内部留保増分の87%で、1.9万円賃上げ、雇用誘発1300万人、税収4.2兆円増の「好循環」 労働総研
・2014 年7~9 月期を1 年前と比較 売上高が2.9%増、経常利益7.6%増加、が従業員給与・賞与の総額は1.9%の上昇にとどまり、内部留保が9.4%、42.8 兆円も増加。
・2014年の賃金上昇率は1.4%。消費税3%分の影響(日銀推計 2.0%)がカバーされていない。
・当期の純益を、従業員等に還元するように経営を改めるだけで、月11.7万円以上の賃上げが可能。
・生活防衛に必要な最低限の賃上げ1 万8843 円でも、GDP8.6 兆円、税収1.44 兆円、雇用78.8 万人増加する。
そのために必要な原資は、11.4兆円。当期増加した内部留保の26.6%。
・最低賃金の時給1000 円への引上げ GDP2.23 兆円、税収0.37 兆円、雇用2.8 万人の増加。
・ 働くルールの確立 GDP7.3 兆円、税収1.23 兆円の増加、雇用は、直接雇用510.9 万人と誘発雇用671.9 万人(生産の増加に対応した雇用増)を合わせて1182.8 万人の増加。
・非正規社員の正規化 GDP6.7 兆円、税収1.13 兆円の増、雇用84.9 万人分の誘発雇用
☆ 生活防衛のために必要な最低限の賃上げ、最低賃金の時給1000 円への引き上げ、働くルールの確立、および非正規の正規化を合わせると、37.24 兆円の原資が必要〔内部留保増加分の87%で対応できる〕
→ 国内生産45.6 兆円、GDP24.8 兆円拡大。510.9 万人の直接雇用と838.4 万人分の誘発雇用を創出。税収は、国・地方を合わせて4.2 兆円の増収を期待出来る。
この試算を証明しているのが経済の実態。実質賃金は低下をつづけ、その結果、実質GDPは5年ぶりに減。民主党よりお粗末な経済対策だということ。
【2015春闘提言 目先の利益ばかり追求する経営を改めさせ大幅賃上げを! -内部留保をこれ以上増やさないだけで月11万円以上の賃上げが可能- 2015年1月7日 労働運動総合研究所】
以下、サマリーと、「1. 徹底した大企業本位の“アベノミクス”」「4 賃上げと労働条件改善の経済効果」の部分
【2015春闘提言 目先の利益ばかり追求する経営を改めさせ大幅賃上げを! -内部留保をこれ以上増やさないだけで月11万円以上の賃上げが可能- 2015年1月7日 労働運動総合研究所】◆ 当研究所(労働総研)は、かねてから溜まりすぎた内部留保を賃金・労働条件の改善に活用することが日本経済発展のカギであると主張してきた。近年、その主張が広く理解されるようになり、安倍総理も国会で「しっかりと(内部留保を)人材に充ててもらいたい」と答弁するに至った。しかし、内部留保の活用はいっこうに進まず、2013年度末には、GDPを27.8兆円も上回る509.2兆円に達した。
◆ 現在も内部留保は依然として増え続けており、1年間に42.8兆円も増加した。過去に蓄積された内部留保を取り崩さなくても、この原資を活用すれば、役員給与および株主配当を同率で引き上げたとして、1ヵ月11万円以上の賃上げが可能である。
◆ 内部留保は、税金、株主配当、役員給与等を全て支払った後の利益の蓄積であるが、本来、株主や従業員に配分されるべきものであり、多額の積み上がりは、資本主義であっても正常な経済の姿とは言えない。
◆ 2014年の賃金上昇率は1.4%であり、消費税増税分3%の影響(日銀推計によると2.0%)がカバーされていない。物価上昇と税・社会保険等の負担増から生活を防衛するためには、2015春闘において、少なくとも6.0%、1万8千円以上の賃上げが必要である。
◆ 日本には、残念ながらサービス残業や過密・長時間労働、低い年休取得率など、先進国と言えない恥ずかしい労働の実態がある。また、近年の非正規社員の増大がさらなる労働条件の悪化を招いている。これらの改善を目指すたたかいは、いま、とりわけ重要になっている。
◆ 賃上げ、労働条件の改善は企業に負担増をもたらすが、家計消費需要の拡大によって国内生産が誘発され、回りまわって企業の生産活動を活発にする。また、GDPや税収を増やす。産業連関分析により、その大きさを計測したところ、生活防衛に必要な最低限のベースアップと最低賃金の引き上げ、働くルールの確立および非正規の正規化によって、GDPが24.3兆円、税収が4.2兆円増えることが分かった。
◆ いくら首相が要請しても、経営者が率先して自社の賃金を上げることはない。鍵を握るのは労働者のたたかいである。2015春闘は、生活改善だけではなく、本格的なデフレ脱却、経済成長をめざすたたかいであり、労働組合の責任が問われる春闘と言える。1 徹底した大企業本位の“アベノミクス”
⑴ 賃金上昇は大企業のみ、実質賃金が低下
安倍晋三首相は、昨年2月に経団連、経済同友会、日本商工会議所の経済3団体トップと首相官邸で会談し、「業績が改善している企業は報酬の引き上げを行うなどの取り組みをぜひ検討してもらいたい」と要請し、「(経済に)明るい兆しが見えてきたが、頑張って働く人の所得増大の動きにつなげていくことができるかどうかで本格的なデフレ脱却に向かっていく。それが実現できるかどうかに安倍政権の経済政策の成否がかかっている」と訴えた。(「日経」)しかし、厚生労働省「毎月勤労統計調査」により、1 年半後の2014 年7~9 月期の現金給与総額を前年同期と比較すると、従業員500 人以上の大企業の賃金は3.82%増とこの間の物価上昇率3.32%をわずかに上回ったものの、それ以下の企業は物価上昇率を下まわり、実質賃金が低下した。特に労働者の40%以上を占める5~29 人の小企業の賃金は、ほとんど上がっていない。(表1)
また、パート、一般別に見ると、一般労働者の賃金が1.89%上昇したのに対して、パートの賃金は0.33%とほとんど上昇していない。そのパートが1年間に2.75%も増え、全体の賃金を押し下げた。
⑵ 依然として続く内部留保の増加
安倍総理に続いて麻生太郎財務相は、2014 年9月3日、臨時閣議後の記者会見で「今後はやはり企業が内部でため込んでおられるお金等々を、去年で304 兆円あるはずですから、それが賃金に回るか、設備投資に回るか、配当に回るかということをやっていただかなければいけないと思っています」と述べ、企業の内部留保に一歩踏み込んだ発言を行った。このように、国内需要を拡大し、デフレを克服して経済成長を図るためには、内部留保を活用した賃金の引き上げが決定的に重要であることは、政府を含め広く認めるところとなっている。
しかし、財務省の「法人企業統計」により、安倍内閣発足後1年9カ月の推移をみると、売上高が低迷する中で経常利益が拡大し、従業員給与・賞与が低下する一方で、依然として内部留保の拡大が続いている。(図1)⑶ これ以上内部留保を増やさないだけで11 万円以上の賃上げが可能
過去1年間(2013 年7~9月期から2014 年7~9 月期まで)に、内部留保は42.8 兆円も増加した。
資本金規模別にみると、10 億円以上の大企業は14.3 兆円、1~10 億円未満は7.7 兆円、5 千万~1 億円未満は11.1 兆円、1~5 千万円未満は9.6 兆円と、売上高および経常利益がマイナスであった1~5 千万円を含む全ての規模で、内部留保が増加している。(表2)当研究所(労働総研)は、大企業が膨大な内部留保の一部を取り崩して、従業員の賃金ならびに下請け中小企業との取引価格を引き上げることがデフレ不況からの脱却に欠かせないと主張してきたが、実は、過去に積み上げた内部留保を取り崩すまでもなく、これ以上内部留保を増やすことをやめ、当期の純益を従業員と役員および株主に還元するように経営を改めるだけで、月11.7万円以上の賃上げが可能になる。(表3)
この要求を実現することは、目先の利益ばかりを追求し、結果としてデフレ不況を長引かせている大企業の経営を、社会的責任を自覚した経営に転換させ、日本経済の本格的なデフレ脱却を可能にすることでもある。
内部留保増加分の全額を従業員賃金に振り向けるのではなく、役員給与・賞与および株式配当も同率で増やすと仮定した場合の賃上げ可能額である。(補足資料 表9 を参照)
なお、利益を従業員給与・賞与および役員給与・賞与として支払うと、法人税納税後の純益の積立である内部留保が経費に変わるので、資本金規模に対応した法人税率を用いて逆算し、財源を課税前に戻した。また、従業員給与・賞与と役員給与・賞与および株式配当への配分比率、ならびに給与と賞与の構成比は2013 年度の「法人企業統計」から求めた実績値である。
4 賃上げと労働条件改善の経済効果
⑴ 生産を活発化し、GDP,税収および雇用を増やす
賃上げと雇用・労働条件の改善は、企業の労務コストを上昇させるが、労働者、国民の生活を改善するだけではなく、家計消費需要の拡大を通じて新たな生産を誘発し、GDP(国内総生産)や雇用および税収を増加させる。産業連関表を利用してその経済効果を試算したところ、生活防衛に必要な最低限の賃上げ1 万8843 円であっても、GDPを8.6 兆円増やし、税収1.44 兆円、雇用78.8 万人の増加が見込まれる。全労連・国民春闘の統一要求2 万円であれば、GDP9.1 兆円、税収1.53 兆円、雇用83.6 万人の増加を見込むことができ、そのために必要な原資は12.1 兆円で、内部留保の2.38%である。
過去のピーク水準を回復するために必要な4 万9600 円の賃上げなら、GDP27.1 兆円、税収4.55 兆円、雇用249 万人の拡大が見込まれる。さらに、内部留保増加分の“適正”配分による賃上げ11 万7116 円であれば、GDP58.9 兆円、税収9.9 兆円、雇用542.3 万人の増加が見込まれる。次に、最低賃金の時給1000 円への引上げでは、GDP2.23 兆円、税収0.37 兆円、雇用2.8 万人の増加が見込まれる。
働くルールの確立では、GDP7.3 兆円、税収1.23 兆円の増加が見込まれ、雇用は、直接雇用510.9 万人と誘発雇用671.9 万人(生産の増加に対応した雇用増)を合わせて1182.8 万人の増加が見込まれる。
非正規社員の正規化では、GDP6.7 兆円、税収1.13 兆円の増加が見込まれ、雇用は、84.9 万人分の誘発雇用が見込まれる。生活防衛のために必要な最低限の賃上げ、最低賃金の時給1000 円への引き上げ、働くルールの確立、および非正規の正規化を合わせると、37.24 兆円の原資が必要になるが、それによって国内生産が45.6 兆円、GDPが24.8 兆円拡大し、510.9 万人の直接雇用と838.4 万人分の誘発雇用が創出され、税収も、国・地方を合わせて4.2 兆円の増収を期待することが出来る。
これは、2013 年度のGDP481.4 兆円を5.2%上昇させることになるが、実際の上昇率は1.86%だったのであり、いかに大きな効果があるか分かるだろう。
なお、雇用の増加数は、発生する不足人員に、生産増加に伴う労働量の増加を労働者数に換算した数値を加えたものであり、残業等によってカバーされれば、増加数は少なくなる。
1997 年度から2013 年度の間に賃金が15.5%も低下したことが長期にわたるデフレ経済の大きな要因であったことを考えるなら、企業は思い切った決断をするべきであろう。⑵ 投資や輸出は大企業、民間消費は中小企業の生産を増やす
しかも、公共投資や民間設備投資及び輸出需要の拡大は主として大企業の生産を誘発する(増やす)のに対して、民間消費需要の拡大は、商業、対個人サービス、飲食料品など、中小企業が多い分野の生産を誘発する。
労働者の約70%は資本金1億円未満の中小企業に働いているのであり、日本経済の底上げをしようとするなら、まず、公共投資や円高の恩恵を受けている大企業が、率先して思い切った賃上げを行い、経済の活性化を図るべきである。
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