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地方教育行政~首長が代わるたびに教育方針が変わってよいか

 教育委員会を廃止して地方教育行政の責任を首長にし、競争教育や侵略戦争美化や教育など政治介入を容易にする・・・教育再生実行会議が出した方向を中教審が論議し、「教育行政のあり方」として、首長を執行機関とするA案と教育委員会を執行機関とするB案の両案を示しパブコメを実施中である。
 全教と日高教の談話、意見。
こうした「改革」方向に対し、あの門川京都市長でさえ「教育は政治的な中立性が必要」「首長が代わるたびに学校の教育方針から教科書、教え方まで変わっては、保護者の信頼や教員のやる気につながらない」と警告している。
【談話 「今後の地方教育行政の在り方について(審議経過報告)」のとりまとめにあたって 全教10/16】
【「今後の地方教育行政の在り方について(審議経過報告)」への意見  日高教 10/24】
【教育委員会の独立性 首長・教育長の多数が支持 アンケート結果 中教審で報告8/24】
【門川市長、中教審委員に 「教育の政治的中立必要」 京都新聞5/17】

地方教育行政について中教審が実施したアンケートの結果(8月)でも「教育委員会が首長部局から独立していることが首長にとって制約になっている」かについて、首長の51%、教育長の59%が「そう思わない」と回答。 「現行の教育委員会制度を廃止して、その事務を市町村長が行う」方向については、首長の58%、教育長の85%が「反対」と回答している。

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 第一次安倍内閣の教育再生会議が失敗におわり(まともな提案でないので、中教審でことごとく退けられた)、今回、「実行会議」とした会議であるが、教育の条理をふまえないイデオロギッシュで粗雑な議論ゆえ、前回同様、中教審や多くの保守的な政治家からも賛同をえられていない代物とならざるをえない。

 いじめ対策基本法案もそう。中教審をとばして「厳罰化と規範意識」の法案をつくったが、多くの関係者が参加して作成した基本方針は、その方向にはならず、極めてまともな内容がもりこまれた。

戦後、多くのたたかいが築いてきた合意内容は分厚いものがある。調子にのっている安部首相ではあるが・・・ 集団的自衛権、秘密保護法などでも、従来の保守層からも遊離しており、基盤は極めてもろい。
 アベノミクスとか言っているが、賃金が増えず、生活が悪化するだけ・・・が明確になれば、一気に政権末期症状をむかえるのではないか。国の形をそんな簡単にかえさせてはならない。

【談話 「今後の地方教育行政の在り方について(審議経過報告)」のとりまとめにあたって 全教10/16】

全日本教職員組合 書記長 今谷賢二

教育再生実行会議の「第二次提言」を受け地方教育行政について審議してきた中央教育審議会・教育制度分科会は、10月10日、中間まとめとしてなる「今後の地方教育行政の在り方について(審議経過報告)」(以下、「報告」)を発表しました。今後、関係団体等の意見を聞いて、年内に最終報告を行うとしています。

「第二次提言」は、「世界に伍していくべき学力と規範意識を身に付ける機会を保障する」ため「教育行政における責任体制を確立しなければならない」として、教育長を首長の任免事項とすることや「教育長が教育の基本方針や教育内容に関する事項を決定する」など教育長の権限を強化する内容となっています。さらに、「是正・改善の指示等を行えるようにする」として国の権限を強化し、教育行政による学校への介入を強化するねらいを持ったものです。
「報告」は、こうした「第二次提言」のねらいを具体化することをめざして教育制度分科会で審議されてきたもので、①教育委員会制度の「改革」、②国と地方の役割と権限の「見直し」の名のもとの国の地方教育行政への権限の強化、③政令市や中核市などへの人事権の委譲についての3点にわたって言及しています。そもそも、戦前の教育の在り方への反省の上に立って、「不当な支配」を禁じるため、教育行政は政治権力から独立したものとして制度設計され、合議制の教育委員会制度が維持されてきました。「報告」は、こうした戦後の教育委員会制度のそもそもの理念を否定しかねないものです。

「報告」は、教育委員会制度について、首長を執行機関とするA案と教育委員会を執行機関とするB案の両案を示し、最終的な結論は、今後の検討に委ねました。A案は、地方の教育行政の決定権限を首長に一元化するもので、政治的中立性や継続性、安定性が求められる教育行政にはそぐわないもので、結局は、教育に混乱をもたらし、子どもたちに犠牲を押しつけるものです。
このことは、学力テストの結果公表をめぐる静岡県知事による介入、学校選択制や学校長の公募制の押しつけ等の大阪市における市長のトップダウンによる教育への介入など、この間の地方教育行政をめぐるさまざまな出来事からも明らかです。また、分科会の議論でも選挙のたびごとに教育政策がころころと変わる可能性があることから、教育の継続性や安定性への懸念が何人もの委員からも指摘されたところです。

B案についても、教育委員会を執行機関とはするものの関与する項目を減らし、教育長の権限を強化するものとなっています。しかし、松江市の「はだしのゲン」の取り扱いをめぐる問題からも明らかなように、一行政職員の権限を強化することは、地方自治の本旨である住民自治にそむくとともに、子どもたちにとってもマイナスの影響をもたらすだけでしかありません。

国による是正指導や是正指示にかかわる規制を緩和し、地方教育行政への国の関与を強化することは本来の教育委員会制度のあり方や理念、地方自治の原則に反するものであり、許されないものです。さらに、教育委員会の審議事項に教育内容をあげていることも問題です。教育課程の編成権を含め、教育内容にかかわっては行政による介入を抑制してきたこれまでのあり方をくつがえすものであり、重大な懸念を表明するものです。

また、給与負担の政令市への移譲や人事権の「中核市をはじめとする市町村」への移譲について、財政的な裏付けが行われなければ、教育条件整備にもマイナスの影響を与えるとともに、教職員の賃金引き下げなどにつながりかねないものです。

「報告」は、以上のように教育の政治的中立性、継続性、安定性や地方の自主的権限にとって重大な懸念を持つものです。全教は、今後の分科会での議論を通じて、憲法や子どもの権利条約に示された教育にかかわる理念や諸原則が守られ、それらをいかした制度となるよう強く求めるとともに、その実現に向け奮闘する決意を表明するものです。

以上_

【「今後の地方教育行政の在り方について(審議経過報告)」への意見  日高教 10/24】  2013 年10 月24 日 日本高等学校教職員組合中央執行委員長加門憲文

教育制度分科会の「今後の地方教育行政の在り方について(審議経過報告)」では、教育委員会制度について、首長を執行機関とし教育委員会を首長の附属機関とするA 案と、権限を縮小した教育委員会を執行機関とするB 案の両案を示しました。A・B いずれの案にしても、現行の合議制の教育委員会の権限を大幅に縮小し、常勤の教育長を教育行政の最高責任者とすることに大きな違いはありません。これは、教育再生実行会議の第二次提言をもとにした文部科学相の諮問が、「首長が任免を行う教育長を地方公共団体の教育行政の責任者とする」「教育委員会は、地域の教育方針等について審議し、教育長に対し大きな方向性を示すとともに、教育長による事務執行状況をチェックすることとする」と、改革の方向性の枠を厳しく縛ったため、教育制度分科会での検討・審議には大きな制約が課せられていたことによるものです。現行の教育委員会制度の廃止ともいうべきA 案はもちろんのこと、首長や教育長の暴走に歯止めをかける教育委員会の権限を弱めてしまうB 案にも賛成することはできません。

教育委員会は1948 年、子どもたちを侵略戦争に駆りたてた戦前の軍国主義教育の反省のうえに、教育が「不当な支配に服することなく」、その自主性、中立性を擁護する制度として発足しました。しかしながら、わずか8 年後の1956 年には公選制は廃止され、首長による任命制が導入されるなど、国による教育統制が強められてきました。その結果、多くの教育委員会は、住民や学校現場の声が届きにくく、国や行政の意向を押しつける、権力的で硬直したものになっていきました。この間のいじめ事件でも隠蔽を含む「組織防衛的」対応が国民の厳しい批判を受けましたが、これは教育長と教育委員会事務局を中心とした組織の問題です。ここにメスを入れるべきであるところを、知事部局に横滑りさせて権限を強化し、チェック機関であるはずの合議制の教育委員会を附属機関に格下げするようなA 案ではいじめや体罰問題の解決は望むべくもありません。

教育委員会が国民の信頼を失い、改革を求められている今日の状況は、長年続いた中央集権型の教育政策の破綻にほかなりません。しかしながら今回の文科省の諮問の方向性は、教育委員会への国民の批判を逆手にとり、教育行政をより中央集権的にしようとするものです。

たとえば教育委員会の意志決定を担う教育委員の合議が形骸化しているからと、教育長に権限を集中させようとしています。しかし教育委員の合議は時に首長の暴走を食い止める役割を果たします。
大阪市では市職員への違憲の思想調査が行われましたが、教職員などへの調査は教育長を除く4 人の教育委員の反対で否決され実施されませんでした。教育長に権限を集中すれば、こうしたことはできなくなります。また、全国学力テスト結果の下位校長名の公表をめぐる静岡県知事の発言は、教育の世界にあってはならないいじめそのものであり、首長の暴走の危険性を明らかにしました。

教育制度分科会の審議では、複数の首長委員から、4 年ごとに選挙がある首長には短期の成果を求めたり有権者の歓心を得るためのパフォーマンスをとる傾向があること、そのことは、政治的中立性・継続性・安定性が求められる教育行政には望ましくないことなどが指摘されました。

現在でも、教育予算や教育条例案の提案権をもつ首長の理解と支援がなければ、積極的な教育条件の整備施策もままならず、教育長を含めた教育委員の任免権を持つ首長の意向を無視した教育行政は成り立ちません。
これ以上首長の教育行政上の権限を強めるA 案では、教育の政治的中立性・継続性・安定性を守り維持することはできません。

現在の教育委員会制度の問題点は、教育委員会が地域住民に直接責任を負った、子ども・教職員・地域住民に開かれた自治的・専門的な教育行政機関としての組織・権限を十分に持っていないことにあります。いま必要なのは、統制重視の教育行政を抜本的に改めることです。子どもの学び・成長する権利を支え、現場の声に耳を傾け、住民の願いが教育に生かされるような民主主義的な教育委員会の制度設計と、その役割を発揮できるだけの権限を与えることが必要だと考えます。


【教育委員会の独立性 首長・教育長の多数が支持 アンケート結果 中教審で報告8/24】

 全国の計1120市区町村の首長と教育長を対象にした、教育委員会のあり方に関するアンケート調査で、現在の教育委員会が「首長部局から独立していることが首長にとって制約になっている」かどうか尋ねたところ、半数を超える首長・教育長が「そう思わない」と回答したことがわかりました。

 調査は村上祐介・東京大学大学院教育学研究科准教授が実施。22日に開かれた中央教育審議会(文科相の諮問機関)の教育制度分科会で報告しました。
 教育委員会の独立性を敵視する安倍政権は、首長の任命する教育長に権限を集中し、国と首長による教育への統制を強化する姿勢です。現在、中教審で教育委員会制度「見直し」の論議を行っており、年内に答申を得て来年の通常国会に法案を提出する方針です。

 調査結果によると、「教育委員会が首長部局から独立していることが首長にとって制約になっている」かについて、首長の51%、教育長の59%が「そう思わない」と回答しました。「教育委員会が合議制であるため事務執行が遅滞しがちである」かについては、首長の62%、教育長の76%が「そう思わない」と答えました。
 「現行の教育委員会制度を廃止して、その事務を市町村長が行う」方向については、首長の58%、教育長の85%が「反対」と回答。一方、「合議制の執行機関としての教育委員会を存続しつつ制度的改善を図る」方向に、首長の57%、教育長の67%が「賛成」と答えました。

 教育委員会の独立性を支持する調査結果について、櫻井よしこ委員が「統計は恣意(しい)的に解釈されることが多い」と述べ、「戦後日本の教育は本当におかしい」「納得いかない」と不快感を示しました。義家弘介政務官は「(教育委員会の)無責任な状況が表出している」「責任体制の確立をしなければならない」などとして、「改革」の断行を強調しました。


【門川市長、中教審委員に 「教育の政治的中立必要」 京都新聞5/17】

 政府の教育再生実行会議が提言した教育委員会制度改革を審議する、中央教育審議会の分科会臨時委員に門川大作京都市長が就任することが16日までに内定した。門川氏は京都新聞社の取材に対し、教育長を最高責任者とする提言には理解を示したうえで、首長の教育行政関与を強めることには「教育は政治的な中立性が必要」と慎重な立場を示した。教育委員の意見の尊重義務などを制度で担保するよう訴えるという。
 提言について門川氏は、首長が任命する教育長に責任を集中させる点は「実態とあまり変わらない」とする一方、「首長が代わるたびに学校の教育方針から教科書、教え方まで変わっては、保護者の信頼や教員のやる気につながらない」と強調。子どもの自立する力を育む長期的な取り組みについては、首長の1期4年の任期で成果を求めてはいけないとも指摘した。
 教育の安定性、継続性を担保するためには、市民代表による教育委員会を「単なる諮問機関としない制度設計が必要」とし、教育委員の意見の尊重を義務づけることや、任命に議会の同意を経る現行の仕組みの継続などを求めていくとした。
 教委制度について、京都市での実践を踏まえた提案にも意欲を示した。具体的には、採用段階から教委事務局職員として任命し、長期的に専門性を養う人事制度によって事務局機能を強化することや、保護者と地域、学校による学校運営協議会を活用したボトムアップ型の学校運営を挙げた。
 中教審は提言について年内に答申をまとめる方針で、20日に分科会初会合を開く。門川氏は教育長の経験があり、過去にも委員を務めている。

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