基準をいくら強化しても過酷事故は防ぎえない 市民会議声明
原子力市民委員会(座長 吉岡 斉)が発表した2つの声明のうち、規制基準と審査についての部分のメモ。
10の詐術を指摘している。
東日本大震災、御嶽山の噴火… 人間の知見がいかに初歩的な段階にとどまっているか、ということではないか。ふるさとを丸ごと奪う原発事故の異質の危険性。
「東日本壊滅のイメージ」という範囲に住む人の「リスクを引き受けても『便益』を確保したい」という同意が最低限の条件。民主国家の姿。だから即時ゼロ以外にありえない。
【原子力規制委員会が審査書を決定しても原発の安全性は保証されない 9/30】
【原子力規制委員会の存在意義が問われている 9/30】
【基準をいくら強化しても過酷事故は防ぎえない】・規制基準をいくら強化しても、取り返しのつかない被害を及ぼす原発過酷事故を防ぎ得ない(ドイツが脱原発を選択した理由)
・どのくらい規制基準を強化すれば、原発過酷事故リスクをどのくらい低減できるかについて、信頼に足る評価自体が確立していない。しかも、実際には世界は3200炉年に1回の過酷事故を経験している。430基の原発が稼動しており、7年に1年の高確率である。
・規制基準をクリアした原発といえども安全性を保証されていない。原子力規制委員会の田中俊一委員長自身が、「規制委員会は適合性審査を行うだけで、安全を保証するものでない」と正しく指摘している。
・しかも、法律の上では誰が安全の判断の責任を負うかが決められておらず、再稼働へのゴーサインは結局事業者の判断とされ、安全性が第三者の検証によって担保されていないという由々しき状況がある。【新規制基準】
事故対策組織を形式的に整備してハードウェアの追加工事といった部分的改善を、実施不可能なほどのコストをかけずに行えば、全ての既設原発が合格できるよう注意深く設計されたものであり、その意味で本質的に甘い規制基準である。したがってそれをクリアしても原発の安全性は保証されない。
・10の代表的「詐術」
①福島原発事故の事故原因について深く追究しないことである
②遵守すれば不合格の判定を下すことが必至の要件を、規制基準の中から全て取り除いてしまうこと(立地審査指針の廃止、新型原子炉に装備されているコアキャッチャー・航空機落下に備えた二重ドームの不採用)
③整備が間に合わないという理由で規制基準への組み込みを遅らせること(破壊工作対策、避難計画など)
④規制基準を満たしていない施設についても、一定の期限内に整備すればよしとすること
⑤情報の開示を制限すること
⑥規制基準をできるだけ甘くすること(重要度分類指針が改訂されておらず、原子炉施設の周縁部の設備・機器の耐震基準は甘いまま)
⑦規制基準の適用に際して、その評価を事業者にゆだねること
⑧本来適用すべき評価手法を適用してない(クロスチェック解析の不実施)
⑨規制基準自体を抽象的な表現にとどめ、柔軟な解釈ができる余地をできるだけ多く残しておくこと(火山噴火対策、実効性ある指針を設けていない。)
⑩適合性審査において実質的な審査をせず、そのあとの工事計画認可、保安規定認可に丸投げすること。実質的な検証ができない。・規制基準が原子炉施設のみを対象としていることである。つまり確実に機能する危機管理システム(指揮管制通信システム)の整備や、確実に機能する防災・避難計画の策定が、原子力規制委員会の規制要件となっていないこと
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