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9月1日 防災の日~関東大震災、朝鮮人虐殺

 昨日は「防災の日」。91年前に起こった関東大震災に由来する。災害を防止する点では、自然災害だけでなく、その直後に人が起こした災害=朝鮮人虐殺についても、向き合う必要がある。
 寺田虎彦は「天災は忘れたころにやってくる」と言ったが、人のあやまちも同じ。事実と向き合い、風化させない努力がないと、同じことになる。ヘイトスピーチは、その典型であろう。
 今日、9月2日は、ポツダム宣言に調印し、国際法上、戦争が終結した日。無条件降伏したのは「帝国軍」であり、日本国は、再出発にたり、民主化、反軍国主義を約束した日である。
朝鮮人虐殺の実相を、個人の日記などから丹念に掘り起こした「9月 東京の路上で」は秀逸。
【照明灯 自省なき空気 神奈川新聞9/1】
【関東大震災時 朝鮮人虐殺の実相 いまに連なる「排外」 神奈川新聞4/4】
【9月、東京の路上で】

【照明灯 自省なき空気 神奈川新聞9/1】 9月の声を聞いて、二つの日付に思いをめぐらせたい▼91年前のきょう1日の関東大震災、その直後に朝鮮人虐殺は起きた。「朝鮮人が暴動を起こす」というデマに端を発した惨劇。日本の植民地支配により土地を奪われ、職を求めて海を渡った朝鮮人への差別と迫害が報復の恐怖を呼び、市井の人々を凶行に駆り立てた▼そして2002年9月17日、日朝首脳会談で北朝鮮の拉致が明らかになった。加害者としての負い目から一転、高揚した被害者意識。拉致は許されざる国家犯罪だが、ゆがんだ憎悪の発露はのち、街中で「朝鮮人を殺せ」と連呼するヘイトスピーチにもつながる▼拉致と過去の清算は相殺できるものではなく、それぞれを個別に問いたださなければならぬ。拉致被害者家族の一人、蓮池透さんはそう語る。それには、相手に突き付けることは自らにも問わねばならない、とも▼月内にも北朝鮮から拉致被害者再調査の最初の報告がなされる。いい加減な報告は許さない、との声を政治家らが強める。では、日本政府は朝鮮人虐殺の実態を調査したのだろうか。一方的、自省なき空気に、過去の清算とは、植民地支配を正当化するために醸成された差別意識から、われわれ自身が自由になることでもあると知る。



【関東大震災時 朝鮮人虐殺の実相 いまに連なる「排外」 神奈川新聞4/4】

 日本人による朝鮮人、中国人への虐殺が発生した関東大震災。いつ、どこで、何が起きたのかを歴史資料からたどったノンフィクション「九月、東京の路上で 1923年関東大震災 ジェノサイドの残響」(ころから)が出版された。官憲までが流言を信じ、社会全体が暴走する様子が克明に描かれている。翻って現在、排他的な言説やデマが日常にあふれる。「こうした現状はいつか90年前の状況につながっていく。いま言わなければ、と思った」。フリーライターの加藤直樹さん(46)は著書に込めた思いをそう語る。
 きっかけは昨年、東京・新大久保で目にした排外デモの光景だった。「朝鮮人をたたき出せ」と声を張り上げ、街中を練り歩く集団。そこには抗議する人々も集まっていた。その姿にうなずく一方、思った。
 「ヘイトスピーチ(差別的憎悪表現)に抗議する人でも、関東大震災での虐殺の話は想起しない。朝鮮人差別には歴史的経緯があり、今の問題の原点には90年前の虐殺があったと知らせたかった」
 仲間5人でブログを始めた。執筆にあたっては図書館を巡って資料を集め、読み込んだ。
 スタートは震災前夜にあたる8月31日。読者が追体験できるよう、90年前のその日に何が起こったのかを日を追って掲載していった。実況中継のような仕掛けは話題を呼び、最終的には5万件ほどのアクセスを集めた。
 同書はブログを加筆し、書籍化したものだ。

■えぐられた社会
 腐心したのは、読む人に考えるきっかけを与えるようなエピソードを選ぶことだった。横浜では、生きたままのこぎりで裂かれたという証言も残されていた。だが、情景の残酷さばかりに目がいくのは本意ではないので、あえて避けた。
 資料を精査して気付いたことがあった。「朝鮮人のそばに、日本人がいることが多かった」。かくまったり、かくまいきれなかったり。朝鮮人が地域社会の一員として生きていた証しだった。
 それまでは朝鮮人が殺されたイメージは漠然としたものにすぎなかったが、虐殺の本質が立体的に浮かび上がってきた。
 「朝鮮人も一人一人名前を持った、誰かにとっての誰かだった。そう考えると、あらためて虐殺が社会の一部を暴力的にえぐり取ったんだと感じられた」

■ルワンダと同じ
 問題に関心を持ったのは2000年4月、当時の石原慎太郎都知事の「三国人」発言が契機だった。「不法入国した多くの三国人、外国人」が凶悪犯罪を繰り返しているとし、「すごく大きな災害が起きた時には大きな騒擾(そうじょう)事件すら想定される」と公言した。
 「愕然(がくぜん)とした。外国人が地震のときに暴動を起こすという発想がまずいんじゃないか、と」
 石原氏の発言に根拠はなかった。世間の批判は「三国人」という差別表現に集まっていったが、発言の根底にある外国人への不信感、偏見が加藤さんには気になった。
 震災から80年の節目だった03年、都内で開かれた震災と東京大空襲の法要に参列した。隣に座った高齢の女性は大空襲で兄を失ったと言った。会場の外から、朝鮮人犠牲者のための法要のリハーサルで流れた民族音楽が聞こえてきた。
 ハッとした。
 「兄を亡くして悲しんでいるこのおばあさんの父親は、80年前は朝鮮人を殺す側だったのかもしれない、と。『これはルワンダと同じだ』と思った。東京が、普通の人が普通の人を殺した街であることに思い至った」
 民族対立で激烈なジェノサイド(大量虐殺)が行われたアフリカのルワンダ。関東大震災での虐殺が特定の民族を抹殺するのと同様の行為として、重なって感じられた。

■壊れたインフラ
 関東大震災の朝鮮人虐殺については近年、横浜市や東京都の教育委員会が社会科副読本から「虐殺」という言葉を消す動きがあった。「先祖による負の歴史が、子どもたちを傷つけるかもしれない」(横浜市教委)などというのが理由だ。
 「すごくまずい。しかし、震災だけではない。たとえば従軍慰安婦についても基本知識がメディアにすらない。判断の前提がなければ、正しい判断はできないし、間違ったときに正しい道に戻ることもできない」
 以前勤めていた会社で若い世代と話をした際、歴史認識が足元から変化していると感じた。「新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論」(小林よしのり著)、「マンガ嫌韓流」(山野車輪著)を愛読したという若者たちからは、日本のアジアへの侵略を正当化する意識が感じられた。「正しい歴史認識はインフラと同じようなもの。残っていれば復旧できるが、根こそぎ解体していたら厳しい。そうした心配がある」

■重ね見えるいま
 街中でのヘイトスピーチは変わらず続く。インターネット上では在日コリアンについてのさまざまなデマが流れ続ける。3月にはサッカーのJリーグの試合で観客席入り口に「JAPANESE ONLY」という横断幕が掲げられ、差別的な言動として問題になった。関東大震災から90年を経過したいまも排他的、差別的言動は公然と存在し続ける。
 加藤さんは阪神大震災の体験を思い出す。友人らと支援活動に向かった際、現地で「中国人が畳を盗んでいる」というデマを実際に聞いた。東日本大震災後も「阪神大震災後に朝鮮人によるレイプが多発した」という中傷が流れた。「そういう事態になればデマが流れると実感した。まして外国人に負の意識を持っていたら『やはりそうか』となるだろう。放置していると死人さえ出るのではないか」
 同書は出版から1カ月もしないうちに重版が決定し、反響を呼んでいる。喜ぶべきことだが、素直に喜べない自分もいる。
 「家から5分も歩かないところが現場と知り、ショックだった」「ヘイトスピーチを見たが、本に書いていることと同じで恐ろしくなった」-。
 寄せられる読者の声に加藤さんは思う。
 「90年前にひどいことがあってショックという反応もあろうが、嫌韓やレイシズム(差別主義)が高まるいま、放っておくと、どこへいくのだろうという不安があるのでは。こういう社会が行き着く最悪のケースを虐殺に見て、いまを重ねて読んでいるのでしょう」
 「九月、東京の路上で 1923年関東大震災 ジェノサイドの残響」 虐殺の模様を「手記 関東大震災」(関東大震災を記録する会編)や研究者の著作「災害復興の日本史」(安田政彦著)といった資料約50冊を基に時系列にまとめ、解説している。3月7日に発売されるとツイッターなどで話題となり、コラムニスト小田島隆さんはJリーグの横断幕問題を引き合いに「横断幕の向こう側に広がっている風景を、垣間見ることができるはずだ」とブログで言及。ヒップホップグループ「RHYMESTER」のMC・宇多丸さんもラジオ番組で「ちょっとスイッチが入るとやっぱり一気にワーッ! と行っちゃう。これ、他人ごとじゃないと思うんですよね」と感想を語った。
【神奈川新聞】

●写真の説明=「予想していた反発は現状はほぼない。「ネット右翼みたいな人たちから攻撃されると覚悟していたが。彼らは保守系メディアが批判すればまねることができるが、自分の言葉で批判することはできないのでは」と話す加藤さん」

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