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安保法制懇の「集団的自衛権行使」の類桂・事例~スリ替え議論

 阪田雅裕・元内閣法制局長官の新著(聞き手、川口創弁護士)から、安保法制懇がしめす4類型、5事例についての批判。いずれも仮想的な話。氏は、外国と戦争したいなら「憲法改正したい」と言えばよい、と明確。
 そして、解釈改憲が許されない理由として、これまでの政府の論理を整理している。
A 「衛隊」の根拠と、「集団的自衛権の行使はできない」は一体の論理
B 武力行使の一体化」論と「集団的自衛権」とは別問題
C 個別的自衛権の発動の要件。武力攻撃の事態とは

A 憲法9条は、戦力を放棄しているが、国民があっての憲法で、憲法で何よりも守られるべきは国民の基本的人権。外国から武力攻撃があった場合、国民の生命、財産をまもるのは主権国家の責務であり、権利である。砂川事件の最高裁の判決も認めている。

・そのための「必要最小限度の実力組織」を9条は禁止していないというのが政府の立場。だから、その必要最小限を超えたものは「戦力」にあたるし、他国に脅威を与える存在であってはならない。
・だから、わが国が武力攻撃を受けていない場合に発動される集団的自衛権は行使できない。(そのような実力は「戦力」にあたり、憲法が禁止している)

B 武力行使の一体化」論は、9条の制約のもとで、国際貢献としてどこまで可能か、と整理してきたもの。

・日本の行為が、武力行使でないことを大前提に、それが他国の武力行使と一体化してはならない、という議論であり歯止め。
・集団的自衛権は、日本自身が武力行使をするという話。線引きはなくなってしまう。
・PKOの武器使用基準は「自己保存のための自然的権利」と整理。

C個別的自衛権の発動として要件

・自衛権の発動の3要件とは、「わが国にたいする急迫不正の侵害があること(現に武力攻撃が加えられていること)」「これを排除するのに他に適当な手段がないこと(外交手段などでは解決できない事態)」「必要最小限の実力行使にとどまること(相手国に攻め込むとかはできない)」
~これは、自衛隊が憲法9条との関係で合憲と言うことと密接不可分のもの
・武力攻撃とは「国または、国に準じる組織」によるもので、国家の意思として「組織的・計画的な」行為であること。海賊や偶発的なものは、武力攻撃ではない。

≪安保法制懇の例示≫

・第一次安倍内閣の4類型 ミサイルの迎撃、公海上の米艦の防護、PKOでの武器使用、PKOでの他部隊への支援
・今回の5事例 (1)日本近隣有事の際の船舶検査や米国などへの攻撃の排除(2)機雷が敷設されたシーレーン(海上交通路)の掃海活動(3)米国が武力攻撃を受けた場合の船舶検査などの対米支援(4)イラクのクウェート侵攻のような武力攻撃が発生した場合の武力行使を伴う集団安全保障措置への参加(5)外国潜水艦の領海侵入など武力攻撃に至らない事態での実力行使

【4類型】

①米国に向う弾道ミサイルの迎撃

・何かの間違いでたまたま発射されて、外国に飛んでいくミサイルを、わが国上空で打ち落とすことは憲法上問題はない。わが国のミサイル防衛は、全部が自衛権の発動ではなく、事故的なものへの対応は、一種の警察権の行使として撃墜できる。
・が、外国が他国への攻撃の意思をもって発射したものを撃ち落せば、武力行使となる。ミサイルの場合は、技術的にも撃ち落すことが不可能なので意味が無い。
(北朝鮮から米本土に向うミサイルは、北極圏をとおり、日本上空はとばない)
(そもそも弾道ミサイルに比べ、迎撃ミサイルは速度も遅く、高度も低い、追いかけて撃ち落すことは不可能。ミサイル迎撃とは、推進ロケットが燃焼しつくし、物理の法則にそって運動しているだけなってはじめて弾道が計算できる。その落ちてくる位置にむけて発射するもので、むしろ「待ち伏せ」に近い。)

②公海における米艦の防護

・明かに軍事行動をしている場合、それに加わることは軍事行動をとるということ。反撃する必要があるというなら9条を変えてやるしかない。
・日本の艦艇がすぐ近くにいる場合は、日本の攻撃とみなし個別的自衛権を発動できる可能性がある。が、自衛隊艦船1隻だけが攻撃をされた場合、それがすぐに、わが国に対する武力攻撃とはならない。特に、日本近海でない場合は。
・米艦に対する攻撃自体も、アメリカという国家に対する攻撃とみなせるか、と言う問題もある。
(偶発的な「摩擦的衝突」なら、武力での反撃はかえって事態を深刻にする。その場合は、外交的には解決するのは、米国も基本としている。)
・集団的自衛権の発動にしても、それなりに手続き、意思決定がいる。その場で、近くにいたから撃つとうことにはならない。内閣としてのなら意思決定がいる。急場にはまにあわない。
・「近くで友達が殴られているのに守れないのか」という情緒的で単純化した議論になりすぎている。まず、アメリカ自身が、9.11の時のように、これはわが国に対する武力攻撃だと認めて反撃することをしっかり決めてもらわないと、集団的自衛権にしても発動できない。
・どの国であれ、米艦艇を襲うなんてそもそも考えられない。それを日本の艦艇が助けてどうにかなる世界は、少し漫画的。
(軍事行動をしている米艦は、当然、反撃を予想した行動をとっている。不意打ちをうたれるような指揮官は軍法会議もの。明確な攻撃の意思をもってのものなら、当然、本国をふくんだ全面戦争になり、相手国は崩壊することになる。それゆえ、攻撃ができないというのが「抑止力」論である)

③PKOにおける武器使用

・相手が誰かということがかなり問われる。PKOは、停戦協定もできていて治安も回復していることが前提。
・その中で襲われる場合は、一般的にその主体は「国に準ずる組織」という感じはない。
・もし停戦協定が破れて、紛争状態になるといった場合、我が国は引上げる仕組になっている。

④PKO等に参加している他国の活動に対する支援

・これは集団的自衛権の行使になのかどうかわからない。要するに武力行使との一体化とはどんな規定で、どこで歯止めをおくのか、という問題 
・戦闘地域での他部隊への支援となれば、武力行使と一体化するというのが政府の見解。戦闘地域でも、自ら武器使用しなければ、輸送や補給はできるというのは、憲法九条に違犯しない、という論理はあるかもしれないが、集団的自衛権の行使でできるようにするというなら、憲法は認めていない。

★こうした細かい非現実的な類型を出しているのは、集団的自衛権を行使できるようにすべきだという主張のため。こんな仮想的な事例を出さず、「外国と戦争できるようにしたい」と言えばよい。憲法改正をすればよい。

【5事例】

①③船舶検査

・現在の船舶検査法 9条のもとでできる範囲を考えて武器使用規定を設けている。それ以上のことをやるのは軍事行動になる。あえて出来ないことをもって来ている。「それはできません」というだけの話

②機雷除去

・まだ停戦後でない、戦闘行為が続いてる中での機雷除去は、武力行使となり禁止。戦闘終了後の遺棄機雷となってからの除去しか、9条のもとでは許されない。
・現に戦闘行為が起こっていて、機雷が敷設されているところを民間船はそもそも通らない。民間船が通るという議論自体がおかしい。
・そうした自体になれば、「我が国の経済や国民生活」はそれ以前に影響を受けているので、機雷を除去して回復できるものではない。

④クウェート侵攻など集団安全保障措置への参加

・集団的自衛権の行使ではなく、集団安全保障措置への参加。武力行使は9条で禁止されている。それ以外の非軍事領域でやれることをやればよい。

⑤潜水艦の滞在

・個別自衛権の前提は「我が国に対する組織的・計画的な武力行使が生じている場合」。外国潜水艦が入ってきただけでは、武力行使とは評価できない。あくまで警察権にもとづく対応となる。
・政府資料には「ギリギリで対潜水艦爆弾投下など」とあるが、警察権以上の対応をとると、かえって大変なことになる。偶発的な事態であれば、自衛権の話ですらない。今の法体系で効果的なことを考えればよいだけの話。
・これは領海内の話なので、統治行為の範囲として何をすべきかの問題であって、集団的自衛権の話ではない。
・軍事的にいうと潜水艦のいるところでは、魚雷が怖いので船での対応はしない。飛行機かヘリで海中にマイクを出して退去命令をだすだけ。

★「9条がおかしい」というなら、改憲手続きを踏んで変えればよいだけのこと。事態がかわったから解釈をかえるというのは、立憲主義の否定。

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