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「5年以内の運用停止」反故~ 「辺野古」約束違反

埋め立て承認の際に、「普天間飛行場の5年以内の運用停止」などを求めた前知事の要望に対し、安倍首相は「知事との約束は県民との約束だ。できることは全てやる」と約束した。5年内とは「19年2月が期限となるわけで、本来なら運用停止に向けた交渉を本格化させる時期である」(沖縄タイムス)。 が、4月下旬に日米「2プラス2」にむけた作業で、防衛大臣は「普天間飛行場の5年以内の運用停止」を求めてもいない。
 琉球新報は、埋め立て承認の前提条件が反故にされた。「承認は無効」と主張。
【社説 「辺野古」約束違反 埋め立て承認は無効 新基地建設撤回すべきだ 琉球新報4/11】
【社説[5年以内運用停止]  危険除去より米優先か 沖縄タイムス 4/10】

【社説 「辺野古」約束違反 埋め立て承認は無効 新基地建設撤回すべきだ 琉球新報4/11】

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設による新基地建設で、前知事が埋め立てを承認した際の事実上の前提条件を、政府が次々とほごにしている。
 約束違反の一つは、負担軽減策として要求された普天間飛行場の5年以内運用停止を政府が無視する姿勢を示していることだ。
 もう一つは、前知事の求めで設置した環境監視等検討委員会の意見を政府が尊重していないことである。
 前知事と約束した事項を政府が守らないことで、埋め立て承認の大前提は崩れている。政府は新基地建設計画を直ちに撤回すべきである。

■行政の継続性どこへ

 政府は4月下旬にワシントンで開かれる日米の外交・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)の共同声明に、普天間飛行場の5年以内の運用停止を盛り込まない方向で作業している。
 安倍晋三首相は5年以内の運用停止要求など県の要望について、埋め立て承認を得た直後の2013年12月、「知事との約束は県民との約束だ。できることは全てやる」と述べた。
 にもかかわらず「県民との約束」を、ほごにするとはどういうことか。政権が変わったわけではない。安倍首相自ら約束したことである。安倍首相にとっての「約束」は何もしないということなのだろうか。
 菅義偉官房長官は事あるごとに「行政は継続性が重要だ」と述べてきた。その言葉を政府自身がかみしめるべきである。
 翁長雄志知事の辺野古移設断念要求に対し、政府は前知事から埋め立て承認を得たことを錦の御旗に掲げて作業を強行している。埋め立て承認の前提条件を無視しておきながら、承認を得たことだけを持ち出すことに正当性はない。
 政府は最初から5年以内の運用停止に真剣に取り組んでこなかった。5年以内の起点を確定するまでに9カ月を要したことからも明らかである。
 菅官房長官や中谷元・防衛相は最近になって、5年以内の運用停止の実現は全国の協力を条件に挙げるようになった。約束を履行できない責任を転嫁する姿勢以外の何物でもない。
 在沖米軍トップのウィスラー四軍調整官は14年4月、5年以内の運用停止の実現性について「答えはノーだ」と明言した。
 政府も米側の考えは分かりきっていたはずである。実行できないことを知りながら約束していたとしたら、悪質である。不誠実極まる対応を許すことはできない。

■形骸化した検討委

 沖縄防衛局が辺野古海域に設置した大型コンクリートブロックによって94群体のサンゴを破壊していたことが明らかになった。
 環境保全を担保するために前知事の求めで、防衛局が設置した環境監視等検討委員会は形骸化していると言わざるを得ない。
 第3回会合(1月)で委員からアンカー(重り)を重くするだけでなく、台風前に浮標灯(ブイ)を引き揚げるなどの対応を求める意見が出た。
 だが防衛局はその3週間後、大型コンクリートブロックを投下している。防衛局が意見を尊重していれば、サンゴ破壊は避けられただろう。
 防衛局は委員会の指導・助言を受ける立場である。委員の意見に聞く耳を持たないとあっては委員会を開く意味はなかろう。結論ありきでは委員にも失礼である。
 政府は「周辺環境への影響を最小限にとどめるよう配慮している」との答弁書を閣議決定している。現実との乖離(かいり)はあまりに大きい。
 前知事が求めた前提条件を政府は一顧だにしていないことが次々明らかになっている。政府は埋め立て承認を得るために前知事を、よもや利用したのではあるまい。
 政府が約束を履行しない以上、埋め立て承認は当然無効である。



【社説[5年以内運用停止]  危険除去より米優先か 沖縄タイムス 4/10】

 名護市辺野古への新基地建設をめぐり、日米両政府がこれまで取り繕ってきた主張のほころびが見え始めた。
 カーター米国防長官と安倍晋三首相、中谷元・防衛相が相次いで会談し、新基地建設推進をあらためて確認した。
 会談後の共同記者会見で、中谷氏は普天間飛行場の固定化は避けなければならないと強調した。その一方で、県の要請に基づき政府が努力を約束した普天間の「5年以内の運用停止」は米側に求めていないという。どういうことなのか。
 「5年以内運用停止」は、2013年12月に当時の仲井真弘多知事が安倍首相に要請したものだ。仲井真氏は当時、「一日も早い危険性除去にようやく政府のトップが理解し、実現に全力で取り組むと言った」と評価した。
 日米は普天間の返還を「早くて22年」とすることで合意している。普天間の一刻も早い危険性除去を図るのであれば、仲井真氏と安倍首相が交わしたという「5年以内」は当然、求めるべきものだ。
 菅義偉官房長官は昨年9月に来県した際、「5年以内」について同年2月が起点になるとの考えを示した。つまり、19年2月が期限となるわけで、本来なら運用停止に向けた交渉を本格化させる時期である。
 そもそも米側は、当初から否定的な見方を示している。結局、政府は5年以内運用停止に取り組むとの口約束で、仲井真氏から辺野古埋め立て承認を引き出し、その後、放棄したとしか見えない。県民を欺くような態度ではないか。
    ■    ■
 日米両政府が1996年に普天間飛行場返還に合意してから、今月12日で19年になる。この間に沖縄国際大学へのヘリ墜落事故があり、周辺住民の墜落への恐怖は現実のものになった。
 騒音被害も激しく、日米合意で原則規制されている午後10時以降の飛行は常態化している。
 2010年7月に福岡高裁那覇支部で言い渡された普天間爆音訴訟の控訴審判決は、騒音防止協定は事実上形骸化している、と断じた。さらに判決は、米本国では墜落の危険性を避けるため安全基準としてクリアゾーン(土地利用禁止区域)が飛行場内に設定されているが、普天間では同ゾーンが民間地にせり出し、その中に学校や病院などの施設が存在している、と同空港の「欠陥」を指摘した。
 その後、オスプレイが配備され、普天間の危険性は増すばかりだ。
    ■    ■
 普天間飛行場に対し、米側には使用者としての責任が、日本政府には提供者責任がある。早期返還に向け、あらゆる選択肢を探るべきだ。
 普天間の危険性除去と辺野古新基地建設は、本来結び付くものではない。だからこそ沖縄の民意は、新基地に強く反対している。
 「辺野古が唯一の選択肢」とのフレーズは、米側が望む新基地建設を強行するための単なる方便としか思えない。判で押したようにそれを繰り返すのは、ほころびが露見するのを恐れているからではないか。あまりにも不誠実だ。

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