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自然エネ契約「保留」への意見と提言 ISEP

原発問題と切り離し、抑制的だが、それゆえ幅広い合意をつくれることができる提案。
柱は・・・
1. 自然エネルギーベースの系統運用に転換すべき
2. 段階的・現実的な移行措置を取るべき
3. 地域主導(とくに福島・東北)の自然エネルギーを優先すべき
4. 電力会社内の「利害相反」を解消すべき
5. 送変電設備の増強・新設の負担のあり方を見直すべき
6. 情報公開と説明責任、公共政策としての公論の必要性

【一部電力会社の系統連系「回答保留」に対する意見と提言 ISEP10/2】
http://www.isep.or.jp/library/6888

【一部電力会社の系統連系「回答保留」に対する意見と提言 ISEP10/2】

北海道電力、東北電力、四国電力、九州電力から相次いで自然エネルギー発電設備に対する連系接続申込みに対する「回答の保留」が発表され、沖縄電力からは接続可能量の上限超過が発表された。これらは「緊急措置」として理解できなくもないが、今後の対応はこれからのエネルギー政策にとって重大であり、当研究所としても分析に基づく意見とあるべき方向性を提言する。

1. 自然エネルギーベースの系統運用に転換すべき

 今回の一部電力会社の「回答の保留」は、急速な太陽光発電の拡大に対して、従来の系統運用が追いつかなくなった「限界」を露呈している。自然エネルギー導入で先行する欧州各国を見ると、風力発電と太陽光発電を加えた変動電源が軽負荷時の需要(+連系線)の60〜120%に達しても問題なく運用されている。
法に定める「接続義務」を適正かつ正確に履行するためには、欧州などの知見に学びつつ、従来の系統運用の考え方やあり方を抜本的に見直すことが必要と考える。

 具体的には、①気象予測システムを整備しながら、②揚水発電を最大限活用し、③会社間連系線の活用、④石炭火力などのベース電源を積極的に変動させ、⑤デマンドレスポンスなど需要側・分散型電源を活用する市場を整える、といった対応策を検討することを提言する。

2. 段階的・現実的な移行措置を取るべき

 今回の一部電力会社の「回答の保留」は、既存の導入量ではなく、設備認定量や接続申込み量に対する緊急避難的な措置と考えられる。その点は理解できるものの、既存の導入量から見れば、系統の容量や実現までの時間にはまだ十分な余裕がある上に、すでに行われた設備認定にはさまざまな理由から認定取り消しや事業断念する案件が多数、想定される。

 したがって、今回の「回答の保留」を好機として、系統接続に留まらず、自然エネルギー導入の段階的・現実的なあり方や優先順位のあり方などを一定の公共的なルールとして定めることを提案する。

3. 地域主導(とくに福島・東北)の自然エネルギーを優先すべき

 自然エネルギー導入の優先順位における重要な要素は、地域社会の合意形成はもちろんのこと、地域創生のために地域の利益になるような自然エネルギー開発のあり方を目指すことである。地域外資本による開発に対して地域資本の開発の場合、地域への経済的な恩恵がおよそ二倍という試算もある。
 また東北地方、とりわけ福島は、自然エネルギーによる地域創生に着手したところである。会津電力など地域主導の自然エネルギー事業を開始したところでは、短期間に雇用や地域経済を生みだし、自力での復興の期待を一身に集めている。今回の「回答の留保」はそうした復興への期待に水を浴びせることになりかねない。
 たとえば風力発電の単位面積あたりの密度が世界最高のデンマークでは、風力発電が導入できる場所の土地利用計画をあらかじめ全国土で定めた上で、外部資本による開発の場合には最低二割の資本を地域社会に持たせる義務付けをしている。

 こうした例に倣い、今後の自然エネルギー導入の優先順位やルールのあり方では、地域創生に資する自然エネルギー開発を優先・優遇するルールを定めることを提案する。

4. 電力会社内の「利害相反」を解消すべき

 日本の電力会社が欧州各国のように自然エネルギーを最大限導入するための「積極的」な系統運用をしてこなかった背景の一つには、電力会社内の「利害相反」が考えられる。電力会社の送電部門は安定供給を使命としているが、発電部門や営業部門はそれぞれ売電利益の最大化を使命としている。そのため、自然エネルギーの変動の調整のために揚水発電を活用したり石炭火力を調整することは安定供給には資するものの、発電部門や営業部門の利益を損なうため、結果的に自然エネルギー導入の抑制に押しつけられる構図となっている。

 こうした「利害相反」を解消するためには、部門間の会計を透明化するとともに、「公共性」のある送電部門は自然エネルギー導入を最大化するための措置(揚水発電の利用など)の決定権を与えるとともに、それに要する適正な対価を発電・営業部門に支払い、それを送電部門の総括原価に上乗せするといった、調整費用の透明化やルール化を提言する。

5. 送変電設備の増強・新設の負担のあり方を見直すべき

 今回の「回答の保留」は系統全体に関わるものであるが、一方で、東京電力が群馬県で入札を行う事例のように地域的な系統制約も顕在化しつつあり、自然エネルギー事業者に要求される連系負担金もどんどん高額化しつつある。その背景には、電力会社の持つ送変電設備の増強・新設の費用を「原因者負担の原則」(ディープ接続)に沿って自然エネルギー事業者に求めていることがある。ところが道路と同様な「公共的な資本」である送変電設備は、本来、その利用者全体が負担すべきであり、欧州もそうした原則に基づいて送電事業者が負担している(シャロー接続)。

 日本でも、送変電設備の増強・新設の費用は自然エネルギー事業者ではなく、送電部門の総括原価に上乗せして、送変電システムの利用者全体が公平に負担するよう見直すことを提案する。

6. 情報公開と説明責任、公共政策としての公論の必要性

 これらは固定価格買取制度(以下「FIT制度」)の導入から2年で急速に進んだ太陽光発電の導入やその5倍以上の設備認定に対する「緊急措置」として理解できるが、その対応はこれからの日本のエネルギー政策を大きく左右するため、電力会社には、十分な情報公開と説明責任を求めるとともに、電力会社だけで一方的に決めるのではなく、公共政策として公論を尽くした上で社会的合意の上で今後の方策を定めることを望みたい。

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