものではなく,我が国が,自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置として他国に安全保障を求めることを何ら禁ずるものではないとする。そして,日本に駐留する米軍は,憲法第9条第2項が保持を禁止した戦力には当たらないこと,及び日米安保条約は高度の政治性を有するものとして,その違憲性の判断は司法審査になじまないことを判示したものである。そこでは,我が国の集団的自衛権のことなど全く争点になっておらず,したがってそれは判断対象ではないし,判決理由の中でも何も触れられていない。
そして,政府も,この砂川事件判決後も,憲法第9条の下では集団的自衛権の行使は許されないとの見解を積み上げてきたのであり,それは,砂川事件最高裁判決が集団的自衛権についての判例ではないからこそである。


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