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鳥取県児童手当差し押さえ裁判 高裁判決の意義(メモ)

 勝俣彰仁・弁護士「議会と自治体」2014.4 「鳥取県児童手当差し押さえ裁判 裁判の争点と地裁・高裁判決――その特徴と意義」より、主に高裁判決の意義についての部分のメモに、鳥取県の改善措置を追加したもの。

 同判決については、以前、大阪社保協の学習会の内容、佐々木憲昭氏の記事をメモにして取り上げたので経過などを省いた。が、高裁判決の意義について、今回の論稿は簡潔に整理されており、よくわかる内容となっている。
 ≪鳥取地裁判決2013/3/29 広島高裁判決 2013/11/27≫ 

 1月の総務省の事務連絡に以下の内容がある。
【平成26年度地方税制改正・地方税務行政の運営に当たっての留意事項等について 総務省自治税務局2014/1/24】

「・ 地方団体の歳入を確保するとともに、・・・地方税法では、滞納処分をすることによってその生活を著しく窮迫させるおそれがあるときは、その執行を停止することができることとされていることを踏まえ、各地方団体においては、滞納者の個別・具体的な実情を十分に把握した上で、適正な執行に努めていただきたいこと。」


【鳥取県児童手当差し押さえ裁判 高裁判決の意義】

◆高裁判決の特徴

☆地裁判決~ 児童手当も預金になれば差押禁止ではなくなるが、本件差押処分は権限を濫用した違法なものとして、預金全額の返還を命じる /原告の立場にたったよい判決だが、徴税側の論理を原則的に肯定。徴税側の悪質性が際立ったものでないと活用しにくい。

☆高裁判決は、他の事案において活用しやすい

①端的・明瞭な論理

児童手当は、預金となった後も、差押禁止債権としての性格を引きづいている。/他の差押禁止債権においても活用できる。

②緩和された考慮事実

「徴税側の認識」と「預金の状態」という2つだけ。活用範囲がひろがる。
・徴税側の認識… 公的支給日は周知の事実であり、どの事案でも当然予測できる
・預金の状態… 通帳や取引履歴を見て差押禁止債権としての属性を失っていないことを言えればよい

③差押禁止債権の趣旨を重視

・高裁判決は、原告があたかも悪質滞納者であるかのような認定をした点は遺憾
・が、裏を返せば、悪質滞納者であろうがなかろうが、差押禁止の趣旨に反する差押は許さないことを示したことで、他の事案でも広く活用できる。

④平易・簡便な救済手段

・違法な差押に対しては、格段に平易・簡潔な救済手段の道を開いた
~ 民事手続きで被害回復できるとし、行政訴訟(滞納処分の取消訴訟)を却下しつつ、民事上の責任(不当利得返還義務)として、児童手当の返還を命じる。
・行政訴訟は、勝訴することはもちろん提訴もハードルが高い。不服申立期間も60日など極めて短期間
・民事手続きは、極めて平易・簡単。不当利得返還請求10年、不法行為損害賠償請求3年

⑤今後の違法な差し押さえへの布石
・高裁判決は、“預金差押え容認説とも考えられるような最高裁判決があったことからすると、徴税側に不法行為を構成する請い過失があったとはいえない。認定事実からすれば差押えの経緯も不当とはいない”“滞納処分の執行停止に当る事情が納税者にあるかどうかの調査・検討義務はないし、認定事実からすれば原告の生活実態を調査、検討しなかったことも違法とはいえない”として、国家賠償責任は否定した

・この判断は、事実誤認にもとづくものであり、徴税側の調査義務について誤解しており、誠に遺憾。地裁判決の方が正しい。

・が、高裁判決は、おおきな「くさび」に
~ 最高裁判決の限界、預金差押え許容説の限界を厳にしめし、/差押え禁止債権の属性を承継すると明示して、実際に児童手当の返還を命じた / 最高裁判決があり、預金歳押さえ許容説もあり得たから不法行為とはならない、という論理は本件までしか使えない

・今後は、預金になったからと漫然とは差し押さえることは許されない/ もし違法な差押えを行えば、国家賠償責任(不法行為責任)上も違法となり、不当利益でも悪意の受益者となる。

◆違法な徴税活動の是正へ
・納税は誠実に行わなければならないが、生活や事業の状況により困難な場合もある
・国税徴収法(地方税法も準用)の三本柱
①税債権の確保 ②私法秩序の尊重 ③納税者の保護
・納税者の保護… 法は、差押禁止財産、超過差押えの禁止、無益な差押えの禁止、納税の猶予、換価の猶予、滞納処分の停止などの諸制度を設けている
・政府答弁、通達も滞納処分は納税者の実情を十分に把握し、その実情に即しつつ、生活の維持または事業の継続に与える影響などを考慮しておこなうべきとしている
   第171回衆議院財務金融委員会議録18号 佐々木憲昭議員発問
   同参議院決算委員会会議録9号 仁比そうへい議員発問
   徴収法基本通達(第47条関係 差押えの要件――17財産の選択)
   納税の猶予等の取扱要領(76年6月3日 国税庁長官通達)
   滞納処分の停止事務の取扱について(00年6月30日、国税庁長官通達)
   滞納整理における留意事項(01年6月1日、国税庁徴収課長通知)など

☆高裁判決の内容で、地方議会での論戦、自治体交渉を実施し/ 水準の高い「差押要領」を作成させる /全国的な基準をつくらせる、

◆鳥取県の改善

◇県の「滞納整理マニュアル」の改訂

①月3.5回以上の入出金を繰り返す口座は、生活口座として認定する。(月3.5回未満の場合は、年金、児童手当の特定口座として差押さえ対象外とするという意味)
②預金差押さえ時に、三か月分の取引履歴を確認する
③差し押さえ預金が差し押さえ禁止財産を含む場合は、その金額は控除して差し押さえる
④差し押さえ後に申し出があり、差押禁止再建と確認できた場合は、差し押さえを解除、取り消す。
⑤「マニュアル」を市町村と共有する。

◇過去の「差押禁止財産の振込み日の差押え」について実態調査する(県総務部長)

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