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都道府県に「支出目標」で医療費に大ナタ 

「全国保険医新聞」の記事。

 人口構成や地理的条件、医療資源の分布など、地域によって医療の諸条件は様々なのに、低医療費の地域を「標準」にし、都道府県に目標をもたせ、削減を図る。その実現のために各地域の病床数を抑制・削減する「地域医療ビジョン」を策定させる。
  社会保障プログラム法は、健康管理などの自助努力を推進する仕組みの導入をうたっている。
「医療費の支出目標を超えた都道府県に対し、ペナルティを科すことになれば、個人に対しても波及する可能性がある」との指摘をしっかり受け止める必要がある。
【都道府県に「支出目標」…医療費抑制に大ナタ  保団連9/25】

【都道府県に「支出目標」…医療費抑制に大ナタ  保団連9/25】

 塩崎恭久厚労相は4日の就任会見で、都道府県ごとに医療費を抑制する考えを表明した。政府の社会保障制度改革本部(本部長:安倍首相)では、都道府県ごとに医療費支出目標を設定する方向で検討が進んでいる。新たな医療費抑制策の検討状況について解説する。

◆低医療費の地域が「標準」

 都道府県が策定する医療費適正化計画(1期5年)は、13年度から第2期目に入っている。現在の医療費適正化計画では、医療費の支出目標の設定は必須事項ではなく、任意事項となっている。
 政府は、医療費抑制の実効性を高めるため、都道府県が来年度に策定する地域医療構想(ビジョン)とリンクした医療費の水準や医療提供体制の目標を設定し、その実現の取り組みを加速するため、医療費適正化計画についても見直していく方針を示している。
 経済財政諮問会議(2014年4月22日)では、麻生太郎財務相から、福岡県の先進事例やフランスの医療費支出目標制度(*)などを踏まえ、合理的かつ妥当な医療需要を前提とした支出目標を設定し、医療費を適正化することが提案されている。安倍首相からも、麻生財務相の提案を含め、国や都道府県ごとの医療費の水準のあり方について検討を進めるよう指示が出されている。
 医療費の低い地域を「標準集団」と位置づけ、都道府県が支出目標を決める。国は目標を超えた都道府県に対し、原因の分析と具体的な改善策の策定を義務づけ、支出の抑制を促す方針である。
支出目標設定に当たっては、レセプトや特定健診、DPCなどの情報データに基づき算出するほか、
後発医薬品の普及率、平均在院日数、高齢者数などの人口構成を指標として使い、複数の市町村にまたがる地域ごとに「妥当な医療費」を算出する仕組みが検討されている。
 このため国は、都道府県が「標準的な医療機能別の病床数」や「医療費支出目標を設定するための算定方式」について、標準的な計算式を2014年度中に示すとしており、8月11日、社会保障制度改革推進本部の下に設置した専門調査会で、標準的な計算式についての検討を開始した。

◆医療ビックデータで需要計る

 政府はレセプト情報・特定健診等情報データ(NDB・全国共通サーバーで管理)やDPCデータ、国保データベース(KDB)などの枠組みを利用して、医療ビックデータによる「医療需要」(入院・外来別、疾患別の患者数等)を推計する。この推計を用いて、都道府県ごとに医療費の目標値を定めようとしている。
 医療・介護総合法に基づく「病床機能報告制度」が10月から開始するが、4つの医療機能別(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)の病床データについても、国が全国共通サーバーで一元管理・分析し、医療ビッグデータの一つとして利用する計画である。
 しかし、機微性の高い個人の診療・健康情報を一元的に把握・管理し、「医療ビッグデータ」として、新たな医療費抑制策に利用することは、情報データの目的外利用に当たる可能性が高い。
 また、すべての国民に割り振る共通番号(マイナンバー)は2016年1月から運用が開始される予定だ。患者の病歴や診療内容など機微性の高い「医療の身体情報」については利用範囲から外れているが、政府は、「医療の身体情報」も利用範囲に追加する方針を示している(『日経新聞』2014年6月18日)。

◆地域で医療の条件異なる

 新たな医療費抑制策として、都道府県が医療費に関する1年間の支出目標(上限額)を設定し、県民医療費の削減を押し付けるならば、患者にとって必要な医療を受けられない事態を招くことになりかねない。人口構成や地理的条件、医療資源の分布など、地域によって医療の諸条件はさまざまである。
 今後、医療費適正化計画が抜本的に強化され、医療費の支出目標を超えた都道府県に対し、ペナルティを科すことになれば、個人に対しても波及する可能性がある。
 社会保障プログラム法は、「個人の健康管理、疾病の予防等の自助努力が喚起される仕組み」の導入を政府に課しており、政府の新成長戦略、健康・医療戦略は、国民の自己責任による健康管理=「セルフメディケーション」を徹底することを掲げている。
 個人の健康管理と疾病予防をセットにして自助努力・自己責任を求めることは、健康管理をしないで疾病に罹った人には、ペナルティが科されるのは当然ということになりかねない。
 個人が自ら健康を守る努力をしていても、疾病に罹るから公的医療制度が必要なのであり、個人の健康や疾病には社会的・経済的な要因も大きく影響している。
 WHOは、健康を個人の問題だけでとらえるのでなく、社会的決定要因を重視し、健康を蝕む背景にある貧困、格差、労働環境の改善などに向け、各政府が責任を果たすことを求めている。こうした世界の流れにも逆らうことになる。
 国民皆保険の本質である「必要な医療が公的保険で受けられる」ことを守り、充実させていく声を待合室から、地域から広げていくことが急がれる。


*フランスの「医療費支出国家目標制度(ONDAM)」
 1996年に導入された。「開業医」「病院」「高齢者医療」「障害者医療」などに区分して医療費支出の目標値を設定し、医療費の支出と収入が均衡することを議会の議決対象としている。疾病保険の支出の全国目標値を設定し、目標達成ができない(医療費が想定以上に伸びてしまうなど)と判断された場合には、年度途中でも保険料引き上げなどの措置がとられることになる。
 こうした制度を導入することは、小泉政権時代に提案され、医療界あげた運動で撤回させた医療費「総額管理」方式の導入につながる危険性がある。

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