「解釈の曖昧さ残してはならない」と知事 集団的自衛 2014.6議会
知事は一貫して「9条は大事。しっかり引き継いでいくべきもの」と語っている。が、政治スタンスとしては財務省出身官僚らしく、政権とはできるだけ同一歩調をとりながら、高知県の実情を発信し、政策化させ実をとる行動をしている。 特に、最高のキャリアが、第一次安倍内閣の内閣官房副長官秘書官だったこともあり安倍政権に親近感をもっている。
そのことを認識して知事の昨日の答弁を見る必要がある。
・「集団的自衛権は一定認められるべき。より限定する方向での政権の協議は、方向性が一致」
→ と、政権との同一歩調を強調。が、個別の論点では・・・・
・「9条の本質、枠をこえてはならない。自衛権発動の3要件から連続的、合理的に判断できる場合もある。認めうるものもあるはず。3要件からはずれるものを無理に変えてはならない」「それは堂々と憲法改正論議をすべき」
・「戦闘地域にいかない」「武力行使しない」の歯止めが必要の質問に。「今後も歯止めが必要」
・新3条件への認識。「おそれ」などがより限定される方向で協議されているとしたうえで、「解釈のあいまいさで後世に禍根を残してはならない。個別事例をしっかり議論すべき。」
・血の同盟、アメリカのために若者の血をながすこと、との指摘に。「アメリカにひきつられて行使するものではない。あくまで自衛のためのもの。」
というように、「一定認められるべき」と政権と同一歩調の主張をしたものの・・・
・「もある」「ものもあるはず」と、それが何かは示せていない。 (以前は、ミサイル迎撃や米艦防護などあけていたが、勉強して非現実的とか、個別自衛権の問題とかの、認識を新たにしたのだろう)
・9条の本質、自衛権発動3要件の強調。歯止め発言、血の同盟否定など・・・・ 内容としては集団的自衛権行使に距離をおく方向での話となっている。
これは、安倍政権の「個別事例」の列挙により、「限定的」として国民をあざむくための主張と「血の同盟」に「発展」させたいという本音との矛盾のあらわれでもある。
「歯止め」問題、「血の同盟」問題は、まさに論点の要をなす。
なお、第二問で、憲法13条の解釈も変わってきたというが、それは国民的合意の発展、司法の判断の積み重ねがあってなされてきたものであり、国民の過半が反対しているのに「解釈を変える」という行為と一緒にはできない。今後は、この点の認識をただすことも必要だ。
【以下、関連部分の質問原稿】まず、集団的自衛権について、知事に伺います。
日本は侵略戦争の反省にたち、憲法9条のもとで、一人の戦死者も出さず、平和国家としての国際的地位を確立してきました。ところが安倍政権は、これまで憲法9条のもとで禁じられてきた「集団的自衛権」について「限定的に行使することは許される」との立場で、戦後の平和国家のあり方を大きくゆがめようとしています。積み上げられてきた平和国家のあり方を一内閣の閣議決定で覆すやり方に対し、自民党の歴代幹事長、元内閣法制局長官など立場を超えて「憲法が権力を縛る」という立憲主義を否定する暴挙だと厳しく批判しています。国民的な議論もまったく不十分です。解釈変更による行使容認には、共同通信の世論調査では、反対は51・3%と半数を超えています。日本経済新聞社とテレビ東京の調査でも、「賛成」は28%しかなく、「反対」は51%となっています。安倍首相が、どうしても集団的自衛権を行使する必要があるというなら、堂々と正面から改憲手続きを踏むべきです。
平和憲法の根幹を、「解釈」で変質させることを国民は支持していないと思うが、知事の認識をお聞きします。元防衛官僚で、第一次安倍内閣の内閣官房副長官補を務めた柳沢協二氏は、政府の示した事象について「現場的なリアリティーが乏しい」と指摘し、「日本を取り巻く軍事的脅威が高まったのであれば、それは日本の有事ですから、個別的自衛権をしっかり使えるようにすべき、というのがあるべき答えで、集団的自衛権が出てくる余地はありません」と批判をしています。先日、来高した小林節慶応大学名誉教授は、かつて自民党のブレーンを務めてきた方ですが「政府が想定している事態は、すべて個別的自衛権の文脈で十分説明もできる」、集団的自衛権は「他国のために日本に無関係でも戦争に参加するものであり、新しい敵をつくる。」と厳しく批判をしています。
集団的自衛権とは、「国際法上、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにかかわらず、実力をもって阻止することが正当化される権利」であり、日本が侵略をされた際に発動される個別的自衛権とは違いますし、国連のもとで発動される集団安全保障とも違います。集団的自衛権の行使の実態は、旧ソ連のアフガン侵略、アメリカのベトナム戦争など少数の軍事大国による侵略戦争や不当な軍事介入です。
これまで行使されてきた集団的自衛権行使の実態について、どう認識しているか、お聞きします。政府はこれまで、「9条は、我が国自身が外部から武力攻撃を受けた場合における必要最小限の実力の行使を除き、いわゆる侵略戦争に限らず国際関係において武力を用いることを広く禁ずるものである」(03年10月9日、秋山内閣法制局長官答弁)と説明してきました。
集団的自衛権行使の容認とは、「海外で武力行使をしてはならない」という憲法上の歯止めを外すことであり、日本の国のあり方の文字通りの大転換です。
また、「戦闘地域にいかない」という歯止めは、9条の制約のもとで、国際貢献としてどこまで可能かと整理してきたものだと阪田雅裕・元内閣法制局長官は説明しています。他国の軍隊に対する補給、輸送、医療などの「後方支援」も、他国の軍隊の武力行使と「一体化」する活動は、海外での武力行使を禁ずる憲法9条の下で許されないというものです。これは「武力行使をしない」ことを担保するものでもあります。
アフガン、イラク戦争にさいして、日本は、アメリカの強い要請に応じて、自衛隊を送りましたが、その根拠となった特別措置法には、第2条で「対応措置の実施は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない」と「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域において実施する」という、「武力行使はしない」「戦闘地域にはいかない」という歯止めがありました。だから自衛隊の実際の活動も、インド洋での給油活動、イラクでの給水活動や空輸活動にとどまりました。
集団的自衛権の行使とは、この2つの歯止めをなくすことです。日本共産党の志位和夫委員長が5月28日の衆院予算委員会で追及しましたが、安倍首相は、この2つの歯止めを残すとは決して言いませんでした。
安倍首相は「武力行使を目的とした参加はしない」と「目的」という言葉を入れて、まったく違った中身に変えてしまおうとしています。また「戦闘地域に行かない」も「現に戦闘が行われている地域」に限定し、砲弾が飛び交う最前線でなければ、武器や資材の輸送など兵站活動も可能。人員救助は最前線でも可能にしようとしています。「戦闘地域に行ってはならない」という歯止めを外したら、アフガン戦争に参加したNATOと同じになってしまいます。アフガン戦争でNATO諸国が決定した支援は「燃料補給」などの「後方支援」であって直接の戦闘行為は目的としていません。しかし、犠牲者は21カ国1031人にのぼりました。2つの歯止めをなくせば、後方支援も相手側の攻撃の対象となって、反撃を余儀なくされ、殺し殺される関係、戦争の泥沼にはまりこんでしまいます。
「海外で武力行使をしない」「戦闘地域にいかない」というこれまでの歯止めを堅持すべきと考えますがお聞きします。2つの歯止めをなくすことと一体で、与党協議にしめされた自衛権行使発動の「新3要件」は、日本への攻撃がなくても、「他国に対する武力攻撃が発生」し、日本の存立が脅かされる「おそれ」があると政府が判断すれば武力行使ができると明記しています。地理的な限定もありません。
限定どころか、無限定、従来の自衛権発動の3要件とまったく異質のものではないか、お聞きします。安倍総理は04年の著書「この国を守る決意」の中で「自分の世代には、自分の世代の歴史的使命がある。それは、日米同盟を完全な双務性にしていくことだ。アメリカが血を流すなら、日本もアメリカのために血を流して初めて、日米は対等になる」「軍事同盟というのは“血の同盟”」と述べています。
先の柳沢氏は、「つまり、北朝鮮や中国の脅威は後付けの理屈で、本音は、『十年前からこれをやりたい。だからやる』」という情念でしか説明できないと述べ、その危険性について「集団的自衛権を行使できる立場になり、アメリカがまたイラク戦争のような戦争を始めた場合、こんどは戦闘への参加を断われない」「今度ははっきりと、犠牲を想定しなければいけない」と批判しています(blogos 安倍総理の「情念」が日本を危険な場所へと導いている 4月5日)。石破自民党幹事長も「自衛隊が他国民のために血を流すことになるかもしれない」と認めています。
第二次世界大戦後、アメリカはイラク戦争、ベトナム戦争など何十回となく戦争を実行してきましたが、日本政府は一度も反対したことがありません。その政府が「血の同盟」を目的に「海外への武力行使」に道を開こうとしているところにことの本質、危険性があります。
アメリカのために日本の若者の血を流させることに道を開くものであり、国民の望みとは逆行するものと思いますが、認識をお聞きします。日本共産党は、安倍政権の「戦争する国」づくり、軍国主義の復活には断固反対するとともに、「紛争があっても戦争にしない」という外交努力が何よりも大切であり、北東アジアにおいてもアセアンのように平和の共同体の構築を提案し、努力していることを述べ、次の質問に移ります。
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