国保会計の基本と高知県のスケッチ〔メモ〕
「議会と自治体」2014.11号からの備忘録。
「構造的問題」と言われる加入者の構成の変化とその影響、また高知県06年度、12年度を比較してのスケッチを追記したもの。
【国保会計の基本~後期医療の影響〔メモ〕】
1. 国保財政の基本
〔1〕「収入」の費目〔科目〕
2015年度 医療給付総額 11兆7600億円
A 保険料、法定内繰り入れ 〔一般被保険者の医療給付の50%〕
●保険料 3兆2800億円
・74歳までの加入者の保険料
・ 高額医療費共同事業 3470億円 市町村国保1/2 県1/4 国1/4 (共同事業交付金)
1件80万円超の医療費へ影響緩和
〔・保険財政共同安定化事業 30-80万円の医療費の影響緩和 / 各市町村国保の拠出金 〕
・法定外繰り入れ 3500億円
●法定内繰り入れ 6990億円
・財政安定化支援事業 1000億円 交付税措置された基準額の8割分
・保険者支援制度 1020億円 国1/2、県1/4、市町村1/4
低所得者数に応じて一定割合を公費で支援
・保険基盤安定制度 4880億円 県3/4、市町村1/4
低所得者の保険料軽減分を公費で支援
B 国庫支出金 一般被保険者の医療給付の50%
・定率国庫負担32% 2兆4800億円
・国の調整交付金9% 7700億円
普通調整交付金7%〔医療費、所得格差の調整〕、特別調整交付金2%〔災害等〕
・都道府県調整交付金9% 7000億円
「三位一体改革」で委譲されたもの 交付税措置
C 一般被保険者の医療給付分 以外
・療養給付費等交付金
08年、「後期医療」の発足で廃止。64歳以下を対象にした「経過措置」の残り。
「退職被保険者」の医療給付費として、被用者保険から拠出されてきたお金
・前期高齢者交付金 3兆6800億円
「前期高齢者医療財政調整制度」の「支払い基金からの交付」 原資は、共済、健保の労働者の保険料
〔公費負担額 〕
国 3兆3878億円
県 1兆1783億円
市町村 1475億円 + 財政安定か支援事業1000+250 +法定外繰入3500億円 ~6225億円
(財政安定化支援事業 1000億円は交付税措置分 基準の8割分。 250億円は、市町村の留保財源から)
~ 公費4兆8136億円 62.1% 市町村の留保財源3750億円 4.8% 2/3が公費
〔2〕 「支出」の費目
●保険給付 一般被保険者、前期高齢者、退職被保険者の医療給付 国保「支出」の約7割
●総務費 人件費、システム改修
●後期高齢者支援金 被保険者の総数に応じて割り当てられた額の「後期医療」の基金に納付
●介護納付金 40-64歳の被保険者数に応じて割当られた額を介護保険の基金へ納付(第二号保険料)
●共同事業拠出金 「高額医療費共同事業」+「保険財政共同安定化事業」への拠出金
●基金積立金
●前年度繰上充用額
〔3〕 「国庫負担の減少」論について
「国庫負担が減っている」と言うと、「公費負担は1/2」は「変わらず」と言われる・・・
①84年改訂 医療給付費(自己負担3割のぞく)×50%
/ それ以前 医療費×45%(うち調整交付金5%)
→ 医療費の35% (国庫支出金 22.4%、調整交付金6.3%、都道府県調整交付金6.3%)
84年以降は、国庫支出金の割合は低下しているが、公費負担分1/2の構造は変わっていない。
~ 高額医療費があるので実際は38%程度
②保険料 法定内繰り入れ、
高額医療の制度により、保険料分の中の公費負担分が増加
ネットの保険料 保険料32800-高度医療・国県分1735 -法定外繰り入れ3500 = 2兆7565億円
~ 一般被保険者の医療給付 7兆7500億円 の35.6%
③問題は、加入者の構成の変化〔メモ者〕
さまざまな措置で公費負担を拡大したり、高齢者医療への他保険からの支援など、さまざまな手当てを実施
が、「構造的な問題」の解決にはふさわしい公費投入になっていない・・・・ 保険料(税)負担が増加
・非正規・零細企業、無職が約8割へ
1965年 一次産業42.1 自営業 25.4 被用者19.5 無職6.6
〔被用者~ 5人以下の零細業者、臨時工など、高度成長を支えた層〕
1985年 一次産業13.5 自営業30.1 被用者28.7 無職23.7
2011年 一次産業2.8 自営業14.5 被用者35.8 無職42.6
・加入世帯の所得の低下
一世帯あたり保険料 1人当たり保険料 加入世帯の平均所得 保険料/所得
1984年 103,188 39,020 179.2万円 5.76
1991年 148,616 65.284 276.5万円 5.37
2011年 155,688 89,666 141.6万円 10.99
・高齢者が多い~ 医療費は、他保険の約2倍
平均年齢2011年度 国保 50.0 協会けんぽ36.3 組合健保34.1
65-74歳の割合 国保 31.3 協会けんぽ 4.7 組合健保 2.5
一人あたり医療費(万円) 国保 29.9 協会けんぽ15.9 組合健保14.2
一人当たり所得(万円) 国保 84 協会けんぽ137 組合健保198
2. 全国ベースでは、08年度から国保会計はV字回復~後期医療による影響
実質収支 07年度 957億円の赤字 08年206億円の黒字 07-12年2194億円の黒字
〔1〕高齢者医療制度による国保財政上の大きな改善
・支出 老人保健拠出金 → 後期高齢者支援金
老人保健拠出金 加入している老人一人あたりの医療費で按分。高齢者の多い国保に大きな負担
後期高齢者支援金 加入者数で按分 国保負担が軽減 (他に、前期高齢者支援金19億)
2兆2404億円(07年度) → 1兆7461億円(12年度)
・収入 「療養給付費交付金」(退職者医療)の廃止
2兆6584億円 → 7755億円
「前期高齢者交付金」 0円 → 3兆2189億円
・影響額 支出4943億円減 交付金1兆3360億円増 / 約1.8兆円の大幅改善
2010年度~ それ以前は、基金を取り崩し対応してきたが、2010年以降は、積み立て額が上回る
〔2〕高知県のスケッチ 06年 - 12年
一般分医療給付 394億円 → 603.8億円
退職分・給付費 191.2億円 → 52.6億円
老人保健拠出金 187.4億円 → 0
後期高齢支援金 → 105.8億円
前期高齢支援金 → 0.1億円
小計 187.4億円 → 158.5
「療養給付費交付金」(退職者医療)の廃止 173.1億円 → 64.9億円
「前期高齢者交付金」 → 229.8億円
小計 173.1億円 → 294.7億円
・形式収支の赤字 2010年1億4400万円 2012年8551万円円
・08-12年度繰り上げ充用
2自治体→4自治体 5億7942万 → 9億2054万円
〔30自治体で決算剰余金が出ているかが・・・〕
・08-12年度実質収支 〔国庫返納金の清算〕
〔黒字20前後/34自治体 4-5割が赤字
+980万 -3億536万 -3億462万 -6億115万 -3億527万
・基金08-13年度 63.1億円 → 26.1億円
〔加入者 21万2千人 一人1万円強〕
・法定外繰り入れ 08年度1.19億円 → 11年度3.85億円 → 13年度7.75億円
・国庫支出金の削減~ 地方単独事業波及分 4億円
・特徴
① 高齢者医療による支援金・交付金 150.5億円の改善効果
② 基金37億円を取り崩し〔08年以降〕、法定外繰り入れ年6.5億円増
③ それでも3億円超の赤字の連続している
④ 医療給付費 後期医療の発足にもかかわらず急増
加入人数 給付費
06年 333,248 585.2億円 一人あたり17.56万
12年 211,988 656.4億円 30.96万
☆全国的傾向と違い 実質収支の赤字の連続、基金もとり崩しが続いている。
« 田舎回帰 と 「自治体消滅」の罠 | Main | 家計調査2014/9 実収入-6.0㌫ 12ヶ月連続前年割れ »
「高知県政」カテゴリの記事
- 2024.11地方議員学習交流会・資料(2024.12.02)
- 24年9月 意見書決議・私案 「選択的夫婦別姓」「女性差別撤廃・選択議定書」(2024.09.05)
- 24年9月議会に向けて 意見書・私案1(2024.08.31)
- 202408地方議員学習交流会資料+α(2024.08.15)
- 「消滅自治体」 なぜ「若い女性減」だけ? 若い男性も同様に減少(2024.06.01)
「医療・介護」カテゴリの記事
- 悪徳業者の手口!「脅し」でマイナ保険証の押し付け /正確な情報で対抗を(2024.05.10)
- 地消地産、医療介護福祉 産業政策で党県議団の提案生きる(2024.05.09)
- 国保料水準の統一にむけた条例改定 「手続き的にも内容的にも県民不在」と反対討論(2023.12.28)
- 高知県・国保料水準の統一 県のレクチャーでわかったこと(2023.08.31)
- 2023年8月地方議員学習交流会・資料(2023.08.15)
「備忘録」カテゴリの記事
- 2024.11地方議員学習交流会・資料(2024.12.02)
- 「賃上げ・時短」政策と「人手不足」問題~ カギは、持続可能な働き方(2024.10.01)
- 202408地方議員学習交流会資料+α(2024.08.15)
- マルクスと自由・共産主義と自由 メモ(2024.06.27)
- 2405地方議員学習交流会・資料(2024.05.16)
« 田舎回帰 と 「自治体消滅」の罠 | Main | 家計調査2014/9 実収入-6.0㌫ 12ヶ月連続前年割れ »
Comments