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日本の電力改革と自然エネルギーの普及(メモ) 

 丸山惠也・立教大学名誉教授 原発問題と経営学の課題 経済2014.5より。
後半部分の「自然エネルギーの普及に対する電力独占の妨害」「発送電一体の独占解体と公的送配電組織の確立」「自然エネルギーとコミュニティ・パワー」など、電力改革の課題と展望について言及した論考の備忘録。

【日本の電力改革と自然エネルギーの普及】

(1)日本の自然エネルギー普及の可能性
・自然エネの割合 
アイスランド100%、ニュージーランド65%、豪州62%、デンマーク29%、独17%、仏14%、日本2%
 (世界自然エネルギー白書2011)

・日本は、潜在的な自然エネ大国
  降水量:世界平均の2倍、1700ミリ以上。急勾配で水力発電に最適
  森林率67% 北欧と並び世界一
  活火山   世界の10%が集中
  四方を海に囲まれた海洋国。海岸線の長さ、洋上風の強さ 世界有数

・環境省「再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査」(2011)
  非住宅系太陽光1億5千万kW(原発150基分)、風力19億kW(1900基分)
中小水力1400万kW(14基分)、地熱1400万kW(14基分)
~計21億kW/原発54基4885万kWの44倍、電力会社の総発電容量2億kWの11倍

・OECD 日本は豊富な潜在能力をもちながら、その普及が遅れている(対日環境保全成果審査2010)

(2)自然エネルギーの普及に対する電力独占の妨害
  原発再稼動の動き⇔自然エネ普及への妨害(独占支配の利益維持)と一体

①自然エネルギーの送電に高い料金

・送電線使用料金 欧米0.76円/kwh 日本3.96円 
~ 送電線/総括原価方式により、国民の電気料金負担で整備した公共財 を独占利益のために悪用

②自然エネルギーへの罰金制度

・事前契約で送電量の「30分間同時同量」を義務付け(誤差を3%しか認めてない)
・誤差範囲を超えると、最大40.69円/kw時のインバランス料金(罰金)を課している
→ まだ普及が進まず安定しない段階の自然エネにとって、事実上の参入閉め出し

③欧米にない「連係可能量」という制約

・訪米 自然エネの「優先接続」が法的に確立
・日本 任意の判断/「受け入れ可能量」を制限的に決め、その枠内で抽選で決めている
 ~ 自然エネ252社 買取ゼロ20%、一部買取38%(12年)
・固定価格買取制度で「電気の円滑な供給に支障が生ずるおそれがあるときは接続を拒否できる」という例外規定の恣意的な利用

④送電線への接続費用の負担

・発電設備と送電網との間の送電線~設置と維持管理費用は、自然エネ側の負担
・欧米 接続費用は送電会社負担


(3)電力エネルギー改革の基本的課題

・これまでの電力改革~電力会社の利権擁護、その範囲での実施
・電力改革の課題~地域独占によるアンフェアな市場支配を排除、自然エネの資源大国に相応しく発展させる

①原子力エネルギーから自然エネルギーへの転換

・安倍政権 原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ/電力業界「新増設も必要」
・「大規模集中電源システム」である原発は、必ずしも「安定的な電力供給」ではない
 ~ 安定には、分散型、「地産地消」のシステムの構築が必要

②発送電一体の独占解体と公的送配電組織の確立

・発送電分離~送電網を発電事業者が公平に使用~家庭などが発電会社を自由に選択~発電会社間の競争で電気料金を下げる
・改革の要~ 発送電一体の独占の解体 / 送配電部門を独立組織の中立・公的管理に移行させるか
   分離度の低いもの順に ①会計分離 ②機能分離 ③法的分離 ④所有分離
・政府案/ 電力会社を持株会社とし、傘下に送配電会社を分社化して置く「法的分離」
→ 子会社化であり、改革案の「中立化」にはならない。/しかも16-18年実施の努力目標

③「送電線接続ルール」の廃止

・「連係可能量」はすでに限界/緊急の改革が必要
 →可能量の設定には根拠がない わずか5-6%しか設定していない

④電力の全国融通による安定供給

・現在 地域独占の10ブロックに事実上分断 
 → 全国の電力需要を調整する「広域調整機関」を2015年に設立/そのメリット
  1.安定供給に寄与
  2.電力自由購入のインフラ 
  3.自然エネの発電量の変動が規模拡大で吸収可能となり、受け入れ容量が大きくなる

・が、周波数変換設備の増強、電力会社間の送電容量の拡大などの課題がある

◇自然エネルギーとコミュニティ・パワー

(1)住民参加と民主主義――ドイツの経験

・自然エネ23%  主な担い手は「エネルギー協同組合」「自治体公社」
・社会的に大きな力を持つドイツの協同組合~その特徴
 1.自発的でオープンな参加形態
 2.意思決定における一人一票制
 3.組合員による民主的な組織コントロール
 4.組合員の共同出資
 5.有限責任制
 ~ なにより重要/ 土台に「根源的民主主義」があること

・エネルギー協同組合~ 地域住民の投資による事業。規模が小さく分散的/02-11年に459組合が設立
・自治体公社(都市部の担い手)~90年代の規制緩和=EU指令「電力・ガス自由化」で民営化推進、送電網も民間企業に委託
 → 近年、電力事業の「再公有化」が進展。送電網利用権も、自治体により買い戻られる
  /07-12年 公社新設60件、送電網直営化170件~ハンブルグなど住民投票の力

・住民が「再公有化」を求める理由
 1.電力会社は利益追求を優先。環境問題、気候変動政策など住民の要求に冷淡
 2.「分散型エネルギーシステム」への対応には、自治体の役割が大きい

・分散化と公有化の関係
 1.自然エネの伸展~小規模分散化と系統不安定化を拡大させ、制御の重要性を増大させる
 →発電、蓄電池、熱貯蔵、コジュネなど組合せ、スマートメーター、ICTの制御で、域内最適化が可能に
 → 配電エリアの状況は地域ごとに多様、最適化に必要な情報もことなり、自治体レベルの制御が重要

 2.地域の熱供給を地域集約暖房システムに適応するコジュネへ転換するには、公有化が必要
 → 熱供給は地域分散型だが、電力は地域外から送る集約型システム(一次エネルギーからの転換ロス、送電ロスで、利用効率は40%程度に低下)
 → コジュネの推進、エネルギーの地産地消で、利用率を90%近くに高めることが可能

(2)住民参加とコミュニティーパワー

・自然エネ 小規模・地域分散・自然資源依存が特質~地域住民、自治体が担うのにふさわしいシステム
 → 発電だけでなく、地域循環型経済、持続可能社会の構築と結びつくことに大きな意味
~ 各地の市民的なとりくみのひろがり

・コミュニティー・パワーの原作
 1.地域住民の主体的参加と連帯を基盤とする
 2.地域住民の連帯組織は住民合意にもとづき運営される
 3.地域の資源を自然環境尊重の視点から利活用し、その利益は地域の自然、社会に還元する

◇地域住民によるエネルギー管理への展望

・エネルギー生産力を、電力会社の独占から地域住民の手に取り戻し、管理することの意味
 → 今日の日本社会を変えるという課題に結びつく/ 住民と社会の係わりを根底から問い直すもの/コミュニティパワーは、安全で豊かな社会を構築する原動力

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