医療難民急増の危機 入院追い出し 在宅「はしご」外し
病床を高度救急に絞り込み大きく削減しながら、在宅を支える訪問診療の報酬を、同一建物居住者の場合1/2、1/4と大幅にカット。
全国特定施設事業者協議会が実施したアンケート調査では、「訪問診療の中止の検討」が13%、体制や回数の縮小など「効率化」が42%となっている。
介護保険の「軽度者」の追い出しが強行されようとしている。
人口密度の低い地方では、訪問診療・看護・介護の効率が悪く、供給体制を維持・整備するのに苦労し、高知県は訪問介護・訪問看護を実施する事業所に独自で補助を出している。今回の医療・介護の改悪でいっそう困難になる。
社会全体の「姥捨て山」化である。
【医療難民急増の危機…入院追い出し 在宅「はしご」外し 保団連4/5】(「全国保険医新聞」2014年4月5日号)
2014年度診療報酬改定は「社会保障・税一体改革」方針に基づく社会保障制度の「改革」をいっそう推し進めるものとなった。「一体改革」は2025年に向けて、医療、介護などの社会保障費の抑制を目指す。今回の改定では急性期病床を中心とした急速な入院の削減が図られ、「入院から在宅へ」の流れがいっそう強まる一方で、同一建物居住者への在宅医療にかかわる点数が大幅に切り下げられた。急激に入院を絞り込みながら在宅医療に尽力する医師・歯科医師の「はしご」を外せば、医療難民を生み出す危険性がある。全国保険医団体連合会は同一建物居住者にかかわる大幅減算の撤回を求める会員署名に取り組むことを決めた。
◆7対1病棟は 4分の1削減
入院の絞り込みの中心は、7対1入院基本料を算定する病棟だ。看護師配置が手厚く点数配分も高い。平均在院日数の実質的な削減と対象患者の制限によって、現在の約36万床から2年間で9万床を削減する。実に4分の1の大幅な削減だ。2025年には18万床まで絞りこむ計画だ。
これまで、7対1や10対1の病棟では、難病患者や障害をもった患者などは、90日以上入院しても平均在院日数の計算の対象にならなかったが、今回の改定でこの制度が廃止された。
また、重症度・看護必要度から名称が変更された「重症度、医療・看護必要度」は急性期病床に入院させる患者をこれまでよりさらに重症患者にしぼる改定を行った。
7対1の新要件として、自宅等への復帰率が75%以上であることも加わった。経過措置が設けられたが患者を在宅へ押し出す圧力は強まった。
厚労省の推計では、現状のまま進めば2025年には病床全体で202万床が必要になるが、これを159万床に押さえ込む意向だ。入院できない43万人はサービス付き高齢者住宅や有料老人ホーム、自宅などで在宅療養させる方針だ。◆在宅評価は大幅引き下げ
しかし、今回の改定では同一建物居住者にかかわる在宅医療の評価が大幅に引き下げられた。
訪問診療料はおよそ2分の1に切り下げられ、特定施設等以外の同一建物居住者は外来受診(72+52点)よりも低い103点となる。「在宅時医学総合管理料」「特定施設入居時等医学総合管理料」はおよそ4分の1に切り下げた。歯科でも、同一建物内2人以上について大幅な引き下げとなる。在宅医療に尽力してきた医師・歯科医師にとっては、「はしご」を外された形だ。入院から在宅への流れにまったく逆行するものでもある。
今後、病院から施設に押し出された患者が医療を受けられなくなる危険も大きい。▼「訪問受けられなくなる」…高齢者施設から懸念の声
介護付有料老人ホームなどの事業所がつくる全国特定施設事業者協議会(特定協)は、同一建物居住者の減算についてアンケート調査を行った。高齢者施設や訪問診療を行う医療機関281件が回答した。
▼人員、訪問減らす
高齢者施設の入居者に対する今後の訪問診療の方針について複数回答で訪ねると、「廃院する」「訪問診療を止める」「一部の訪問診療をやめる」を合わせて12・8%と、1割強の医療機関が訪問診療の中止を検討していることがわかった。
「体制の見直しや診療の効率化等を行い、訪問診療を続ける」との回答は42・0%。効率化の内容としては、「時間・訪問診療にかかわる職員数の削減」、「新規入居者は外来扱い(訪問なし)とし、訪問診療が月2回から、3カ月に1回に変更」などが上げられた。現在患者が受けている医療に影響を及ぼしかねないものが多く見られる。▼施設は医療への依存度大きい
特定協の長田洋事務局長は「特定施設の入居者は3割が医療機関から退院してきた人だ。医療への依存度も大きい」と説明する。「在支診と連携し、看取りにも取り組んでいる施設側からは訪問診療がなくなり、これまで通りの医療が受けられなくなると懸念する声が多い」と話した。
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