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大飯原発差止め訴訟 画期的判決 日弁連

 「本判決は、福島第一原発事故の深い反省の下に、国民の生存を基礎とする人格権に基づき、国民を放射性物質の危険から守るという観点から、司法の果たすべき役割を見据えてなされた、画期的判決であり、ここで示された判断の多くは、他の原子力発電所にもあてはまるものである。」との会長声明。

 従来の判決は「規制基準への適合性や適合性審査の適否」を視点とし、「安全性の欠如について住民側に過度の立証責任を課し」「適切な判断がなされたとは言い難かった。」と問題点を指摘している。

 これについては松野元氏の「基準を満たせば安全」というのは誤りとの指摘を思い出した。

【福井地裁大飯原発3、4号機差止訴訟判決に関する会長声明 日弁連5/21】

 松野は、四国電力の元技術者で、その後、原子力発電技術機構・緊急時対策技術開発室長。07年発刊の「原子力防災」が極めて正確に福島原発事故が示した問題点を指摘していたと話題になった。

 同氏は、「格納容器はこわれない」という安全神話の原型は、四国電力の伊方原発の設置許可をめぐる裁判闘争(1973年提訴。92年に住民側敗訴の最高裁判決が確定)にあるとし・・・

・裁判官は「設置許可基準を満たせば安全」というそのロジックを使った判決を行った。
・『設置基準を満たしさえすれば、その原発は安全だ』という誤解が広まってしまった。
・これは本来まったくおかしい。設置基準と、実際に事故が起きるかどうかはまったく別の話だ。まして事故が起きたらどう避難するかは別次元の話
と語っている。

 この指摘は新規制基準にもあてはまるが、今回の判決は、この「基準を満たせば安全」という安全神話を排除した画期的だが、当然の判決だ。

【07年の「原子力防災」 私のメモから】

◇原子力安全委員会の役割 ~ 裁判所の指摘(P51)
・多くの判決で「原子力安全委員会が行う審査の対象は基本設計の安全性にかかわる事項のみ」で、安全の確保の仕上げは、事業者。
→ 基本設計しかみていない原子力安全委員会が、事業者を飛び越える形で「日本でチェルノブイリ発電所事故と同様の事態になることは極めて考えがたい」としている表現は、ダブルチェック、安全規制の機関が原子力推進のための安全宣言を出しているような表現。/国民、関係者に誤解を与えている。

・原子力安全委員会は、許認可条件だけでは、発生確率はゼロにできないことを認め、その上で/発生可能性の可能な限りの縮小、事故発生時の進展拡大の抑制、事故の影響の緩和という役割を果たすべき。
→事故発生をゼロに出来ないことを認め、そのメリット、デメリットなど住民が判断できる材料を提供すべき
→残余リスクへの対応として、原子力防災が必要となる。


【福井地裁大飯原発3、4号機差止訴訟判決に関する会長声明 日弁連5/21】

 福井地方裁判所は、2014年5月21日、関西電力株式会社に対し、大飯原子力発電所(以下「大飯原発」という。)から半径250km圏内の住民の人格権に基づき、同原子力発電所3号機及び4号機の原子炉について、運転の差止めを命じる判決を言い渡した。本判決は、仮処分決定を除くと、2011年3月の福島第一原発事故以降に言い渡された原発訴訟の判決としては初めてのものである。

 従来の原子力発電所をめぐる行政訴訟及び民事訴訟において、裁判所は、規制基準への適合性や適合性審査の適否の視点から、行政庁や事業者の提出する資料を慎重に評価せず、行政庁の科学技術的裁量を広く認めてきた。また、行政庁や事業者の原子力発電所の安全性についての主張・立証を緩やかに認めた上で、安全性の欠如について住民側に過度の立証責任を課したため、行政庁や事業者の主張を追認する結果となり、適切な判断がなされたとは言い難かった。

 これに対し本判決は、このような原子力発電所に関する従来の司法判断の枠組みからではなく、技術の危険性の性質やそのもたらす被害の大きさが判明している場合には、その性質と大きさに応じた安全性が認められるべきとの理に基づき、裁判所の判断が及ぼされるべきとしたものである。その上で、原子力発電所の特性、大飯原発の冷却機能の維持、閉じ込めるという構造の細部に検討を加え、大飯原発に係る安全技術及び設備は、万全ではないのではないかという疑いが残るというにとどまらず、むしろ、確たる根拠のない楽観的な見通しの下に初めて成り立ちうる脆弱なものとし、運転差止めを認めたものである。本判決は、福島第一原発事故の深い反省の下に、国民の生存を基礎とする人格権に基づき、国民を放射性物質の危険から守るという観点から、司法の果たすべき役割を見据えてなされた、画期的判決であり、ここで示された判断の多くは、他の原子力発電所にもあてはまるものである。

 当連合会は、昨年の人権擁護大会において、いまだに福島第一原発事故の原因が解明されておらず、同事故のような事態の再発を防止する目処が立っていないこと等から、原子力発電所の再稼働を認めず、速やかに廃止すること等を内容とする決議を採択したところである。本判決は、この当連合会の見解と基本的認識を共通にするものであり、高く評価する。

 政府に対しては、本判決を受けて、従来のエネルギー・原子力政策を改め、速やかに原子力発電所を廃止して、再生可能エネルギーを飛躍的に普及させるとともに、原子力発電所の立地地域が原子力発電所に依存することなく自律的発展ができるよう、必要な支援を行うことを強く求めるものである。


 2014年(平成26年)5月21日
  日本弁護士連合会
  会長 村 越  

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