TISAよる「公共サービス・公的規制の解体」
サービス(農林水産業と製造業を除く全での分野)分野の規制を撤廃しようとする多国間協定。
保健医療、教育、労働条件、環境、消費者保護、ユニバーサルサービスの義務など公的なサービスと規制を解体し、市場に投げ込むもので、米国、EU、日本、オーストラリア、カナダ、韓国など23カ国・地域が参加し、8週間に1度、ジュネーブで秘密裏に交渉がなされている。
外務省のHPに簡単な概要の説明があるが、その危険な内容はほとんど報じられていない。そんななか、日本語で読める資料として、4月28日に国際公務労連が発表した下記のレポートが貴重である。
TPPだけじゃない。国の形を変え、国民主権を奪う反民主主義の仕組みである。 前書きを引用しておきたい。
【新サービス貿易協定(TiSA)交渉の進展(参加国・地域による共同発表) 平成25年6月28日】
【TISAと 公共サービス - PSI】
●前書き公共サービスを貿易のための商品として扱うことで、公共サービスの根本的な誤解が生まれる。現在、世界貿易機関の外で秘密裏に交渉が進んでいる新サービス貿易協定(TiSA)は、世界で最も豊かな企業と国々を世界最大のニーズに優先させる故意の試みである。
公共サービスは、保健医療や教育など、社会・経済に基本的に必要なものを手頃な価格で、ユニバーサルに、必要性に基づいて提供するものである。市場ではこうした成果が生み出せないから公共サービスが存在する。さらに、公共サービスは、企業の公正な競争を保証し、世界金融危機や温暖化といった環境、社会、経済的な失敗を効果的に回避するための規制にとっても重要である。
貿易協定は商業化を意識的に推し進め、グローバル企業が営利目的で利用することができるかどうかで財とサービスを定義する。貿易協定の最も熱心な提唱者すら、この不正なゲームには勝者と敗者がいることを認めている。
勝者は一般的に、権力を主張できる力のある国々や、新たに市場アクセスするにあたり最も有利な立場にある多国籍企業、外国から輸入した高い財・サービスを買う余裕がある裕福な消費者である。敗者は雇用削減や賃金低下圧力に直面する労働者、多国籍企業と競争できない公共サービスや地元の小規模ビジネスの利用者であることが多い。
TiSAは投資家の権利を制度化し、たまたま貿易に関係するだけのようなさまざまな分野において政府の行動を禁じる法的拘束力を土台とした警戒すべき貿易投資協定の新たな波の一部である。
TiSAは、民営化が失敗した場合に公共サービスを政府が公共の手に戻せないようにし、労働者の安全に関わる国内規制を制限し、環境規制や消費者保護、さらに医療機関、発電所、廃棄物処理の許認可、大学、学校の認可といった分野における行政権限も制限するようになる。 この協定は、移民労働者を商品のように扱い、政府が移民労働者の権利を守る能力を制限する。労働基準は国際労働機関(ILO)の三者協議で定めるべきであり、貿易協定を適用するべきではない。
さらに、世界金融危機の余波でTiSAが金融市場の規制緩和を進めようとしているという信じられない展開もある。私たちはTiSA交渉に大企業の利権が深く絡んでいることを知っている。
前回包括的なサービス貿易協定(GATS)が交渉されたとき、世界中の市民が怒りに湧いたことを知っている。また、TiSAの交渉を秘密裏に進めるために多大な努力が投じられていることを知っている。このように人々や地球を大きな危険にさらすTiSA交渉は不祥事である。民主主義国において、権力と富を根本から動かし、将来の政府を拘束し、国が国民を養う能力を制限する法律の合意が秘密裏に進められていることなど誰が受け入れられるだろうか。
新サービス貿易協定の文面は、市民が精査し意思決定が行えるように公開すべきである。TiSAは公共サービスに適用すべきではなく、また、公益に基づいて政府が規制を行う能力を制限してはならない。公共サービスに貿易はあってはならない。_
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