安倍首相を望んだことを悔やむ米国政府 英FT
英フィナンシャルタイムスの記事。アメリカの望みどおり「アメリカとともに戦争する国づくり」に暴走する安倍政権。戦前の「日本を取り戻す」その姿勢が、日米同盟を揺るがしている。
“ある元ホワイトハウス高官によれば、ジョン・ケリー国務長官は日本を「予測不能で危険」な国と見なしているという。 日本のナショナリズムが北京で対抗措置を引き起こすとの不安感もある。オーストラリアの学者で元国防省高官のヒュー・ホワイト氏は、これが意味することは明白だと言う。「米国としては、中国と対立する危険を冒すくらいなら日本の国益を犠牲にする」ということだ。”
【安倍首相を望んだことを悔やむ米国政府2/21】
【「予測不能で危険な国」 浦部法穂・法学館憲法研究所顧問2/24】
【「予測不能で危険な国」 浦部法穂・法学館憲法研究所顧問2/24】安倍首相は先日の衆議院予算委員会で、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認をめぐって、「(政府の憲法解釈の)最高の責任者は私だ。政府答弁に私が責任を持って、その上で私たちは選挙で国民の審判を受ける」と述べた。そもそも、これまで違憲としてきたものを政府の解釈だけで合憲にするということ自体、「統治権に対する法的制限」としての立憲主義に反することなのだが(2013年9月23日付本欄「非嫡出子相続差別と集団的自衛権」参照)、そんな意識は全くなく、選挙に勝てばどんな解釈もOK、といわんばかりの言いぐさである。これには、自民党内からも、選挙に勝てば憲法解釈を自由に変えられると受け取られかねない、として批判の声も出ているという。安倍晋三という人は、憲法の「け」の字も立憲主義の「り」の字も、全然わかっていないんだなと、あらためて思い知らされた気がする。法学部出身のはずなのに。
そもそも安倍氏には、憲法を守るなどという意識はかけらもない。大臣や議員などの公務員に「憲法尊重擁護義務」を課している憲法99条さえ、守ろうという気はないのだ。彼が目指しているのは、あるいは理想として思い描いている国家像は、戦前・戦中の日本なのである。安倍自民党のスローガン「日本を取り戻す」とは、戦前・戦中の日本を取り戻すということにほかならないのである。そのことは、安倍氏の側近たち、安倍氏に取り立てられて要職に就いた面々が、安倍氏の「代弁者」として、まさしく「率直」に言っているところである。
内閣官房参与として安倍首相の経済政策のブレーンを務める本田悦郎氏(静岡県立大学教授)は、ウォール・ストリート・ジャーナル紙とのインタビューで、「第2次大戦中の神風特攻隊の『自己犠牲』について語りながら、涙ぐ(み)」、「『日本の平和と繁栄は彼らの犠牲の上にある』と、目を真っ赤にさせながら言い、『だから安倍首相は靖国へ行かなければならなかったのだ』と語った。」と伝えられる(2月19日付ウォール・ストリート・ジャーナル電子版)。
あるいは、安倍首相の「お友達人事」でNHK経営委員に任命された長谷川三千子・埼玉大名誉教授は、昨年10月、20年前に抗議先の朝日新聞社で拳銃自殺をした右翼団体「大悲会」の野村秋介・元会長の追悼文集に次のような一文を寄せていた。
「人間が自らの命をもつて神と対話することができるなどといふことを露ほども信じてゐない連中の目の前で、野村秋介は神にその死をささげたのである。/『すめらみこと、いやさか』と彼が三回唱えたとき、彼がそこに呼び出したのは、日本の神々の遠い子孫であられると同時に、自らも現御神であられる天皇陛下であつた。そしてそのとき、たとへその一瞬ではあれ、わが国の今上陛下は(『人間宣言』が何と言はうと、日本国憲法が何と言はうと)ふたたび現御神となられたのである。」
「神風特攻隊」に涙し、あるいは天皇を「現御神」とするなど、まさに、「大日本帝国の亡霊」としか言いようがない。ほかにも、同じくNHK経営委員に任命された作家の百田尚樹氏は、都知事選で田母神候補の応援演説に立ち、「南京虐殺はなかった」とか「東京裁判はごまかし」だとかの持論を述べ、他の候補を「人間のくずみたいなもの」と言ったという。さらに、その経営委員会が選んだNHKの新会長・籾井勝人氏は就任会見で、性懲りもなく、「従軍慰安婦」問題について「どこにでもあったことだ」などと述べた。そしてまた、衛藤晟一首相補佐官は、昨年12月の安倍首相による靖国参拝にアメリカ政府が「失望した」との声明を出したことに対し、「こっちこそ失望だ」と批判した。
こうした発言について、安倍政権はすべて「個人的見解」だとして問題にしないという姿勢をとっている。しかし、これら安倍側近の発言は、前記ウォール・ストリート・ジャーナルの記事がいみじくも言っているように、「重要な問題について首相の考えを知る手がかりを提供している」のである。決して「個人的見解」とは受け止められていないのであり、安倍政権がそういう考え方をとっているという受け止め方が、むしろ普通なのである。実際、いま、アメリカやヨーロッパの国々では、日本に対する警戒感がじわじわと広がってきている。安倍首相の強硬な姿勢、その復古的ナショナリズムに、危険な兆候を感じ取っているのは、韓国や中国だけではない。アメリカもヨーロッパ諸国も、そう感じるようになってきているのである。2月20日付の英フィナンシャル・タイムズ紙は、「待望した安倍首相をいまは悔やむ米政府」と題する記事を掲載し、その中で、「(アメリカの)ケリー国務長官は日本を『予測不能で危険』な国と見なしている」とする「元ホワイトハウス高官」の言を引いている。
安倍政権の日本は、いま、世界からそういう目で見られているのであり、世界のなかで、予測不能な、理解できない「特異な国」になりつつある。このまま行けば、世界中のどの国も日本にそっぽを向くことになるだろう。そのことに気づいていないのは、なお安倍首相を支持し続ける日本国民だけである。
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