「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の原型~高知県の産振計画
まち・ひと・しごと創生総合戦略・・、少子化、中山間地対策を横串にし、到達すべき姿をさだめ、PDCAで毎年バージョンアップを続けている県の「産業計画」と、内容・仕組みもほぼ一緒である。よって、高知県は、全国トップで計画を提出している。
ところで、この計画は年度内に立てるのだが「交付金の上乗せをめざすために、秋ごろに策定を急ぐ自治体が多そう」「そのため、この分野に詳しいとされるコンサルタントが引っ張りだこ状態」との報道。
この計画づくり・・・そんな簡単ではないし、コンサルへの委託で成功するはずがない。計画づくりだけでなく、行政の仕事の仕方、姿勢もふくめ問われるのである。、
■ 高知県 「産業振興計画」の策定過程とその特徴
1. 07年11月に新知事に就任。08年2月議会で、産振計画の策定(アンテナショップとともに)が報告され、翌年の2月議会で第一期のプランを決定。
その間、5つのテーマにわたり、市町村長や各種団体、各分野の実践者、研究者など、1500名の県民が計画づくりに参加し、地域の資源、可能性、課題に徹底して光をあて、練り上げてきた。その間、県内主要900社の訪問聞き取り調査など実施している。
計画の前提には、人口減で県内市場が小さくなるもとで「地産地消の徹底」「地産外商の推進」、とくに園芸王国でありながら、県際収支で赤字となっている食品加工の推進が、柱となっている。その後、毎年の点検・改善の取り組みの中で現在の姿になっている。
★ 知事の基本姿勢しめす発言
①「地域に根ざした産業が重要」 自民・樋口質問への答弁 2015/3/9
・樋口 地道にとりくむ産業振興のとれくみを評価しつつ「ビッグプロジェクトを誘致し、一気に県民所得をあげる手立てはないのか」と質問。
・知事「いわゆるビッグプロジェクトを竹に木をつぐように形で突然持ってくる、残念ながら、後々それが分離し苦境に立っている地域を多数しっている。本当に県の発展に長期的につながっていくことを考えれば、やはり地域に根付した取り組みを育てていくことが大事。」「大型の工場を誘致し撤退し大変困っている地域がたくさんある。やはり地域に根付いていることが大事。一次産業由来の産業を育成し、それを外商、拡大再生産につなげていく、ということで産業振興計画に取り組んでいる。次世代型園芸、CLT、種苗など農業、林業、水産業での取り組み。それは小さなプロジェクトではない。」
②人口400人の村で、住み続けられる仕組みづくり 2014年9月議会・提案説明
「人口が約400人と、離島を除きますと全国最小の市町村となっております大川村では、村の振興計画を策定し、主要な産業である畜産業の振興と地域資源を生かした山岳観光の振興、生活交通の確保等の取り組みや、集落活動センターの開設も視野に入れた取り組みが進められております。
県としましては、人口最少の大川村での取り組みの成功は他の市町村にも大きな波及効果をもたらすとの考えのもと、大いに力を入れて支援することとし、これまでに庁内にプロジェクトチームを立ち上げたほか、今月から同村に県職員を1名派遣したところであります。今後とも、大川村と連携し積極的に取り組んでまいります。」
2 もともと人口73万人であり、住民と行政の距離感が近いうえ、前県政以来、市町村や地域住民のまちづくりの取り組みを直接支援し、県行政に反映させる地域支援企画員60名がおり、県行政が地域の状況に明るく、部局横断的な対応の訓練がされてきた仕事の仕方、文化があっこと。
また、県内には、馬路村、梼原町など先進的なとりくみが存在していた。
3 さらに、特定議員や特定団体の顔色を見て仕事をして来た県行政が、前県政の「しがらみの一掃」で、県職員はストレートに県民のための仕事ができる環境ができたこと。
4 そして、あったかふれあいセンター、集落活動センターなど県単独の施策であっても、全国共通の課題を解決するうえで、国の制度に発展できると判断し、仕組みを構築してきた現知事の政策判断力
これらのことが組み合わさって、現在、苦闘しながらも、さまざまな可能性を開いてきている(TPPや医療介護の切捨て、消費再増税と外形標準課税の拡大などがされれば、その努力も台無しになるが・・・)。
昨年9月、産振計画について担当部長から話しをうかがったが、その中で次のような発言している。
これまでの成果について
“ものの考え方、進め方が変わってきている。数値目標をもって進めていく。ハードルは高いが、「従来の延長線上では現状を脱することができない」がスタート地点。官民一体のとりくみ。県が踏み込んで進めている。その点で、前県政で既存の枠組みをこわされた中での仕事の経験が生きている。他県の担 当者と話しても、そこがかみ合わない。”
“スタートからの変化では
①内部の変化。仕事の仕方がかわった。目標を設定し数値化する。10年後に若者が生活できる地域づくりを掲げ、各部門部門で具体的数値をもち、そこにいたるプロセスを明らかにする。PDCAサイクルをまわし、試行錯誤しながら進めている。まずやってみる。失敗してもどこが問題かあきらかにする。CAを重視。項目ごとに細かくチェック。そうした仕方が身につきつつある。
②プレーヤーは民間。県がいくら言っても、同じ意識をもって「やってみよう」とならないと進まない。動いてくれる事業者が増えてきた。「外商をやるなら、うちも加工品にしょうか」と。
課題は、その流れがまだ小さい。食品加工は現在700億円。これを800億、900億にする目標だが、人口減の中で100億上積みは大変。県民にインパクトをあたえ、成果が実感できるところまでには先長い。
今後の展望は、目標を持ちやっていくだけ。流れはできたが、どうボリュームアップするか、課題を設定することで手立てが見えてくる。”
単に計画をたてるだけでなく、行政の仕事の仕方、姿勢も問われる。
市町村毎の「総合戦略」策定となれば、県の相当の支援が必要だろうが、 すでに7つの地域アクションプランがあり、県と市町村の戦略は、統一的で有機的な関連をもったものになる。この点でも、都道府県、市町村も年度内に計画策定を全国一律ですすめるのは、どうなのかと思う。
【地方創生の「総合戦略」 補助金頼みでは持続不可能 朝日 5/23】地方創生に関する議論が、全国で盛んに行われています。国は今後の人口減少なども考慮に入れつつ「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を決定しました。これを受け、すべての都道府県と市区町村は2016年3月末までに「総合戦略」を作るのですが、実際は今年秋までに戦略策定を急ぐ自治体が多そうです。補助金が通常より上乗せ支給されるからです。
そのため、この分野に詳しいとされるコンサルタントが引っ張りだこ状態。税金を投じて地域特産品をネットで割引販売したり、外国人観光客を呼び込む仕掛けをつくったりするのが「人気のある戦略」になりそうです。
地方の商店街再生などで実績がある木下斉さんは、こうした「補助金ありきの状況」に首をかしげます。
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