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日本の資本主義の現段階をどうみるか(メモ)

 友寄英隆氏の論稿「経済2014.2」の備忘録。
 アベノミクスで、円安誘導しても輸出量はふえない、貿易赤字への転落~ 戦後経済の柱であった「対米従属・輸出主導型の資本蓄積・拡大再生産方式」が、「対米従属路線とアジア外交の失敗」「多国籍企業の資本蓄積様式と国民経済の矛盾」からくる深刻な行き詰まり状態にあり、歴史的な転換期を迎えている。帰趨を決するのは労働者・国民のたたかいである。

【日本の資本主義の現段階をどうみるか】

◆はじめに 本稿の課題

・日本資本主義は、2010年代に入ることから、戦前戦後の160年余にわたる資本主義発達史の中でも、1区切りを画する新しい段階、歴史的な転換期を迎えているように見える。
→ 根底にあるのは
①政治的には、対米従属路線、それに結びついた自民党政治の限界
②経済的には、「高度成長」期以来、戦後日本資本主義の発展を主導してきた「対米従属・輸出主導型の資本蓄積・拡大再生産方式」のゆきづまり。

・「対米従属・輸出主導型の資本蓄積・拡大再生産方式」のゆきづまりは、支配体制にとって深刻な危機/同時に、政治経済の仕組を改革し、日本を再生させるチャンス/ 根本的な変革が求められる時代
→ より反動的な方向への「変革」を死に物狂いで強行しようとする時代でもある。/歴史の本流と逆流が激しくせめぎあう時代 /今日の特徴

◆1.資本蓄積・再生産家庭の循環的矛盾と構造的矛盾

・「戦後史的な資本蓄積・拡大再生産」のゆきづまり… 再生産活動の内的矛盾の爆発、過剰生産恐慌のことではない/恐慌は、一時的な縮小再生産のあと、均衡を回復し、新たな資本蓄積・拡大再生産に入る
→ これに対し。長期にわたって継続してきた資本蓄積の歴史的条件が変化し、従来のやり方での拡大再生産が続けられなくなったということ。
・「歴史的条件」の変化とは/ 資本蓄積の国際的環境、資源・エネルギー・食料などの基礎的条件、労働力人口などの生産活動の条件など、資本蓄積の基礎的条件の変化とともに、「資本」それ自体の発展段階の変化(たとえば「多国籍企業」)という内的要因も含む
→ 長期的な変化の過程。その結果、資本主義発達史の1つの段階的な時代の特徴を示す

☆現代の経済課程は、資本蓄積・再生産の循環的矛盾と(長期的)構造的矛盾が分かちがたく絡み合っている/とりわけ90年代初めのパブル崩壊後の長期不況のもとでは、2つの矛盾が重なり合って進行

・本稿は、主として構造的矛盾としての「戦後史的な資本蓄積・拡大再生産」の行き詰まりを考察する

2.戦後日本の経済発展を主導してきた資本蓄積・拡大再生産の行き詰まりの諸現象

(1)「対米従属・輸出主導型の資本蓄積・拡大再生産」の特徴

①単に輸出の比重が大きいということではない。日本経済を支配する大企業が輸出によって巨額の利益を稼ぎ出すという資本蓄積によって形成された再生産構造の質的特徴
~高度成長期でもGDP比で輸出は10-13%/英仏の20%前後、独め北欧の30%前後と比べ、むしろ低いにもかかわらず、「輸出主導型」というのは、大企業の資本蓄積活動の質的な特徴を示す

②一握りの大企業が、資源・燃料を大量輸入し、大企業の支配・系列のもと国内中小・零細企業が部品・中間財や国民の消費財を生産し、その中小・下請け企業の生産した部品・中間財を購入して大企業が自動車・電気製品・一般機械など高品質の製品を組み立てて大量輸出する産業連関が発展/ 大企業が入口と出口を押さえて、輸出拡大を経営戦略の中心にすえて、ひたすら内外市場を拡大する資本蓄積活動

③国内市場と産業構造に、他の先進国と異なる構造を形成。1.2億円の巨大な国内市場のための工業製品をほぼ国内でまかなうので、工業製品輸入が少ない。国内の再生産の大きな部分は、大企業、中小零細企業、自営業が支える再生産構造 ~ そのため輸出比率は相対的に小さく見える/ が、集中豪雨的な輸出の大局で、再生産の基盤であるエネルギー・食料の自給率は急激に低下

④大企業の経営内では、競争力強化のため、低コスト・高品質の生産が市場化大に~「日本型経営」と称する低賃金、長時間、労働強化の過酷な搾取と収奪が強行 /国内市場を大企業が独占的におつえたため、海外からの直接投資も極端に少ない。

⑤6大金融資本=企業集団の形成 /それぞれのグループ内で、すべての産業分野をワンセットで揃えて、独占資本体制を強化 ~世界に例のない強固な組織力を持つ「財界」の形成

⑥国際収支への反映/ 貿易黒字の拡大~貿易摩擦の拡大、円レートの恒常的上昇、食糧輸入の急増 /資本の流出超過による対外純資産の増大 ~国民の暮らしは貧しいのに、世界最大の「金持ち国」になり、欧米との金融摩擦をもたらした

⑦“労働者を犠牲にしてでも輸出で稼げ”という経営戦略の起源 /米占領化の「経済安定九原則」(ドッジライン)のなかで「輸出振興」を日本経済再建の最大の柱に位置づけたことに始まる~その後、日米安保条約による国家的な対米従属状態が半世紀以上も続くもと、高度成長期を通じて形成
→ 特に、円のドルへの従属という通貨主権の事実上の放棄は、通商・産業政策をゆがめ、輸出主導型の
経営戦略を推進〜 広大な米国市場への進出とともに、アメリカ帝国主義の世界戦略の庇護のもとで、世界市場への輸出を拡大

(2)「行き詰まり」の諸現象

・80年代後半、かつてない異常なバブル経済に突入~ 要因 85年プラザ合意による急激な円高、公共投資など財政政策、日米金利差を維持するための超低金利政策による過剰流動性の発生、土地投機・株式投機をあおった大銀行・証券会社・ノンバンクなどの過剰融資など
→ が、重要なのは、戦後日本の特赦な産業構造にもとづく矛盾/ 対米従属下で形成された輸出主導型蓄積・再生産構造の矛盾/「資本・土地所有・賃労働」の相互の関係における再生産構造の歪み
→ 異常なバブルは、この歪みが「限界」にきていること、根本的な是正なしには、自律的な拡大再生産の新たな機動を形成することが困難であることを示したもの /90年代はじめの株バブル、土地バブルの相次ぐ破綻したあと、「平成の大不況」「失われた20年」などの長期停滞に突入

■2010年頃を画期に、日本資本主義はあたらな段階へ

①貿易収支の赤字、投資収益の増大

・最高時15兆円の貿易黒字。2000年代後半から漸減、11年に赤字に転換。12年度5.8兆円の赤字
・投資収益、05年に10兆円を超え、貿易黒字を上回る。12年は14.3兆円に。

②エネルギーと食料の自給率低下

・エネルギー 60-2010年 58.1%→4.8%、食料65-2012年 73%→39%
→ これらは戦後の「資本蓄積・拡大再生産」それ自体の特徴/ が、今日では、再生産上の危機をあらわす指標に転嫁してきている。(メモ者 価格高騰、供給の不安定性)

③民間整備投資の低迷(海外投資の増大)

・ピーク時90兆円から61兆円に急落したあと低迷
・海外投資は急増。海外純資産 12年296兆3150億円と、年々ピークを更新

④中小企業の開業率の低下(廃業率の増大)

・開業率の動向は、社会的総資本の再生産活動の状況を示す指標の1つ
・90年代以降、開業率が急速に低下。「高度成長」期10%、90年代3%台。廃業率と逆転
・特に製造業では、80年代初頭から事業所数が減少

⑤労働力の減少、非正規雇用の増大、少子化傾向

・労働力人口 98年6793万人→12年6553万人 193万の漸減 /非正規1908万人
・合計特殊出生率 74年までは2超。その後漸減、ひのえうまの05年1.26に。12年1.41

⑥雇用者報酬の低迷、現金給与総額の減少、民間消費支出の低迷、貯蓄率の低下

・雇用者報酬・名目 97年278兆2347億円→ 12年244兆6593億円。34兆円減
・かつて20%を超えていた家計の貯蓄率 ゼロに近い水準/ 巨額の国債発行を支える資金的源泉の枯渇

⑦税収の減少、財政危機の深化

・経済の長期低迷に加え、「新自由主義」路線による「法人税の引下げ競争」が展開
・89年19.0兆円 →09年6.4兆円/ 13年度の国債残高749兆5846億円に

⑧物価の低下(いわゆる「デフレ」現象)

・戦後、消費者物価が2年以上連続してマイナス(OECDのデフレ基準)した時期
99-03年、09-11年.04-07年は1%以下 /15~16年間、ほとんど連続的に物価の低落傾向が続いた
・物価下落の真の原因 実態経済の需要不足、循環的・構造的不況の長期化にある

(メモ者 1929年の大恐慌からの脱出は、金融政策によるもの・・バブルが崩壊しても適切な金融政策をとれば打開できる・・バーナンキなどの通説は、リーマンショック後の長期低迷をうけ、生命力を失っている。/サマーズ、“現代マクロ経済学の主流が取り組んできた膨大な成果は、ホワイトハウスの危機対応政策において何ら役割をはたさなかった”、クルーグマン“過去30年間のマクロ経済学の大部分は「良く言っても見事なまでに無益で、悪く言えば積極的に害をもたらした」”/アベノミクスはその論に未だしがみついている)

⑨為替レート、趨勢的な円安傾向への転換

・ドッジライン以降、71年まで固定レートで「対米従属・輸出主導型の資本蓄積・拡大再生産構造」の形成
・73年変動相場制への以降後、円高傾向の波が押しよせた
・現在は、日本経済の行き詰まりを反映し、円安傾向に転換

⑩ GDP増加率の停滞・低下

・名目 97年523兆1983億円をピークに漸減。12年475兆5289億円
→行き詰まりの結果を示すという点では関連しているが、実態を正確には表していない/なりふりかまわぬ財政、金融の異常な膨張(とくに巨額の赤字国債発行)なより実態が隠されている

◆3.時期区分―世界的な金融・経済危機と東日本大震災・原発大事故が画期

・「行き詰まり」はいつから始まったか?
過程の途上であるが、「08/09年金融危機・世界恐慌」「11東日本大震災と原発大事故」を画期とらえることとする /11年に貿易収支が赤字に転換したことは、「行き詰まり」を示す最も象徴的な指標の1つ

(戦後、日本資本主義の5つの時期~「資本蓄積・再生産」の視点を中心に 略 )

・90年代以降の20年間は、戦後の経済成長を支えた「資本蓄積・拡大再生産」の歴史的条件が大きな限界にぶつかり、それを「なし崩し的再編」によって対応してきた時期
・2010年代以降 /その「なし崩し的再編」も限界に来て、新たな本格的な再編(変革)を求められる時代に入ったということ。

◆4.「行き詰まり」の要因 --「対米従属路線」と「多国籍企業の資本蓄積様式」

(1)「なし崩し的な再編」の意味とその条件

①輸出主導型の資本蓄積と再生産構造の明確な転換――国民生活優先の内需主導型資本蓄積方式と再生産構造への根本的転換――がなされないまま、なし崩し的に再編が進んだ
②「輸出主導型」が行き詰まっているにもかかわらず、単純な「解体」に向うことにならなかった。
③対外的な貿易構造の変化とともに、国内でも「多国籍企業化した大企業」の形成にともなう資本蓄積様式の変化に伴い、産業・企業の大再編が引き起こされた。

・この「再編」が20年間も続いてきた2つの要因
 ①中国などアジア諸国の経済発展が、大企業の多国籍企業化による海外投資の急増にかかわらず、輸出も並行して維持・拡大するという特殊な条件が生まれた
 ②アメリカの90年代のICT革命の急展開による長期的な景気拡大(メモ者 金融資本主義にもとづく架空の需要拡大)とともに、日本でもICT革命による非正規雇用の急増と結びつけねことによって巨額の李浮きをあげることが出来る
~ こうして「行き詰まりは」後延しされた。が、金融危機と3.11は、「なし崩し的な再編」の限界をあたらめて示した。

(2)「行き詰まり」の要因① ――対米従属路線とアジア外交の失敗

・輸出主導型資本蓄積を支える国際的条件であった対米従属路線が、逆に日本資本主義の長期的な発展を阻む要因になってきていること
~東アジア諸国、特に中国の経済発展は、再生産の経済的条件を減変させた/日本資本主義の国際的な発展基盤が大きく変化
→ 21世紀の日本経済の発展は、アジア諸国との共存共栄の外交路線を抜きにしては考えられない。/対米従属路線のままでは、急速に発展するアジアの中で孤立する恐れ

・当初の90年代前半は「村山談話」「河野談話」など一定の前進的な動き
・90年代後半以降は、日米軍事同盟強化、歴史修正主義の動きによるアジア外交の失敗/ 外交的な面でも「行き詰まり」
*英経済紙「エコノミスト」(13/5/18)安倍政権の前途の「二つの懸念」~「(東アジア地域での)対立が深まれば、日本の貿易は脅かされ、経済成長も鈍化する」

☆福島原発事故〜原発依存のエネルギー政策の破綻を示した~ 原発が地震列島に密集する歴史的経過、政府が「原発ゼロ」に展開しない背景にも、日米安保条約がある。/「原発ゼロ」への転換は、「なし崩し的再編」ではなしえない。

(3)「行き詰まり」の要因②-―多国籍企業の資本蓄積様式と国民経済の矛盾

・輸出主導型の資本蓄積の特徴~国民経済全体の拡大再生歳を主導/が、為替相場の変動に大きく左右される~通貨の面での対米従属(金融資本主義としてドル高政策をとる米国の支えられたもの)
・今日では、相対的に円安になっても輸出はのびない/ アベノミクスでも輸出量は減
→ 「なし崩し的再編」の条件が失われてきていること/ すでに「輸出主導の資本蓄積」から「投資主導の資本蓄積」に変化したこと、国際収支を多国籍企業の資本蓄積様式が主導するようになってきたことを示す

☆多国籍企業の展開~ 現代資本主義の生産力を世界に押し広げ、新興国の経済成長の要因となった点では、一定の「文明化作用」の役割 /が、傍若無人な活動は「租税国家の危機」「産業国家の危機」「福祉国家の危機」「地球環境の危機」など、はかりしれない「非文明的な作用」をもたらしている。

・多国籍企業の経済活動は、統計的には、進出国のGDPに算入され、再生産に組み込まれる / が、それは、その国の「再生産の条件・法則」に規制され、従うことを意味しない。
→ 多国籍企業は「最適地生産、最適地調達、最適地販売」の戦略で、世界市場で独自の資本循環・再生産軌道を形成。国民経済の「再生産の条件、法則」には規制されない。
→ 最大利潤を求めて、身勝手なリストラ、資本撤収を行い、獲得した利潤の蓄積もタックスヘイブンを含めグローバルに分散・集中/ 母国と進出国の両方で再生産を攪乱

・日本でも「失われた20年」からの脱却をもとめ各種の「成長戦略」が何度も策定されたがことこどく失敗
→ その原因は、①対米従属路線を前提していること、②多国籍企業の資本蓄積様式が国民経済に与える意味の考察をまったく欠いていること、にある。
→ 「アベノミクス」も海外投資に拍車をかけるグローバル企業の育成/それの行き着く先は、日本産業と経済の衰退以外にない。

◆むすび―― 日本経済の再生のために

・日本資本主義は、小手先の「改良」政策では解決できない時代、行き詰まった「対米従属・輸出主導型の資本蓄積・拡大再生産」のあり方を根本的に変革する時代
→ 国民生活優先の内需主導型資本蓄積様式と再生産構造への転換を目指す時代、を迎えている

そのために

①新たな拡大再生産軌道を形成する前提として「国家と企業の役割の再定義」の必要性

・これまでは、「企業が国を選ぶ時代」との言われ方が当然のように流布され、国家も企業も、自ら果たす役割を見失い、国民経済は衰退の一途をたどってきた。
・国民経済の再生には、大企業の役割、中小企業の役割、農業の役割、労働者をはじめ国民全体がそれぞれの役割を発揮することが必要/ 多国籍企業、国際的巨大銀行も、応分の役割を担わせることが必要 /そのためにも国家の役割は決定的

②新たな拡大再生産軌道を形成するための「旋回基軸」を明確にする必要

・「旋回基軸」となりうるのは、国民経済の基盤となる中小企業と農林水産業
~ 「原発ゼロ」・自然エネルギーへの転換を支えるのは、中小企業と農林業/ 「旋回基軸」としての役割が果たせるよう「異次元の中小企業政策」「異次元の農林業政策」が求められる

③対米従属路線から脱却

・憲法9条にもとづく平和外交、共存共栄の経済外交をアジアと世界で積極的に展開すること
・安保条約廃棄以前にも出来ること~ アジア規模での通貨安定の制度的仕組、互恵の「新しい国際経済秩序」の提案など・・・

☆日本資本主義の危機の深まりは、日本を再生させるチャンスが生まれていること、/が、支配層の反動的な企てにも拍車がかがってくる
→この歴史の本流と逆流が激しいせめぎあいの帰すうを決めるのは、労働者・国民の運動の発展のほかない。


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