自衛隊「南海トラフ地震対処計画」~浜岡・伊方原発の被災想定
四国電力は「安全」と繰り返すが、防衛省が定めた「自衛隊 南海トラフ地震対処計画の概要」には、伊方と浜岡原発の被災を想定、とある。
もう一点気になるのは「南海トラフ地震への対応における課題 2012/8」に「阪神淡路大震災及び東日本大震災においては、防衛省・自衛隊は、死者・行方不明者数を上回る隊員を派遣して対応を実施できたが、南海トラフ巨大地震のような甚大な被害を伴う震災においては、派遣できる隊員数にも限界があるため、抜本的な対処計画の策定が重要」とあること。これは、以前紹介した半田滋・東京新聞論説委員の著書にある「全国レベルの防災計画がない」という話と、通じる。
【自衛隊南海トラフ地震対処計画の概要2014/1.14】
【南海トラフ地震への対応における課題 2012/8】
【防衛省防災業務計画24.12.21】
同氏は著書の中で
・東日本大震災で10万人体制をとった陸自の将校「震災の経験が行かされず、防災計画が国家レベルに引上げられていない」
・東北地方の連隊長経験者「どの地方にも災害対処計画はある。いずれも自分の地域のみを考え、近くの駐屯地にいる陸上自衛隊がかならず助けに来てくれると信じている。しかし、自衛隊は政府からの命令にしたがってより優先順位の高い施設や地域に移動する可能性が高い。地元にいない自衛隊を当てにして計画をつくっても意味がない。政府、都道府県、市町村が有機的に結びついた災害対処計画を一刻も早く策定する必要がある」
と紹介しているが、ようやく概要が出来て、その具体的中身を調整中とのこと。一刻も早く、その全体像を明かにしないと、自治体の防災計画は、齟齬を来たすことになる。
【自衛隊南海トラフ地震対処計画の概要2014/1.14】◆複合災害への備え
○ 浜岡及び伊方原子力発電所の被災を想定
○ 施設所在地域の方面隊若しくは陸災部隊への化学科部隊の配属、又は統合任務部隊隷下に中央即応集団の一元指揮による対処部隊を組織
○ 施設敷地緊急事態:住民避難支援を中心 全面緊急事態:放射線環境下での各種支援(スクリーニング・除染等)
【南海トラフ地震への対応における課題 2012/8】○阪神淡路大震災及び東日本大震災においては、防衛省・自衛隊は、死者・行方不明者数を上回る隊員を派遣して対応を実施できたが、南海トラフ巨大地震のような甚大な被害を伴う震災においては、派遣できる隊員数にも限界があるため、抜本的な対処計画の策定が重要。
・南海トラフ地震においては、被災地域が、九州地方から関東地方まで広範に及ぶと推定されており、また、被災者が40万人を超えるとの想定も出ているところ、自衛隊による対応には限界がある。
・自衛隊を始めとする実動省庁の対応能力をどのように振り分けるか、役割分担を整理する必要がある。
・また、公的・行政的な対応の限界を認識した上で、「共助」、「自助」の観点も踏まえ、全国家的な対応体制の見直しが求められる。
・他方、国内での対応に限界がある以上、海外からの支援の受け入れが不可欠になると考えられ、平素より受入体制を検討する必要がある。
【
防衛省防災業務計画24.12.21】第八原子力災害時の措置
(5) 原子力災害派遣時に実施する支援活動の具体的内容は、災害の状況、他の救援機関等の活動状況等のほか原子力災害対策本部長の要請内容、現地における部隊等の人員、装備等によって異なるが、通常、次のとおりとする。① 緊急時モニタリング支援
航空機、艦艇等により、現地に動員されたモニタリング要員及び機材を搭載し、空からのモニタリング又は海上におけるモニタリングを支援する。
② 被害状況の把握
車両、航空機等状況に適した手段によって情報収集活動(目視等による人的・物的被害の確認等)を行って被害の状況を把握する。
③ 避難の援助
避難の命令等が発令され、避難、立ち退き等が行われる場合で必要があるときは、避難者の誘導、輸送等を行い、避難を援助する。
④ 行方不明者等の捜索救助
主に原子力事業所外において行方不明者、傷者、被ばく者等が発生した場合は、通常他の救援活動に優先して捜索救助を行う。
⑤ 消防活動
火災に対しては、利用可能な消防車その他の防火用具をもって、消防機関に協力して主に原子力事業所外で消火に当たるが、消火薬剤等は、通常関係機関の提供するものを使用するものとする。
⑥ 応急医療、救護
被災者又は被ばく者に対し、応急医療、救護を行うが、薬剤等は、通常関係機関の提供するものを使用するものとする。
⑦ 人員及び物資の緊急輸送
原子力災害対策本部設置前にあっては原子力規制庁から、設置後にあっては原子力災害対策本部長から、次の各号に掲げる事項について、自衛隊の輸送支援が必要として防衛省に依頼又は要請があった場合には、別に定める申合せにより、速やかに空輸支援を行う。ア緊急技術援助組織の構成員たる専門家の招集及び現地への派遣
イ国の原子炉、放射線防護等に関する専門家の現地への派遣
ウ緊急モニタリング要員及び機器の動員
エ国の原子力災害現地対策本部等の要員の現地への派遣
オ現地における緊急医療活動を充実強化するため、放射線医学総合研究所緊急被ばく医療実施体制現地派遣チームの現地への派遣また、救急患者、医師その他救援活動に必要な人員及び救援物資の緊急輸送を実施する。この場合において航空機による輸送は、特に緊急を要すると認められるものについて行う。⑧ 緊急時のスクリーニング及び除染
避難者及び資機材のスクリーニング並びに被ばく者及び被ばくした施設等の除染であって、自衛隊が実施可能なものについて危険物の保安措置及び除去を実施する。
⑨ その他
原子力事業者の対応状況を踏まえた上で必要がある場合には関係機関と連携し、自衛隊の能力で対処可能なものについては、原子力災害収束に向けた対応の支援を行う。
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