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教育委員会改革・条例改定をめぐる基本視点(メモ)

「教育委員会改革・条例改定をめぐる対応と運動の基本点」 藤森毅氏の論稿〔議会と自治体2014.11〕」よりメモ
①半世紀ぶりの制度改定であり、住民自治の機関として改革、活性化させる合意づくり。②政治介入を強めるための3つの仕組みの悪い動きを封じる、という2つがテーマ。具体的に何をすべきか、よくわかる。
特に、7月に文科省出した通知が、国会論戦も反映し、かなり使える中身となっているのは重要。
【地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律について(通知) 2014.7.17】

【教育委員会改革・条例改定をめぐる対応と運動の基本点(メモ)】

■構え ~法改悪に抗い、よりよい教育委員会を築くために奮闘する

・地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改悪にともなう条例・規則の変更
 国のひな形はない。法的に問題となる事項のみも改定も1つの方向―― 教育長が一般職から特別職になる。育委員長のポストがなくなる
→「法改正にともなう形式的なもの」という説明もなりたつが

・半世紀ぶりに教育委員会制度が変わる節目~教育委員会をどう発展させるか議論し道をひらくことが重要
→ 安倍政権の教育委員会制度改悪のねらいと正面から対決。共同を広げる道

■法改正の中心点と、そこから出てくる2つのテーマ

・当初、教育委員会廃止をねらったが、保守層も含む広範な反対で、制度を残しながら首長の関与を強める改悪を強行
①首長任命の新教育長 ②首長の教育大綱制定権 ③総合教育会議〔首長と教育委員会の協議体〕

 が、教育委員の集まりである教育委員会が最高意思決定機関であることに変更はない

☆教育委員会改革・活性化へ 2つのテーマ

①教育委員会を、従来のように形骸化させず、市民の声を吸い上げ、住民自治の機関として活性化させる
②教育委員会の自主性、独立性の確保。改悪の3つの仕組みの悪い動きを封じる

■第一テーマ 教育委員会を住民自治の組織として改革、活性化させる

・土台~ 教育委員会制度の残った意味を議論して、改革、活性化への合意を広げること。
・通知の活用を

①国の通知文書 「教育委員は意思決定を行う責任者」 

・「教育委員会は合議制の執行機関であるため、その意思決定は、教育長及び委員による会議において、出席者の多数決によって決せられるものであり、委員の役割が引き続き重要なものであること。」〔4頁「教育委員会の委員による教育長に対するチェック機能の強化」〕
・「委員は、執行機関の一員であり、教育委員会の重要事項の意思決定を行う責任者である」〔5頁「委員の責任と資質・能力の向上」〕

②教育委員会制度はなぜ出来たか 「3つの根本法則」の議論・合意を

・制度発足の「3つの根本方針」は「改正案においても変わらない」〔14.4.46 衆院文科委 政府答弁〕
~ ①中央集権でなく地方分権 ②民意の反映〔レイマンコントロール〕③一般行政からの独立

★森戸辰夫文部大臣「3つの根本方針」 1948年06月18日

 「今回のこの法律を制定するに当つて、政府のとりました地方教育行政改革の根本方針につきまして申述べたいと思います。
教育の目的は、個人の尊嚴を重んじ、眞理と平和を希求する人間の育成を期するにあることが教育基本法で宣言されておりますが、この教育の目的を達成するために行政が、民主主義一般の原理の下に立つ在り方としては、権限の地方分権を行い、その行政は公正な民意に即するものとし、同時に制度的にも、機能的にも教育の自主性を確保するものでなければならないのであります。
 先ず、教育行政の地方分権としては、都道府縣、市、東京都の特別区及び人口一万以上の町村に、それぞれ原則として権限上一般行政機関から独立した教育委員会を設置して、その地域の教育に関する責任行政機関といたしまして、從來国が教育内容の細部に亘るまで規定し、且つこれを監督していた態度を改めまして、教育の基本的事項のみを定めて、これが実際上の具体的運営は、これら委員会の手に委ねることとしたのであります。
 次に、前述の地域に設けられる教育委員会の委員の選任方法は、一般公選といたしまして、地方住民の教育に対する意思を公正に反映せしめることによつて、教育行政の御主化を徹底いたすこととしました。從つて地方の教育は、國の基準に従つて、地方民の代表者の手によつて、その地方の実情に即して行われることになるわけであります。
 最後に教育の本質的使命と、從つてその運営の特殊性に鑑みまして、教育が不当な支配に服さぬためには、その行政機関も自主性を保つような制度的保障を必要といたします。教育委員会は原則として、都道府縣又は市町村における独立の機関であり、知事又は市町村長の手に属しないのでありまして、直接國民にのみ責任を負つて行われるべき教育の使命を保障する制度を確立することにいたしました。
 以上三つの眼目が、本法案制定に当りましてとられた根本方針であります。」

①国が教育の細部まで規定し監督するのでなく教育は地方自治でること ②住民の教育に対する意思が反映することが肝心であること ③教育委員会は知事や市町村長の下に属さず独立していること

→今日なお切実な根本原則であり、その原則にそった改革で、よりよい教育を地方自治で築く、という合意

③具体的な改革、活性化の提案

・党の提案「教育委員会改革の基本方向」〔2014.4.18〕
(1)教育委員たちが保護者、子ども、教職員、住民の不満や要求をつかみ、自治体の教育施策をチェックし、改善する
(2)会議の公開、教育委員の待遇改善や支援、教育への見識や専門性をもつ人物の確保など、教育委員会の役割が実際に果たせる体制をつくる
(3)政治的介入から教育の自由と自主性を守る
(4)憲法と子どもの権利条約の立場にたって行政を行う
(5)教育委員の公選制などの抜本的な改革を国民的合意の下ですすめる
~ 当面の課題は、(1)~(4)

○改革① 教育委員会が直接、住民の要求をつかみ、行政をチェックする

(1)教育行政の最高意思決定者である教員委員が、現場の不満・要求を直接つかみ、それをもとに事務局提案を
 子ども目線、市民目線でチェックすること/ 教育委員会活性化の原動力

→下村文科相も「それは適切なすばらしい提案」(田村議員への答弁 2014.6.3 参院文科委)
 
・通知でも・・・ 「教育委員会における審議を活性化し、地域住民の民意を十分に反映するためには、「教育委員会の現状に関する調査」(文部科学省実施)の調査項目となっている学校や教育委員会事務局に寄せられた意見の教育委員会会議における紹介、アンケートの実施、公聴会や意見交換会の開催、所管施設の訪問等の取組が有効であることから、これらの機会を積極的に設ける必要があること。」(「その他」6頁)

(2)教育委員会のチェック機能発揮には教育長(事務局)の姿勢も重要 ~特に委任事務

 ~「お飾りにすぎない」という認識では活性化しない

・ 教育委員会の教育長への「事務委任」のあり方は、要検討! 見直しを
 悪例) ほとんどの事務が教育長に委任され「教育改革」も教育長一任で、審議ななしで進む例
 好例) すべての「教育改革」は、教育委員会の議決なしに執行できないよう規則を改定

・通知でも・・・「教育委員会は、必要に応じて、教育長に委任する事項についての方針を定めることや、委任した事務について教育長から報告を求め、教育委員会で議論し、必要に応じて事務の執行を是正し、又は委任を解除することが可能であること。」(教育委員会の委員による教育長に対するチェック機能の強化 5頁)

○改革② 教育委員会が活動する場合の条件整備

(1)会議の公開、議事録の作成

・「通知」でも・・・「会議の透明化」として「教育委員会会議の議事録の作成及び公表を努力義務にとどめた趣旨は、職員数が少ない小規模な地方公共団体における事務負担等を考慮したものであるが、原則として、会議の議事録を作成し、ホームページ等を活用して公表することが強く求められること。」「教育委員会会議の開催時間や場所等の運営上の工夫を行うことにより、教育委員会会議をより多くの住民が傍聴できるようにすることが望ましいこと。」

(2教育委員の待遇改善や支援

・最高意思決定者として活動するには、待遇改善と支援は不可欠

~ 少なくない自治体では、教育委員に自分の机もロッカーもパソコンもない
~ 長時間勤務した場合の手当ての問題
~ 現場調査のサポート体制
~ 教育委員の求めに応じた迅速な資料提供、説明を行う体制

(3)教育委員会事務局の体制 ~ 人員、研修など

(4)教員委員への人物の確保

・「通知」でも・・「委員には、単に一般的な識見があるというだけではなく、教育に対する深い関心や熱意が求められるところであり、例えば、PTAや地域の関係者、コミュニティ・スクールにおける学校運営協議会の委員、スポーツ・文化の関係者を選任したり、教育に関する高度な知見を有する者を含めるなど、教育委員会の委員たるにふさわしい幅広い人材を得ることが必要である」(委員の任命 5頁)

・「任命制」 首長の部下であることを意味せず、公選制に代わるかたちで民意を十分に反映。が要請される
~下村文科相「委員の任命に当たっては…多様な民意が反映されるよう配慮することが求められております」(田村議員への答弁 6/12 参院文科委)

○改革③ 政治的介入から教育の自由と自主性を守る

「はだしのゲン」の撤去、学力テストの結果公表など、政治介入には目が余る

・教育の自主性を守る役割を果たす点で2つのことが重要

(1)教育委員会制度の発足自体が、政治介入から教育を守ることにあった、という事実

・当時の文部省の文書~ 「教育委員会のしおり」「教育委員会への解説」

 戦前の教育について「いわゆる官僚的または集権的と言われる傾向が強くて、ついに少人数の人の考え1つで、一般の人の気持ちは考慮されず・・・のびのびした真理を目指す人間の教育、社会全体のための教育という目的をとげることができなかった」「教育上の細かいところまでも国の定めや文部省のさしずによっていた」という反省が切実にのべられ、この誤りを二度と繰り返さないために「教育をあらゆる不当な支配から守り育てる」ために「教育の自主性を制度的にも機能的にも保障する措置」が教育委員会制度

(2)教育の自主性についての確認が、最高裁の憲法解釈として確定

 最高裁学力テスト判決(1976年)~ 

・憲法上の教育について「教育は、教育を施す者の支配的権能ではなく、何よりもまず、子どもの学習する権利に対応し、その充足をはかりうる立場にある者の責務に属するもの」
・「学問の自由」および「教師と子どもの間の直接の人格的接触を通じ、その個性に応じて行わなければならないと言う教育の本質的要請」から、教師の「ある程度の自由裁量」を承認
・「教育内容に対する、・・・国家的介入についてはできるだけ抑制的であることが要請される」とし、教育への「不当な支配」の主体には国家権力、教育行政などもなりうること、たとえ法令にもとづく教育行政機関の行為だとしても「不当な支配」となる可能性があり、行政は、その点に配慮して教育行政をすすめなければならない、とした。

○改革④ 憲法と子どもの権利条約を生かす

・子どもの権利条約~ 誰もが子ども時代を豊かにすごせるようにと願い、権利を定め、それを守ることを締結国に求めたもの。現在194カ国が加盟
・が、日本では、教育委員会、学校でも、子どもの権利について語られることが少なく、かえって過度な競争、管理で、子どもの権利が侵害されている(子どもの権利委員会の日本政府への勧告等)

~ 42条「締結国は、適当かつ積極的な方法でこの条約の原則及び規定を成人及び児童のいずれにも広く知らせることを約束する」 /教育委員会での学習など深める必要

■第二のテーマ 法改悪で加わった3つの要素の暴走をふせぐ

○新教育長について

 最終決定機関は「合議制」の「教育長及び教育委員による会議」~同時に、法改正以前から、教育長が専門的知識・情報量の圧倒的優位で「教育委員会の形骸化」の実態
~しかも、教育委員長がいなくなり、その権限は教育委員に吸収。教育委員が教育長を罷免できる権利もなくなる。/暴走への歯止めがいっそう必要

・「通知」では「教育委員会の委員による教育長に対するチェック機能の強化」の項目を規定

 ①最終権限は教育委員会 ②教育委員会強化の条文の指摘 ③教育委員による会議招集要求への対応 ④教育長の教育委員への報告のあり方を規則で適切に定める ⑤教育長への機関事務の見直し
~ これらを活用して、具体化することが重要

○「大綱」の策定について

・本来、教育委員会と首長が対等平等の関係で共同し、広範な住民の参画のもとで民主的に策定すべきもの

・教育行政の3つの分野
A 教育委員会の専決部分  教科書採択、学校の教育課程の編成、教員人事など
B 両者に権限  少人数学級、学校統廃合など教育委員会の権限。新たな予算措置は首長の権限
C 首長の専決する部分  私学、教育財産の取得処分、契約、予算の執行
 ~ ABの部分に、教育委員会の同意もなく首長が「大綱」に書き込めることは大問題/しかも意思決定の権限は教育委員会、との矛盾

~ 国会論戦を通じ「通知」に明記された歯止め

(1) 首長の暴走を抑える~調整のつかない事項に実施義務はない

・「教育委員会が今回の改正後も引き続き執行機関であることから、大綱に記載された事項を含め、教育委員会の所管に属する事務については、自らの権限と責任において、管理し、執行すべきものであり、地方公共団体の長が有する大綱の策定権限は、教育委員会の権限に属する事務を管理し、執行する権限を地方公共団体の長に与えたものではないことを確認的に規定したもの」(7頁)

・「地方公共団体の長が、教育委員会と調整のついていない事項を大綱に記載したとしても、教育委員会は当該事項を尊重する義務を負うものではないこと。なお、法第21条(現行法第23条)に定められた教育に関する事務の執行権限は、引き続き教育委員会が有しているものであることから、調整のついていない事項の執行については、教育委員会が判断するものであること。」(8頁)
・「教育長及び教育委員には、法第11条第8項及び第12条第1項において、大綱に則った教育行政を行うよう訓示的に規定しているものの、調整がついてない事項についてまで、大綱に則して教育行政の運営が行われるよう意を用いなければならないものではないこと。」(8頁)

・「全国学力・学習状況調査の結果の公表」  都道府県の大綱になじまない

 「その実施要領により、市町村教育委員会は、それぞれの判断に基づき、当該市町村における公立学校全体の結果や当該市町村が設置管理する学校の状況を公表することが可能であり、都道府県教育委員会がこれらの結果を公表することについては、当該市町村教育委員会の同意が必要とされている。
 このため、域内の市町村における公立学校全体の結果や市町村が設置管理する学校の結果の公表について、市町村教育委員会が当該市町村の大綱に記載してもよいと判断した場合には、大綱に記載することもあり得ると考えられる一方、都道府県の大綱に記載する事項としては馴染まないものと考えられること。」

(2) 大綱の根本的問題~ 首長、教育委員会の合作による住民無視の決定への警戒

 学校統廃合、小中一貫校の設置など・・ 住民無視は、「根本法則」からの逸脱

(3)「大綱」  国の教育侵攻基本政計画を参酌して作成

 通知も「「参酌」とは参考にするという意味であり、教育の課題が地域によって様々であることを踏まえ、地方公共団体の長は、地域の実情に応じて大綱を策定するものであること。」(7頁)

○総合教育会議について

  首長と教育委員会との「協議」「調整」の場 /首長の暴走を抑えることがポイント

(1) 対等平等の協議体

・「通知」は「総合教育会議は、地方公共団体の長と教育委員会という対等な執行機関同士の協議・調整の場であり、地方自治法(昭和22年法律第67号)上の附属機関には当たらないものであること。」
~ 首長サイドの機関ではなく、対等平等な2つの機関の協議体 
( 会議の原則公開と議事録の作成及び公表の規定されている。住民のチェックを )

(2) 取り扱うテーマ
 教育委員会の所管事務すべてを協議の対象とするものでもなく、教委の専決事項は対象とすべきでない、など政治介入の歯止めとなっている。、

・「通知」は「総合教育会議は、地方公共団体の長又は教育委員会が、特に協議・調整が必要な事項があると判断した事項について協議又は調整を行うものであり、教育委員会が所管する事務の重要事項の全てを総合教育会議で協議し、調整するという趣旨で設置するものではないこと。」

・「 総合教育会議においては、教育委員会制度を設けた趣旨に鑑み、教科書採択、個別の教職員人事等、特に政治的中立性の要請が高い事項については、協議題とするべきではないこと。」

・「総合教育会議において、協議し、調整する対象とすべきかどうかは、当該予算措置が政策判断を要するような事項か否かによって判断すべきものであり、少しでも経常費を支出していれば、日常の学校運営に関する些細なことまで総合教育会議において協議・調整できるという趣旨ではないこと。」

・「協議・調整した結果の尊重義務」について「総合教育会議において調整が行われた場合とは、地方公共団体の長及び教育委員会が合意した場合であり、双方が合意をした事項については、互いにその結果を尊重し
なければならないものであること。
なお、調整のついていない事項の執行については、法第21条(現行法第23条)及び法第22条(現行法第24条)に定められた執行権限に基づき、教育委員会及び地方公共団体の長それぞれが判断するものであること。」

(3) 緊急な場合~ 首長と教育長の協議による決定の制限

「緊急の場合に、教育委員会から教育長のみが出席する場合には、事前に対応の方向性について教育委員会の意思決定がなされている場合や教育長に対応を一任している場合には、その範囲内で、教育長は調整や決定を行うことが可能であると考えられるが、そうではない場合には、総合教育会議においては一旦態度を保留し、教育委員会において再度検討した上で、改めて地方公共団体の長と協議・調整を行うことが必要であること。」


■国会内外のたたかいで、法改悪に一定の歯止め / 教育委員会の活性化、改善する取り組みの戸口にたっていることもたたかいの成果~ 教育は地方自治でおこなうという憲法の立場から、子どもの成長を願う住民の要求依拠した取り組みの展開を

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