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法人税減税への安倍内閣の暴走〔メモ〕

 「経済2014.7」より、垣内亮氏の論考の備忘録

【法人税減税への安倍内閣の暴走 2014/7】

1.法人税引き下げはなぜ浮上したか

◆消費税増税と結びついた法人税引き下げ要求

・今年度~消費税の大増税。復興特別法人税の前倒し廃止、投資減税、交際費損金算入など1.5兆円の減税
・法人税収(地方税含む)18兆円~実効税率35%分とすれば、1%あたり5千億円/25%に下げれば5兆円
→ なぜ国民には消費税増税で、大企業減税なのか

①消費税増税と法人税減税はセットの要求

・89年の消費税導入 財界の主張は「直間比率の是正」
~96年「経団連ビジョン2020」「所得税負担、法人税負担を欧米先進国並みに引き下げるとともに、消費税率を引き上げ、国税の直間比率を50%程度まで引下げる」
・97年の消費税増税の失政(暮らし破壊、経済低迷)をうけ、させなる増税を国民に受け入れらせるために
~「直間比率の是正」の主張は後退/消費税は「社会保障の財源」「財政再建」のため、法人減税は「経済の活力」「諸外国並み」と別の理由を掲げる
・本音は不変~07年、御手洗会長 法人減税の財源をとわれ「(消費税を)11年度までに2%、15年度までに3%ぐらい上げると(御手洗ビジョンに)書いてある」と記者会見で発言(07/2/26)

②消費税増税時が法人税引き下げのチャンス

・歴史的にも消費税増税の前後に法人税引き下げがセットで実施されてきた/ 大きな財源を必要とするため
・今回、8-13兆円の空前の大増税。財界にとって千載一遇のチャンスが本音

◆安倍首相の狙いは「株高維持」

①株価の高止まりが政権を支えている

・消費税増税、原発再稼動、憲法改悪  あらゆる分野で国民との矛盾拡大/ それでも一定の支持を維持
→ 「アベノミクス」への期待と幻想 / 実際の恩恵は一部の大企業と富裕層だが、株価が高止まりしているうちは「そのうち自分のところにも回ってくるのでは・・・」という期待が残っている
・ 株高が安倍政権を支えている/ 安倍首相自身も自覚
首相として初めて、東証の大納会に出席が、今年に入り株価は下落傾向/そこで法人税減税

②株価暴落にあわてて法人税減税を打ち出す  昨夏

・昨年6月、「第三の矢」の「成長戦略」策定/5月23日、米金融緩和縮小の動きが引き金で株価急落
→事前の講演会。法人税減税にはふれず、安倍首相の講演中に株価下落。前日比519円安。/最終案発表の翌日に843円の暴落
・急遽、秋に「成長戦略」の追加策の策定を指示、「設備投資減税」など企業減税の検討
/7月の参院選。公約に「法人税の大胆な引き下げを実行する」が盛り込まれた

2.法人税引き下げで景気はよくなるか

①減税の恩恵は大企業と大株主に

・企業減税が賃上げにつながる保証はない~法人税は、利益にかかる税/売り上げなどの収益から原材料費、機械の減価償却費、人件費などの費用を控除した「税引き前利益」に税率をかけて計算
〔厳密には、法人税を計算する際の「法人所得」と「税引き前利益」には若干ズレがある〕
・「税引き前利益」から法人税を払った後の額が「当期純利益」
→ これが「配当金」「社内留保」に分かれる/ 毎年の「社内留保」の蓄積されたものが「利益剰余金」
・法人減税 直ちにおこるのは「当期純利益」の増加 →「配当金」「社内留保」の増加
~ 増加した内部留保をつかって賃上げも理論的には可能だが、あくまで「可能性」「間接的結果」

・経営指標の比較  98.99年度の法人減税~直前(93-97)、その後(03-07)の5年
 経常利益 2倍以上に増加/ 法人税の負担 約1.5倍増 /当期純利益 3倍以上。配当・社内留保 3倍前後の増/が 給与は減少
→ 法人減税は、まちがいなく配当、内部留保の増加 /株価上昇要因、日本株への海外投資を誘発し、さらに株高に ~アベノミクスの最大かつ最後の基盤である株高に維持される

②景気上昇につながる保証はない

・減税しても投資にまわらず余剰資金なることが日本経済の大きな問題/ すでに巨額の内部留保
→2003-12年の10年間 /内部留保105兆円増 /有形固定資産20兆円減少(設備投資が減価償却費の範囲にとどまっている)
・法人数の99%、雇用の7割を占める中小企業(資本金1億円以下)  約7割が赤字、減税の恩恵なし

3.税収の空洞化で財政危機をいっそう深刻に

・法人税 20%台に引き下げ 3兆円減収 / 経団連要求10%引き下げなら、5兆円の減収

①「課税ベースの拡大」の議論について

・財務省としても、減収を無条件では認められない → そこで「課税ベースの拡大」論
・2012年 法人税収10.4兆円 税引き前利益に法定税率を乗じた額16.2兆円 (政府税調資料)
→ その差は、課税ベースが狭められているから/ 一部を廃止すれば増収となる
    租税特別措置による軽減    1.0兆円
    受取配当等の益金不算入    1.4兆円
    海外子会社配当の益金不算入 0.6兆円
    欠損金の繰越控除       2.3兆円
    その他            0.6兆円 

・経団連がただちに反論 「(研究開発減税は)成長戦略を実行する上で、必要な制度」「資源関連税制はわが国において必要不可欠」

・過去の経験~ 「課税ベースの拡大」論は、法人税減税、大企業減税の免罪符
  民主政権下 30→25.5% 財源は「課税ベース拡大」だったが、減税1.2兆円の半分にも及ばす
  98年の減税2兆円 「引当金の縮小」によるとされたが、取り崩し後は、増収効果消滅
→ 各種の大企業優遇税制の存在が、法人税の減収をもたらし、日本の税収の空洞化の大きな要因

②中小企業への増税強化をもたらすおそれも

・「欠損金の繰越控除」 赤字法人の比率が高い中小企業への適用が多い
・法人事業税(地方税) 一部に外形標準課税が導入されているが、中小企業への拡大する議論が浮上
・また、所得税、住民税についても、配偶者控除の縮小、廃止の検討
~ 大企業減税のための財源として、中小企業、家計への増税

③消費税が法人税減税の穴埋めに

・法人税減税と景気悪化による税収低下~ 法人3税 89年29.8兆円 14年予算17.6兆円
・ 90年からの25年 減収計255兆円 / 89年から26年間の消費税収 282兆円
→ 過去の消費税収は、法人税の減収に消えたことを意味する。/今回の法人減税も、「課税ベースの拡大」では財源は確保できず、結局、消費税に頼らざるえない。

④「消費税は社会保障に」という欺瞞

・2014年度 増税分5兆円  「充実」0.5兆円  「消費税コスト」0.2兆円
               残り4.3兆円 「既存の社会保障予算」の財源の置き換え
→ この置き換えで「従来の財源」を社会保障以外に使う余裕ができる、

・消費税増税すれば「安倍政権の経済政策のスペースが広がる」とし、法人減税を進めるべき(経済財政諮問会議13/9/13 伊東元重民間議員発言) / 会議後の記者会見で、甘利経産大臣が、この発言を一番に紹介
→ 「消費税増税分を法人税減税の財源に」というと公約違反になる/ 「消費税増税によって出来たスペースを利用して法人税減税をする」と言い換えただけ。

⑤「法人税のパラドックス」は成り立つか

・「減税すれば景気がよくなって、かえって税収が増える」~ヨーロッパ諸国では法人税率を引き下げだが、法人税収は逆に増えた、という話 / 経済財政諮問会議2/20 伊東元重議員の提出資料 ①経済成長 ②法人成り ③課税ベース拡大、という3つの要因をあげて説明
・多くの問題をふくむ議論
 A 経済成長が減税によるものと証明されていない 
   アメリカは95-12年、法人税率を下げていないが、経済成長し、法人税収平均4.1%増
 B 期間の取り方で違った結果がでる
   07-12年 英6%、独9% 税率引き下げ /英7.3%、独11.8% 税収減
   税率を据え置いたアメリカは、税収もほぼ横ばい
 C 名目の税収比較ならトルコがOECDトップ 17年間に年平均38.2%増 主因はインフレ

・90年以降、日本では、税率を下げても「税収が伸びる」ことは起きていない
  89年 40.0% 19兆円/90-97年 37.5% 13.5兆円/98年 34.5% 11.4兆円
/99-11年 30.0% 10.9兆円/12-14年 25.5% 9.9兆円

4.日本の法人税は本当に高いのか?

①ますます低下する大企業の実質負担率

・表面的な「法定税率」では、アメリカに次いで高い
・が、大企業については、優遇税制によって、実際の税負担率はずっと低い
  トヨタ社長「社長になった一度も税金を払っていない。納税できてうれしい」と5年間法人税ゼロを告白
・2012年度、国税庁のデータより著者試算 (国税の法人税のみ。税率25.5%) 
  資本金1億円前後の中小・中堅企業  法人税率と実質負担率がほぼ同じ 25.7%
   (決算が3月末よりもっと早く従前の法定税率30%が適用されている企業が含むため  )
  資本金10億円を超えると低下し、100億円以上16.4%
  連結納税法人+資本金10億円以上 13.9%

・一貫して小規模企業より、大企業の実質負担率が低い。特にここ10年間あまり差が拡大

②財務省の試算でも示される実質負担率の低さ

・財務省資料 法定税率の計算16.2兆円 →実際の税収10.4兆円.
法定税率25.5% → 実質負担率17.8% (全産業)/製造業15.0%、機械工業11.6%
~ が、資本金階級別の試算結果は公表していない。/大企業が各種の恩恵をうけていること、また「課税ベース拡大」の有力候補「欠損金の繰越控除」の対象に中小企業が多いことが明らかになってしまうからと思われる。

★年末の「税制改正」で、消費税10%と同時に、法人減税の規模、方法と財源確保策が決着となる可能性が高い。「国民には大増税、大企業には大減税」という安倍政権の暴走はますます鮮明にな。/国民的運動で暴走ストップを

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