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安倍政権は「独裁の始まり」=小林、長谷部氏が痛烈批判

 憲法学者からの痛烈な批判。
 小林氏は「憲法を無視した政治を行おうとする以上、独裁の始まりだ」、長谷部氏「内閣法制局はプレッシャーに負けた」と法案撤回を主張。

 さすが、外国特派員協会。“安全保障法制を「合憲」としている3人の学者は皆「日本会議」に属している。その意味や、「日本会議」の影響力をどう見ているか”など、ズバリ質問している。

【安倍政権は「独裁の始まり」=小林、長谷部氏が痛烈批判 時事6/15】
【詳報「安全保障法制は違憲、安倍政権は撤回を」〜長谷部恭男氏・小林節氏が会見 】

【安倍政権は「独裁の始まり」=小林、長谷部氏が痛烈批判 時事6/15】

 憲法学者の長谷部恭男早大教授と小林節慶大名誉教授は15日、日本記者クラブで記者会見し、集団的自衛権の行使を可能とする安全保障関連法案について「憲法違反」との見解を重ねて示した。この中で、小林氏は「憲法を無視した政治を行おうとする以上、独裁の始まりだ」と安倍政権を痛烈に批判した。
 長谷部氏は、安全保障関連法案を「合憲」とする9日の政府見解について「何ら批判への応答になっていない。反論できないことを、むしろ如実に示したものだ」と酷評。小林氏は、政府見解が合憲と判断する根拠として最高裁による1959年の砂川判決を挙げたことに触れ、「引用は珍妙だ。(裁判で)日本の集団的自衛権はどこにも問われていない」と指摘した。
 長谷部氏は、自身を含む安保法案反対派の憲法学者に与党内から批判が出ていることにも言及し、「今の与党の政治家の方々は、都合の悪いことを言ったときには侮蔑の言葉を投げ付ける」と不快感を示した。

 


【詳報「安全保障法制は違憲、安倍政権は撤回を」〜長谷部恭男氏・小林節氏が会見 】

ー政府は集団的自衛権を行使する場合の想定シナリオをなかなか出さない。具体的には、どういう事態を想定しているのか。なぜ出さないと思うか。

また、安全保障法制を「合憲」としている3人の学者は皆「日本会議」に属している。その意味や、「日本会議」の影響力をどう見ているか。(エコノミスト)

長谷部教授:最初の質問については私の方から。具体的な例は簡単には思いつきません。政府が果たして具体的な例を想定しているのかどうかも私にはわかりません。ホルムズ海峡の件については、ご存知のようにイランとアメリカは友好的な関係を迎えつつ有りまして、ホルムズ海峡が封鎖されることも具体的には想定しにくいと思います。
むしろ、政府の側は、集団的自衛権が行使されること、それ自体が目的なのではないかと考えております

小林教授:日本会議に沢山の知り合いがたくさんいるので私が答えますが、日本会議の人々に共通する思いは、第二次大戦で敗けたことを受け入れ難い、だから、その前の日本に戻したいと。かれらの憲法改正案も明治憲法と同じですし、今回もそうですが、日本が明治憲法下で軍事五大国だったときのように、アメリカとともに世界に進軍したいという、そういう思いを共有する人々が集まっていて、かつそれは、自民党の中に広く根を張っていて、かつよく見ると、明治憲法下でエスタブリッシュメントだったひとたちの子孫が多い。そうするとメイクセンスでしょ(笑)。

ー先生方が国会で発言した際の自民党からの反応について、2つの質問があります。

山東昭子元参院副議長が、長谷部先生を招致することをを決めた方は処罰されるべきだと発言しました。この発言を聞いてどう思われましたか。

次に、高村正彦副総裁が「国民の命と平和な暮らしを守り抜くために、自衛のための必要な措置が何であるかについて考え抜く責務があります。これを行うのは、憲法学者でなく、我々のような政治家なのです。」という発言をされました。これについてはいかがでしょうか。


長谷部教授:私が証言した日の憲法審査会のメインテーマはconstitutionalism(=立憲主義)について、でした。その専門家として事務局が私を選び、それを自民党が受け入れたと、いうふうに伺っております。

ですから私はconstitutionalismの専門家として呼ばれたのでありますけれども、その人間がたまたま9条について発言をしたのがけしからん、というのが山東さんの発言の主旨なのだろうと思いますが、しかし、質問があれば私は自分の思っていることを答えるだけだと思います。

それから、二番目の質問ですが、私は今回の安全保障法案は、むしろ日本の安全を危うくすると思っております。日本を確実に守りたいなら、ぜひ学者の意見を聞くべきだと思います。

ーガイドライン(日米防衛協力のための指針)で、すでに日本は米国と色々な約束してしまっています。その約束を果たすために、今安全保障法制が議論されているのだと思います。もし法制が整備されないとなると、日米の関係が悪化することが考えられないでしょうか。(ブルームバーグ)

長谷部教授:まず、できるかできないかもわからないことを先に約束してしまうということが大変リスキーな戦略だったと思っています。そして最近のガイドラインの内容は、元々の日米安保条約の枠をはみ出しているのではないかという批判もあります。
従いまして、これがうまく成立しなければ日米の関係が悪化することもあるかもしれませんが、それはもともと無理な約束をしたことに原因があるのだと思います。


小林教授:私は日米関係は悪くならないと思います。つまり、日本とアメリカの官僚は頭がいいですから、ガイドラインが法的拘束力がないことを知っていますから、勝手に夢を語り合って、ガイドラインの上に法律があって、法律の上に条約があって、条約の上に憲法があって、"あ、やっぱだめだった"、で済むんじゃないですか。(会場から笑い)

ーまだ現段階では早いかもしれませんが、数の力で強行採決することも考えられると思います。その場合、どのような法的手段で対抗できると思いますか。
もし違憲訴訟がおきたとしても、最終的な判決が出るまで法律は生きたものでになりますので、その間、どうなるのでしょうか。また、今までの最高裁判決を見ますと、明らかに違憲であったとしても"違憲状態"という判断をし、"無効"という判断をしてくれないようにも思う。(ロイター)

長谷部教授:最近、最高裁は変化をしつつありますので、今までと違う態度を取る可能性はあると思っています。

ただ他方、裁判所に頼りすぎるのも良くない。まず次の国政選挙で新しい政府を成立させ、一旦成立したこれらの法律を撤回させることを考えるべきだと思います。

小林教授:弁護団の一員として、訴訟の準備をしています。それは法律が有効になった瞬間から、今までの日本には無かった、海外で戦争をする危険が具体化するんですね。ですから、平和に生きる権利が憲法前文と9条で保証されているならば、今は海外派兵ができないからそれが守られているんですけど、法律ができた瞬間から、それが侵されたと理解して、平和が傷つけられたという政府に対する訴訟を準備しています。かなり技術的に難しいですが。

次の段階は、具体的に海外派兵の命令が下って、その部隊の一員がそこから逃げたした時、懲戒処分を受けた場合、それが違憲無効だと訴える。一番悲劇的なのは海外派兵で死んだ人が居た場合ですが、違憲な戦争で家族が殺されたと訴える。その準備を我々は既に始めています。

ー今のお話に関連しますが、日本では憲法に違反すると思われる法律が出来たとしても、実際に誰かがその法律に違反する行為を行った場合に、そもそもその法律は違憲だとして訴えるという形を採らないと違憲か合憲かを争えないということを多くの人が知りません。日本には憲法裁判所のようなものもありません。また、安保に関わるものは「統治行為論」という判断で、裁判所はそうした問題には介入すべきではないと言うわけです。
では一体、誰が違憲かどうかを決める立場にいるのでしょうか。

もう一点、このような仕組みは意図したものなのかそれとも、ある種の欠陥なのか

長谷部教授:最初の質問について、日本においては内閣法制局がこの種の問題について違憲合憲の判断を下してきまして、従来は一貫して、集団的自衛権の行使は違憲ですと、何度も何度も言ってきています。したがって、そういった法案が提案されることなかった。ところが、今の内閣の下、内閣法制局はプレッシャーに負け、解釈を変えた。そこに問題があるということになります。

二番目の質問についてですけれども、日本はアメリカと同じシステムを採っております。従って、裁判の解決にとって必要な限りでしか、裁判所は法令の違憲性・合憲性については判断を下しません。ドイツには憲法裁判所がありますが、ただドイツの憲法裁判所も、圧倒的多数ケースは、やはり事後的な、実際に事件が起きた後で合憲性の判断を下すということになっております。

小林教授:高村副総裁が勝手に引用している判決が全てを言っておりまして、戦争というのは国の存続に関わる大問題ですから、選挙で選ばれていない最高裁の15人の裁判官が決めるわけにはいけない。これはアメリカ・フランスの先例に学んだんですね。だから、あの判決の中、一次的には国会と内閣が決める、だけど最終的は主権者である国民が決めると言っているんです。さきほど長谷部教授も言われるように、狂ってしまった政治は、次の選挙で倒せばいいんです。

ー集団的自衛権に関する議論が加熱しているが、基本的な問題がその前にあるんではないでしょうか。つまり、自衛隊のそのものの存在です。私は法律の専門家ではありませんが、陸海空の戦力を保持しない、と書いてあるのは、理解できます。とはいえ、1950年代の世界情勢を考えれば、そういうものが必要になったという政治判断も理解できます。
 ただ、今まで積み重なってきあ解釈というのは、政治的な要素と合わさって、新しい憲法の問題を生んできたと思います。ですから、最終的には、道徳的、倫理的な法学者が、集団的自衛権の問題だけでなく、そもそも自衛隊を持つことはどうかということを議論すべきではないでしょうか。(タイムズ)

小林教授:自衛隊については、二つの根拠がはっきりしていまして、9条には「国際紛争を解決する手段としては」という条件がついていまして、これは1928年のパリ不戦条約の文言と同じで、それ以来、国際法上の普通の標準的な理解としては、これは侵略戦争の放棄で自衛戦争を放棄していないと読むんですね。

もうひとつは、国際法上の独立主権国家の自然権として自衛権はありますから、条文の根拠が要らないんです。それに基づいて自衛隊は存在しているし、砂川判決も書かれている。

そして、終戦直後に自衛隊がなかったのは、日本が危険だったから、米軍が完全占領して持たせなかった。そちらの方が政治的な問題で、不自然です。

ーインドネシア人の私から見れば、当たり前のことですが、もし国が攻撃されたらインドネシア人は死ぬまで闘うと思います。国を守るため自衛隊があるということを憲法に書かなければ行けないと思います。専門家から見て、憲法の文言はどのように書かれるべきでしょうか。

長谷部教授:攻撃を受けた場合、反撃が出来る。憲法で個別的自衛権は認められているので、それで十分だと思います。

ー安倍政権は今回の法案を撤回すべきだと思いますか。その理由は。


長谷部教授:撤回すべきだと思います。核心的な部分、つまり集団的自衛権を容認している部分は明らかに憲法違反であり、他国軍隊の武力行使と自衛隊の一体化、これをもたらす蓋然性が高いからです。

小林教授:私も結論は撤回すべき。違憲というのはもちろんですが、恐ろしいのは、憲法違反がまかり通ると、要するに憲法に従って政治を行うというルールが無くなって、北朝鮮みたいな国になってしまう。キム家と安倍家がいっしょになっちゃうんです(会場から笑い)。これは絶対に阻止しなければならない。そして、安倍さんの言うとおりにすると、自衛隊はアメリカ軍の二軍になってしまって、その結果日本は傷ついた上に破産してしまいます。だから何一つ良いこと無いんですね。撤回しないならば選挙で倒すべきだと思います。

ー内閣法制局について理解できていないのですが、三権分立の原則を考えると、内閣からは独立したものなければではないのではないでしょうか。

長谷部教授:日本の内閣法制局はフランスのコンセイユ・デタ(Conseil d'État)をモデルに作られましたが、これは内閣や議会に対して法的なアドバイスを行うのが役割で、その意見は尊重され、政治からも独立しているのが伝統でした。これまでは。

小林教授:日本の違憲審査を考えると、入り口で内閣法制局がやって、出口は最高裁が担っていたんですが、ご指摘の通り内閣法制局は単に内閣の下にある一部門に過ぎない。でもなぜそれがコンセイユ・デタのように力を持ってきたかというと、人間の力だったんですね。優秀な人がプライドを持って守ってきたんです。今回人事権を行使されて、法制局は単に内閣官房に付いている局の一つ、形式通りの弱さになってしまった。これは歴史的なことだと思います。

ー官房長官や政府の人たちは合憲という憲法学者もいっぱいいるとおっしゃいました。先生方は、日本でどれくらいの憲法学者が違憲だと言うと思われますか。また、裁判所の裁判官も含めて、法曹の方の考え方の主流が違憲なのであれば、判決にも反映されると思うんですが、それについてはいかがでしょうか(AFP)

長谷部教授:本日の夜10時からの報道ステーションが、憲法学者へのアンケートの結果を報道することになると思います。そちらをご覧いただければと思います(笑)。私の推測では95%を超える憲法学者は「違憲だ」と言うと思います。

裁判官も含めた法曹一般の中では、例えば、裁判官前の前の山本庸幸内閣法制局長官は、現在、最高裁判事ですが、就任の会見の際に「地球の裏側まで言って武力行使するのは違憲だ」と述べられておりました。

小林教授:専門家の中でどれくらいなのかは出ていまして、大学教授の95%が違憲だとするなら、それに習った人々ですから、弁護士会もそのような状態で、今運動を行っています。

弁護士会が可哀想だったのは、もうずっと1年くらい前から運動をしていたのに、メディアが問題にしてなかったんですね。ところが、こないだの憲法審査会以来、死んでいたメディアが生き返って、弁護士会の活動も取り上げてくれるようになったので、弁護士会も生き返りました。

個人的に、高いランクの裁判官や検察官からも仰るとおりだ頑張ってくれと連絡があります。やはり専門家の常識を国民が共有していなかったのが問題なわけで、それはメディアの責任だと思うんですね。

ー民主党の岡田代表が法案成立後に最高裁が違憲判決を出した場合、その時の内閣は総辞職に値すると発言しました。法の重さ、政治の責任につきまして、時の政権はどのように対応すべきだと思いますか。(ニコニコ動画・七尾氏)

長谷部教授:私は岡田代表の会見を存じ上げていないので、正確なお答えになるかわからないのですがいま、仮に法律が成立するとして、最高裁が出すまで相当時がかかるわけですね。仮に最高裁が違憲判断を出した時に、時の政権が負っている責任は、それを維持してきたというこだと思いますが、そこまでの内閣全てにも責任があるということになるだろうと思います。


小林教授:どうしてもそういう話になるので私はいらいらするんですが、つまり、最高裁が違憲判決を出すまでに大体4年かかるんですよ。それまでどうして放っておくのか。 いま世論調査が支持率が下がれば、安倍内閣は次の選挙が怖くなってやめるんですよ。やめなかったら、それは露骨にひどい事だしたとして、次の選挙で交代させればいい。参議院選挙で自民党が沈めば憲法が改正できなくなるんです。その次の衆議院選挙で自民党政権を倒せばいいんですよ。これが4年後の最高裁判決を待つよりよっぽど早いですよ。

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