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世界と日本の人権問題 アムネスティ報告

 政治を機能させるために「国連安保理常任5か国が、大量虐殺行為の状況では拒否権の放棄をすること」を呼びかけている。
 日本については、総論では「日本は、国際人権基準に背を向けたままであった。政府は、韓国・朝鮮人など外国籍住民に対する具体的な差別対策を講じなかった。また、第二次世界大戦中の日本軍性奴隷制度を否定する言動に反論しなかった。難民認定者数は、きわめて低いままだった。12月に特定秘密保護法が施行され、情報の透明性が懸念された。」
 
【世界の人権問題・日本  アムネスティ・インターナショナル】
【アムネスティ・レポート2014/2015 発表 市民への残虐行為に世界は無力】

【世界の人権問題・日本  アムネスティ・インターナショナル】

◆人権をめぐる、2014年の動き
日本は、国際人権基準に背を向けたままであった。政府は、韓国・朝鮮人など外国籍住民に対する具体的な差別対策を講じなかった。また、第二次世界大戦中の日本軍性奴隷制度を否定する言動に反論しなかった。難民認定者数は、きわめて低いままだった。12月に特定秘密保護法が施行され、情報の透明性が懸念された。

◆人種差別
政府は、在日韓国・朝鮮人に対する人種差別・侮蔑用語や嫌がらせを批判しなかった。韓国・朝鮮人が多く住む地域では、デモが行われた。大阪高等裁判所は7月、高圧的な団体「在日特権を許さない市民の会」に対して、学校周辺での街宣活動の禁止を命じた。高裁の判断は、名誉毀損や器物破損などではなく、人種差別撤廃条約に基づく人種差別行為に当たるというもので、人種差別とする判断は初めてだった。しかし、年末になっても政府は、国際人権基準に沿った、差別・敵意または暴力の扇動となる憎悪の唱道を禁止する法案を可決していなかった。

◆司法制度
警察が容疑者を最長23日間拘禁できる代用監獄制度が、取調べで自白を引き出すための拷問や虐待を助長した。国際機関からの勧告にもかかわらず、代用監獄制度の廃止または国際人権基準に沿った制度への改革は一向に進まなかった。

◆女性と少女に対する暴力
政府には、歴史的な意味を持つ河野談話を見直す動きがあった。河野談話では約20年前、日本軍性奴隷制度の被害者に対して、責任の所在を認め謝罪を表明した。政府が設置した検証チームは6月、河野談話の作成過程に関する報告書を公表した。当時の談話内容や決断は尊重されたものの、見直し自体が政府の責任回避と見なされ、韓国など隣国との緊張が高まった。性奴隷制度を否定あるいは正当化する著名人・政治家も現れた。政府は、いまだ「性奴隷」という表現を公式に使用せず、生存する被害者に対する十分な補償の提供を拒否し続けた。

◆死刑
死刑の執行は続いた。袴田巌さん事件を裁いた静岡地方裁判所は3月、再審開始決定を出し身柄を直ちに釈放するよう命じた。袴田さんは、強要された自白に基づく不公正な裁判を経て、1968年に死刑判決を受けた。世界で最も長く拘禁された死刑確定者だった。40年以上も独房に拘置されたため精神疾患を患っていた。再審開始決定を不服とする検察は、東京高等裁判所に即時抗告した。

◆庇護希望者および難民
日本に対する難民申請数は4,500件と推定されるが、難民条約に基づく難民認定者数は今年もわずかな人数に留まった。2006年以降、難民申請数は確実に増加している。ビルマ(ミャンマー)からの申請は減少し、ガーナ、カメルーンなどからの申請が増加した。

◆表現の自由
2014年12月に、特定秘密保護法が施行された。政府は、防衛、外交、特定有害活動、テロの4分野における情報で、漏洩すると国の安全保障に著しく支障を与える恐れがある場合、特定秘密として指定できるようになった。しかし、特定秘密の定義が曖昧な上、情報監視審査会が政府に対して行う勧告には法的拘束力がないため、行政機関が秘匿する情報へのアクセスが制限され、情報の透明性が損なわれる恐れが残った。


(アムネスティ・レポート 2014/2015より)

【アムネスティ・レポート2014/2015 発表 市民への残虐行為に世界は無力】

アムネスティは、2014年の世界の人権状況をまとめた年次報告を発表した。そして、向こう1年について、一層多くの市民が武装グループにより虐待を受け、表現の自由に対する圧力は続き、人道と難民の危機は悪化するとの予測を出した。これらを回避するためには、国際社会の紛争対応を根本から変える必要がある。世界の指導者はさまざまな紛争に立ち向かい、市民を国家や武装グループの暴力から保護するため、迅速に行動しなければならない。そのために、アムネスティは国連安保理常任5か国が、大量虐殺行為の状況では拒否権の放棄をすることなどを呼びかけている。

2014年は暴力や紛争に直面した数百万の人びとにとって最悪の1年であった。国家や武装グループによる紛争や人権侵害に対して、国際社会の対応は恥ずかしいほどに無力だった。 70年前、第二次世界大戦の経験を二度とすることがないようにと国連が設立された。私たちは今、大規模な紛争と暴力、またその紛争が引き起こした甚大な難民危機を経験している。しかし、現代の最も差し迫っている問題に対する実行可能な解決策を、これまでまったく見出せていない。

◆武装グループ
特に懸念されることは、自称「イスラム国」と呼ぶグループなどの武装グループの台頭である。
2014年には少なくとも35カ国で武装グループが人権侵害を犯した。これはアムネスティが調査した国々では5か国中1カ国以上の割合だ。
ボコハラム、「イスラム国」、アル・シャバブなどのグループの影響力が国境を越えて及ぶにつれ、その支配下におかれる市民が増え、虐待や迫害、差別を受けることになろう。各国は自国の力では、市民の保護はできないとうそぶりを止め、何百万の人びとの高まる苦悩を緩和する支援をしなければならない。 指導者は、世界中で起こっている危機に対応する方策を根本的に前向きに変えていかねばならない。

◆国連安保理の拒否権
シリア、イラク、ガザ、イスラエル、ウクライナにおいて、国家や武装グループが一般市民に犯罪行為を行っている状況であっても、国連安保理は適切な対応ができなかった。それは既得権や政治的な理由のためだった。
アムネスティは現在、国連安保理常任理事国に対し、大量虐殺などの大規模な残虐行為がある状況においては、拒否権を放棄するよう要請している。国連安保理の常任理事国5か国が拒否権を放棄すれば、人命が重大な危機にあるとき、国連は一般市民を保護する行動がとりやすくなり、また加害者害に対し大規模な残虐行為を世界は黙認しないという強い意思を示すことができる。

◆武器貿易
国家や武装グループが人権侵害を犯す国々に武器を大量に流し続けてきたことで、2014年には市民数万人の命が失われた。
アムネスティは、米国、中国、カナダ、インド、イスラエル、ロシアをはじめ世界の国々に武器貿易条約を批准、あるいは加入し、遵守するよう要請している。武器貿易条約は、アムネスティなどによる数十年来の活動が実を結び、昨年発効した。
2014年、イラク、イスラエル、南スーダン、シリアに大量の武器が流入した。これらの武器は紛争に巻き込まれた市民に使用される可能性が高いことはわかっていた。「イスラム国」がイラクの大部分を支配下においたとき、そこには巨大な武器庫があった。人権侵害加害者への無責任な武器流入は今すぐ止めなければならない。

◆爆弾
アムネスティは世界の指導者に、航空機搭載爆弾、迫撃砲、大砲、ロケット弾、弾道ミサイルなどの爆弾の人口密集地域への使用を規制するよう要請している。密集地では、数えきれないほどの市民が命を失ってきた。
目標に届く精度が低く、被害が拡大する可能性が高い爆弾の使用を規制していれば、イスラエル、ガザ、ウクライナなど最近の紛争で失われた数千人の生命は救えたかもしれない。紛争の最前線となってしまった地域に住む一般市民を保護するため、国際社会はさらに多くのことができるはずだし、やらねばならない。

◆安全保障上の脅威に対する過剰な反応
アムネスティは各国に、安全保障上の脅威への対応が、基本的人権を損なったり、暴力を一層煽ったりすることのないよう強く求めている。年次報告では、2014年にどれだけ多くの国が安全保障上の脅威を理由に、厳しい抑圧策を取ってきたかを明らかにしている。
世界の政府首脳は、治安維持を口実に、人権侵害を犯してきた。今の動きを見ると、政府が今後も、安全保障上の脅威に対し、デモに対する厳しい取り締まり、テロ防止法の導入、不当で大規模な監視技術の利用など、憂慮すべき対策を取りつづけるであろう。しかし、無思慮な過剰反応では事態は解決しない。かえって、過激派が台頭する抑圧的な環境を作りだすだけだ。

◆難民
国際社会が変化する紛争に満足に対処できない結果として、過去最悪ともいえる難民危機が起こっている。シリアからの400万人ほか、数百万人が暴力と迫害から逃れて難民となっている。
豊かな国が、人の生命を救うというより、締め出そうとしているのは、許しがたい。全世界の難民問題は、直ちに対応策をとらなければ、悪化する一方であろう。各国首脳は数百万人の苦悩を和らげることができる。その方法は、政治的・経済的資源をつぎこみ、人道的支援を惜しみなく提供し、紛争から逃れてきた人びとを援助し保護し、最も弱い立場にある人びとを再定住させることである。
アムネスティ国際ニュース
2015年2月25日


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