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孤立無業者(SNEP)162万人~社会のゆがみの反映

 SNEP(Solitary Non-Employed Persons)とは「20歳以上59歳以下の在学中を除く未婚無業者のうち、ふだんずっと一人か、一緒にいる人が家族以外にはいない人々」。21世紀に入り急増、現在推定162万人。20~59歳の40人に1人となる。
 高知県、高知市の20-59歳人口は、345777人、167832人(2010年国勢調査)なので、この比率をあてはめると全県7203人、高知市4196人いることになる。
この間、ブログで若者から中高年の「こきこもり」問題をとりあげてきたが…本格的な取組がもとめられる。
 この問題・・・目先の利益最優先の「構造改革」が、結局、国民的な活力を奪い、国民的なコスト増をもたらしているということである。社会のゆがみをただす運動と一体ですすめることが必要。 
【仕事、友達、配偶者なしの20~59歳「SNEP」が今急増しているワケ〈週刊朝日〉11/15】
【 孤立無業者(SNEP)の現状と課題 玄田有史(東京大学社会科学研究所)2013/1】
【「孤立無業」という社会病理 -「失業」から「孤立」に陥らない「再チャレンジ社会」を! ニッセイ基礎研コラム11/25 】
【大人のひきこもり対策~県政の課題へ 2013/11】

【仕事、友達、配偶者なしの20~59歳「SNEP」が今急増しているワケ〈週刊朝日〉11/15】
 20~59歳と人生の盛りなのに、仕事なし、友達なし、未婚。寂しく、孤独な毎日を過ごす「SNEP(スネップ)」(孤立無業者)と呼ばれる人々の存在が今、注目されている。SNEP(Solitary Non-Employed Persons)は、ニート研究の第一人者、東京大学社会科学研究所の玄田有史教授が提唱した概念。玄田教授の調査によれば2011年の時点で、SNEPの人口はなんと約162万人。00年代を通して急増し、現在この数は20~59歳の総人口に対して、約2.5%を占める割合となっている。

 玄田教授の著作『孤立無業(SNEP)』(日本経済出版社)には「特に1997年から98年を境に、中高年の男性の間で、就職活動をあきらめた人たちが大きく増え始めた」と記述されている。
「一度職を失った後、いい年をして就職試験に落ち続ければ、どんなに強い人だって自信をなくします。SNEPと聞いて、怠惰な人の自己責任だと思うのは間違いです。今時、SNEPは誰にでも起こりうる問題なのです」(中高年のひきこもりの問題を取材してきたフリーライター、高島昌俊氏)
 SNEPがニートと大きく異なる点について、玄田教授もこう解説する。
「無業者を分類する際の切り口が異なります。無業者のうち、普段、知人や友人との交流がない人がSNEPに該当します。ニートの研究が若年無業者の貧困問題を浮かび上がらせたのに対して、SNEPは『孤立』が焦点です」
 なぜ、玄田教授は孤立に注目したのか。
「東日本大震災が起きた際、さかんに『絆』という言葉が語られましたが、その輪の中に加われない人たちの存在が気になりました。孤独死や無縁社会というキーワードが語られるようになったタイミングでもありました。日本社会全体が余裕をなくして孤独に向かっている時代では、孤立と無業の問題は切り離せないと思いました」
 SNEPは、年齢、性別、経済状況に関係なく、「今やどのような人でも無業者になれば孤立しやすくなる『孤立の一般化』は広がっている」ともいう。
 この分析は、無業になれば、人と接する場所や機会が奪われてしまうことを示している。地縁や血縁は薄くなり続ける世の中で、人と人とのつながりが「仕事」によるものばかりだという現実は、あまりに寂しい。
 そして、孤独が深まれば深まるほど、社会復帰はますます難しくなる。孤立と無業の負のスパイラルこそが、SNEPの最大の恐怖だ。


【 孤立無業者(SNEP)の現状と課題 玄田有史(東京大学社会科学研究所)2013/1】

1問題意識
本稿では無業者を類型化する新概念として「孤立無業者(Solitary Non-Employed Persons: SNEPスネップ)」を提示し、実態を明らかにするとともに必要な政策を考える1。
総務省統計局『労働力調査』によれば、各月の月末1週間において把握した収入を伴う仕事をしていない者、いわゆる「無業者」は2010年平均で15歳以上人口のうち、4786万人にのぼる。その数は仕事をしている「就業者」総数6257万人と比べて、遜色ない数字である。少子化にともなう就業人口の減少に対し、外国人労働力への門戸開放よりは、まず国内に眠る潜在的就業可能者の活用による対応こそが望ましいといわれる理由の一つに、こうした大量の無業者の存在がある。

 従来、無業者を類型化する最も一般的な方法とは「完全失業者」と「非労働力人口」の区分だった。完全失業者とは、調査期間中に少しも仕事をしなかった者のうち、仕事を探す活動をしていたり、事業を始める準備をしつつ、実際に仕事があればすぐに就くことができる人々として定義される。就業者と完全失業者を加えた労働力人口に占める完全失業者の比率が完全失業率である。完全失業率は、厚生労働省発表による有効求人倍率とならび、月次や年次レベルでの就業困難の度合いをはかる基礎指標として注目されてきた。
 一方、非労働力人口は、15歳以上人口のうち、労働力人口以外の人々として定義される。求職活動をしていない、もしくは病気・怪我などのために仕事に就けない点で、非労働力人口は、完全失業者と違いを有する。労働力調査において非労働力人口は「通学」「家事」「その他(高齢者など)」に区分され、1953年の調査開始以来「家事」が主流であったが、2003年以降は「その他」が最も多くなっている。

 完全失業者に比べ、政策面でも研究面でも必ずしも注目を集めてこなかった非労働力への関心を高めた理由がある。「ニート(Not in Education, Employment, or Training: NEET)」の発見である(玄田・曲沼[2004]、小杉[2004]、Genda[2007])。それまで非労働力といえば、専業主婦として家事に専念する既婚女性、学業に専念する学生・生徒、仕事を引退した高齢者が一般的に想起されてきた。しかし一連のニート研究が示したのは、未婚者であり、かつ学校を卒業した働き盛りの若年層にすら求職活動を行わない「ニート」の無業者が多数存在する事実だった。ニート状態の若者は統計的には非労働力人口に含まれるため、2000年代半ばまで失業者やフリーターのような注目を集めることもなく、政府による対策もなされない状況にあった。

 だがニート状態にある若者は、就職に失敗を繰り返した結果、働くことに自信を失っていたり、高校中退のまま就業も進学の機会を失った状況にあるなど、早急な対策が求められる場合も少なくなかった。そしてニートの存在が広く社会に認知されるにしたがい、政策的な検討も次第に開始されていく。2003年に政府が開始した「若者自立・挑戦プラン」以降に本格化した若年雇用対策のなかで、ニート対策はフリーターや失業者対策などと並ぶ最も重要な政策課題の一つとして位置づけられるようになった。
 このように失業者のみならず非労働力を含めた無業対策に一定の進展がみられた反面、課題も残されてきた。その課題とは、一体いかなる無業者が求職活動を断念したり、自立に向けた歩み出しのための根幹である就業希望を喪失するかといった状況の解明に、ニート研究以降新たな進展がみられなかったことである。

 筆者は無業状態にある若者を、就業希望を持っているが求職活動をしていない「非求職型」と、就業希望を有しない「非希望型」に区分し、完全失業者を意味する「求職型」と異なる無業対策の必要性を指摘してきた(玄田[2010a])。なかでも「非希望型」ニートは、労働供給の所得効果から予想される通り、1990年代初めまでは経済的に余裕のある世帯から多くが出現していた。しかし、不況の深刻化した2000年代初め以降、むしろ貧困世帯から発生する傾向が強まる。その意味で無業対策は貧困対策との連携が今や不可欠のものとなっている。しかしこの貧困という観点を除けば、求職活動をしない人々や就業希望を失う人々の背景は依然として十分な裏付けが得られていない。

 もう一つ課題とされてきたのは、無業問題やそれに伴う社会的自立の困難化が、若年層にとどまらず、壮年層まで拡大している背景の解明である。玄田[2006]では総務省統計局『就業構造基本調査』個票データを用いた分析より、ニート状態は若年のみならず、中高年層にも広がっていることを指摘した。労働力調査をみても人口に占める非労働力人口の比率は1998年以降、30代、40代、50代の男性で上昇傾向にある。背景として、製造業や建設業などの労働需要の急速な減少により職を失い、かつ就職活動もままならず、求職を断念した男性の増加などが示唆される(玄田[2010b])。

 さらに無業問題として別の観点から対策が求められてきたのが「社会的ひきこもり」である。社会的ひきこもりは「20代後半までに問題化し、6ヶ月以上、自宅にひきこもって社会参加しない状態が持続しており、ほかの精神障害がその第一の原因とはかんがえにくいもの」(斎藤[1998])のように、10代や20代を中心に現れる問題と当初みなされてきた。ただ厚生労働省[2010]は「ひきこもりの評価・支援に対するガイドライン」を策定し、「様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学、非常勤職を含む就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)」と、年齢条件を課さないかたちで、現在はひきこもりを定義している。高齢になってもひきこもり状態から脱することのできない人々は親による庇護を将来失った場合、生存の危機にさらされることが危惧される。
 その上でガイドラインでは、全国のひきこもり状態の子どものいる世帯が約26万世帯にのぼるという試算結果を紹介している。内閣府[2010]も独自に調査を行い、「自室からほとんど出ない」「自室から出るが、家からは出ない」「ふだんは家にいるが、近所のコンビニなどには出かける」といった狭義のひきこもりが15歳以上39歳以下の23.6万人に達するとした2。しかし、これらのひきこもり状況にある人々の生活状況や就業に向けた行動や意識などに関する数量データによる裏付けは必ずしも十分ではない3。併せてひきこもりやそれに類する無業者像を計量経済学の手法から描き出した実証研究は今も乏しい。

 本稿の問題意識には、ニートやひきこもりを含む無業者についての新たな実態把握に加え、「社会的排除」に関する新たな視点を示すことも含まれる。大沢[2007]によれば、社会的排除とは「福祉国家が「新しい社会的リスク」に対応できず、多くの人々にとって、生活と社会参加が困難である」状況を指す。社会的排除に関する欧州の先行研究では、低所得、金銭的不安定、基本ニーズの不備、制度・サービスからの排除といった制度からの脱落とならび、労働市場からの排除や社会関係の欠如が取り上げられてきた(阿部[2007])。本稿でも家族以外の他者とのかかわりの状況によって規定される社会関係に着目して無業者を区分し、労働市場への接近度合いを含む社会参加の状況を数量的・客観的に把握する。

本稿の特徴は「孤立無業者」という新概念について、総務省統計局『社会生活基本調査』という大規模かつ継続的に行われてきた政府統計の特別集計によって実態把握をする点にある。社会生活基本調査は国民の1日の生活時間配分及び1年間の生活行動をつぶさに調べるものである。無業者について調べるには大規模な調査が不可欠だが、社会生活基本調査には約20万人からの回答が寄せられ、分析に十分な無業者の標本も確保できる。同調査は国民の生活状況を調べることを目的としており、他者との社会関係や社会的活動などに関する豊富な情報を含む。調査は長期にわたって実施され、今後も継続が予定されるため、孤立無業者の推移や変貌を厳密に検証できる。この調査を活用し、就業と生活の統合的アプローチによって、従来知られてこなかった無業者の実態を明らかにする。
孤立無業者は、ひきこもり、ニート、社会的排除、パラサイトシングル(山田[1999])など、印象論に終始しがちだった概念に対し、それらと多くで共通する特徴を持つ無業者を客観的に把握し、政策に寄与することを可能にした点に意義がある。本稿を通じて孤立無業者に関する研究が、増加する無業者に対する政策の立案や評価に不可欠なことを明らかにする。


7結論と課題
本稿は総務省統計局『社会生活基本調査』を特別集計することにより、無業者を分類する新概念である「孤立無業者(SNEPスネップ)」の実態を明らかにした。
ランダムに指定された連続2日間に、ずっと一人であるか家族以外に誰とも一緒にいなかったスネップは、2011年時点で20~59歳未婚無業者(在学中を除く)の約6割を占めている。その数は162万人と、1996年と比べて2倍以上の急速な増加となっている。孤立無業者のうち、過去一年間にスポーツ、旅行、ボランティアなどの社交的活動を一切していなかった人々が約4割にのぼり、他者と交流のある無業者と比べても突出している。
無業者では、男性、中高年齢、高校中退を含む中学卒ほどスネップになりやすい傾向がみられた。その一方、2000年代になると、20歳代の若年無業者が孤立している割合が高まるなど、孤立は若年無業者の間にも拡大しつつある。スネップは身近に一緒にいる人がいないだけでなく、電子メールによる交流も乏しく、その分、テレビの視聴時間や睡眠時間などが長くなっていた。スネップは求職活動、就業希望、仕事につくための学習に対して消極的であり、なかでも家族と一緒にいる家族型ほど就業から遠ざかる傾向がみられた。
スネップの増加は、ひきこもりやニートなどと並んで、社会の不安定化要因となる可能性が大きい。社会からの孤立状態を解消するためのアウトリーチの推進や、生活保護を受給せざるを得ない状況に陥った場合にも速やかに就業に移行できる政策が必要となる。
今後さらに大きな社会問題となる可能性を持つ孤立無業者について、日本で蓄積された学術や支援の成果を広く発信し、現在もしくは将来にかけて同じ孤立無業者に関する困難を抱える世界各国の政策の立案や評価に寄与することも可能となるだろう。孤立無業者の問題を世界的視野で考えることが求められている。


【「孤立無業」という社会病理 -「失業」から「孤立」に陥らない「再チャレンジ社会」を! 土堤内 昭雄 ニッセイ基礎研11/25 】

最近、SNEPという言葉を聞くことがある。Solitary Non-Employed Personsの略で、『20歳以上59歳以下の在学中を除く未婚無業者のうち、ふだんずっと一人か、一緒にいる人が家族以外にはいない人々』と定義されている*。以前から、『専業主婦や学生を除く職探しをしていない15~34歳の若年無業者』を意味するNEET(Not in Education, Employment or Training)という類似の言葉もある。
労働力人口には求職中の無業者、すなわち失業者が含まれるが、そもそも求職活動をしていないNEETは含まれない。一方、SNEPは求職活動の有無にかかわらず、「孤立状態にある」ということに注目した概念だ。今なぜ、SNEPが注目されるかというと、日本の深刻化する社会的孤立の背景に、社会との重要な接点である仕事に就いていない潜在的無業者が多数いるからである。
厚生労働省の調査によると就業後3年以内に離職する人が、大卒で3割、高卒で4割に上る。それが自発的なステップアップのための離職ではなく、ブラック企業における過重労働や職場でのいじめなどに起因する心身の疲弊により、働く意欲を喪失した結果である場合も多い。最初は失業し再就職を目指すが思うようには行かず、徐々に家族以外との人間関係が薄れ、社会的孤立を深めていくのだ。そして一層再就職が困難になり、社会との関係性を断つ負のスパイラルに陥ってしまうのである。
NEETは2010年に約60万人と言われていたが、SNEPは現在162万人と推計されている*。人口減少時代を迎え大幅に労働力人口が減ると想定される日本で、総務省の労働力調査の完全失業率にも十分反映されないSNEPは、今後の経済成長や社会保障制度にとって大きな課題となることだろう。既に生活保護世帯が戦後最大規模となる中、稼働能力のある非高齢受給者が急増しているという現実とともに、将来的には多くのSNEPが無年金者になることが懸念される。
このようにSNEP問題は、以前のNEETにみる「若年無業」問題に留まらず、幅広い世代にわたる「社会的孤立」というさらに深刻な社会病理を抱えている。それは今後の日本社会の根幹を揺るがしかねず、その抜本的な解決に向けては、「誰にも開かれた再チャレンジできる社会」の構築が必要だ。
これまで成人には「自立」が強く求められてきたが、「自立」は決して「孤立」することではなく、他者との人的ネットワークの中で“自律的に依存すること”が重要である。多くの人が企業や家族が有した従来の福祉機能を享受できなくなった現在、われわれは他者同士が自律的につながる「共助社会」を目指して、トランポリン型のセーフティネットの再生を図らなければならないのではないだろうか**。

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