知事・首相会談 県民無視の「驚くべき」発言
沖縄地元紙の社説。
「安倍晋三首相は基地の「負担軽減策」を説明した。だがどれも、新味のない従来の方策か、実現の担保のない口約束にすぎない。知事がなぜ高く持ち上げるのか理解できない。」(琉球新報)
「仲井真弘多知事は、まるで別人のようだった。菅義偉官房長官が作ったシナリオの上で踊らされているパペット(操り人形)のようにもみえた。」(沖縄タイムス)
知事が示した負担軽減の要望は、公約を投げ捨てた沖縄の自民党がまとめた「軽減案」とほぼ同じで、県民が求めてきた内容と雲泥の差がある。「県外移設」の知事の公約にも反する。
なぜ、簡単に変節したのか? 総選挙直後でなく、参院選の捜査となった徳州会事件との関わりを植草氏は指摘しているが・・・
【知事・首相会談 粉飾に等しい「負担軽減」 琉球新報12/26】
【社説[首相・知事会談]県民ははしご外された 沖縄タイムス12/26】
【「徳洲会事件と辺野古海岸埋め立てをつなぐ点と線」(植草一秀の『知られざる真実』2013.9.25)】
【仲井真知事が辺野古埋立申請を一蹴できない理由 植草一秀の『知られざる真実』2013.12.25)】
【知事・首相会談 粉飾に等しい「負担軽減」 琉球新報12/26】仲井真弘多知事が「驚くべき立派な内容を提示していただいた」と述べた。この知事の発言自体が、「驚くべき」発言だ。いったいどこが「立派な内容」なのか。
首相官邸で会談した知事に対し、安倍晋三首相は基地の「負担軽減策」を説明した。だがどれも、新味のない従来の方策か、実現の担保のない口約束にすぎない。知事がなぜ高く持ち上げるのか理解できない。
知事は27日にも辺野古埋め立て承認の可否を表明する。これらの「負担軽減策」は何ら軽減になっていない点を見極めてほしい。今回承認すると、沖縄は「自発的隷従」となってしまう。子や孫の命と尊厳を売り渡すような愚かな判断をしないよう求めたい。
首相は普天間飛行場の5年内運用停止や牧港補給地区の7年内返還を検討する作業チームを防衛省内に設置する考えを示した。
だが運用停止も返還も主体は米軍だ。作業チームに米側も含めなければ実効性はない。その主体たる米側は「(実行を約束)できない」と早々と拒否の姿勢を示している。だからチームは日本側だけで編成し、実効性があるかのように装っているだけではないか。
環境汚染時の基地内立ち入り調査権の話も、過去に照らせば実効性のない口約束と見るほかない。
これは沖縄が日米地位協定の抜本的改定を求めた点の一つだが、日米両政府は1996年、改定でなく運用改善でお茶を濁した。その結果、立ち入りに米側は「妥当な配慮を払う」ことになったが、許可するか否かはあくまで米側の裁量で、その後も拒否は続発した。
環境調査権は欧州でも韓国でも地位協定を既に改定した項目だ。それをさも画期的であるかのように言うのは粉飾に等しい。
垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの訓練の半分を県外で実施するという件も噴飯ものだ。沖縄は危険な機体の常駐をやめよと求めている。訓練移転などではない。仮に訓練のみ移転したところで、1年のうちわずか数日の飛来で済む他県と、三百数十日背負わされる沖縄の違いは歴然としている。
これは差別の問題なのだ。辺野古移設は、沖縄の民意も他県と等しく尊重するか否かの問題なのだ。
予算編成後のここで埋め立てを認めれば、沖縄はカネ目当てという印象を全国に刻み込む。知事は後世に恥じない判断をしてほしい。
【社説[首相・知事会談]県民ははしご外された 沖縄タイムス12/26】仲井真弘多知事は、まるで別人のようだった。菅義偉官房長官が作ったシナリオの上で踊らされているパペット(操り人形)のようにもみえた。
25日、首相官邸で仲井真知事が安倍晋三首相と向かい合っていたころ、那覇市の県庁前では、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対する住民が雨に打たれ、傘を差して、悲壮感に満ちた表情で知事の埋め立て不承認を訴えた。
だが、住民の必死の叫びは首相官邸に届かなかった。いや届かなかったのではない。知事は17日の沖縄政策協議会以来、東京に閉じこもり、県民の声を聞こうとしなかったのだ。
会談で安倍首相は2014年度の政府予算案に概算要求を上回る3460億円の沖縄振興予算を計上したことや、2021年度まで毎年度3千億円台の沖縄振興予算を確保する方針を明らかにした。
知事は「いろいろと驚くべき立派な内容をご提示いただいた」と最大級の言葉でお礼を述べた。記者団に対しては「有史以来の予算」と、政府の回答を絶賛する発言を繰り返し、「いい正月になる」とまで語った。
会談後、知事は車に乗り込んだ後、窓から笑顔で「ハブ・ア・ナイス・バケーション」と言いながら記者団に手を振った。
石破茂自民党幹事長が、県関係国会議員5人を従えて記者会見したときもそうだったが、それをはるかに上回るおぞましい光景だった。
知事は、辺野古を金で売り渡すつもりなのだろうか。
来年度増額される那覇空港第2滑走路の増設事業予算は、航空自衛隊那覇基地へのF15戦闘機1個飛行隊の追加配備を前提にしたもので、県の要望に応じたというだけの話ではない。
沖縄科学技術大学院大学(OIST)の関連予算についても、オールジャパンの立場で建設した大学であり、本来沖縄振興予算とは別枠で、国が措置すべきものである。
知事は「有史以来の予算」というが、今回を上回る沖縄振興予算が計上されたこともある。
政策協で沖縄側が求めた基地負担の軽減策について、首相は日米地位協定を補足する新たな政府間協定を作成し、環境条項を盛り込む考えを示した。
だが、普天間飛行場の5年以内の運用停止については、「危険性除去が極めて重要な課題だという認識を知事と共有している」と述べただけで、具体的には何も答えていない。
首相の回答は、文書ではなく、すべて口頭だった。現時点では何も決められず、文書にすると政府が縛られるからだろう。これまでも閣議決定や総理大臣談話でさえほごにされているというのに、実現の担保がない「口約束」というしかない。
首相と知事の会談は、ほぼすべて記者団に公開した。このやりとりを国民に見せ、普天間移設問題をめぐって、政府と沖縄が共同歩調を取り始めていることをアピールしようとした「政治ショー」そのものである。
会談自体よりも、会談以外のところでどのような裏約束があったのかが問題だ。知事は17日の政策協以来、首相との間でどういうやりとりがあったのかなど、県民に一切説明していない。
仲井真知事が、ほかでもない140万沖縄県民を代表する知事ならば、包み隠さずに語らなければならない。
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