職の質向上、男女格差縮小、再配分が重要 OECD
異常な格差の拡大にOECDが警告をならしている。昨年も「格差や労働市場における機会の少なさは長期的な経済成長に有害」と発表していたが、
今回、いわゆる「多様な働き方」による低所得と不安定化への対応、男女格差是正のための対応の必要性を強調。また、弱まってきている再配分メカニズムを強化するため「多国籍企業が責任をもって税負担をするような政策が求められる」としている。
今回は、日本についての資料がある。格差も貧困率も高く、所得再配分は弱く、女性の非正規労働がおおい。
残業代ゼロ法、生涯派遣・・・安倍政権のやっていることは、経済分野もアベゴベ。
【OECDによると、職の質向上と男女格差の縮小に努めることが拡大する格差是正につながる 5/21】多くのOECD加盟国において所得格差は史上最大レベルに達しており、多くの新興経済においては特に高いレベルを維持しています。OECDによると、現在、OECD諸国の人口の上位10%の富裕層は下位10%の貧困層の9.6倍の所得があり、これは1980年代の7倍、2000年代の9倍からの更なる拡大です。
最新のOECD報告書「格差縮小に向けて(In it together: Why Less Inequality Benefits All)」はまた、所得よりも人口の上位富裕層に集中しているのは資産のほうであり、これが低所得者層の不利に拍車をかけています。2012年には、比較可能なデータのあるOECD18カ国において、人口の下位40%が総資産のわずか3%しか保有していません。その一方、人口の上位10%の富裕層は総資産の半分を保有しており、上位1%にいたっては総資産の18%を保有しています。
パリでMarianne Thyssen (European Commissioner for Employment, Social Affairs, Skills and Labour Monility) とともに本報告書を発表したアンヘル・グリアOECD事務総長は、「私たちは崖っぷちに達した。OECD諸国における格差のレベルはデータ開始史上最大になった。高い格差は成長に悪影響をもたらすことはデータが証明している。したがって政策対応は社会だけでなく経済のためでもある。各国政府が格差への対応をしなければ、社会への影響だけでなく長期的な経済成長をも阻むことになる。」
本報告書は、職の形態に関する対応を呼びかけています。パートタイム、契約、自営の割合が増加していることも格差拡大の大きな要因の一つとなっています。1995-2013年の間にOECD諸国で創出された全ての職の50%以上がこのような職業形態でした。特に低い技能を持った契約労働者は、正規労働者に比べ所得はかなり低く不安定です。
最も影響を受けるのは若者です。40%が非典型労働をしており、契約労働者の約半数は30歳以下です。彼らは契約労働からより安定した正規労働に移行する可能性は低くなっています。もう一つ本報告書が打ち出している主要な課題が、男女格差であり、これを縮小するためにより多くの措置がとられなければならないと指摘しています。就労している女性の人数が増えたことは格差拡大を抑制していますが、それでも女性就労者は男性就労者と比べ有給の職に就いている割合は16%少なく、さらに所得は15%低いです。ただ、働く女性のいる家庭の割合が20-25年前のレベルと同じままだった場合、現在平均でジニ係数がさらに1ポイント高かったことが予測されます。
社会一体性の影響を超え、本報告書は拡大する格差や労働市場における機会の少なさは長期的な経済成長に有害であると強調しています。OECD19カ国で分析された1985-2005年の間の格差拡大を見ると、1990-2010年の経済成長を4.7%ポイント押し下げたことがわかりました。経済全体の成長を抑制する主要因となり得るのが、実は人口の下位40%に影響を及ぼす格差です。格差拡大が続くことに併せて、社会経済的背景の低い家庭は教育やスキルの取得が落ち込むことが示されており、これにより格差が潜在スキルを多く損ね、社会流動性を低めていることがわかります。
OECDの中で格差が最大であるのは、チリ、メキシコ、トルコ、アメリカ、イスラエルですが、その一方で最も低いレベルなのがデンマーク、スロベニア、スロバキア、ノルウェーです。格差は新興経済において上述の最大レベルの国よりも高いですが、ブラジルなどの多くの国では格差縮小も見られています。OECDによると、格差縮小や包括的成長の活性を達成するには、政府は雇用における男女平等を推進し、より良い職へのアクセスを拡大し、ワークライフの中で教育やスキルへのより大きな投資を推進すべきです。税や給付による再配分は格差縮小の効果的な方策の一つです。最近の数十年では、再配分メカニズムの効果が弱まってきています。これに対応するには、富裕層の個々人のみならず多国籍企業が責任をもって税負担をするような政策が求められます。
【格差縮小は皆の利益となり得るか。 OECD 日本に関する資料】■問題点とは?
・日本における所得格差は、OECD 平均より高く、1980 年代中盤から拡大している。これは、大半のOECD 加盟国と同様の傾向である。日本では2009 年には、人口の上位10%の富裕層の平均所得は、下位10%のそれの10.7 倍になり、1990 年代中盤の8 倍、1980 年中盤の7 倍からの増加となる。2013 年のOECD 平均は9.6 倍だった。 相対的貧困率(所得が国民の「中央値」の半分に満たない人の割合)は、日本では人口の約16%である* (これはOECD 平均の11%を上回るもの)。相対的貧困率は、世代間では、高齢者が最も高く、66 歳以上の約19%に影響をもたらしている。
総じて、1985 年以降、日本では、家計収入の平均はほとんど増加しておらず(毎年約0.3%増加)、さらに下位10%の貧困層では家計収入が毎年約0.5%減少している。格差は2006-2009 年の金融危機の間にも引き続き拡大し、人口の上位10%富裕層の所得は横ばいだったものの、可処分所得は合計で5%減少した。
■なぜ日本にとって重要なのか?
日本の所得再分配のレベルは、大半のOECD 諸国と比べ低い。税と給付を合わせても2009-2010 年の格差は19%しか減少しておらず、それに比べ同時期のOECD 平均は26%となっている。日本よりも低い再分配(税・給付制度による)であった国は、チリ、韓国、アイスランド、スイスだけだった。
しかし、日本政府は再分配を強化するために多くのことを実行した。多くの他の国々と比べ日本は、過去何年かで税と給付をとおした格差削減は拡大した(図2 参照)。この再分配拡大には、例えば失業者や子供のいる家庭に対する公的現金給付がより手厚くなったことが関係している。労働年齢人口の間で所得格差が拡大していることは、彼らの中で非正規労働者の割合が増加していることに関係している。非正規労働者の割合は、1990 年以降倍増しており、2012 年には約34%にまで達した。
時間給で見ると、非典型労働者(自営業者、臨時フルタイム労働者、パートタイム労働者)は典型労働者よりも低く支払われている。有期契約労働者は典型労働者より1 時間につき30%給料が低く、パートだと46%低い(図3 参照)。非典型労働者にOJTを提供している企業は、わずか28%である。非典型労働に頼っている家計の貧困率は20%でOECD 平均22%に近く、典型労働の4 倍(OECD 平均:5 倍)となっている。非典型労働においては女性の数が上回っており、全体の60%以上を占めている。二極化する日本の労働市場においては、女性は多くの場合比較的低賃金の非典型労働に収まる。税・給付制度は、被扶養者である配偶者が所得税を払わなくてよくなるため、女性の所得を増やす動機を削ぐ。これが一つの原因で、日本では家計の第二の稼ぎ手の64%が非典型労働であって、これはOECD の中で最も高い割合であり、また、日本では他の国よりも多くの低賃金労働者がより高い世帯所得階層に含まれる。
自営業及びパート労働者(週20 時間未満の労働)には、失業手当を受ける資格がない。非正規労働者の3分の2 しか雇用保険に加入しておらず、職場ベースの健康・社会保険に加入しているのは半数以下である。
より一般的に、日本では2010 年時点で、税・給付制度は、パートタイム労働からフルタイム労働への移行を阻んでいる。追加収入の3 分の2 以上が、減らされた給付(特に住宅給付)やより高い税金にとられてしまうからだ。
■政策決定者に求められることとは?格差に対応し、万人への機会均等を推進するためには、各国政府は包括的な政策パッケージを取り入れるべきである。そのパッケージには以下の4 つの主要分野が中核となるべきである:女性の労働市場参入を一層推進すること、雇用機会を強化するとともに質の良い仕事を提供すること、質の良い教育やスキル開発、仕事における適応を強化すること、より効果的な再分配のためにより良い税・給付制度を構築することである。日本において、これらを実現するためには以下のようなイニシアチブが必要となる。
・ 職場ベースの社会保険制度によって非正規労働者の社会保障を拡大する。そのためには例えばコンプライアンスの向上や、フルタイムに近い実質労働時間のパートタイムへの適用拡大などがあげられる。
・ 非正規労働者が正規労働に移行しやすくするために研修機会を推進したり、昇進ができるように日本版職業能力評価制度を構築する。
・ 特に家計における第二の稼ぎ手に働く意欲を与えるために、就業中の給付や財政措置を強化する。
・ 利用しやすい保育を増やし、父親に育児休暇取得を推進する等、仕事と家庭のバランスを改善できるような対策を発展させることで、女性の労働市場参加を増やす。
・ 低所得者のために勤労所得税額控除の導入を検討する。
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