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戦争法 尾崎知事の主張なら「廃案」しかない

 知事は、政府と決定的に対立せずに(TPP、低空飛行訓練などは明確に反対しているが)、影響力を行使し、政策策定過程にはたらきかけ、実利を獲得する手法をとっている。同時に対話と実行座談会の開催、防衛局との交渉・四電との勉強会の公開など県民に軸足をおいた県政運営が特徴である。
 安保法制については、政府と世論の両方を意識した発言をしてきている。
 14日の公聴会で、尾崎知事は、政府の安保法制に理解を示しながら、「徹底した審議」を要望する発言をしている。
 「腰がない」と言えばそれまでだが、一連の知事の主張は、結論としては「戦争法案」は廃案でしか成り立たない。

尾崎知事は、集団的自衛権について「一定認めるべき」としながらも、「防衛目的を逸脱することは決してあってはならない」「内容が現憲法の範囲を超えるなら憲法改定めざし改めて国民的議論に付すべき」「憲法九条のもと、平和国家としての道を歩んできた。今後も歩むべき道」と、議会で答弁してきている。

 5月26日の記者会見では、法案に理解をしめしながら「防衛目的を逸脱することはあってはならない」「国会の論議を通じて、個別事例に則した議論を積み重ねていただいて、それが今後の一種の個別的な解釈の方向を示して、結果としてそれが良き歯止めになるというような結果につながる議論を積み重ねていただきたい」と述べている。
  公聴会の発言も同趣旨で、集団的自衛権については「諸外国への攻撃でもほぼ連鎖して『わが国への急迫不正の侵害』につながり得るなら、連続的、合理的な範囲で(自衛権の発動ができるとの)解釈が成り立ちうる」とを述べている。

が、法案審議を通じて明らかになったのは、法案の根拠となる立法事実もなく、防衛目的を逸脱する内容、歯止めの不存在である。集団的自衛権の行使についても、法律は、「ほぼ連鎖して」という時間的概念はないし、また「武力攻撃」を示す「急迫不正の事態」だけでなく、経済的な惨禍(石油やウランの輸入ストップなど)も含めて対象にしており、尾崎知事の主張からも、戦争法案は逸脱している。
「防衛目的を逸脱することはあってはならない」(知事)というなら廃案しかない。 以下、主な論点

■集団的自衛権の理由・・・「安全保障環境の根本的な変化」
・明示できず。唯一、言及しているホルムズ海峡は、防衛大臣も「直ちに危険があるわけでない」と認めた。
・他国への武力行使により、国の存立そのものが脅かされた例が存在するのか」の質問に
   防衛相も外務相も、ただの1つも例示できず。立法事実がない。
・中国の問題 (個別的自衛権の問題だが、米軍を助ける仕組みをつくらないと、「いざ」という時、助けてくれない、という「主張」がそれなりに広がっている)
首相自らが、中国との軍事衝突が発生することは「全く想定し得ない」(15日、香港テレビのインタビュー)

■「武力行使との一体化」論を放棄する理由はどこにもない
限定的な「集団的自衛権」行使を仮に「認めた」としても、そこから国際活動での歯止めをなくすことは出で来ない。
 限定行使は、あくまで、日本の「防衛」に関すること、という建前。「専守防衛は変わらない」というなら、そこから、国際活動での歯止め・・・「戦闘地域にいかない」「武力行使しない」「武器弾薬の提供・輸送はしない」という「一体化」論をなくす「理由」はどこにもない。ゆえに、「現憲法の範囲をこえている」のは明白。

■歯止めが存在しない
・今まで「戦闘地域」といわれた地域まで言って、今まで出来なかった武器弾薬の輸送・提供など兵站活動を担う
    「危険があること」、攻撃されたら「反撃」することを安倍首相もみとめている
   → イラク派兵の武器は、無反動砲、対戦車弾など文字通りの重装備。それらで反撃すれは「武力行使」
    国際法上 「武力行使」と「自己保存型の武器使用」を分ける概念は存在しないことは外務省も認めている
・PKO改定法も、国際平和支援法案も、国連が統括しない活動に武力で参加することに道をひらいた。
   軍事的措置をもとめない国連決議であっても、アメリカの軍事行動を支援できる(IS空爆支援など)
     防衛大臣が認める 
   3500名の犠牲を出したアメリカ、NATO主導のアフガンの治安維持活動にも参加できる
     安倍首相は、参加を否定せず  
  → 次、イラク戦争があったら戦闘地域で活動。犠牲者が出る(柳沢協二・元内閣官房副長官補)。
・集団的自衛権行使の「存立危機事態」は、政府の解釈ひとつ  明確な基準がない。欠陥法案
   日本に軍事危機が全く発生しない場合にも、自衛隊の戦争出撃を認める
首相「我々が直ちに攻撃されることではなく、武力攻撃が発生しそれに起因する災いが発生することだ」
      →「個別的自衛権」の場合、武力攻撃が発生して初めて武力行使が認められる。武力攻撃の「予測」では「出動準備」、「切迫」では「待機命令」で武力行使は認められない。/先制攻撃の立場に変質
「米国の先制攻撃の戦争でも発動するのか」の質問に 首相「個別、具体的、総合的に判断」と否定せず
   → そもそもベトナム戦争、イラク戦争などウソではじめた侵略戦争ふくめ、アメリカの戦争に一度も反対したことがない政府が「拒否できるわけがない」

■「徹底審議」
 圧倒的多数の憲法学者が「違憲」と言い、8割を超える国民が今国会での成立に反対している。
→ 徹底審議というなら、今国会では「廃案」にするのが筋である。
  また、国民がまったく納得してない状況で、強行採決し、自衛隊員に新たなリスクに押しつけるのは、政治の堕落だ、という線の追及は、説明責任、県民の納得を重視する知事にあっては、効果的だと思う。

■「平和を守るために国際協調は不可欠」との主張
・それを即軍事にむすびつけるのは短絡的である。何よりテロの温床となっている貧困と欠乏、差別と不公正の解決こそ重要である。平和ブランドを持つ日本だからできる役割であり、紛争当事者のアメリカなどではできない活動である。民生支援による日本への信頼、共感こそ最大の安全保障政策である。
→この方向での努力自体は、「憲法九条のもと、平和国家としての道を歩んできた。今後も歩むべき道」(知事)という立場からは否定できない、と思う。

・イラク戦争で、多数の民間人が犠牲となり、中東情勢は泥沼化、テロの危険は拡散した。
→ この認識はどうか? 「正義の戦争だった」とは、さすがに言えないだろう。とりわけ、知事得意のPDCAサイクルがまったく回っていない典型的な事例。

【追記】
 たとえば原発について「徐々に徐々に減らしていく」という発言から、「理想は原発ゼロ」、そして「脱原発を堅持すべき」と政府が「再稼働ありき」で進む中で認識を発展させてきている。先日の四国電力との勉強会で、県側は「なぜ再稼働する必要があるのか」と問題提起している。
 これは、発電ゼロの原発に年600億円近いコストがかかり、大きな負担となっていること、ピークカットなどデマンドサイドの対応が重要なこと、県の産業振興の1つである自然エネルギーの普及の障害になっていること、新規制基準の問題点など、議会論戦を通じ、原発問題での認識が深化していることと結びついている。
  ここが、尾崎県政のおもしろいところ。逃れられない事実をつきつければ、まじめに対応する:。原発や低空飛行訓練もしかり。戦争法の問題でも、きっちりと詰める価値はある。

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