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「馬脚をあらわしつつあるアベノミクス」(メモ) 

  山家悠紀夫氏の「再び、長期低迷に陥るのか? ~馬脚をあらわしつつあるアベノミクス」(「前衛」2014.11)からの備忘録。  統計数字による検証、実態告発。数字が多いので見やすくメモにした。

 2013年は、民主政権化の2012年より、家計の所得も、実質的な経済成長も低下。14年はさらに悪化へ~「経済再興」のシナリオは完全に破綻している。

 メモの最後に、政策的方向に関し、国際的な流れなどの情報を追加。

【馬脚をあらわしつつあるアベノミクス】

  山家悠紀夫氏の同タイトルの論考「前衛」2014.11からの備忘録。

■消費税増税で大きな落ち込み

・2014年4-6月 実質GDP 年率7.1%減 (国民所得統計)
・持家の帰属家賃を除く実質家計消費支出 6.3%、年率23.1%減
  (統計で数字の見れる1994年以降の20年間で最大)

■前回、消費税増税時との比較

・実質家計消費(帰属家賃除く 以下同じ)  前期比増加率
 97年1-3月期  2.5%   4-6月期 4.1%減
 今回 1-3月期   2.4% 4-6月期 6.3%減

~ 減少率は今回がはるかに大きい/ 「家計収入の減少による減」の影響

■「家計調査」~ 実収入の低下

・全国サラリーマン世帯の月平均収入
 2013年 47万円、前年比0.2%増  / 2012年 前年比1.2%増

・消費者物価 2013年 0.4%増  / 2012年 0%

 → 13年度の実質収入 前年比0.2%減 

・14年には、名目収入も前年を下回る / 物価上昇率は上昇 
  4-6月期 名目収入0.4%減 実質収入4.5%減
  (3.6%が物価上昇率 / 1.6%ほどが円安、2%ほどが消費税増税分)

~ 政府賃上げの説明 「春闘 月例賃上げ率2%台」  大企業の正規労働者、しかも定昇込み

■「三本の矢」の成果 ~ 2013年(度)統計

・全法人企業(金融・保険業のぞく) 経常利益 前年比23%増
   総額60兆円/ 96、97年度 54兆円を抜き、史上最高

・賃金・賞与伸び率 0%  (事業所規模5人以上の雇用者平均)

・サラリーマン世帯の収入 0.2%増 (12年の1.2%を下回る)

・雇用 総数50万人増 / 非正規93万人増 世紀46万人減
~ 非正規率 35.2% → 36.7%へ増加

・経済の実質成長率 1.5%  / 民主政権下 2012年の1.5%と同じ

・トリクルダウンは?  ( 実態は、トリクルペインダウン )
 ① 13年の企業収益の増 → 14年の賃金、収入増には結びついていない
 ②収入減  ~ 4-6月期、サラリーマン世帯の収入 名目0.4%減 実質4.5%減
 ③雇用劣化 ~ 非正規雇用 14年6月1936万人 13年平均より30万人増 

■実施前から「アベノミクスの誤り」を示していた日本経済の現実

・96-97年 橋本「6大改革」~ 「構造改革」路線の先駆け
 ~ 規制改革など「企業が儲かる構造」への「改革」で、「日本経済の再生」をはかるもの

< 97年度-2012年度の推移 >
・企業の経常利益 28兆円 → 48兆円  /1.7倍
・雇用
 正規  3810万人 → 3340万人 470万人減
 非正規 1150万人 → 1810万人 660万人増
 非正規率  23% → 35%

・民間企業の平均年収 470万円 → 410万円  約13%減
・名目GDP      523兆円 → 474兆円  約10㌫減
( 租税収入       91.8兆円→  79.7兆円  約13%減 ) 

★ 「日本経済の再生」という目標は、完全に失敗

(「三本の矢」について、友寄英隆氏は、ニューケインジフンの「インフレターゲット論」、ケインズ主義の「公共投資論」、新自由主義の「構造改革」と、近代経済学の主要政策を総動員しているところに、直面する事態に対する手立てのなさ、理論的混迷がある、との指摘している。)


■ 「第一の矢 異次元の金融緩和」とその効果

・政策のスケッチ~ 2年後に消費者物価上昇率2%にする目標 / 民間金融機関の持つ国債を買い上げ、大量の資金(年60-70兆円)を民間金融機関に供給する / 金融機関から企業、個人への貸し出しが増加、投資、消費が増加し、景気上昇 /物価2%上昇を、企業・個人が信じ、物価上昇前に、投資、消費を増やし、さらに景気上昇 ~ 

< 実態は >
・日銀の民間に供給している資金(マネタリーベース) 
   13年3月末 146兆円 → 14年5月末 227兆円  約80兆円の増加

・金融機関の貸出 441兆円 → 449兆円  8兆円増

・景気 14年1-3期 民間消費 前年比3兆円、企業の設備投資 2兆円増 (駆け込み需要期)
         4-6期 横ばい              1兆円増

~ まったく「シナリオ」は機能せず/ もともと荒唐無稽

・市場では、株高、円安
(通貨供給量増-通貨価値下落・物価高 - 輸入企業の円建て利益増、実質金利低下→株式へのシフト)
(国内の景気循環・回復期。国際的にも景気回復が、さらに株高を後押し)

→ 輸出企業の利益拡大、株式大量保有する企業、個人の評価益の拡大 /が、株高も頭打ち
→ 経済全体で/ 消費者物価の上昇、実質賃金の低下、景気低迷 ~ 景気と株価の乖離の拡大

<怖くてやめられない>
・日銀 毎月5兆円を民間金融機関から買取 ~ 中止すると 

①株価暴落の懸念 ~ 逆のサイクル
②金利上昇/ 国債0.5-0.6%の低金利~物価1.5%前後で上昇しているが~ 順調に消化
 → 低金利の国債を買っても、日銀が買ったときより、よい条件で買ってくれるから。
 → 買取をやめると、国債の金利をあげないと消化できない/ 長期金利の上昇、発行済国債の値崩れ

■「第二の矢 機動的な財政政策」とその効果

実態は、「公共事業拡大政策」~ 12年度補正など「15ヶ月予算」など大幅増

・2013年GDP統計  「実質公的固定資本形成」 前年比11%増 /95年以降最高
・2013年 実質GDP成長率 1.5%  公共投資分 0.5%
 2012年    〃     1.5%     〃  0.1%
→ 「公共投資」分除くと  2012年1.4% > 2013年1.0%  

・公共投資による財政の悪化 ~14年度も「0.5%増」を維持たるためには11%増の継続/ いずれ限界に

<怖くてやめられない>
・公共事業拡大の中止 - 成長率低下 - 内閣支持率低下
・一定の効果を発揮しているがゆえに「やめられない」

■「第三の矢 民間投資を喚起する成長戦略」 効かない矢、毒矢」

・「世界で一番企業が活動しやすい国」(「再興戦略2014」)「世界に誇れるビジネス環境」(改定版)
・中身のスケッチ ①法人税減税 ②労働分野を中心とする規制緩和 ③各種企業支援

~ 90年以降の現実「企業が儲かっても、逆に経済は低迷、国民生活は悪化」/失敗は実証済み

・一番の「毒矢」~労働分野の規制緩和 ~ 社会全体のブラック企業化 

①労働時間の縛りをなくす、長時間労働、残業代ゼロの制度 
②障害「派遣労働」の制度 (「一時的臨時的」の縛りをなくす)
③解雇の自由化 (金銭による「解決」)

■アベノミクスにかけているのは、国民の暮らしを大切にする視点

 所信表明の4つの危機~が、「人々の暮らしの危機」は入っていない

 ワーキングプア、非正規の拡大、国民の暮らし悪化、OECD25位の貧困率~ 企業の儲けを拡大する目標はあっても、人々の暮らしをよくする目標はない。/ アベノミクス最大の欠陥

(メモ )
・「格差拡大は成長を妨げる」――IMF、OECD、スタンダード&プアーズが次々とレポート
【拡大する格差~社会を不安定化、成長阻害2014.9】


・2013年 G20首脳宣言 強固で持続的で均衡ある発展にとって「質の高い雇用を通じた成長」、「非正規雇用の減少は最優先事項」を提起
・2014年9月、ILOとOECD、世界銀行によるG20雇用に関する報告書
{多くの国々で、労働生産性の伸びに賃金の上昇が追いつかず、それぞれの国内で賃金や所得の不平等が拡大している}
~ 日本の場合 92年を100とし、09年、労働生産性15ポイント以上増、賃金10ポイント低下

・財務省が作成した「企業負担の国際比較 ~ 法人税負担の対GDP比
(「表面税率」では課税ベースが違うために実態をあらわさない/GDP比が、国際的な見方)
2014100901_01_1b


 日本3・2%、韓国3・5%、シンガポール3・9%、中国3・2%。
~、「法人税の引き下げ競争」は、国民負担の増大を招くとOECDが警告 /韓国 法人税減税を撤回し、野党からさらなる増税案が出されている。中国やシンガポール 企業の社会保障負担を増やす方向

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