「存立事態危機」は架空 政府、実例示せず
政府が、集団的自衛権行使の「根拠」としている「他国に対する武力攻撃の発生により、武力攻撃を受けていない別の国の存立が脅かされる」という「存立危機事態」について、「世界で起きた例があるか」との質問〔10日〕に、外相は「改めて正確を期して報告する」と答弁していたが、19日の再度の質問に、一例もあげることができなかった。
憲法解釈を180度変更するために作り出した「空想的観念」の話である。
「集団的自衛権行使」の「例外」としてあげるホルムズ海峡も、機雷封鎖の現実的危機がないことを防衛相も認めた。
【自国守るため集団的自衛権行使 外相「他国前例ない」 東京6/20】
【自国守るため集団的自衛権行使 外相「他国前例ない」 東京6/20】集団的自衛権の行使容認を柱とする安全保障関連法案に関する衆院特別委員会は十九日、関係閣僚が出席して一般質疑を行った。岸田文雄外相は、安保法案が集団的自衛権行使の要件に定める「存立危機事態」が外国で発生した事例について「こうした厳格に限定された条件で行使した例はない」と明らかにした。過去に国連安全保障理事会に報告された十四件の行使事例のうち、該当例がないことを根拠に挙げた。
政府は、他国への攻撃で日本の存立が脅かされ、国民の生命や権利が根底から覆される明白な危険がある「存立危機事態」になった場合、日本を守る目的に限って集団的自衛権の行使が許されると説明している。
これに対し、共産党の宮本徹氏は「世界でこんな事態は起きたことがない。集団的自衛権の行使に道を開くために頭の中で空想的観念をつくり上げただけだ」と批判した。法案に規定された存立危機事態の定義はあいまいで、いくら政府が集団的自衛権の行使を限定的にすると説明しても、政府の裁量で行使が際限なく広がる危険性がある、との指摘だ。
政府が集団的自衛権の行使容認は合憲だと説明した九日の見解は、安全保障環境の変化で「他国に対して発生する武力攻撃であっても、わが国の存立を脅かすことも現実に起こりうる」と明記した。
岸田氏の答弁は、海外で政府見解の想定と同様の事態が起きたことがないと認める内容だ。
【外相答弁「存立危機」実例示せず 宮本氏批判 戦争法案「立法事実ない」 赤旗6/20】岸田文雄外相は19日の衆院安保法制特別委員会で、他国に対する武力攻撃の発生により、武力攻撃を受けていない別の国の存立が脅かされる、いわゆる「存立危機事態」の実例について、一例も示せませんでした。日本共産党の宮本徹議員の質問の中で明らかになりました。
政府は戦争法案により、「存立危機事態」で集団的自衛権行使を可能にして海外での武力行使に踏み出そうとしています。同事態の実例がないことが政府答弁で明らかになり、法案の必要性そのものが崩れた形です。
宮本氏は10日の同委員会で「存立危機事態」が世界で起きた例があるかと質問し、岸田外相は「改めて正確を期して報告する」と答弁し、調査していました。
「調べたが、事例はなかったということか」と宮本氏は追及。岸田外相は、「存立危機」を理由に集団的自衛権を行使した国が過去の国連への報告14件の中には存在せず、その他の事例についても「具体的な情報収集をしているわけではなく、例を挙げるのは大変困難だ」と述べ、一例も挙げませんでした。
宮本氏は、「世界のどこを探しても『存立危機事態』はないということだ」と指摘し、「安全保障環境の根本的変容」を集団的自衛権行使の根拠にするが、法案が必要だという「立法事実がない」と指摘。「集団的自衛権行使に道を開くために、空想的観念をつくりあげ、憲法解釈を百八十度変えることは許されない」と法案撤回を求めました。
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