利潤のための「女性活用」ではなく、条約の立場で男女平等を
日本共産党国会議員団男女平等推進委員会 日本共産党女性委員会が、22日に内閣府に対し、7月末が期限の国連女性差別撤廃委員会への政府報告にあたって、女性差別撤廃条約の批准国としての責任を果たし、条約を全面実施するよう申し入れをおこなっている。
女性蔑視ヤジの根底には、、「日本政府には、女性差別撤廃条約が実施責任と法的拘束力をもつものであるという認識が欠けている」とまで指摘されるような本音では 女性差別を差別と認識できない体質がある。
国連自由権委員会の勧告、米国の人身売買報告書といい、これが「共通の価値観」
申し入れについての報道は、ホームページ上の「赤旗」コーナーに出でいるが、申し入れ全文は政策のコーナーに出でいる(記事面から入れるようになっていない)。
【女性差別撤廃条約批准国としての責任を果たし、女性差別の改善へ、条約の全面実施を――女性差別撤廃委員会への政府報告にあたって 7//22】
http://www.jcp.or.jp/web_policy/2014/07/-201422.html
【女性差別撤廃条約批准国としての責任を果たし、女性差別の改善へ、条約の全面実施を――女性差別撤廃委員会への政府報告にあたって 7//22】
2014年7月22日 日本共産党国会議員団男女平等推進委員会 日本共産党女性委員会
国連女性差別撤廃条約が1979年に国連で採択されてから今年で35年、日本が批准して来年で30年を迎えます。この間、世界各国は、条約にもとづいて女性差別の改善と男女平等の前進へ努力を続けてきました。
日本でもこの約30年間に、働く女性が350万人増加するなど、さまざまな分野へ女性の進出がひろがっています。にもかかわらず女性の政治・政策決定参加でも、雇用の平等でも、実質的な改善は十分にすすんでおらず、日本の男女平等度は世界105位(2013年)です。世界の努力と到達点から大きく取り残されています。
女性差別撤廃条約は、批准した国の政府に、定期的に条約の実施状況の報告を義務づけています。日本はこれまで6回提出し、今年の7月が第7・8回の報告書の提出期限です。これまでの日本の政府報告に対して、女性差別撤廃委員会からは、差別をなくすための日本政府の対応の遅れと不十分さが繰り返し指摘され、改善が求められてきました。前回の報告に対する最終見解(2009年)では、約20分野、46項目におよぶ懸念と改善すべき課題が指摘されました。
ところがこの5年間、明らかな改善が認められるのは婚外子差別撤廃の民法改正などごく一部にすぎません。この問題に長年取り組んできたNGOは、女性差別撤廃委員会の勧告に政府がこたえていると思われるものは1
つもない、と厳しい評価をしています。
日本共産党は、条約の批准以降、条約の全面実施の立場から男女平等のための施策の充実を求めてきました。今回の政府報告にあたって、世界の到達をふまえ、とりわけ前回の日本報告に対して出された女性差別撤廃委員会の最終見解を真摯に受け止め、批准国としての責任を果たし、実効ある措置を明らかにするよう求めるものです。
1、女性差別撤廃委員会が追加報告を求めた課題について
前回の政府報告にたいする最終見解で、女性差別撤廃委員会がとりわけ重視し、2014年の次回政府報告提出の前に、勧告の実施に関する継続的な情報提出を求めた課題(フォローアップ)があります。民法など法律に残された差別的規定の撤廃と、遅れている職場、政治的・公的活動、政策決定過程への女性の参加拡大のために目標とスケジュールを定めた暫定的特別措置を導入することです。
(1)差別的法制度の改正をただちに
憲法の理念、女性差別撤廃条約と国際的到達にたって婚外子への相続差別を違憲とした最高裁判断を受けて、政府は、民法の婚外子差別規定を撤廃しましたが、同様に女性差別撤廃委員会から改正が求められている、婚姻年齢の男女差別、離婚後の女性だけの再婚禁止期間、夫婦同姓を強制する規定の是正は、いまだにおこなっていません。
――民法改正を一刻も早く
そもそも批准国には、女性差別となる法律を改め、「本条約の規定に沿うように国内法を整備するという義務」があります。国内でも、民法改正を望む女性の願いは切実であり、女性団体が取り組んでいる民法改正を求める署名は毎年数万人規模で集められ、夫婦別姓が認められないのは憲法と女性差別撤廃条約に反すると裁判に訴える例も相次ぎました。ところが政府は、国連からの勧告にも、国民の願いにも背を向けつづけ、民法改正法案を提出していません。女性差別撤廃委員会が、1回の追加報告では不十分として、さらに2回目の追加報告を求め、その結果「勧告が履行されていないものと判断する」(2013年9月)ときびしく批判したのは当然です。民法改正の実施をめぐり日本政府の立場が問われていることを深く認識すべきです。
(2)雇用、政治的・公的活動への女性の参加促進へ、暫定的特別措置の実施を
女性差別撤廃委員会は、日本がきわだって遅れている雇用や政治的・公的活動への女性の政策・意思決定機関への参加をすすめるために、目標と計画を明らかにし、実質上の平等を達成するために暫定的に男女で違った待遇をとることも含めて、政府が責任をもって取り組むことを求めてきました。これに対する日本政府の回答は、「指導的地位に立つ女性候補者が少なかった」などと遅れの原因を女性におしつけているうえに、「第3次男女共同参画基本計画」で国家公務員の採用者や管理職の女性比率などさまざまな目標を設定したことや、政党や各団体に要請する、などの内容にとどまっています。
――政府が目標達成に責任を
2020年までにあらゆる分野で指導的地位に占める女性の割合を少なくとも30%にするという政府目標の達成のうえで、政府が直接責任をおう国家公務員の管理職への女性の登用をすすめることは重要です。政府には、責任をもって推進し、明確に結果をだすことが求められています。そのためにも、男女ともに長時間労働の是正をはじめ、仕事と家庭の両立を保障する労働環境の抜本的改善が不可欠です。
――大企業の男女格差是正の義務化
民間企業に対しては、自主的な取り組みを要請するだけでは不十分です。男女格差の大きい大企業に対し、格差是正のための目標と計画作成、実施と報告を義務づける法改正など、確実に目標を達成するための責任ある施策をとるべきです。
政治的分野では、女性議員を増やすうえでも、小選挙区制を廃止し、比例代表など民意を正しく反映できる選挙制度改革をすすめることが不可欠です。
2、改善が求められてきた主な課題について
(1)雇用における「事実上の男女平等」へ実効ある法整備、対策こそ
前回の最終見解は、正社員でも女性は男性の約7割という男女賃金格差、女性が非正規雇用の多くを占めていること、妊娠・出産による不利益扱いや解雇の横行、是正のための法律の保護や制裁措置が不十分であることを、きびしく指摘しました。そして、「労働市場における事実上の男女平等の実現を優先させる」よう、つよく求めています。
この間に日本政府がとった措置は、パートタイム労働法の改正や男女雇用機会均等法の省令改正による間接差別の対象の一部拡大などがありますが、その効果はごく部分的なものです。
――差別禁止の実効ある法整備を
政府がおこなうべきは、間接差別の原則禁止を含む均等法の抜本的な改正、雇用形態や区分の違いによる女性差別を容認する指針の規定廃止、ILOの100号条約にもとづく同一価値労働同一賃金の原則の法制化など、実効ある法整備、措置を一刻も早くとることです。
――均等待遇の原則の確立
非正規雇用が働く女性の54・5%にまで増えています。いっそうの不安定雇用化をすすめ、女性が働き続けることを困難にする、労働者派遣法などの大改悪は、絶対に許されません。派遣労働者の正社員化、派遣やパート労働者への差別をなくす均等待遇の原則にたった法整備が必要です。
――妊娠・出産による解雇・不利益取り扱いの根絶
セクシュアル・ハラスメントや妊娠・出産に関するマタニティ・ハラスメントもいっそう深刻です。法律で禁止されているにもかかわらず、「妊娠・出産による女性の違法解雇」が後をたちません。雇用均等室の体制強化、企業への指導の徹底、被害者救済の強化など、実効ある措置が必要です。
(2)男女がともに安心して子育てしながら働き続けられる社会的条件整備
女性差別撤廃条約は、子育ては「男女及び社会全体が共に責任を負うことが必要である」と明記しています。この立場から前回の最終見解は、日本で、育児や家庭責任を女性が中心に担い、女性がキャリアを中断し、パート労働になっている問題について、懸念を表明し、両立支援の取り組みの強化と保育施策、育児休業制度の拡充を求めました。
にもかかわらず、この5年間、待機児童問題はますます深刻化しています。育児休業制度の休業中の所得保障は改善されましたが、保育所不足や育児休業がとりにくい職場環境などを背景に、女性の休業取得率は、昨年度、76・3%にとどまりました。男性の取得率は2・03%です。政府がすすめる「子ども子育て新制度」は、保育に対する国・自治体の責任を後退させ、保育の営利化、保育条件の低下と格差拡大をまねき、条約の求める保育の公的保障の立場と逆行するものです。
――公的保育の拡充、育児休業制度の改善
安心して預けられる認可保育所を中心とした保育の公的保障の拡充、学童保育の量・質ともの充実、有期雇用を含めだれでも安心してとれる育児休業制度への改善などをすすめることです。
――長時間労働の改善、人間らしい働き方のルールを
女性が働き続けられない、既婚女性がパートタイムを選ばざるをえないのは、世界でも異常な長時間労働が大きな要因です。子育て世代である30代男性の5人に1人が週60時間以上働いており、1997年の労働基準法改悪で女性の残業や深夜労働の規制を撤廃して以降、女性にも長時間労働がひろがっています。政府がすべきは、長時間労働を是正し、人間らしい働き方のルールを確立することです。労働時間法制の改悪は許されません。
――固定的役割分担意識の解消
女性に妊娠・出産をおしつけ、子育てを女性の役割とする議論を政府が率先しておこなうなどとんでもありません。条約にそって、仕事と家庭が両立でき、安心して子育てできる社会条件整備をすすめるとともに、男女の固定的役割分担意識を解消するための教育、啓発、キャンペーンを積極的におこなうことが必要です。
(3)ひとり親家庭、高齢者など、深刻な女性の貧困の改善と社会保障充実
女性差別撤廃委員会は、日本政府の報告が、母子家庭の母や障害のある女性など、社会的差別を受けやすい女性に対する情報や統計が不十分と指摘し、こうした女性たちの特有の要求に対応する政策の導入を求めています。
しかし、社会保障の相次ぐ改悪、生活保護や児童扶養手当、年金等の給付削減と消費税増税の強行のもとで、非正規雇用の女性、ひとり親、障害者、無年金・低年金の高齢女性など、女性の貧困はいっそう深刻化しています。母子家庭の年平均就労収入は181万円で、相対的貧困率は先進国で最悪です。
――女性の貧困克服へ対策を明確に
最終見解が求めているのは、すべての分野における社会的弱者の女性の実態をよくつかみ、具体的な政策とその成果を報告することです。各分野ですすむ女性の貧困の克服のため、児童扶養手当の拡充をはじめとする母子家庭への支援強化、女性に多い無年金・低年金の解消、医療や介護の充実と負担軽減、障害者が地域で豊かに暮らせる条件整備など、対策を明確にすべきです。
(4)日本軍「慰安婦」問題の解決ただちに
日本軍「慰安婦」問題が未解決であることや教科書の記述が削除されたことに対して、女性差別撤廃委員会は遺憾の意と懸念を表明し、被害者への補償、加害者の訴追、国民に対する教育をふくむ「『慰安婦』の状況の恒久的な解決のための方策」を早急にとることを求めています。ところが政府は、そのどの勧告をも無視し続けています。
この間、政府がすすめようとした河野談話見直しの動きは、「性奴隷」という「慰安婦」問題の一番の核心を覆い隠そうとしたものです。日本政府は、加害の事実を認め、被害者への謝罪・賠償、事実にたった歴史教育の実施など、解決にむけた措置を1日も早くすすめるべきです。
(5)女性の人権が尊重される社会を
家庭にも、職場にも、社会にも、女性を蔑視し、人権を否定する風潮を根深く残されています。女性差別撤廃条約は、締約国に、家庭、職場、その他の社会生活でのいかなる暴力からも女性を保護することを要請しており、女性差別撤廃委員会も日本政府にいっそうの改善を求めています。
――女性蔑視と人権侵害を許さず解決の先頭に
国会や地方議会などでの人権を否定した女性蔑視発言は許されません。日本の議会と社会に残されている女性差別と人権侵害に対する遅れに対し、条約の立場から毅然とした態度で、解決の先頭に立つことを表明すべきです。
――女性の人権尊重の社会的合意づくり
セクシュアル・ハラスメント防止対策の強化と被害者保護、女性に対する暴力、性犯罪対策と被害者への総合的な支援、女性差別撤廃委員会が強調するように「あらゆる暴力は容認されない」という社会的合意づくり、女性の人権が尊重される社会づくりに全力をそそぐことが求められています。
3、女性差別撤廃条約選択議定書の早期批准を
女性差別撤廃委員会は、条約の実効性を高めるために、女性の権利侵害を国連に個人で通報できる制度を定めた、女性差別撤廃条約の選択議定書の批准をつよく促進しています。すでに100か国以上が批准しており、主な先進国のなかで未批准は、日本と、女性差別撤廃条約そのものを批准していないアメリカだけになっています。国内でも、批准を求める運動がひろがり、2001年から今年までの間に、参議院で、選択議定書の速やかな採択を求める請願が14回採択されています。政府は、早期批准を求める日本共産党の国会質問に、選択議定書の意義は認める答弁をしていますが、国内の法、制度との整合性を理由にして「慎重な検討を要する」という立場をとり続けています。この条約より国内事情を優先する日本政府の姿勢が問われているのです。国際的ルールに立った、一刻も早い批准を求めます。
またILOの111号(雇用における差別禁止)、175号(パートタイム)などの日本が批准していない国際条約の批准をすすめ、世界の基準にもとづく男女平等の確立をはかるべきです。
4、経済成長のための「女性活用」ではなく、条約の立場で男女平等を
政府が策定した成長戦略と「女性活用」戦略は、財界の要求にこたえて、男性なみに長時間労働をこなせる一部の女性だけを正社員や管理職として登用し、それ以外の大多数の女性は、パートなどの非正規雇用や、労働条件に格差のある「限定正社員」などで都合よく利用しようというものです。男女平等と人権の立場からではなく、“経済成長”の立場の「女性活用」戦略であり、女性の願いにも、条約の見地にも逆行しています。
前回の政府報告に対し、女性差別撤廃委員会は、個別の課題の指摘とあわせて、日本政府には、女性差別撤廃条約が実施責任と法的拘束力をもつものであるという認識が欠けている、という立場からのきびしい批判をおこないました。女性差別撤廃条約と最終見解の指摘、両性の平等をうたった憲法の立場にたって、政府の姿勢と政策の真剣な検討をおこない、具体的に指摘をうけた諸課題については、実施したことだけでなく、やらなかったこと、なぜやれないかの理由を明らかにし、期限を区切って、法整備を含む実施方向を報告に盛りこむこと、NGO・女性関係諸団体の意見を形だけ聞き置くのでなく真摯に取り入れること、条約の実施と女性の地位向上のため機構にふさわしい権限と予算をもつ国内本部機構の確立などを求めるものです。
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