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「イスラム国」の登場  米介入と中東情勢

 酒井啓子・千葉大教授のコラムが地域の雰囲気を伝えてくれる。・・・・地元住民にとって米軍も「イスラーム国」も、ともに余所者。 地元社会の希望はただひとつ。「自分たちをまきこまないでほしい」。暴力的な武装集団の闊歩は、米軍のイラク介入が引き起こしたものなんだから、米国こそが責任をとって回収すべき―― そして“余所者たちはどうしたら「イスラーム国」を「責任をとって回収」できるのか。そのためには、余所者が事態を複雑化したのだという認識をまず、共有する必要がある。”と指摘する。
【シリア空爆の意味  酒井啓子 9/24】

 そこで、この複雑な状況を見やすくするための整理を、河口聡氏「中東の激動をどうみるべきか」(前衛201411)を軸にメモ。

○中東地域の平和と安定、発展の基本的条件・・・異なる宗教、民族間の共有
 → 対立紛争には、相違を政治的に利用し特定の目的を達成しようとする勢力の扇動によるものが多い

・03年 アメリカのイラク侵攻  宗派間対立を利用した侵攻に対する支持者づくりが対立を激化(フセイン政権はスンニ派) / 今日の「イスラム国」につながる一因(マリキ政権によるスンニ派排除)
・クルド民族(イラク、トルコ、イラン、シリアの住む)の自治、独立を求める動きの活発化

■「イスラム国」の登場

・もともとイラク戦争を機に「イラクのアルカイダ」として誕生 /
・その後、シリアに拠点を移し、アサド政権に対抗。アルカイダとの関係も切れる
 →  反アサド勢力として、サウジなどの支援うけ成長
・2014.6 「イスラム国」建国宣言。シリア・イラクの1/3近くを支配。イラク第二の都市モスルの占拠

《特徴》
・スンニ派の原理主義。シーア派など他宗教、少数民族を激しく弾圧
・西欧的国家的枠組み〔ウェストファリア体制〕の否定  サイクス・ピコ秘密協定の打破
・SNSなどを活用し、欧米などで社会から排除されている層、移民などをリクルート
・軍事的にも洗練 旧フセイン軍関係者の関与。シリア・イラク内で捕獲した武器 
・安定した支配地域確保/ 行政・徴税機構 / 旧フセイン政府関係者の関与
  富裕層への「イスラム税」、武装組織への給与支払い、一人親支援など・・ 〔ロイター報道〕

■アメリカ 軍事関与の拡大

・「イスラム国」撲滅宣言、空爆開始、地上軍は派遣せず
 → シリア国内への空爆は、「シーア派支援」とのメッセージ。宗派対立激化の危険
・対「イスラム国」で頼りになる武装勢力は・・・ トルコ政府と対立するクルド人組織〔米もテロ組織と認定
  /一方、シリアは支援〕、シリア内でクルド人独立を掲げ活動する組織

■利害が錯綜する周辺諸国 

○イラク マリキ政権 スンニ派排除、宗教対立の激化/ 国軍はシーア派の軍隊 国を守る意識なし
  → 1000人の「イスラム国」部隊に、3万以上の国軍が逃走 
・英国の統治時代からスンニ派のエリートが支配的地位。多数派のシーア派、クルド人を統治。それが逆転
 → 阻害されたスンニ派 「イスラム国」を支持する土壌を生む

・イラクでイラン〔シーア派〕の影響拡大を懸念する湾岸諸国がスンニ派を支援。宗派廃立の地域的広がり
・9月 アバディ政権の誕生 国民統合が課題/ 新内閣でシーア派増加、マリキも副大統領で残る

○クルド イラク内のクルド自治区勢力  軍は弱体化  「イスラム国」に対抗できず 
 トルコの反政府勢力~トルコはテロ組織と認定〔シリア、トルコに散在〕 
 〔イラクのクルド自治区はトルコ政府との関係優先。トルコ政府の越境攻撃を黙認〕
     → この組織が、イスラム国に対抗できる唯一の戦力  米が支援

○トルコ 国境近くの「イスラム国」を空爆せず、反政府勢力であるクルド勢力を爆撃
     米軍に対する国内の基地使用を認めず

○サウジアラビア〔スンニ派の大国〕、トルコ   最大の問題は、シリアのアサド政権の認識
    → シリアの反政府勢力をさまざまに支援  /その一部から「イスラム国」が出現

○シリア アサド政権VS反政府勢力、イスラム国 / イスラム国VSアサド政権、反政府勢力
     シリア内の「イスラム国」への米空爆を黙認 
     → アサド政権を利する行為/サウジアラビア、トルコの対米不信

○イラン シーア派の大国。シリア、イラク政権に影響力 / 核開発、アサド政権支持でアメリカと対立。 
    → 「革命防衛隊」の派遣の意思あるも、核問題での米側の譲歩が条件
       アサド政権を強化することにもなる

■イスラエルがガザ攻撃

・イスラエル入植地の少年一人を含む4人が誘拐殺害された事件。イスラエル政府は、ハマスの反抗と断定、ハマス側が否定する中、強硬措置を実行。戦争状態に。/ 7週間の戦争後、停戦協定。バレスチナ人2150名、イスラエル側・市民数人を含む70名が犠牲に

・ガザ地域 イスラエルと接する3方は高いコンクリートの塀で封鎖
    06年、民主的な選挙で、ハマスが勝利/ 「テロ組織」と規定する欧米は認めず
    イスラム原理主義組織と言われるが、パレスチナ人の解放めざす民族主義的側面が支持されている。

~水、食料、燃料、医薬品などの流入をイスラエルが統制、非人間的で屈辱的な状況
 〔出入りの検問所では何時間もまたせるなど。そのイスラエルの横暴を米国が擁護〕

<今回の戦争の背景>

①ネタニヤフ右派政権のタカ派的体質とそれに対応するイスラエル社会の右傾化 
   イラン敵視キャンペーンが、欧米の交渉路線への転換で身動きできなくなった不満

②パレスチナ自治政府がハマスとの和解路線を打ち出し、統一政府樹立の方針を示したこと

③エジプトの軍事クーデターでムスリム同胞団を「テロ組織」と規定、非合法化。サウジ、UAEも追随
  ハマスとムスリム同胞団は、歴史的に同根、協力関係にあり、地域情勢が有利に変化したと判断

④過去の成功体験 08年のガザ攻撃 死者10人、経済の影響皆無 3週間で一方的に「停戦宣言」
 12年空爆 死者5人、8日間、一方的な停戦宣言で終了

⑤イスラム国とハマスのイメージを重ね合わせ、国際世論を誘導できると判断

<イスラエル側の「政治的」打撃 戦争の結果>

・圧倒的な戦力差にかかわらず50日戦闘、70名の犠牲  
 ①時間の経過とともに、「戦争」を続ける余力の限界が見えたこと。
  過去は「短期間」戦争、イスラエル主導で「停戦」/ 今回は、エジプトの仲介

 ②対照的な国民の評価  イスラエル 首相支持率82㌫→38%/ ハマスの支持率は急増、過半数超え
 → が、イスラエルは新たな大規模な入植地計画を発表 
 → こうした行為がアラブ、広範なムスリムを刺激/ イスラム国など勢力拡大に利用されている

☆ 5/12-14 イスラエル首相の来日。防衛協力の重要性、防衛当局間の交流拡大を一致
→ この時期での軍事協力/ 日本外交にとって紛争の一方に加担しないという点、中東平和に貢献する点でも原則に反する

■おわりに

・アフガン  米軍の撤退  
 アフガン国軍・警察を制度的に結成されたが忠誠心の行方は不明
  〔ここでも、責任を取らずに一方的に撤退〕
 9月新政府が発足。が、タリバンの反発
・ケリー国務長官主導の中東和平の失敗  イスラエルに圧力加えられずガザ攻撃に発展
  そのもとで「イスラム国」問題で、米空爆の再開
・アラブの春の影響 体制側の反応は、妥協と弾圧を含む多様なもの。社会的な亀裂の拡大
  リビア 統一効果の体をなしておらず分裂内戦状況

→ 国民統合のための柔軟な政策、共存を基盤とした国際関係の構築がもとめられる

〔内部の紛争を抑えるための強権的な政治。「独裁政権が悪い」と打倒したとしても、国内の民主政治を支える勢力、民衆の政治意識の前進がないと、紛争が顕在化。それが「安定」を求め新たな強権政治を誕生させる。繰り返しとなる〕

【シリア空爆の意味  酒井啓子 9/24】

 9月23日、米軍はシリアの「イスラーム国」拠点に対する空爆を開始した。イラク北部、西部に勢力を広げる「イスラーム国」をイラク国内だけで叩いても、シリアに「イスラーム国」の根っこがある限り、意味はない。国際社会挙げて「イスラーム国」を叩かなければならない、と高らかに宣言した以上、米国がシリア問題に手を付けざるをえないのは明らかだ。

 しかし、空爆は本当に意味があるのか、という指摘はすでに各方面でなされている。ゲリラのように移動しながら活動を続ける「イスラーム国」を空爆しても、簡単に逃げられるだけだ。ダムや石油施設が「イスラーム国」の手に落ちないよう空爆する、というのならば効果はあるかもしれない。しかし、「人民の海」のなかに紛れた「イスラーム国」の戦闘員だけを、ピンポイントで攻撃するのは、空爆では無理だ。無人機による攻撃が民間人の被害を増やしているという批判は、オバマ政権に対して繰り返し投げかけられている点である。
 だが、こうした人道上の指摘は、ついつい議論を単純化しがちだ。つまり「空爆ではテロは排除できない→逆に住民に被害が出る→それが対米反感を生み、却って反米テロを増やす→国際社会は手を出さないほうがいい」。
 ブッシュがイラクを空爆したときも、オバマがシリアのアサド政権を空爆しようとしたときも、同じロジックが主張された。「政権は独裁でも、住民はその政権のもとで我慢しながらも暮らしているのだから、外国軍がその暮らしを揺るがしてはいけない」。

 だが、「イスラーム国」と、シリアやイラクの独裁政権とでは、決定的に違う点がある。それは、独裁政権はシリア人やイラク人にとって曲がりなりにも「我々の独裁政権」だが、「イスラーム国」は彼らにとって余所者だということだ。自分たちを顧りみないからと、シーア派中心の中央政府に見切りをつけて「イスラーム国」の侵攻を許したイラクのスンナ派住民にしても、たまたま利用できる余所者にすがってみた、という程度のことだ。実のところは、「チェチェン人や中央アジア出身の言葉も通じない「イスラーム国」の兵士たち」になど頼れやしないと、多くの住民は考える。
 なので、余所者が軍事攻撃によって住民の生活の基盤を根こそぎひっくり返す「外国による政権転覆」と、今回のような「イスラーム国」への外国軍の攻撃は、根本的に違う。地元住民にとって米軍の「イスラーム国」退治は、余所者が余所者をやっつけることでしかない。
 であれば、地元社会の希望はただひとつ。「自分たちをまきこまないでほしい」。「イスラーム国」も、イスラーム国に資金をつぎ込んでいると言われる湾岸のアラブ産油国も、「イスラーム国」をやっつけにきた米軍も、自分たちとは本来無縁なものだと、シリアやイラクに住む人たちは考える。そもそも暴力的な武装集団がこの地域で闊歩するようになったのは、米軍がイラク戦争を行ってからのことだ。米軍のイラク介入が引き起こした「テロ」なんだから、米国こそが責任をとって回収すべきではないのか――。

 中東を専門とした国際政治学者の故フレッド・ハリディは、9.11事件の直後のエッセイでこう書いている。「アラブの人々は米国が介入することに文句を言っているのではない。介入しなさすぎることに不満を抱いているのだ」。
 では、余所者たちはどうしたら「イスラーム国」を「責任をとって回収」できるのか。そのためには、余所者が事態を複雑化したのだという認識をまず、共有する必要がある。米軍のシリア空爆にサウディアラビアやカタールなどが参加したことは、その点で意味を持つ。シリア内戦に周辺国が好き勝手に介入した結果、「イスラーム国」というフランケンシュタインを作り上げた。その作った張本人たちであるアラブ湾岸諸国が、そのフランケンシュタイン出現の責任を自覚し、回収に積極的な役割を果たす必要がある。チェチェンや北アフリカから戦闘員が「イスラーム国」に流入していることを考えれば、ロシアや北アフリカ諸国、そしてそれらの背景にある西欧諸国もまた、「イスラーム国」というフランケンシュタインの創り主である。
 
 しかし、フランケンシュタインはすでに自活能力を獲得している。シリアやイラクの石油施設を接収して、石油の闇輸出で収入を得、あちこちで拉致誘拐した者から身代金を巻き上げる。イラクでの戦闘を経て、武器や財産を戦利品として得たことで、「イスラーム国」は、外部からの資金を断たれたとしても、かなりの程度自活できる。
 本来力をいれて行うべきは、そうしたフランケンシュタインの創り主たちの間での本格的な共闘体制のはずだ。それを欠いて空爆だけしていればよい、というのでは、結局は地元社会の「責任をとらない余所者たち」への不信感を高めるだけである。


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