海兵隊引き留めに終始~ウソ繰り返してきた政府
復帰直後の73年7月、米兵による少女暴行事件のおこった95年。海兵隊撤退を検討するアメリカに対し、引き留めをはかったのは日本政府である。オスプレイ配備や辺野古新基地の軍港強化を事前に知りながら情報隠しもしてきた。
海兵隊は年中海外をまわっており常駐しているわけではない。12年の米軍再編見直しで在沖海兵隊の主力部隊はガァムに移転が決まっている。基地の「脆弱」さも米専門家から指摘されている。「抑止力」も幻想である。
沖縄返還時の米交渉担当者だったハルペリン氏は「新基地を建設することは政治的に困難であると、日本政府は米政府にしっかり言うべきだ。それを説明することに日本政府側が及び腰だ」と批判。
無策をつづけ、それを改められない・・組織の自己保身でしかない。
【<社説>ハルペリン氏来沖 沖縄の声を広く発信しよう 琉球新報9/20】
【社説[海兵隊引き留め策]沖縄押し付け もう限界 沖縄タイムス9/14】
【<社説>軍港機能把握 この国は「主権在官」か 琉球新報9/13】
【<社説> ナイ氏寄稿 「脆弱」な県内移設は撤回を 琉球新報9/2】
【海兵隊抑止力は「うそ」ND設立1周年シンポ 沖縄タイムス8/26】
【<社説>ハルペリン氏来沖 沖縄の声を広く発信しよう 琉球新報9/20】飛行場の移設に伴う新基地建設予定地の名護市辺野古の海を視察し「美しい海」と表現した上で「ここに移設する以外に方法はないか、しっかり考えないといけない」と述べ、現行計画以外の選択肢を模索する必要性を説いた。元米政府高官の言葉を日米両政府は重く受け止めるべきだ。
ハルペリン氏は講演で普天間移設について「沖縄返還を解決する以上に長い時間がかかっている。本当に異様なことだ」と疑問を投げ掛けた。その上で「新基地を建設することは政治的に困難であると、日本政府は米政府にしっかり言うべきだ。それを説明することに日本政府側が及び腰だ」と述べ、日本政府の消極姿勢を批判した。
指摘の通り、日本政府は沖縄の基地縮小に「及び腰」の姿勢を貫いてきた。むしろ米側が沖縄からの撤退を検討しても、それを引き留める役割すら果たしてきたのだ。日本政府が自国の民の犠牲を黙認し、犠牲を継続する方向に作用してきたことは極めて悪質だ。
72年10月に米国防総省が沖縄の海兵隊基地を米国内に統合する案を検討し、国務省も73年1月に「(普天間飛行場は)明らかに政治的負債だ」との見解を示していた。しかし73年7月、防衛庁が海兵隊駐留の継続を米側に要求していたことがオーストラリアの公文書で明らかになっている。
95年の少女乱暴事件の直後、米政府は在沖米軍の撤退や大幅縮小を検討していた。しかし日本政府が在沖米軍を撤退させないよう米側に求めていたことが当時の駐日大使のウォルター・モンデール氏の証言で明らかになっている。一体誰のための政府なのだろうか。
日本政府が「及び腰」であるとのハルペリン氏の発言を受け、シンポジウムに登壇した佐藤学沖縄国際大教授はこう指摘した。「米軍にとっては、沖縄が非常に便利で、要求が通る場所という形になっているのではないか」。もしそうであるとしたら沖縄の民意を踏みにじっている最大の当事者は日本政府だ。
ハルペリン氏は「沖縄は米国の一般人の注意を引くような大きな声で、その見解を伝えることだ」とも主張した。世論調査で「移設作業は中止すべきだ」が8割を超える沖縄の声を広く発信したい。
【社説[海兵隊引き留め策]沖縄押し付け もう限界 沖縄タイムス9/14】負担軽減とは名ばかりで、海兵隊の撤退論が浮上するたびにそれにブレーキをかけ、引き留めてきたのは日本政府である。
駐日米大使として米軍普天間飛行場の返還交渉に当たったウォルター・モンデール氏が2004年4月、国務省付属機関のインタビューに答えた口述記録の内容が明らかになった。
1995年、米兵による少女暴行事件をきっかけに燃え広がった復帰後最大規模の抗議行動は、日米同盟を激しく揺さぶり、米国内からも海兵隊撤退論が噴出した。
ペリー米国防長官は議会で「日本のあらゆる提案を検討する用意がある」と発言。ジョセフ・ナイ国防次官補は「日本政府が望むなら部隊を本土へ移転することにも応じる」と柔軟な姿勢を示した。
「県民の怒りは当然で、私も共有していた」とモンデール氏が語っているように、日本側にとっては、過重負担に苦しむ沖縄の声を米側にぶつけ、目に見える負担軽減を進める絶好の機会であった。
だが、「彼ら(日本政府)は、われわれ(在沖海兵隊)を沖縄から追い出したくなかった」と、モンデール氏は当時を振り返る。
この時だけではない。復帰直後の72年10月、米国防総省が沖縄を含む海兵隊の太平洋地域からの撤退を検討していたことがオーストラリア外務省の公文書で明らかになっている。
その時にも日本政府は、海兵隊の駐留維持を米側に強く求め、その通りの結果になった。
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「米国政府はこれまで何度も海兵隊の沖縄からの撤退を考えてきたが、そのたびにそれを日本政府が引き留めようとするという歴史が繰り返されてきた」と沖国大の野添文彬講師は指摘する(13日付本紙2面)。
本土のキャンプ岐阜やキャンプ富士に駐留していた米海兵隊が沖縄に移駐してきたのは56年のことだ。当時、沖縄からは「なぜ広大な日本から土地の狭い沖縄に移駐してくるのか理解に苦しむ」との抗議の声が上がったが、聞き入れられなかった。
61年6月の池田・ケネディ会談を受けて来島した米国のケイセン調査団は、沖縄現地で調査したあと、こんな報告書をまとめている。
「日本政府は、その安全保障に寄与し、しかも米軍基地を国内に置くことから生じうる政治問題を避けることができるという理由から、沖縄の米軍基地を歓迎している」
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海兵隊は沖縄でなければならないのか。そんなことはない。
「軍事的には日本国内であればよい。政治的にできないから官僚が道をふさいでいるだけ」だと、防衛大臣を経験した森本敏氏は指摘する(2010年6月、沖縄でのシンポジウムで)。
米ブルッキングス研究所のマイケル・オハンロン氏も12年10月、米ワシントンで開かれた沖縄県主催のシンポジウムで「辺野古計画の取り消し」を提案している。
辺野古は決して唯一の選択肢ではない。
【<社説>軍港機能把握 この国は「主権在官」か 琉球新報9/13】この国の主権者は一体誰なのか。「主権在官」。沖縄の基地問題をめぐる国の果てしなき隠蔽(いんぺい)体質にそんな言葉さえ浮かぶ。
安倍政権が名護市辺野古沖で強権的に建設を進めている米軍普天間飛行場の代替新基地をめぐり、新たな情報隠しとともに軍港機能強化の懸念があぶり出された。
日本政府は2009年の段階で、新基地に造られる岸壁に米軍の高速輸送船が配備される計画を知りながら、隠していたことが濃厚になった。
内部告発サイト「ウィキリークス」が09年10月に駐日米大使館が発した公電を公表しており、日米のやりとりが記されていた。
それによると、防衛省幹部が米軍の新たな配備や作戦計画の変更を伴う場合は新基地の機能に反映させるべきだと進言した上で、その例として「高速輸送船やMV22(オスプレイ)の配備」を挙げている。日本側が米軍の新装備を既に把握していたことになる。
県民の圧倒的多数が反対する辺野古新基地の核心的な機能について、日本政府が伏せ続けた事実が米側の公文書で明るみに出ることが繰り返されてきた。今回も日本政府のごまかしが露見した。
政府が扱う情報は主権者である国民のものだ。県民の反発を招く都合の悪い情報を恣意(しい)的に防衛官僚が隠すことは許されない。
情報隠しの節目に何度も登場するこの防衛官僚は防衛政策局長などを歴任した高見沢将林氏だ。1996年には、オスプレイが2003年ごろに沖縄に配備予定とする文書を提出していた。
さらに普天間飛行場の県外移設を公約に掲げた民主党政権が09年9月に誕生した直後、米政府高官に「米側が早期に柔軟さを見せるべきではない」と進言し、県外つぶしを図っていた。外交上の利敵行為に等しい暗躍ぶりだ。
在沖米海兵隊が頻繁に使う高速輸送船は千人の兵士や300トン以上の物資を積み、グアムと沖縄間をわずか35時間で結び、海兵隊の機動力を格段に高めたと評価されている。
オスプレイが離着陸するV字滑走路に加え、強襲揚陸艦や高速輸送船が接岸できる270メートルの岸壁が築かれる辺野古新基地は、海、空の輸送能力が集中する海兵隊の一大拠点になりかねない。
防衛省は「軍港機能はない」と言い張るが、県民の懸念を打ち消す根拠は何も示していない。
【<社説> ナイ氏寄稿 「脆弱」な県内移設は撤回を 琉球新報9/2】米軍基地を沖縄に集中させ続けることは軍事戦略上も非合理的だ。安全保障・外交の専門家がそう認めたことの意味は小さくない。
ジョセフ・ナイ元米国防次官補が米ニュースサイト「ハフィントン・ポスト」に論文を寄稿し、「中国のミサイル技術が発達し、沖縄の米軍基地は脆弱(ぜいじゃく)になった」と指摘し「日米両国は同盟の構造を再考しなくてはならない」と提言した。
ナイ氏の指摘は、合理性を抜きにして現行計画に固執する日米両政府の頑迷固陋(ころう)を浮き彫りにした。沖縄と日米、三者の関係の将来を見通せば分かるはずである。両政府は沖縄だけに基地を押し込めておく不条理を考え直すべきだ。
ナイ氏が、中国のミサイルを論拠に据えた点が興味深い。沖縄に四軍の基地を集中させておけば有事の際、中国のミサイル数発で日本にある米軍の根拠地が壊滅し、米兵多数が死傷する。射程距離内の一地域に軍を集中するのを避け、リスクを分散しておきたいという論理だ。敵軍と一定の距離を確保すべきだというこの論理は、軍事用語で「縦深性」と呼ぶ。
実は米国の「エア・シー・バトル構想」はこの縦深性確保の視点に貫かれている。だが日本では、構想の狙いが中国包囲網だと強調されるばかりで、縦深性を強く意識する点は見過ごされてきた。
縦深性を確保しようと思えば、沖縄一県に米軍が集中するのは非合理的である。防衛・外務当局は当然、その視点を知っていたはずだ。だが分散は労力を要する。当局がその労を避けたいと考えるのは想像に難くない。米国のこの構想が日本で縦深性の観点から語られないのは、防衛・外務当局が意図的にこの観点を隠したからではないか。
論文が「沖縄の基地負担に対する怒り」に言及した点も重要だ。沖縄一極集中が地理的にも政治的にも両方の意味で脆弱だと認めた格好である。ナイ氏は2011年にも米紙ニューヨーク・タイムズに寄稿し、「海兵隊を沖縄県内に移設する現行計画を沖縄の人々が受け入れる余地はほとんどない」と分析した。
今回、「怒り」に言及したのも、ほぼ同様に分析しているからであろう。世論調査に照らせば正確な分析だと分かる。政治的にも軍事技術的にも非合理的な県内移設計画を、日米両政府は傷が深くならないうちに撤回すべきだ。
【海兵隊抑止力は「うそ」ND設立1周年シンポ 沖縄タイムス8/26】政治や外交問題に取り組むシンクタンク「新外交イニシアティブ」(ND)の設立1周年記念シンポジウム「どうする米軍基地・集団的自衛権-オキナワの選択」が25日夜、那覇市の沖縄かりゆしアーバンリゾート・ナハで開かれた。「抑止力」を安全保障の観点から分析。海兵隊の任務や役割をひもときながら「沖縄に駐留しなければ抑止力を維持できないというのはうそだ」と日本政府の姿勢などを批判した。
今月発刊したND編「虚構の抑止力」の著者5人のうち4人が登壇。
ND理事で元内閣官房副長官補の柳沢協二氏は、抑止力を理由に普天間飛行場の名護市辺野古移設を進める現状に「フロートの設置や掘削調査はやる気になればできるだろうが、それは始まりにすぎない。地方からノーを突きつけ、米国政府に伝えることが重要ではないか」と語った。
東京新聞論説兼編集委員の半田滋氏は2012年の米軍再編見直しで在沖海兵隊の主力部隊のグアム移転が決まったと説明。「実戦部隊を動かすことで、(沖縄駐留の意義を)抑止力では説明できなくなった。付け焼き刃の安全保障政策は偽物だと示した」と強調。
元沖縄タイムス論説委員でフリージャーナリストの屋良朝博氏は「集団的自衛権や辺野古基地建設は虚構の抑止力をキーワードに語られている」、ND事務局長で弁護士の猿田佐世氏は「沖縄が大きなまとまりで動こうとしている。その声をワシントンや国連に伝える必要がある」と訴えた。■自衛隊・海保で十分尖閣防衛
新外交イニシアティブ(ND)のシンポジウムは、安全保障の専門家3氏がパネル討議で議論を深めた。尖閣諸島の脅威を理由とした海兵隊必要論に対しては、自衛隊や海上保安庁の対応で十分であり、海兵隊の抑止力は必要ないとの指摘があった。
元防衛官僚の柳沢氏は、尖閣と海兵隊の抑止力に言及。「上陸を阻止するのは海上保安庁、自衛隊の治安出動で十分間に合う。海上自衛官OBは『上陸されても艦砲射撃3発で解決するよ』と話している」と述べ、日本政府の取り組みで対処できると強調した。
政府が辺野古移設の既定方針に固執する理由では「官僚時代、私は『日米同盟を維持することが最大の国益』と疑わず、イラクに自衛隊を派遣した」と述懐。政権交代のたびに大量の官僚がシンクタンクや大学に異動する米国と異なり、終身雇用の日本では政治に意見具申しづらい実態も説明した。
半田氏は尖閣問題で「中国も悪いが、靖国神社に参拝して相手の怒りを駆り立てているのはどなたか。取材していると自衛官も『挑発を続けたら本当に偶発的な衝突が起きる』と心配している」と安倍晋三首相に抑制的な対応を求めた。
屋良氏は靖国参拝に絡み「海兵隊はアジア太平洋地域で人道支援、災害救助訓練を続け、各国とネットワークを構築している。安全保障環境の悪化をしきりに主張する日本の首相こそが、海兵隊の努力を台無しにしている」と批判した。
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